NYで開催「アフリカ風ハイブリッド着物」展 キモノ好きニューヨーカーが堪能

茶道に琴、アニメにゲームなど、伝統的なものからポップカルチャーまでさまざまな日本の文化が、海を越えここ米ニューヨークで人々に親しまれている。日本古来の着物もそうだ。このほど、一風変わった着物の展示イベントが催された。披露された着物は、カラフルなアフリカンパターン(柄)が特徴で、まさに着物の進化系とも呼べるもの。キモノ好きのニューヨーカーが集まり、国境を越えた奥深いキモノの世界を堪能した。(ニューヨーク在住ジャーナリスト、共同通信特約=安部かすみ) ▽会場はNYの茶室  ニューヨークのダウンタウン、フラットアイアン地区で2021年12月3日から6日までの4日間、着物の展示イベント「きものビジョナリーズ(Kimono Visionaries)」が開かれた。会場となったのは、ベンチャー・キャピタリストのスティーブン・グローバスさんが所有する「グローバス和室(Globus Washitsu)」だ。ここはグローバスさんの居住アパートで、元々は一般の建物だが、日本好きが高じて2012年、庭園付きの茶室に大改築した。 期間中、展示された25点の着物や帯はすべて一点物で、南アフリカ出身で現在英国で活動するデザイナー、ティア・オグリさんによって作られた。テキスタイルデザインは、アフリカのエンデベラ(Ndebele)族などに影響を受けたもので、非常に色彩豊かだ。生地にはアフリカを代表するアンカラコットンが使われ、英国およびヨーロッパ諸国でキモノとして仕立てられた。  グローバスさんは、初めてオグリさんの着物を目にしたときをこのように振り返る。「ヴィヴィッドなテキスタイルに即くぎ付けになり、すぐにコンタクトをしました」。デザイナーが日本人かどうかも分からず調べたところ、英国オックスフォードに住んでいることがわかった。英国にはグローバスさんの娘夫妻が住んでいるため家族訪問にかこつけて訪れ、オグリさんに会って直接思いを伝えた。そして「素晴らしいこのミックスカルチャーをニューヨークの茶室で紹介しよう」と、2人は意気投合した。 オグリさんは「以前行われた同様の展示イベントが素晴らしかったので、参加の依頼を受けた時は光栄な気持ちでいっぱいになった」と当時の思いを振り返った。  展示品のキュレーションは、数年前のファッションイベントでグローバスさんが出会ったドイツの着物スタイリストで着付師、衣装の歴史研究家のスプリーキンギョ(SpreeKingyo)さんに依頼した。スプリーキンギョさんのセンスにより、展示された着物はハイヒールやブーツから博多織の帯などまで、さまざまなアクセサリーと共に、先鋭的にコーディネートされた。 ▽着物好きの在英デザイナー  オグリさんは、もともとアニメ『イタズラなKiss』やNHK大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』などを見て日本文化に魅了され、徐々に着物のミートアップにも参加するようになっていった。今ではちょっとしたお出かけの際や結婚式などで着物をまとう生活を送っている。  おそらく多くの日本人以上に着物が身近なものとして存在するオグリさん。本国日本で進む着物離れについて、「西洋化が世界中の文化と伝統を破壊している」と危惧する。また、ファストファッション人気に押されつつある現代のアパレル、ファッション界と比較しつつ、「1枚で複数のスタイリングが可能になる着物は、よりサステイナブルな衣類」だとも表現。「ただし、『着物警察』の存在や文化の盗用だと叫ぶ輩も存在する。それらの声に悩まされないためにも、何より自信を持って着る必要があると感じている」と独自の見解を語った。 ▽ニューヨーカーを魅了  期間中は、多くのニューヨーカーが着物姿で来場した。中には、着物を洋服のようにまとっておしゃれを楽しんでいる人もいた。  子どもの頃に見た黒澤明監督の映画をきっかけに空手や禅などに目覚めていったエイジャ・ウォルフさんもこの日は、アレンジした浴衣に帽子とタートルネック、革の帯とベルトを合わせたコーディネートでイベントを楽しんだ。着物や浴衣を30着所有し、普段から着物でイベントに行くことが多いという。「私にとって着物は伝統的な『衣装』としてだけではなく、着る『服』という存在です。ですからこの展示も着物自体が(着る服として)生き生きと見えました」と語った。 同イベントの展示品は当地のKaede Kimonosで販売中。一点物のため、売り切れ次第販売は終了となる。 Text and photos by Kasumi Abe (Kyodo 47 Newsより一部転載)無断転載禁止

