入り口に金箔の新彫刻がお目見え ── NYのメトロポリタン美術館

ニューヨークのメトロポリタン美術館(The MET)の外観に、このほど新しい彫刻が設置されました。 設置場所は、正面玄関入り口横です。隣には、現在開催中の着物展「Kimono Style」の大きな垂れ幕も。 外観、しかも正面玄関と言えば、美術館の「顔」とも呼べる場所。そんな場所に新たな彫刻作品を設置するThe Facade Commissionシリーズの第三弾。 勝利やパワーの象徴であるトロフィー型の金箔の作品で、英国の彫刻家で南米ガイアナにもルーツを持つ、ヒュー・ロック(Hew Locke)氏によるもの。 設置は今日から2023年の5月23日まで。 Info メトロポリタン美術館 1000 Fifth Avenue, New York, NY 10028, U.S.A. The Facade Commission: Hew Locke, Gilt 筆者によるメトロポリタンミュージアム関連記事 Text and photos by Kasumi Abe (ブログ記事より一部転載)無断転載禁止

日本の人気3ブランド、ブルックリンへ ── 「50 Norman」9/16オープン

日本の人気3店が集まった「50 Norman」(50ノーマン)が、ニューヨークのブルックリン(グリーンポイント)に9月16日オープンします。 3店はこちら CIBONE (シボネ) ハイセンスなライフスタイル雑貨 職人が1つ1つ手作りした、ハイセンスなうつわや生活雑貨など。日本のモノづくりの質の高さが感じられる品ぞろえ。(アーティストはローテーションで変わる) DASHI OKUME(出汁尾粂) 無添加のだし 1871年日本橋で創業の水産仲卸店。スープや煮物、味噌汁、パスタなどに使える乾きもの(すべて日本産)は量り売り。トマトと玉ねぎを試食させていただきましたが、噛みごたえあって良いおだしが出そうでした。だしや日本の調味料は、隠し味として高級店のシェフによく使われるようになりました。この裏技、今後一般の消費者にも浸透していきそうです。オーナーさん曰く、今後はテーブル席で定食を出す予定。「そのうち角打ちもしたい」とも仰っていました。 HOUSE(ハウス) ジャパニーズ・フレンチのレストラン 2007年西麻布にオープン以来新スタイルのフランス料理を提供する店。ブルックリン店は8席のカウンターのみで、日本のエッセンスが入ったフレンチのコース料理を160ドルで提供予定ということです。 Info 50 Norman 50 Norman Ave., Brooklyn, NY 11222 U.S.A. (写真をもっと見る) #Greenpoint Text and photos by Kasumi Abe (こちらより一部転載)無断転載禁止

