全米で同性婚が合憲に。今後も続く「真の平等」への戦い

  再祝福ムードにわいた決勝戦の日 今月6日付けのCNNや『TIME』誌など各メディアは、女子サッカー選手のアビー・ワンバックさんと妻のサラ・ハフマンさんが、歓喜の中、熱いキスを交わしているシーンを大きく報じた。2015年FIFA女子ワールドカップの決勝戦で、アメリカが宿敵・日本を破り優勝の座を勝ち取った瞬間の様子だ。 ワンバック選手は自身を同性愛者と公言しており、2013年にはハワイでかねてから交際していたチーメイトのハフマンさんと結婚している。 決勝戦の日は、アメリカの連邦最高裁判所の判決により、全州で同性婚が憲法上の権利として認められた歴史的な日から9日後。また、判決の2日後の今月5日には、ニューヨークで夏の風物詩になっている毎年恒例のプライドパレードもタイミングよく開催されており、今年はいつにも増して盛り上がりをみせたばかりだった。 ワールドカップ決勝戦で会場にいた多くの観客に、ワンバック選手と妻・ハフマンさんの勝利の抱擁がいやが上にも微笑ましくうつったのは間違いないだろう。 戦いが終わったわけではない ニューヨークのマンハッタン区西13丁目に、LGBTの憩いの場とも呼べる文化センターがある。「The Lesbian, Gay, Bisexual & Transgender Community」(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル&トランスジェンダー・コミュニティー、以下「The Center」)は、LGBTの人々をサポートするために1983年に設立され、イベントや文化系の講座、勉強会などを定期的に開催している。 The Centerのエグゼクティブ・ディレクター、グレンダ・テストーンさんは、同性婚合憲の判断について「長くて厳しかった戦いが終わり、この瞬間がついにやって来ました。LGBTの人々にとって結婚の平等(Marriage Equality)が大きな前進になったことは間違いないでしょう」と語った。しかしながら、同センターにとって祝福ムードばかりではない。 同性婚合憲の判断は「一つの自由が認められたに過ぎない」とし、「差別が原因の暴力および貧困問題と、特に若年層を中心とした中毒、ホームレス、自殺などの問題が山ほど残っています。これらを解決するための戦いは今後も続いていきます」。真の平等(Truly Equal)に到達するために、引き続き取り組んでいくとした。 全国民は平等(Equal)であるべき 同判決関連のニュースで、オバマ大統領や合憲判決を支持したケネディ判事のコメントとして、平等を表す「Equal」「Equality」という言葉が何度となく出てきた。 「平等」という言葉で思い出したのは、昨年12月の出来事。筆者はゲイの友人に連れられて、前述のThe Centerを訪れたことがあった。そこで開催されている勉強会に参加させてもらうためだ。 その日友人に連れられて行ったのは、「Planning Biological Parenthood for Women group」(女性カップルのためのバイオロジカル家族計画)という勉強会だった。内容。ゲストスピーカーが、レズビアンのカップル同士で精子バンクを使って出産した経験談をシェアするという内容だ。 ゲイの友人が以前参加して、いい経験になったというその勉強会だが、筆者は同性愛者ではないので、興味本位だけで参加したのだった。ちょっと見学しようという軽い気持ちだった。 相手が誰であれ「受け入れる」「平等に扱う」姿勢 参加者7人のうち、私とゲイの友人以外は、子供を作ることを希望している30代前後のレズビアンだった。主催者は私たちにもフレンドリーに「どうぞどうぞ」と歓迎ムードで、「初めは専門用語ばかりで分からないだろうから、質問があればご遠慮なく」と言いながら、ゲストスピーカーを含んだ大きな輪に私と友人を入れてくれた。 まずは自己紹介からスタート。私も友人もレズビアンではないけれど勉強会の内容に興味があって参加したことなどを自己紹介に交えたが、会の途中ではたびたび話を振られ、見学どころか立派な参加者として扱われた。 終了後、レズビアンである主催者の子供が辺りを走り回ったりして、実にアットホームな雰囲気だった。ゲイの友人は「僕だけが男で恥ずかしかったけど、みんな温かく迎え入れてくれたので良かった」と言っていた。 この経験はもう半年の前のことだが、今になって思うのは、社会に不平等に扱われ、もがき苦しんできた彼らだからこそ、相手が誰であれ「受け入れる」「平等に扱う」姿勢が当然のこととして根付いているということだ。今回の判決は長い闘いの大きなランドマークだが、ゴールではない。ストレート(異性愛者)、LGBTの隔てなく社会があらゆる人々を受け入れられるようになったとき、彼らに「真の平等」が訪れるのだろう。 【筆者】 安部かすみ(あべ・かすみ) フリーランスライター、アメリカ・ニューヨーク 編集者、ライター。1994年から2001年まで、日本の出版社で編集者として勤務し(音楽編集者4年、別冊ガイドブックの編集長3年)2002年よりニューヨーク在住。07年から14年まで、在NYの日本語新聞社でシニアエディターとして勤務。退職後はIT企業や様々な日本語メディアでNY情報を発信中。日米での編集者歴21年。福岡県出身。 朝日新聞社の言論サイト WebRonza(2015.07.29)「全米で同性婚が合憲に。今後も続く「真の平等」への戦い」より転載(無断転載禁止) ウェブサイトのPDF

