全米で同性婚が合憲に。今後も続く「真の平等」への戦い

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アメリカ連邦最高裁判所前で揺れるレインボフラッグ=2015年4月28日 © Ted Eytan   https://www.flickr.com/photos/taedc/17113823229/

 

再祝福ムードにわいた決勝戦の日

今月6日付けのCNNや『TIME』誌など各メディアは、女子サッカー選手のアビー・ワンバックさんと妻のサラ・ハフマンさんが、歓喜の中、熱いキスを交わしているシーンを大きく報じた。2015FIFA女子ワールドカップの決勝戦で、アメリカが宿敵・日本を破り優勝の座を勝ち取った瞬間の様子だ。

ワンバック選手は自身を同性愛者と公言しており、2013年にはハワイでかねてから交際していたチーメイトのハフマンさんと結婚している。

決勝戦の日は、アメリカの連邦最高裁判所の判決により、全州で同性婚が憲法上の権利として認められた歴史的な日から9日後。また、判決の2日後の今月5日には、ニューヨークで夏の風物詩になっている毎年恒例のプライドパレードもタイミングよく開催されており、今年はいつにも増して盛り上がりをみせたばかりだった。

ワールドカップ決勝戦で会場にいた多くの観客に、ワンバック選手と妻・ハフマンさんの勝利の抱擁がいやが上にも微笑ましくうつったのは間違いないだろう。

戦いが終わったわけではない

ニューヨークのマンハッタン区西13丁目に、LGBTの憩いの場とも呼べる文化センターがある。「The Lesbian, Gay, Bisexual & Transgender Community」(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル&トランスジェンダー・コミュニティー、以下「The Center」)は、LGBTの人々をサポートするために1983年に設立され、イベントや文化系の講座、勉強会などを定期的に開催している。

The Centerのエグゼクティブ・ディレクター、グレンダ・テストーンさんは、同性婚合憲の判断について「長くて厳しかった戦いが終わり、この瞬間がついにやって来ました。LGBTの人々にとって結婚の平等(Marriage Equality)が大きな前進になったことは間違いないでしょう」と語った。しかしながら、同センターにとって祝福ムードばかりではない。

同性婚合憲の判断は「一つの自由が認められたに過ぎない」とし、「差別が原因の暴力および貧困問題と、特に若年層を中心とした中毒、ホームレス、自殺などの問題が山ほど残っています。これらを解決するための戦いは今後も続いていきます」。真の平等(Truly Equal)に到達するために、引き続き取り組んでいくとした。

全国民は平等(Equal)であるべき

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アメリカ・ワシントン州で同性結婚が認められた初日。シアトルシティホールから出てくるカップルたち。=2012年12月   By Dennis Bratland [CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0)%5D, from Wikimedia Commons

同判決関連のニュースで、オバマ大統領や合憲判決を支持したケネディ判事のコメントとして、平等を表す「Equal」「Equality」という言葉が何度となく出てきた。

「平等」という言葉で思い出したのは、昨年12月の出来事。筆者はゲイの友人に連れられて、前述のThe Centerを訪れたことがあった。そこで開催されている勉強会に参加させてもらうためだ。

その日友人に連れられて行ったのは、「Planning Biological Parenthood for Women group」(女性カップルのためのバイオロジカル家族計画)という勉強会だった。内容。ゲストスピーカーが、レズビアンのカップル同士で精子バンクを使って出産した経験談をシェアするという内容だ。

ゲイの友人が以前参加して、いい経験になったというその勉強会だが、筆者は同性愛者ではないので、興味本位だけで参加したのだった。ちょっと見学しようという軽い気持ちだった。

相手が誰であれ「受け入れる」「平等に扱う」姿勢

参加者7人のうち、私とゲイの友人以外は、子供を作ることを希望している30代前後のレズビアンだった。主催者は私たちにもフレンドリーに「どうぞどうぞ」と歓迎ムードで、「初めは専門用語ばかりで分からないだろうから、質問があればご遠慮なく」と言いながら、ゲストスピーカーを含んだ大きな輪に私と友人を入れてくれた。

まずは自己紹介からスタート。私も友人もレズビアンではないけれど勉強会の内容に興味があって参加したことなどを自己紹介に交えたが、会の途中ではたびたび話を振られ、見学どころか立派な参加者として扱われた。

終了後、レズビアンである主催者の子供が辺りを走り回ったりして、実にアットホームな雰囲気だった。ゲイの友人は「僕だけが男で恥ずかしかったけど、みんな温かく迎え入れてくれたので良かった」と言っていた。

この経験はもう半年の前のことだが、今になって思うのは、社会に不平等に扱われ、もがき苦しんできた彼らだからこそ、相手が誰であれ「受け入れる」「平等に扱う」姿勢が当然のこととして根付いているということだ。今回の判決は長い闘いの大きなランドマークだが、ゴールではない。ストレート(異性愛者)、LGBTの隔てなく社会があらゆる人々を受け入れられるようになったとき、彼らに「真の平等」が訪れるのだろう。

【筆者】

安部かすみ(あべ・かすみ)

フリーランスライター、アメリカ・ニューヨーク

編集者、ライター。1994年から2001年まで、日本の出版社で編集者として勤務し(音楽編集者4年、別冊ガイドブックの編集長3年)2002年よりニューヨーク在住。07年から14年まで、在NYの日本語新聞社でシニアエディターとして勤務。退職後はIT企業や様々な日本語メディアでNY情報を発信中。日米での編集者歴21年。福岡県出身。


朝日新聞社の言論サイト WebRonza(2015.07.29)「全米で同性婚が合憲に。今後も続く「真の平等」への戦い」より転載(無断転載禁止)

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