日本初「体験型ゴッホ展」仕掛け人の「こだわり」とは。新作「クリムト展」NYでスタート

世界各地で注目の没入型アート 埼玉で「ゴッホ」展 ゴッホの歴史的な名画を目と耳で鑑賞する、日本初の360度体験型デジタルアート展「ファン・ゴッホ ー僕には世界がこう見えるー」が、今年6月18日から11月27日まで開催中だ。 会場は、埼玉県所沢市の角川武蔵野ミュージアム。 最新テクノロジーを駆使して作られた映像を、会場の壁や床、柱など360度に投影し、音楽と共に披露されるこのインスタレーションは、イマーシブアート(没入型アート)とも呼ばれ、世界各地で注目されている。 展覧会は現在、日本のみならずパリ、アムステルダム、ソウル、ドバイなど世界各地で開催中だ。 筆者も「体験」したことがあるが、作品は目と耳の両方で感じ、映像は会場全体に(自分の足元の床まで)投影され、アート展というより「ショー」というニュアンスの方が近いと感じた。 見る角度によって作品の見え方がまったく異なるため、歩きながら鑑賞するも良し、ただ座って作品に没入するも良し。自分の好みで楽しめる。 NYでは最新「クリムト」展も グスタフ・クリムトの作品をテーマにしたイマーシブアートの最新作「ゴールド・イン・モーション(Gold in Motion)」もこのほど完成した。こちらはニューヨークで現地時間9月14日から、約10ヵ月間の予定で開催される。 会場は1912年に建てられたランドマーク的な高層ビルで、最新のデジタルアートセンターとして生まれ変わったばかりのホール・デ・ルミエール(Hall des Lumieres)。ここは、旧・移民産業貯蓄銀行(Emigrant Industrial Savings Bank)で、分厚い扉の金庫室までも展示室としてそのまま残されている。最先端のイマーシブアートと20世紀初頭の歴史的建造物が見事に融合している。 GUSTAV KLIMT: GOLD IN MOTION | NYC 世界中で開催されているこのイマーシブアート。その仕掛け人は、イタリア人クリエイティブ・ディレクターのジャンフランコ・イアヌッツィ(Gianfranco Iannuzzi)氏。クリムト展でニューヨークに滞在中、話を聞くことができた。 ベニス出身で、仕事で世界中を行き来している以外は、パリをベースに活動するイアヌッツィ氏。イマーシブアートを手がけて8年、アート業界では32年のベテランだ。 そんな最先端のアートシーンを牽引する彼に、作品作りにおいて絶対に譲れないものを聞いた。 まずは場所の選定だ。 プロジェクトの準備に1年かけ、その初期段階で会場選びのため現地に飛び、実際に自分の目で確かめるという。 「これは自分にとって重要な作業です。イマーシブアートはバーチャル体験ではなくフィジカル体験だから、どの街のどのような会場で行うか、自分で確認することはとても大切です」 世界中で展開している作品だが、どれ一つとて同じものはないと言う。 「今日本で開かれているゴッホ展も、昨年ニューヨークで見せた作品とは違います。会場の特性に合わせ、新たな作品として一から作り変えています」 自ら趣き、会場内を歩く。自分の五感で確かめ、瞑想をして心を落ち着かせ、そこから得たインスピレーションを作品に取り込む。 映像と共に流す音楽選びも、自ら行う。 「音楽は体験型アートの大切な要素です。同じヴィジュアルでも、感情を喚起する音楽次第でまったく違う作品として映るからです。自分で音楽も手がけると、イメージや動画、すべての要素を自分の頭の中でつなげる作業ができます」 もう一つ譲れないこと。それは初期段階でインスピレーションを得るために、また実際に作品に使うために、会場や素材写真を自ら撮影するということだ。すべての創作はそこから始まる。クリエイティブ・ディレクターといえば現場の総監督といった立ち位置だが、自らがやることが自分にとって大切なのだと言う。そのような地道な作業をアシスタントに任せない理由は、 「自分が欲しいものは自分が一番知っているし、誰かに説明してやってもらうより自分がやった方が早いのです」 自分でやるという姿勢を貫いているのは、ほかにも訳がある。「どういう作品にしていくのか?ストーリー仕立ては?それらを考える時、誰かに頼んでいたらアイデアなど出てきません。想像力が掻き立てらるのは、いつも自分で動いてみた『後』なのです」 一言一句に地位や経験値に甘んじることのないプロ意識と「職人」としてこだわりが垣間見えた。 撮影で使い分けているカメラは、キヤノン、ニコン、パナソニック。日本が好きで、今年5月も仕事で訪れたばかりだ。「今ゴッホ展が行われている角川武蔵野ミュージアムは、とてもモダンで特別な場所です。10万人もの来場者がすでにあったと聞いてとても嬉しい気持ちです。日本での次回作はおそらく来年、東京やその近郊で行う予定です。ゴッホ展、そして次回作もどうぞお楽しみください」。 補足 Interview, text and photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