「キューバに行きたい」── 高まるアメリカ人の期待。オンライン旅行会社も直行便チケットの販売を開始

「I surely wanna go!(もちろん行きたい)」。 キューバに行ってみたいかとアメリカ人に聞くと、大抵このような言葉が返ってくる。理由を尋ねると「ノスタルジックで美しい国。どんなところか実際に見てみたい」。それはそうだろう。キューバはこれまで、アメリカから最も近くて遠い国だったのだから。   4月に入り両国の動きが活発に   1961年以来、半世紀以上も国交が断絶しているこの二つの国が、国交正常化に向けた交渉を開始すると発表したのが昨年暮れ。2015年4月に入り、国交回復に向けた動きが一気に活発になってきた。   パナマで4月11日に開かれた米州首脳会談で、アメリカのオバマ大統領とキューバのカストロ国家評議会議長が握手を交わして話題になったのを発端に、その数日後にはアメリカがキューバに対するテロ支援国家指定の解除を承認と、ニュースが続いた。 また同月下旬には、ニューヨークのアンドリュー・クオモ州知事が貿易促進のためにキューバを訪れた。これらのニュースはその都度、米メディアで大きく報じられた。   「自分のルーツを訪れてみたい」   「ぜひキューバを訪れてみたい」。これは今や、旅好きなアメリカ人の合い言葉だ。その思いは、キューバにルーツを持つ者なら特に強いだろう。 「両国の関係性が改善するのは喜ばしいこと」と言うのは、ニューヨーク在住のキューバ系アメリカ人、ハニエル・コロナさん。キューバには母方の親戚が住んでいるが、一度も訪れたことがない。「世界遺産である美しいハバナを訪れてみたい。母が以前暮らしていたヴィラ・クララ地方にも」と目を輝かす。 筆者は2008年の年末に、ニューヨーク発でキューバを訪れたことがある。一般向けにはアメリカからの直行便がないため、メキシコを経由することにした。 キューバはアメリカの南端・フロリダから目と鼻の先。マイアミからだと直行便でたった1時間の距離なのに、トランジットを含めて約1日がかりの長旅となり、しかも航空券も日本円で20万円ほどとかなり高くついた。   オンラインで直行便が販売開始   しかしそんな骨折りも、今後はなくなる方向に行くだろう。4月に入り、オンライン旅行会社の「Cheapair.com(チープエア・ドットコム)」が、アメリカーキューバ直行便のチケットの販売を始めたのだ。 同社では今年2月、これまた業界に先駆け、アメリカ発キューバ行きの航空券を販売し始めたが、直行便ではなかったため、顧客からは不満の声も上がっていた。 ただ、直行便が運行し始めたと言っても、ニューヨークとフロリダ発のみで、本数もかなり限られている。さらに、アメリカ人が合法で渡航するには、未だ「12の正統な理由」のうちのどれかに該当することが必要だ。家族の訪問やジャーナリストの活動、教育関係の活動などで、審査や書類提出が義務づけられている。   「国交回復後は30%アップ」   「キューバ行きで取り扱ったのは教育交流プログラムの一環。相応の手続きを踏んで成功させた」と言うのは、カリブ海周辺を専門とする旅行会社「Caribbean Journey(カリビアンジャーニー)」の代表、ローラ・サングスターさん。 「まだ市民レベルまで旅行規制が緩和されているわけではない。だからこそアメリカ人は、キューバを個人旅行できる日を待ちわびているのです」と言う。 チープエア・ドットコムのマーケティング・バイスプレジデント、グレゴリー・サムソンさんも、「今後、大量のアメリカ人ツアー客がキューバに押し寄せるだろう」と予想。現在、直行便の売れ行きはまだそれほど多くはないそうだが、「国交が回復したら旅行客数はこれまでより300%アップを見込んでいる」。   「アメリカナイズする前に見ておきたい」   これまでも、アメリカから第三国を経由するなど、キューバ渡航への抜け道はいくらでもあった。それを証明するかのように、昨年は60万人のアメリカ人がキューバを訪れたと、イギリスの日刊紙『Daily Mail』は発表している(筆者がキューバを訪れた際にも、何人ものアメリカ人旅行客に出くわした)。 今後国交が回復し、個人旅行が簡単にできるようになったら…。結果は想像に難くない。記事冒頭で紹介した理由もそうだし、もう一つ大きな動機は「アメリカナイズする前に見ておきたい」ということだ。   そう、変わる前のノスタルジックで美しいキューバという国を目に焼き付けるために、アメリカはもちろんのこと、世界中から観光客が押し寄せることは必至だ。 【筆者】 安部かすみ(あべ・かすみ) フリーランスライター、アメリカ・ニューヨーク   編集者、ライター。1994年から2001年まで、日本の出版社で編集者として勤務し(音楽編集者4年、別冊ガイドブックの編集長3年)2002年よりニューヨーク在住。07年から14年まで、在NYの日本語新聞社でシニアエディターとして勤務。退職後はIT企業や様々な日本語メディアでNY情報を発信中。日米での編集者歴20年。福岡県出身。 朝日新聞社の言論サイト WebRonza(2015.05.05)「キューバに行きたい」── 高まるアメリカ人の期待。オンライン旅行会社も直行便チケットの販売を開始」より転載(無断転載禁止) ウェブサイトのPDF