海を越え愛され続けるNYの「リトル日本」。思わず息を呑む「ホリデー仕様の絶景」に地元民の反応は

ニューヨークのブルックリン区にあるブルックリン植物園(Brooklyn Botanic Garden)。52エーカー(約21万平方メートル)の広大な敷地には、在住者なら誰もが知る「日本庭園」(Japanese Hill-and-Pond Garden)が併設されている。 この植物園が桜の名所でもあることから毎年春になると「桜祭り」(Sakura Maturi)が開かれ、日本のポップカルチャーファンが着物やコスプレ姿で集まる。ここはいわばニューヨークの「リトル日本」であり、在住日本人にとって心のオアシスのような存在だ。 当地の長く厳しい冬季は、植物が枯れてしまい、日本庭園も注目を集めることはそれほどない。しかし今年は、同植物園で光と音楽の装飾イベント「Lightscape at Brooklyn Botanic Garden」がホリデーシーズンの11月19日から来年1月9日まで開催されている。 日暮れと共に園内の明かりが灯りはじめ、周辺の植物やオブジェが煌びやかにライトアップされ、いつもとは違った顔を見せている。春と秋には桜や紅葉で彩られる日本庭園も、期間中はホリデー仕様だ。 106歳、NYの日本庭園 Japanese Hill-and-Pond Gardenは、アメリカに現存する中でも歴史が長くもっとも人々が足を運ぶ日本庭園の1つとされている。1907年に渡米した造園家の塩田武雄氏が手がけ、1915年に開園した。同植物園によると、当時日本式の庭園が流行し、美術館やホテル、裕福な人々の住宅の庭などに、その美的センスが取り入れられたという。 これまで火事が発生したり、第二次世界大戦下で一時閉鎖されたりするなど苦難の時期もあったが、戦後は日系アメリカ人の庭師、フランク・オカムラ氏が庭園の修復や手入れをし、1世紀以上経った今も地元の人々に愛され続けている。 この日本庭園もホリデーライティング用にお色直しをされているわけだが、神社、鳥居、橋、石灯篭などに装飾が施されている訳ではない。これは植物園サイドからの日本文化に対する最大の敬意であろう。煌びやかにライトアップされているのは周囲の樹木や歩道、池などで、それらのイルミネーションが朱色の鳥居をダイナミックに魅せている。特に夕暮れ時は、夕日のバックグラウンドと相俟って思わず息を呑むほど美しい。来園者の多くがまずここで歩を止め、幻想的な景色に見入っていた。 イルミネーションを見るために訪れた近所に住む女性は、「毎年春の時期に日本の祭りを楽しみに来園するけど、今の時期にこのような神秘的な日本庭園を見たのは初めて」と、うっとりしながらケータイで写真を撮っていた。日本を訪れたことがあるという男性は「ニューヨークにいながらこんな素晴らしい光景を見られるのは嬉しい」と話した。 このホリデーイルミネーションではほかにも、全長1マイル(約1.6キロメートル)の遊歩道に続く10万個以上の電球による光のオブジェやポエムなどを楽しむことができる。 これら枯れ木に「光の花」を咲かせたデザインは国外から地元までさまざまなアーティストや詩人らがクリエートしたもので、イギリスに拠点を置くカルチャークリエイティブ社(Culture Creative)が1つのライトスケープ作品として仕上げた。 植物園の担当者によると、「ライトショーとしてはニューヨーク市内で最大のもの」で、同植物園が行うのも初めての試みだとか。まだコロナ禍の最中だが、巣篭もりしがちなこの季節に「人々に外に出るきっかけとなるような、そしてこれまで当園に足を運ぶことのなかった人々への訴求にもなるような『ワォ』と思わず声を上げる真冬の目玉アトラクションとして計画に3年の年月を費やし、満を辞して今年やっとお披露目が叶いました」。 当地にはほかにも、世界一有名と言われるロックフェラーセンターのクリスマスツリーが今月1日から点灯され、多くの観光客が足を運んでいる。アメリカ最大のイベント、クリスマスを今週に控え、ニューヨークはホリデームードが一層高まっている。 * 筆者が撮影した光と音楽の装飾イベント「Lightscape at Brooklyn Botanic Garden」の動画 Text and photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