海を越え愛され続けるNYの「リトル日本」。思わず息を呑む「ホリデー仕様の絶景」に地元民の反応は

ニューヨークのブルックリン区にあるブルックリン植物園(Brooklyn Botanic Garden)。52エーカー(約21万平方メートル)の広大な敷地には、在住者なら誰もが知る「日本庭園」(Japanese Hill-and-Pond Garden)が併設されている。 この植物園が桜の名所でもあることから毎年春になると「桜祭り」(Sakura Maturi)が開かれ、日本のポップカルチャーファンが着物やコスプレ姿で集まる。ここはいわばニューヨークの「リトル日本」であり、在住日本人にとって心のオアシスのような存在だ。 当地の長く厳しい冬季は、植物が枯れてしまい、日本庭園も注目を集めることはそれほどない。しかし今年は、同植物園で光と音楽の装飾イベント「Lightscape at Brooklyn Botanic Garden」がホリデーシーズンの11月19日から来年1月9日まで開催されている。 日暮れと共に園内の明かりが灯りはじめ、周辺の植物やオブジェが煌びやかにライトアップされ、いつもとは違った顔を見せている。春と秋には桜や紅葉で彩られる日本庭園も、期間中はホリデー仕様だ。 106歳、NYの日本庭園 Japanese Hill-and-Pond Gardenは、アメリカに現存する中でも歴史が長くもっとも人々が足を運ぶ日本庭園の1つとされている。1907年に渡米した造園家の塩田武雄氏が手がけ、1915年に開園した。同植物園によると、当時日本式の庭園が流行し、美術館やホテル、裕福な人々の住宅の庭などに、その美的センスが取り入れられたという。 これまで火事が発生したり、第二次世界大戦下で一時閉鎖されたりするなど苦難の時期もあったが、戦後は日系アメリカ人の庭師、フランク・オカムラ氏が庭園の修復や手入れをし、1世紀以上経った今も地元の人々に愛され続けている。 この日本庭園もホリデーライティング用にお色直しをされているわけだが、神社、鳥居、橋、石灯篭などに装飾が施されている訳ではない。これは植物園サイドからの日本文化に対する最大の敬意であろう。煌びやかにライトアップされているのは周囲の樹木や歩道、池などで、それらのイルミネーションが朱色の鳥居をダイナミックに魅せている。特に夕暮れ時は、夕日のバックグラウンドと相俟って思わず息を呑むほど美しい。来園者の多くがまずここで歩を止め、幻想的な景色に見入っていた。 イルミネーションを見るために訪れた近所に住む女性は、「毎年春の時期に日本の祭りを楽しみに来園するけど、今の時期にこのような神秘的な日本庭園を見たのは初めて」と、うっとりしながらケータイで写真を撮っていた。日本を訪れたことがあるという男性は「ニューヨークにいながらこんな素晴らしい光景を見られるのは嬉しい」と話した。 このホリデーイルミネーションではほかにも、全長1マイル(約1.6キロメートル)の遊歩道に続く10万個以上の電球による光のオブジェやポエムなどを楽しむことができる。 これら枯れ木に「光の花」を咲かせたデザインは国外から地元までさまざまなアーティストや詩人らがクリエートしたもので、イギリスに拠点を置くカルチャークリエイティブ社(Culture Creative)が1つのライトスケープ作品として仕上げた。 植物園の担当者によると、「ライトショーとしてはニューヨーク市内で最大のもの」で、同植物園が行うのも初めての試みだとか。まだコロナ禍の最中だが、巣篭もりしがちなこの季節に「人々に外に出るきっかけとなるような、そしてこれまで当園に足を運ぶことのなかった人々への訴求にもなるような『ワォ』と思わず声を上げる真冬の目玉アトラクションとして計画に3年の年月を費やし、満を辞して今年やっとお披露目が叶いました」。 当地にはほかにも、世界一有名と言われるロックフェラーセンターのクリスマスツリーが今月1日から点灯され、多くの観光客が足を運んでいる。アメリカ最大のイベント、クリスマスを今週に控え、ニューヨークはホリデームードが一層高まっている。 * 筆者が撮影した光と音楽の装飾イベント「Lightscape at Brooklyn Botanic Garden」の動画 Text and photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

