
私はこのクリスピークリーム(Krispy Kreme)ドーナツを食べると、いつも18年前、ニューヨークに来たばかりの頃を思い出します。
TVシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ」にも登場したということで、当時話題のドーナツでした。当時の私はマンハッタンのモーニングサイドハイツに住んでおり、すぐ近くのハーレムに住んでいた留学仲間がお気に入りっていうことで、ハーレムにあったこのドーナツ店に一緒に行ったのが始まり。店内奥に工場があって、そこで焼き上がったばかりの甘いドーナツをコーヒーと一緒にいただくのが、貧乏学生にとってのささやかな楽しみであり贅沢でした。
いつしかクリスピークリームはニューヨークから姿を消し、気づいたらペンステーション店だけ、あとはスーパーで見かける箱売りだけになっていったのです。
パンデミックの最中、タイムズスクエアに復活
そんな私にとっての「懐かしい味」が、今回ニューヨークに大復活しました。
オープンしたのは初の旗艦店。場所はNYの中心地、タイムズスクエア。時は2020年9月15日という新型コロナのアウトブレイク最中!
取材した、最高マーケティング責任者(CMO)のデーブ・スケナさん曰く、本当は5月オープン予定だったけど、パンデミックにより4ヵ月も遅れたのだそうです。

見える工場
店に到着すると右側の列はドーナツやコーヒー購入者用、左側は体験型と聞き「どういうこと?」と思ったら、店に入ってなるほど。
店内左部分は「見える工場」になっていて、目の前でドーナツが作られている様子を「工場見学」できるようになっています。1時間に4500ものドーナツが作られていると言います。CMOのデーブさん曰く「世界中にある同社他店と比べて、旗艦店の工場は最大規模」。

消費者側からすると、目の前で作られている様子を実際に確認できるのは、安心ですね。
新店舗のコンセプトは「スタジアム型」だそうで、見える工場の向かい側には、野球場のようなシートがありました。つまりドーナツができる様子(試合)をそのシートから「観戦」できるというわけです。

エンタメはこの店の1つのテーマで、時折スタッフが全員で、急に楽しげに掛け声をかけて歌い出します。なんだかこのガヤガヤした熱気が、野球観戦にでも来たように気分を盛り上げてくれ、店内でもドーナツを買うのに待ったのですが、自然と楽しい気持ちになれました。
リピートする楽しさ
顧客に「リピートさせる」いくつかの工夫も見られました。
まず1つは、オリジナルグッズの豊富さ。
店の敷地の半分がグッズ販売コーナーになっています。売られているものは、各種Tシャツ、エコボトル、マグカップ、キーホールダーなど。NY観光シーズンがまた復活したら、お土産を買うのにおすすめです。



2つ目は季節ごとに変わるドーナツ。今の時期はパンプキンドーナツでした。
NY店限定ドーナツ「ビッグアップルドーナツ」(Big Appleにかけて)もあります。10.99ドルと割高ですが、CMOのデーブさんは「今のところトップセラーは、このりんごドーナツなんです」とのこと。

私のお気に入りは当時も今も「Original Glazed」(1.99ドル)と「Chocolate Iced Kreme Filled」てやつです。機会があればぜひ食べてみてください。

10年ぶり?15年ぶり?に食べたドーナツの感想はというと…
フワフワ、超甘〜い、でも美味しい!通っていたハーレム店とあの頃の日々を懐かしく思い出しました。
この旗艦店は、今年のクリスピークリームの拡大戦略の一環であり、市内では今年だけでも新しく7店舗をオープンし、400人以上の雇用を生み出す予定だそうです。
(Text and photos by Kasumi Abe) 無断転載禁止