SATC続編が米で配信!中年のみならず若年層の共感も呼ぶと思う理由(アンド・ジャスト・ライク・ザット)

ニューヨークを舞台に4人の女性とさまざまな恋愛模様を描き、90年代後半から2000年代前半にかけて一世を風靡したドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』(Sex and the City、以下SATC)。その続編である『アンド・ジャスト・ライク・ザット(And Just Like That…)』(HBO MAX)が9日、アメリカで配信開始した。 当地在住の筆者も心待ちにしていたこの続編。観た感想は、初回から笑いあり驚きの展開ありで、非常に面白かった。本稿では極力ネタバレにならない程度に紹介していきたい。 (注:まっさらな状態でドラマを観たい人は、ここから下の内容を読まないことをお勧めする) まず、SATCの初回オンエアから約20年以上が経ち、主役(ロンドンに移住したサマンサ以外)の女性3人は年齢を重ね、皆50代半ばになっていた。当然、シワや白髪が自然に出てくるお年頃だ。しかしそれらが気にならないほど、彼女たちは相変わらず人生をそれぞれ謳歌し、輝いている。 SATCを今観ると、ケータイの形やタバコを吸う姿に時代を感じるように、2021年版の今作にも当然、現代的な要素が鏤められている。 まずパンデミックで人々がハグをしなくなったことや、エレベーターのボタンを押すために手袋を着用したりしていることなど、きちんとコロナ禍による「ニューノーマル」が描写されている。 ビッグが「新しい本のネタ?」と質問することから、主役のキャリーは相変わらず書く仕事を続けているようだ。スマホには「VOTED」(投票してきた)のシールが貼られ、コンピュータはMac。さらに、インスタグラムで発信をしたりポッドキャストに出演したりするなど、Z世代やミレニアル世代に負けず劣らずの精力的な活動が見られる。 ほかにジェンダー問題、セクシャルオリエンテーション(性的嗜好)などのLGBTQ関連はよりほかに人種やジェンダー問題、LGBTQ関連はより多様に描かれており、トイレはもちろんオールジェンダートイレ(みんなのトイレ)がデフォルトだ。当地では(特に黒人の)髪型についての言及は御法度など、近年人々に意識が広がりつつある要素も含まれる。 そして何より、ドラマ全体を通して、ミドルエイジ(中年)がずば抜けておしゃれに描かれている。 主人公のキャリーがこの年でマノロブラニクのハイヒールをエレガントに履きこなすなど、ファッションセンス然り、自宅のインテリアセンス然りだ。きっと若年層が見ても、ファッションやインテリア、ひいては主役の女性らの生き方について、「年齢を重ねても彼女たちのように人生を楽しみたい」「生き方のお手本にしたい」という気持ちになること請け合いだ。 また、エピソード2までに「Life is too short」という言葉が2、3度出てくる。「人生は短い、よって今を楽しもう」という意味で、アメリカ人がよく使う言葉だ。続編がスタートしたばかりの現段階で、全体の構成やテーマを語るのは時期尚早だが、ミドルエイジの人々なら誰もが思い悩むこと、孤独感や今後の人生について、また自分の存在意義について、人々に問いかける作品なのかもしれない。 ちなみに、続編の冒頭で出てくるレストランは、ホイットニー美術館の1階にあるホイットニーカフェだ。 以前は映画「素晴らしきかな、人生」でも使われた、ロケ地の常連のアンタイトルドゥという店名で、ハンバーガーが美味しく、筆者のお気に入りでもあった。そんな実在する素敵なスポットが所々に登場するのも、ニューヨーク好きにはたまらない。 日本でもこの冬、U-NEXTにて独占配信される予定ということだ。 関連記事 サラ・ジェシカ・パーカーにも矛先、ミソジニストの視線。(フィガロ) Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