アンディ・ウォーホルのあまり知られていない話。レベレーション=隠してきたものとは?Andy Warhol: Revelation

アンディ・ウォーホルと言えば、マリリン・モンローやキャンベルのスープ缶のシルククリーン画を、きっと誰もが思い浮かべるだろう。 だが、この企画展にはそれらの代表作はない。 あるのは、宗教画のマリア様、十字架、最後の晩餐(The Last Supper)、スケルトン、母ジュリアの肖像画など。ポップアートの巨匠としてはあまりこれまで目にしなかったものだ。 この企画展を訪れるまで知らなかったけど、彼の両親は敬虔なビザンチンカトリック教徒(byzantine catholic)で、今でいうスロバキアから20世紀初頭にアメリカに渡ってきた労働者階級の移民一家だった(アンディはペンシルベニア生まれ)。経済的に決して豊かではなく、また移民として言葉もわからないから肩身の狭い生活だったが、家族(特に母親)は彼の才能に着眼し、アート活動を支援した。 アンディは、ニューヨークでアーティスト活動を本格化させるにあたり、本名(アンドリュー・ウォーホラ、Andrew Warhola)を短くして名乗り、移民の労働者階級出身であることを隠した。 生涯にわたって自身も教会に通ったが、実は彼はゲイだった。 ニューヨークでは、カトリック教とは相反する、今でいうLGBTQの交友(セックス、ドラッグ、ロックンロールの)関係も広がっていった。 これもちろん現代の話ではなく、1928年生まれで、50年代以降にアメリカで花開いた芸術家の話。(アンディがもしまだ生きていたら93歳) 当時のニューヨークといえど、ジェンダーアイデンティティ(Gender identity)とかLGBTQとかの言葉がない時代ですから、芸術家として、一人の人間としてこの国で生きていく中で、時に本当の自分を隠し、偽り、愛する母親を傷つけたくないがための葛藤や苦悩があったことだろう。私の想像を絶するものだが、それをバネに彼は時代を超越し、死後も愛される偉大なアーティストに大成した。 どんな天才だって、どんなセレブだって、人に言えないことあるよね、ウンウン。そのほうが人間らしくていいわ。 企画展は11/19からいよいよスタート。来年6/19まで開催。 #WarholRevelation Andy Warhol: Revelation(アンディ・ウォーホル:レベレーション展) 11/19, 2021~6/19, 2022 Brooklyn Museum200 Eastern Pkwy, Brooklyn, NY 11238 Text and photos by Kasumi Abe 安部かすみ 無断転載禁止

056 Black Lives Matter 巨大路上アート出現

白人警官に殺されたジョージ・フロイドさんの死をきっかけに、全米に広がった、BLMことBlack Lives Matter(黒人の命は大切)ムーブメント。ごく一部の過激派や犯罪者により、暴動や略奪にも発展しましたが、現在は沈静化し、平和的にデモが続けられています。そんな中で現れたのがこの路上アートです。 DCに続きNYにも 6月5日、ワシントンDCでBLM関連の巨大ミューラル(=ミューロ、市公認の路上アート)が完成し、話題になりました。ニューヨークのデブラシオ市長も「われわれも、力強く叫ばれているBLMパワーを(市民に)感じてほしい。市は全面的にバックアップする」と言い、市内5区全てでのミューラルの完成を約束しました。 DCでの完成の1週間後、ブルックリンに市内初のミューラルが完成しました。場所は、人口の65%を黒人が占めるというベッドフォードスタイヴサント地区。この一角のフルトン通りに完成したのは、ビビッドな黄色で描かれた「Black Lives Matter」の巨大文字。早くも街並みにとけ込んでいます。約1ブロックいっぱいに描かれ、全長約114メートル、幅約8.5メートルもの大きさです。 アーティスト30人参加 プロジェクトを指揮したのは、ビリーホリデー・シアターのエグゼクティブ・アートディレクター、インディラ・エトゥワルーさん。著名アーティストのセイ・アダムスさんとダウッド・ウエストさんらがリードし、ブルックリンで活躍する約30人のビジュアルアーティストが共同で作業。13日に開始し、1日で完成しました。 またミューラルの傍には、人の形をした像もあります。フロイドさんの他に、NYPDに殺された黒人の犠牲者の名前がグラフィティー調のフォントで刻まれています。人々の記憶にいつまでもBLMの理念が残り、コミュニテーィの士気を高めてくれそうです。 ミューラルは、全米では他にもロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、オースティン、シャーロットなど多数の街で誕生中です。マンハッタンでは、五番街のトランプタワー前の道路も予定されています。2020年を代表するBLMのシンボルとして残されていくでしょう。 フルトン通りに面した雑貨店、ニコラス・ブルックリンに入ってみました。お香やアロマオイルが充実していました (c) Kasumi Abe ミューラルのそばには、フロイドさんをはじめとする犠牲者の名前が描かれた像も展示されています (c) Kasumi Abe [by Kasumi Abe]All images and text are copyrighted. 本稿はWeekly NY Japionのコラム ã€å®‰éƒ¨ã‹ã™ã¿ï¼ˆBrooklyn本著者)が案内する「古くて新しい、とっておきのブルックリンへ」からの転載。無断転載禁止