432パークアベニュー:57丁目の『Race to the Sky』NYイチの高層コンドミニアムがマンハッタンの摩天楼を変える

ニューヨークで一番高い住居用ビルとして、2015年春の完成へ向け着々と建設が進む「432 Park Avenue」。建物の完成予想図やペントハウスからの眺望が、先日取材陣に公開され話題となっている。 建設場所は、マンハッタンの『お金持ちの象徴』であるパークアベニュー、56丁目と57丁目の間。 全長1396ft(約426m)と、エンパイアステートビル(1250ft=約381m)やクライスラービル(1046ft =約318m)よりも高く、高層階からはそれらのアイコンビルを見下ろすことができる。 マンハッタン内はもちろ んのこと、お隣のブルックリンやクイーンズ、ニュージャー ジー州、そして天気の良い日はロングアイランドまで見渡せるとか。 同ビルのPRを手掛ける、PRCo社のジェシカ・ヘンリーさんによると、着工した2011年当初より 投資家や富裕層の間で話題になっており、住居スペース104世帯のうち、現時点で半分以上がす でに契約済みだという。 ペントハウスは10世帯分あり、うち7世帯が契約済。1世帯分がフロア全体(8400ft2、約781.2m2)を占めるため、どのペントハウスからも 360度の絶景が楽しめる。 ちなみにペントハウスのお値段は最高95億ドル(約110億2000万 円)と、気が遠くなるようなお値段! まだ入居可能なものは、82.5億ドル(約95億7000万円)と76.5億ドル(約88億7400万円)の部屋だ(ちなみに月々の共益費だけでも、毎月1万6000ドル、約180万円弱)。 ニューヨークの不動産事情は最近どうなのか、国際不動産連 盟FIABCIの次期会長で、老舗不動産会社「Brown Harris Stevens」社のダニエル・グロセンバッチャーさんに話を聞 いてみた。 ダニエルさんによると、「不動産需要に対して供 給が追いついていない状態で、それがさらに不動産市場を活 気付けている」とか。また「2016年にはこのビルを越え る高さの高層ビルが、そこから目と鼻の先(57丁目とブロードウェイの角)に建設される予定」と言う。ほかに、57丁目 の5番街と6番街の間にも同様の高層ビルが建設予定だ。 これらの現象は、「57丁目の『Race to the Sky』(空に向かった競争)」と呼ばれている。今後、摩天楼の景色が変わっていくのはもちろんのこと、ミリオネアやビリオネアという 『超』富裕層がこの周辺に移り住むため、周辺の店なども劇的に変わっていくだろうと予想される。 日本人がアメリカで不動産を持つことについて、当地で「滝 田不動産」を経営する滝田佳功(よしのり)さんに話を聞くと、「絶対にアメリカで持つべき」と力説。「日本の不動産 は購入した瞬間から目減りしていき、投資家の間では20年も 経つと価値がゼロになるとも言われている。それに対し、目 減りをしないのがアメリカの不動産」と言う。 「20年後には 2倍、3倍にまで膨れ上がるため、投資家は明らかにアメリカへと目が向いている。また両国の税法などを利用し、相続や 税金対策として考えることもできる」。この国で不動産を持 つ利点をこのように語っているように、もし不動産購入を考 えているのなら、アメリカで購入するべきだというのが専門家の見方だ。 さて、気になる「432 Park Avenue」のウェブサイトを見てみると、そこの住民になった気分でパノラマ風 景を確認でき、購入なんて夢のまた夢だとしても充分楽しい。しばしのミリオネア気分に浸るのも良いだろう。 街や風景を変える起爆剤となる同ビルだが、これらの変化を受け付けない住民も中にはいるようだ。周辺住民からは「こんな高過ぎるビルをセントラルパークの近くに建設して、公園内に影を作られるのは困る」という不安や苦情も出ている。 いい意味でも悪い意味でも、このビルがしばらく話題の中心となるのは確かだろう。 (*すべてのデータは、2014年10月現在) > 432 Park Avenue Luxury Apartments…