日本ブームは続く!コロナ禍「アニメNYC」にファン大集結。「鬼滅の刃」英語声優登壇、三浦建太郎追悼も

アニメや漫画に代表される日本のポップカルチャーの大祭典、アニメNYC(ANIME NYC)が19〜21日の3日間、ニューヨークのジャヴィッツ・センターで開催され、全米中のアニメや漫画ファンがコスプレ姿で集結した。 今年はコロナ禍での開催ということで、入場するにはワクチン接種証明書とマスク着用が義務付けられたが、例年以上の来場者が訪れ、特に初日の開始時間には入場するのに数時間待ちの列ができた。 当地での「鬼滅の刃(Demon Slayer)」は相変わらずの人気だ。劇場版の声優3人を迎えた20日のトークイベントには、会場に入りきれないほどファンが押し寄せた。 このイベントを楽しみに、そして自らも竈門炭治郎のコスプレ姿で訪れた、ジェンド・カステリオさんは、子どもの頃「NARUTO -ナルト-」を見て育った。「会場の中は、自分の格好がノーマルに見えるほど、多くの人が同じコスチュームを着ていてびっくりしました」と嬉しそうに語った。 「昨年はイベントが中止となりとても残念だったが、今年はその分楽しみます」と言うのは、「ブルーアーカイブ(Blue Archive)」のシロコのコスプレ姿のリチャードさん。2年ぶりに有観客で行われたこのイベントを、誰よりも心待ちにしてきた。 来場者に「一番好きなアニメや漫画作品」を聞くと、即答で「ベルセルク(Berserk)」「NARUTO -ナルト-」「モブサイコ100(Mob Psycho100)」という答えが多く返ってきた。 会場内にはベルセルクの作家で、今年5月に54歳の若さで亡くなった三浦建太郎氏の追悼コーナーも設けられ、多くのファンが悲しみのメッセージを寄せた。 ほかにも来場者に話を聞くと、好きなアニメや漫画として、「鬼滅の刃(Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba)」「天空の城ラピュタ(Laputa Castle in the Sky)」「ノラガミ(Noragami)」「魔入りました!入間くん(Welcome to Demon School! Iruma-kun)」「シリアルエクスペリメンツレイン(Serial Experiments Lain)」「ハンター×ハンター(Hunter x Hunter)」「ビースターズ(BEASTARS)」など、さまざまな作品の名も上がった。 期間中、アニメ監督の荒牧伸志氏のパネルディスカッションとサイン抽選会、漫画家やイラストレーターのブース、ビデオゲームから百人一首までさまざまなゲームができるブース、カレーや弁当などの日本食販売コーナーも好評だった。 (動画もアップしました) Text and photo by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

アンディ・ウォーホルのあまり知られていない話。レベレーション=隠してきたものとは?Andy Warhol: Revelation

アンディ・ウォーホルと言えば、マリリン・モンローやキャンベルのスープ缶のシルククリーン画を、きっと誰もが思い浮かべるだろう。 だが、この企画展にはそれらの代表作はない。 あるのは、宗教画のマリア様、十字架、最後の晩餐(The Last Supper)、スケルトン、母ジュリアの肖像画など。ポップアートの巨匠としてはあまりこれまで目にしなかったものだ。 この企画展を訪れるまで知らなかったけど、彼の両親は敬虔なビザンチンカトリック教徒(byzantine catholic)で、今でいうスロバキアから20世紀初頭にアメリカに渡ってきた労働者階級の移民一家だった(アンディはペンシルベニア生まれ)。経済的に決して豊かではなく、また移民として言葉もわからないから肩身の狭い生活だったが、家族(特に母親)は彼の才能に着眼し、アート活動を支援した。 アンディは、ニューヨークでアーティスト活動を本格化させるにあたり、本名(アンドリュー・ウォーホラ、Andrew Warhola)を短くして名乗り、移民の労働者階級出身であることを隠した。 生涯にわたって自身も教会に通ったが、実は彼はゲイだった。 ニューヨークでは、カトリック教とは相反する、今でいうLGBTQの交友(セックス、ドラッグ、ロックンロールの)関係も広がっていった。 これもちろん現代の話ではなく、1928年生まれで、50年代以降にアメリカで花開いた芸術家の話。(アンディがもしまだ生きていたら93歳) 当時のニューヨークといえど、ジェンダーアイデンティティ(Gender identity)とかLGBTQとかの言葉がない時代ですから、芸術家として、一人の人間としてこの国で生きていく中で、時に本当の自分を隠し、偽り、愛する母親を傷つけたくないがための葛藤や苦悩があったことだろう。私の想像を絶するものだが、それをバネに彼は時代を超越し、死後も愛される偉大なアーティストに大成した。 どんな天才だって、どんなセレブだって、人に言えないことあるよね、ウンウン。そのほうが人間らしくていいわ。 企画展は11/19からいよいよスタート。来年6/19まで開催。 #WarholRevelation Andy Warhol: Revelation(アンディ・ウォーホル:レベレーション展) 11/19, 2021~6/19, 2022 Brooklyn Museum200 Eastern Pkwy, Brooklyn, NY 11238 Text and photos by Kasumi Abe 安部かすみ 無断転載禁止