アート発信地をチェルシーからハーレムにする男 WhiteBox, ニューヨーク

NYのハーレムで行われた茶会 日本の茶会が、ハーレムのアートスペースで開催されると聞いて驚いた。 ハーレムと言っても最近キラキラした大型商業施設が立ち並ぶ都会の方ではなく、東側の「スパニッシュハーレム」だ。スパニッシュハーレムと言えば、ニューヨークにいる(いた)人はわかるが、治安が良くない地区としてのイメージが今でもある。そこで本格的な茶会が今晩行われるという。 何だか刑務所?のような大きくて重い鉄格子をゆっくりと開ける。 だだっ広いアートスペースが目の前いっぱいに広がった。 冷たい無機質な床に、温かみのある手触りのよい畳が敷かれている。茶の講師が座り、彼女を取り囲むように3人が畳に、別の3人が椅子に座り、お点前をちょうだいしていた。(そのほかにも多くの人が立って見物) 静寂の中、きちんと正座した女の子もいて可愛い! ここにいる誰もが茶の世界に敬意を表し、中には熱心に質問をする人も。ハーレムがこんなことになっているとは誰が想像したか。 場所はWhiteBox Harlem(ホワイトボックス・ハーレム)。2月1日から29日まで「Painter was called outlaw」というテーマで行われている展示会の中での1コマだ。 ここで日本の芸術を中心にキュレーションを行なっている佐藤恭子さんによると、期間中、日本人芸術家(長谷川利行、松本竣介、麻生三郎、宮崎進)の戦時中に日の目を見ることがなかった作品を展示し、その一環として茶会イベントを催したそう。これらの芸術家は、昔の日本では「アウトロー」(無法者)扱いされてきた。皆他界されているが、自分たちの作品が時を経て外国でお披露目とは、きっと誇らしげに思われていることだろう。 最近私は茶会のご縁が多い。この日も改めて茶やアートを含む日本文化の奥深さは、アメリカ人の興味を引くものだと実感した。 NYマンハッタンの中心地にあるお茶室と、そこで定期開催される本格茶会【ニューヨーク】 あるアートの専門家との興味深い会話 さて茶会が終わり、せっかくなので展示されているアート作品を見て帰ることに。 そこに来ていた、ニューヨークのブロンクス区でアート関連の仕事を長年しているという年配のルイスさんと、ある作品の前で立ち話になった。 ルイスさんと作品の前でお互いが感想を言い合ったのだが、会話の中で政治という意味のpoliticsという言葉が彼の口から幾度となく出てきた。私はこのアートの場でまったく予期しなかった言葉が出てきたので一瞬思考が止まり、彼が何の話をしているのか混乱するほどだった。 しかし彼はアートの長年の専門家だ。彼の言っていることは、おそらく「正しい」のだろう。だが私は昔から思ってもみないことを言ったり同意するのが苦手である。正直に理解できていないことを恐る恐る伝えてみた。 そうしたらルイスさん、「この前〜〜で出会った女性が」とさらに混乱する話をし始めるではないか。私の脳内はさらに「???」。ついに「話の腰を折るようで申し訳ありませんが、ちょっと話に着いていけていないかもです…」と伝えたところ、ルイスさんは「私はあなたから今、違う見方を学んでいます。これがアートの面白いところです」と言った。 同じ1つのオブジェクトを見ても、それまで生きてきた経験や知識をもとに、ある人は「政治的」だと感じ、またある人はまったく別のことを感じる。彼が以前出会った女性との会話は、それを彼に気づかせてくれた最初の出来事として、いつもこのようなシチュエーションで思い出すそうだ。 ルイスさんとの会話は私にも学びをもたらしてくれる興味深いものだった。わからないことはわからないと正直に伝える大切さ、そして正解というものがないアートの奥深さや面白さを改めて気づかせてくれた。 