「キューバに行きたい」── 高まるアメリカ人の期待。オンライン旅行会社も直行便チケットの販売を開始

「すべては革命のために」と書かれた街の外壁 。2008年ハバナにて。© Kasumi Abe 
「すべては革命のために」と書かれた街の外壁 。ハバナにて=2008年12月 © Kasumi Abe

「I surely wanna go!(もちろん行きたい)」。

キューバに行ってみたいかとアメリカ人に聞くと、大抵このような言葉が返ってくる。理由を尋ねると「ノスタルジックで美しい国。どんなところか実際に見てみたい」。それはそうだろう。キューバはこれまで、アメリカから最も近くて遠い国だったのだから。

 

4月に入り両国の動きが活発に

 

1961年以来、半世紀以上も国交が断絶しているこの二つの国が、国交正常化に向けた交渉を開始すると発表したのが昨年暮れ。2015年4月に入り、国交回復に向けた動きが一気に活発になってきた。

 

パナマで4月11日に開かれた米州首脳会談で、アメリカのオバマ大統領とキューバのカストロ国家評議会議長が握手を交わして話題になったのを発端に、その数日後にはアメリカがキューバに対するテロ支援国家指定の解除を承認と、ニュースが続いた。

また同月下旬には、ニューヨークのアンドリュー・クオモ州知事が貿易促進のためにキューバを訪れた。これらのニュースはその都度、米メディアで大きく報じられた。

 

「自分のルーツを訪れてみたい」

 

「ぜひキューバを訪れてみたい」。これは今や、旅好きなアメリカ人の合い言葉だ。その思いは、キューバにルーツを持つ者なら特に強いだろう。

「両国の関係性が改善するのは喜ばしいこと」と言うのは、ニューヨーク在住のキューバ系アメリカ人、ハニエル・コロナさん。キューバには母方の親戚が住んでいるが、一度も訪れたことがない。「世界遺産である美しいハバナを訪れてみたい。母が以前暮らしていたヴィラ・クララ地方にも」と目を輝かす。

キューバの名物、クラシックカーは美しいハバナの街に似合う。今後これらの光景も見納めになるか? © Kasumi Abe (2)
キューバの名物、クラシックカーは美しいハバナの街に似合う。今後これらの光景も見納めになるか?=2008年2月  © Kasumi Abe

筆者は2008年の年末に、ニューヨーク発でキューバを訪れたことがある。一般向けにはアメリカからの直行便がないため、メキシコを経由することにした。

キューバはアメリカの南端・フロリダから目と鼻の先。マイアミからだと直行便でたった1時間の距離なのに、トランジットを含めて約1日がかりの長旅となり、しかも航空券も日本円で20万円ほどとかなり高くついた。

 

オンラインで直行便が販売開始

 

しかしそんな骨折りも、今後はなくなる方向に行くだろう。4月に入り、オンライン旅行会社の「Cheapair.com(チープエア・ドットコム)」が、アメリカーキューバ直行便のチケットの販売を始めたのだ。

同社では今年2月、これまた業界に先駆け、アメリカ発キューバ行きの航空券を販売し始めたが、直行便ではなかったため、顧客からは不満の声も上がっていた。

ただ、直行便が運行し始めたと言っても、ニューヨークとフロリダ発のみで、本数もかなり限られている。さらに、アメリカ人が合法で渡航するには、未だ「12の正統な理由」のうちのどれかに該当することが必要だ。家族の訪問やジャーナリストの活動、教育関係の活動などで、審査や書類提出が義務づけられている。

1950年代製のクラシックカーは、故障も多い。2008年、ハバナにて。 © Kasumi Abe 
1950年代製のクラシックカーは、故障も多い。ハバナにて=2008年12月 © Kasumi Abe

 

「国交回復後は30%アップ」

 

「キューバ行きで取り扱ったのは教育交流プログラムの一環。相応の手続きを踏んで成功させた」と言うのは、カリブ海周辺を専門とする旅行会社「Caribbean Journey(カリビアンジャーニー)」の代表、ローラ・サングスターさん。

「まだ市民レベルまで旅行規制が緩和されているわけではない。だからこそアメリカ人は、キューバを個人旅行できる日を待ちわびているのです」と言う。

チープエア・ドットコムのマーケティング・バイスプレジデント、グレゴリー・サムソンさんも、「今後、大量のアメリカ人ツアー客がキューバに押し寄せるだろう」と予想。現在、直行便の売れ行きはまだそれほど多くはないそうだが、「国交が回復したら旅行客数はこれまでより300%アップを見込んでいる」。

 

「アメリカナイズする前に見ておきたい」

 

これまでも、アメリカから第三国を経由するなど、キューバ渡航への抜け道はいくらでもあった。それを証明するかのように、昨年は60万人のアメリカ人がキューバを訪れたと、イギリスの日刊紙『Daily Mail』は発表している(筆者がキューバを訪れた際にも、何人ものアメリカ人旅行客に出くわした)。

人懐っこいキューバの少年。ベルトにはアメリカの国旗が。2008年、ハバナにて。 © Kasumi Abe 
人懐っこいキューバの少年たち。ベルトにはアメリカの国旗が。ハバナにて=2008年12月  © Kasumi Abe

今後国交が回復し、個人旅行が簡単にできるようになったら…。結果は想像に難くない。記事冒頭で紹介した理由もそうだし、もう一つ大きな動機は「アメリカナイズする前に見ておきたい」ということだ。

 

そう、変わる前のノスタルジックで美しいキューバという国を目に焼き付けるために、アメリカはもちろんのこと、世界中から観光客が押し寄せることは必至だ。

【筆者】

安部かすみ(あべ・かすみ)

フリーランスライター、アメリカ・ニューヨーク

 

編集者、ライター。1994年から2001年まで、日本の出版社で編集者として勤務し(音楽編集者4年、別冊ガイドブックの編集長3年)2002年よりニューヨーク在住。07年から14年まで、在NYの日本語新聞社でシニアエディターとして勤務。退職後はIT企業や様々な日本語メディアでNY情報を発信中。日米での編集者歴20年。福岡県出身。


朝日新聞社の言論サイト WebRonza(2015.05.05)「キューバに行きたい」── 高まるアメリカ人の期待。オンライン旅行会社も直行便チケットの販売を開始」より転載(無断転載禁止)

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