北米の先住民族 … 意外と知られていないNYとの繋がり。ネイティブアメリカンの足跡を辿る

先住民族を傷つける心ない言動や差別は、21世紀となった今も世界各地で起こっている。 日本では少し前、テレビの情報番組でお笑い芸人が先住民族のアイヌを茶化す表現をし、大問題になった。問題の表現は、先住民族の名前を動物に例えるというもので、以前からたびたびアイヌ民族に向けられてきた差別的なものだった。テレビ局は再発防止に向け、問題が起こった背景を検証しアイヌ民族や視聴者に対して謝罪した。 アメリカでも先ごろ、カリフォルニア州の高校で、教師が授業中にネイティブアメリカンの格好をし、トマホーク(斧)を振りかざすポーズをした動画が拡散され炎上した。問題の動画は、ネイティブアメリカンの生徒が撮影したものだった。生徒にとって教師の言動はネイティブアメリカンの文化に対しての攻撃的な描写として映ったという。教師はその後、休職処分となっている。 これらはほんの一例だが、いずれのケースも先住民族への配慮が足りず、知識や理解の欠如から起きたことだろう。 ネイティブアメリカン文化遺産月間を間近に控えた25日、先住民族の理解を深めるため、ニューヨークにあるスミソニアン協会の一つ、国立アメリカ・インディアン博物館(National Museum of the American Indian)では、企画展「ネイティブニューヨーク」が新設された。マンハッタンからナイアガラの滝まで12箇所において、テリトリーとして何らかのゆかりがあった秘話や、知られざる暮らしぶりなど、先住民族の歴史の足跡が展示されている。 例えば、今では高層ビルが立ち並ぶマンハッタン島も昔は緑が生い茂り、ネイティブアメリカンの人々の暮らしがあった。 17世紀になり、オランダの入植者が土地の所有や譲渡についての知識がなかった先住民族と、60ギルダー(24ドル相当)の価値の物品(ビーズや衣類など)で取引したのがマンハッタンだ(入植者側の解釈は「購入した」、先住民族側は今後もさらなるギフトがあると勘違いし、誤解が発生)。 オランダの植民地となってから、ここは新たなアムステルダム=ニューアムステルダムと呼ばれ、その後イギリス人の手に渡ることになり、新ヨーク=ニューヨークに改名された。 現在全米で、連邦政府が認めたネイティブアメリカンの部族の数は574とされている。そして多くの部族は、もともとの土地(ネイティブニューヨーク)から他の土地に強制的に追いやられた。 同博物館の学芸員で歴史家のガブリエル・タヤック(Gabrielle Tayac)氏によると、ニューヨーク州に現存するネイティブアメリカンは約10部族で、ニュージャージーエリアも含めるとそれ以上になると言う。 タヤック氏はこれまで、現存するすべての居留地を訪れ、ネイティブアメリカンの理解を深め、人々に啓蒙し、差別などの問題に積極的に取り組んできた。「正しい知識や理解をすることが、問題の解決に繋がる」と語る。 同博物館のアソシエイトディレクター、デビッド・ペニー(David Penney)氏も、「ネイティブアメリカンの歴史と文化は依然として不正確な情報とステレオタイプなイメージの影響を受け続けている」と言う。それでこの特別展では、単なる歴史紹介だけでなく、先住民族の歴史が現代生活や人々とどのようにリンクし影響をもたらしているか、身近なテーマと共に示すことにした。 展示を見て周ると、例えば現在のブロンクスやマンハッタン北部周辺でもともと暮らしていたレナペ(デラウェア)族は、オランダやイギリスからの入植者、後にアメリカ政府から次々に土地を収用され、ニュージャージーやペンシルベニア、北はカナダ、西はカンザス、オハイオ、オクラホマなど遠くへと追いやられたことがわかる。 展示品の一つに、西へ西へと追いやられ1850年代にはカンザスに居留していた時のショルダーポーチがある。自然を模した柄でカラフルな色合いが特徴だ。当時、その周辺で大陸横断鉄道の建設が予定されると、居留地を売り渡すように再び強要され、今度はオクラホマに移動を強いられた。ポーチに埋め込まれたビーズの葉っぱのデザインは、タヤックさんによると「もともとそれらの土地では見られないような植物の柄なんですよ」と言う。もちろんカメラも辞書もない時代のこと。 代々にわたって自分たちの意志に反して幾度となく移動を迫られ、未開の居留地に押し込まれる中、これまで自分たちのいたネイティブの土地や自然の記憶をいつまでも失わないようにと、子や孫の世代に語り継いでいったのだ。この柄1つにも、そんな琴線に触れるエピソードが秘められているのだった。 また、先住民族の人々は現代、強制移住を強いられた先の土地で、差別とはまた別の問題にも晒されている。 28日付のニューヨークタイムズによると、テリトリーの98.9%を奪われたネイティブアメリカンは移住した先々(例えばアリゾナ州など)で、気候変動の脅威に晒されているという。(近年、異常気象による熱波、干ばつ、大規模な山火事などは、アメリカで深刻化) イェール大学の博士課程に在籍するポール・バーン・ブロウ氏は記事の中で、解決するための最善の方法として、「奪った土地を返還すること」と述べている。 いつの時代も、被害を受けやすいのは、社会的に脆弱な立場に置かれている人々だ。今すぐに大きな援助ができなくても、正しい歴史を一人一人が学んでいくことで、いずれ大きな前進に繋がっていくことになるかもしれない。 企画展「ネイティブニューヨーク」は、この先10年単位で続いていく。いつかニューヨークを訪れることがあれば、この展示に足を運んでニューヨークとネイティブアメリカンの繋がりについても考えてみてはどうだろうか。 「展示では、コミックの技法やインタラクティブな方法で、大人から子どもまで楽しく学べるように工夫しました。日本ならアイヌ民族と言うように、それぞれの国の先住民族についても考え、思いを馳せるきっかけになれば嬉しいです」(タヤック氏) 毎年11月はネイティブアメリカン文化遺産月間(National Native American Heritage Month)です。 参考資料 An ‘offensive’ high school teacher caught on video wearing a fake Native American headdress and waving air tomahawks has gone on…

