トランプ支持者は、厳重なハズの議事堂を「なぜこれほど簡単に」襲撃できたのか? ── 現地で深まる謎

Image: Pixabay by David Mark

米首都 暴動で死者5人、逮捕者82人に

(前回「トランプ支持者の『誰』が議事堂を襲撃したのか?」からの続き)

なぜ、いとも簡単に侵入できたのか?


この事件が起きて現地では「議事堂ってそんな簡単に侵入できるものなの?」と、メディアも人々も首を傾げている。

アメリカの建物は一般的にセキュリティが日本より厳しい。その中でも役所関係、特に連邦政府の建物ともなれば、日ごろからテロを警戒してもっとも厳重に守られている。

実際にはこの議事堂も、普段からチェックポイントでバリケードを張り巡らし、議事堂警察や警備員らが入り口で警備をしていた。

1800年に完成した歴史的な建物の一部は普段、観光客が訪れることができるよう一般公開している。しかし事前予約が必要で、入り口では空港にあるような手荷物のX線検査がある。館内でも、常に専門ガイドとの行動が求められている。とにかくセキュリティは日頃から万全なのだ。

Image: Pixabay by David Mark

当然6日も、トランプ氏の呼びかけに応じて、全米中から支持者が集まってくるだろうというのは予測され、厳重で十分な警備体制が敷かれていたはずだ。

なんせトランプの支持者は、銃を持っていてもおかしくない人々である。(ワシントンD.C.では銃の持ち歩きは禁止されているが)

それが、である。

ヒートアップした群衆は議事堂警察と衝突してバリケードを取り去り、壁をよじ登ったりして、数カ所ある入り口を強行突破。建物内でも、窓ガラスを割るなどして奥に奥に進んでいった。

このニュースを知って筆者は当初「厳重であるはずの警備体制も、大群には降参状態だったのか」と思っていた。

しかし調べを進めていくと、驚くべき映像が出てきた。目を疑ってしまうのだが、群衆のためにバリケードを取り去ったり建物内で侵入者らとセルフィーを撮る警官や警備員の姿などもソーシャルメディアでシェアされているのだ。

これらの映像を見る限り、特に混乱状態ではない。また前述のオクス容疑者もそうだが、一旦入り込んだ侵入者らはリラックスして、自由に建物内を行き来している。

主要メディアで映されている写真はどれも、警官が拳銃を向けていたり、容疑者らが床に倒れ込んだりと緊迫したシーンが多い。しかしソーシャルメディアで流れてくるイメージの中には、違うものもたくさんある。

ニューヨークタイムズ紙にも驚くべきコメントが掲載されていた。まず「ワシントンD.C.に今から来るように、知り合い全員に電話を」という侵入者のコメント。そして、彼らに退去するよう説得はしたものの、聞く耳を持たない群衆らに対して

「ただ彼らがやりたいようにさせてあげた」という警官のコメントだ。


ワシントンポスト紙の公開した映像には、警官が後ろに逃げて行く様子も映し出されている。

CURBEDによると、過去数ヵ月間に起こった大規模な抗議と違い、この日の議事堂警察は暴動鎮圧のための特別武装をしていなかったという。

「攻撃を阻止できなかった議事堂警察(年間予算4億6000万ドルで2300人の部隊)についての疑問が高まっている」と報じたのは、ニューヨークポスト紙。情報筋のコメントと共に「要するに、暴徒を防ぐのに十分な人員を配置していなかった」と述べ、連邦政府機関が暴動を過小評価したことが、侵入を防止できなかった要因とした。

ABCニュースも、「なぜ議事堂警察がこれほど準備ができていなかったのか、私にはわからない」という、ジョージタウン大学法科大学院の教授で元連邦検察官、メアリー・マコード氏のコメントを掲載している。

同ニュースのコントリビューター、ブラッド・ギャレット氏は「怒りに満ちた群衆が押し寄せ、大規模な事件に発展するとわかっていたのに、その準備や対策ができていなかった」とコメント。元FBI特別捜査官も 「これは驚異的な法執行の失敗だった」と述べた。


巨大化した暴動を抑えるために、待機中だった州兵やFBIの特殊部隊「SWATチーム」が現場に到着したのは、「事が起こった後」だった。

ギャレット氏は、「議事堂警察がそのための訓練をしなかったとは想像し難い」と語った。
7日の記者会見で、ライアン・マッカーシー陸軍長官は「事前に議事堂警察と話し合った際に、国家警備隊への要請はなかった」と述べ、計画内容の欠如を滲ませた。


「警官の抵抗なしで議事堂のドアが破られたのをテレビで観て非常に驚いた。これらは今後すべて分析されるでしょう。本当にチェックしなければならない」(国土安全保障省の副書記代理、ケン・クッチネリ氏)


「私はいつでもこの議事堂内では安全を感じていた。しかし、どうやったらこのような暴動が建物内で起こり得るのか。徹底的な調査が必要である」(カリフォルニア州の民主党および下院司法委員会、カレン・バス議員)


ワシントンポスト紙も、「あまりにも無防備なままにされていることに驚いた」とする専門家の声や、「警官配備策の失態について調べれば調べるほど憤懣やる方無い思いが増す。911テロ後の調査並みの厳密なる取り調べがなされるだろう」とするティム・ライアン下院議員などのコメントを載せた。


再発防止に向けて、今後どのような解明がなされるだろうか?


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(Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

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