ハーレムを次のチェルシーにする男 ここにはもう1人興味深い人物がいた。 このスペースのオーナーで、スペイン出身のファン・プンテス(Juan Puntes)さんだ。彼はその昔、現代アートの発信地、チェルシーにWhiteboxを構えていた。そこが飽和状態になりローワーイーストサイドにスペースを移し、1年前にこのスパニッシュハーレムに引っ越してきた。 聞けば、このだだっ広いスペースは以前は消防署で、大昔は馬車の倉庫だったそう。道理でだだっ広く、ドアも重く、室内奥にも大きな倉庫っぽいドア跡が残っているわけだ。 実はこのWhiteBox Harlemの隣も、別のアートスペースなんだとか。 チェルシーに未だ集まる多くのギャラリーの賃貸契約の更新の時期が今から約10年前で、それ以降はローワーマンハッタンやブルックリンが次のチェルシーになるだろうと言われて久しい。「なぜこのギャラリーはブルックリンを選ばなかったのか?」と聞くと、彼はこのように答えた。 「ブルックリンは若すぎる。もっと成熟した市場が欲しかった。まさかハーレムのしかもスパニッシュハーレムとは、誰もが驚くけど、次(のムーブメント)はここさ」 「ついでに言っておくと」と彼は続ける。 「ここはギャラリーではなく、オルタナティブ(代替的)なアートボックスと僕らは呼んでいる」とあえて、ギャラリーという言葉を否定した。 NPO形態で運営し、ニューヨークの通常のギャラリーのように作品を販売しているわけではなく、grant(企業などからの補助金)で賄っていると言う。 地下フロアでは2月8日から3月1日まで、中国・武漢在住のアーティスト、ケ・ミン(Ke Ming)さんによる作品展もちょうど行われている。 すごいタイミングだが、これはまったくの「偶然」だそうだ。新型コロナウイルス騒動から随分と前に企画されたもので、そして残念なことに、ケさんは今回の騒動で来米できず、展示会に来れなくなってしまった。(ファンさんは武漢の人々を助けるべく、期間中は会場で募金活動も行なっている) ここではほかにも、中国北部出身のアーティストで来月この地下で自身の展覧会をするタンさんや、2ヵ月前にニューヨークに活動拠点を移したばかりの芸術家、野村在さん、そして千住博さんのところで10年ほど働いていたという原田隆志さんらにもお会いした。 アートはまったく専門外で普段はあまりご縁がないが、たまにはそういう所にも足を運んでみるものだ。こんな面白い人々との出会いが待っているのだから。 ちなみにルイスさんとの会話のその後だが、私もルイスさんも作品を見ながらしばらく別の人々と会話を楽しんでいた。そのうち彼は「またどこかで会いましょう」と軽く挨拶し去っていった。 連絡先も交換せず、ご縁があればまたどこかで。何とも後腐れのないニューヨークらしい出会いだ。 [All photos by Kasumi Abe]All images and text are copyrighted.

Zero Waste Danielのランウェーのないショーfrom NY ファッションウィーク2020

2月3日から12日まで開催中の「ニューヨーク・ファッションウィーク」。市内ではさまざまなファッションショーが催され、ファッション関係者やモデルなど世界中のおしゃれピープルが一堂に集まっている。 (続きを読む)「使い捨て文化でしたか?」21世紀最先端のファッション哲学がNYファッションウィークで開花 [All photos by Kasumi Abe]All images and text are copyrighted. 本稿はYahoo! Japan News個人からの転載。無断転載禁止