眞子さまNY移住で噂される3つの「就職先候補」ってどんなところ? 現地在住目線でその「魅力」を紹介

眞子さまの結婚後の移住先として注目されるニューヨーク。日本のメディアによれば、早くもいくつかの就職先候補が浮上している。 その就職先候補はどんなところか気になるだろうが、まず始めに、日本人を含む外国人が「アメリカで働くこと」について説明したい。 アメリカで外国人が就労するには、就労ビザやOPT(実践的経験を積むことを目的に与えられる就労許可)、就労許可証、またはグリーンカード(永住権)の中からいずれかが必要だ。また外国人が就労するということは現地の雇用を奪うことにもなりかねないため、その人の専門性や、その人でなければ業務が成り立たないというような雇用主からの証明書などが求められる。 また、一口に就労ビザと言っても職種や役職によってさまざまな種類が存在する。ニューヨークの一部の報道では、ロースクールを卒業した小室圭さんが今後取得するだろうとされているビザは、OPT(もしくは就労許可証)の後にH1-Bと呼ばれるタイプのもので、来春以降にH1-Bを申請するのではないかと言われている。 就労ビザやグリーンカードは通常、移民法専門の弁護士に依頼し申請する(移民法の専門知識があれば自分で行うことも可)。申請と取得には、時間とお金がかかる。筆者も以前ニューヨークの出版社に勤務していた際、H1-Bビザ保持者だったので、外国人がアメリカで就労するための苦労や労力を身を以て実感してきた。しかもH1-Bビザの新規年間発行数は6万5000件と決まっている。その枠内に入らなければアメリカでの就労は認められない。仕事があるにも拘らずこの枠内から洩れたため、泣く泣く帰国して行った人を筆者は何人も見てきた。この国で、自分が希望する職種や会社で合法的に就労することは、決して狭き門とも思わないが、限られた門であることは間違いないだろう。そしてビザ保持者の配偶者にとっても同様だ。 参照 オーサーコメント 一方でアメリカというところは、秀でた才能の持ち主や高額納税者を喜んで迎え入れ、グリーンカードや市民権を寛容的に与える国でもある。それがひいては国力に繋がることを考えれば納得だ。そして眞子さまは小室圭さんと結婚して小室眞子さんになっても、いわゆる一般の人ではない。アメリカ人は王族や皇室のロイヤルの称号を崇める傾向があり、「元プリンセス」「元ロイヤルファミリーの一員」「天皇陛下の親戚」という言葉の響きに弱い。よってそのような肩書きのある人を仕事仲間やコミュニティの一員として迎え入れたい気持ちになるのは、わからなくはない。一般人にとって容易くはない就労ビザやグリーンカード、市民権の取得でも、ロイヤルブランドで難無く可能になってしまうかもしれない。 そんな前知識を踏まえ、(あくまでも噂の段階ではあるが)眞子さまの就職が囁かれているニューヨークの3つの候補地がどんなところか紹介していきたい。 メトロポリタン美術館(MET) 現時点で米メディアにはそれらしき情報は出ていないが、日本の女性週刊誌により「就職先として急浮上」と紹介されたのが、マンハッタンの高級住宅地、アッパーイーストサイドに位置するメトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art)、通称メットだ。 ここは世界三大美術館の1つと呼ばれ、アメリカの美術館としては最高峰だ。世界各地からコレクションされた5000年以上にわたる文化・芸術遺産200万点以上を収蔵、展示している。アート業界に身を置けば、一度は働いてみたい職場かもしれない。 筆者は10年以上前、この美術館のペーパーコンサベーション(紙の修復・保存)部でコンサバター(修復・保存家)として勤務する日本人女性を取材したことがある。現在全部で何人の日本人や日系人が勤務しているかは不明だが、ウェブサイトを見る限り日本画のコンサバターとして日本人男性が勤務していることを確認できる。競争が激しいニューヨークのアート業界ではあるが、同館で眞子さまの「専門性」が求められれば、日本人であっても雇用される可能性は充分にある。 訪問するなら…筆者のおすすめ ゴッホやピカソ、フェルメールなどの中世ヨーロッパの名画、そしてエジプトからそのまま移転させた巨大な古代芸術は特に見応えあり。また館内には(日本から訪れた人にはあまり関心を持たれないが)葛飾北斎など日本の芸術展示室もあり、地元の人々に高く評価されている。 館内は1日では周り切れないほど、とにかく広い。名作ぞろいと言えども1作1作見きれない。訪れる際は事前にどんなジャンルの美術を中心に鑑賞したいのか的を絞って臨むといい。 屋上にはルーフトップカフェ&バーもある。アートの鑑賞後、そこでの休憩は最高に気持ちが良いはず。 アメリカ自然史博物館 マンハッタンの高級住宅地、アッパーウェストサイドに位置するアメリカ自然史博物館(American Museum of Natural History)も話題の1つになっている。こちらも現時点で米メディアにはそれらしき情報は出ていないが、別の日本の女性週刊誌で「眞子さまが数年前にお忍びで視察したことがある」として、就職先の候補の1つではないかと紹介された。 場所は真ん中のセントラルパークを軸に、前述のメットからはちょうど真反対側の西側に位置。館内では動植物、鉱物など自然科学・博物学にかかわる標本や資料を所蔵・展示している。創立は1869年と、こちらも長い歴史を持つ。 以前は大人向けにお泊まり会を開催したり、パンデミック以降は同館の一部を予約不要の新型コロナワクチン接種会場とするなど、斬新なアイデアも地元で評価を得ている。 過去記事 アメリカ自然史博物館で行われたイベント アポロ11号月面着陸から50年 記念展で「次に月に行く人は?」との問いに・・・ 訪問するなら…筆者のおすすめ 恐竜の標本や化石、プラネタリウム、動物や海洋生物のコーナーなどが見応えがあり、大人から子どもまで楽しめる。 海洋生物コーナーに展示されている、長さ29m近くの等身大の巨大クジラの模型は圧巻。1925年に南米の最南端沖で死骸として発見された雌のシロナガスクジラをモデルにしたもので、これまで存在した動物の中で最大のものとして知られる。クジラの模型の下は昼間でも薄暗くて静かなので、地元では密かに昼寝や休憩の名所として親しまれている。 ギャラリー 米ウェブニュースのPageSixは9月、眞子さまについて「留学先の英国レスター大大学院の博物館学で修士号を取得し、東大博物館で働いてきた実績やコネクションを買われ、ニューヨークのトップギャラリーは(眞子さまを)雇用しようと動いている」とする、アート業界の関係者の声を紹介した。 同サイトによると、イギリス王室のユージェニー王女もニューヨークのギャラリー関係の仕事に就いたことがあるという。同王女は2013年ニューヨークに移り、オンラインオークションハウスのPaddle8で働き、15年にロンドンに戻って、アートギャラリーHauser & Wirthに勤務したそうだ。 タイムアウトニューヨークによると、この街にはブロードウェイ劇場が40箇所、書店が100店あるのに比べ、ギャラリーの数はなんと1500にも上るという。働き口はいくらでもあるということだ。 その多くは以前は、ソーホー地区やローワーイーストサイド地区、ブルックリンのダンボ地区に、現在はチェルシー地区に集まっているが、近年はブルックリンのほかの地区やマンハッタンのハーレム地区、クイーンズなどニューヨーク中に広がっている。 毎日どこかでオープニングイベントが行われ、シャンパン片手にアート好きが集まって談笑をしている。 ニューヨークにはこのほかにも素晴らしい美術館や博物館、個性的なギャラリーが点在しており、アート好きにはたまらなく魅力的な街だ。眞子さまが移住されたら、公私共にきっと気に入られるに違いない。 ギャラリー関連 過去記事 ハーレムのギャラリーで行われたイベント NYのアート発信地をチェルシー→ハーレムに企てる男 ある茶会での出会いと学び(武漢アートも) Text and photo by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

螺旋を歩きながら生涯を辿る ワシリー・カンディンスキー展@NYグッゲンハイム美術館

Vasily Kandinsky: Around the Circle 新型コロナのパンデミックで元気のなかったアートシーンもやっと活気が出てきた。最近は新たな展覧会の開催に向けプレスプレビューの招待も増えている。 ニューヨークのグッゲンハイム美術館では、明日10月8日から来年の9月まで、円や直線などのモチーフや構成のユニークさで知られる抽象画家、ワシリー・カンディンスキー展が開催される。 1866年モスクワで生まれ、ドイツやイタリアなどヨーロッパを転々とし、1944年にフランスで生涯を閉じたカンディンスキー。1922年にはバウハウス(ヴァイマール)で美術を教え始めたものの、ナチスにより閉校に追い込まれ(33年)、57の作品をdegenerate art(退廃芸術)の追放として没収(37年)されたり波乱に満ちたアート人生だった。 彼の作品は時代の移り変わりと共に変わっていく。時代やその土地のコミュニティとの結びつきに強く影響されたものだそう。 展示会自体は、言わずもがな、フランク・ロイド・ライトが設計したグッゲンハイム美術館の螺旋状の展示ルームにおいて、螺旋状の上に向かって時系列が逆戻りする構成だ。3階の晩年の作品(1930〜40年代)からスタートし、4階の1920年代、5階のミュンヘン(ドイツ)周辺に住んでいた初期の作品に続く。 2階では今年96歳で現役のエテル・アドナンの作品も展示。アドナンは、生涯にわたってカンディンスキーの画風を勉強してきたそうだ。 広報スタッフによると、2階のアドナン展からスタートし、3→5階のカンディンスキー展を楽しめるとのことだが、特に決まりごとはなく、本来の「グッゲンハイムの歩き方」つまり、エレベーターで5階まで登り、螺旋を歩いて降りながら展示を見るパターンでももちろん楽しめるとのこと。お好きな方法でどうぞ。 Vasily Kandinsky: Around the Circle ï¼ˆãƒ¯ã‚·ãƒªãƒ¼ãƒ»ã‚«ãƒ³ãƒ‡ã‚£ãƒ³ã‚¹ã‚­ãƒ¼å±•ï¼‰ 10.08.2021–09.05.2022 Etel Adnan: Light’s New Measure(エテル・アドナン展) 10.08.2021–01.10.2022 Solomon R. Guggenheim Museum1071 5th Ave., New York, NY 10128 Text and photos by Kasumi Abe 安部かすみ(ノアドットより一部転載)無断転載禁止