メダル候補の失速とメンタルヘルス── 大坂なおみ選手は「うつ」なのか?英語の意味を米心理療法士が解説

アメリカの体操の女王も不調 オリンピックにはやはり魔物が棲んでいる? 東京オリンピックでは、日本をはじめとする各国選手が続々とメダルを獲得する中、メダルの有力候補だった選手も次々と敗退している。 体操で過去4つの金メダルを持ち今大会でも有力候補のシモーン・バイルス(Simone Biles)選手もそうだ。開会以来、着地で幾度となくバランスを崩すなど本来の実力を思うように発揮できず、27日団体総合決勝で途中棄権した。チームとしてはロシア五輪委員会(ROC)に破れ、銀メダルを獲得した。 途中棄権の理由についてバイルス選手は、身体的な問題ではなく「自分のメンタルヘルス(心の健康)を保つため」と話した。また「頭で考え過ぎてしまっている」「年齢を重ねるごとに緊張するようになった」と、絶対王者らしからぬ不安な気持ちが露呈した。 スター選手を擁するアメリカの体操チームは、選手村に入らず選手にホテル滞在をさせるなど、体と心の健康に配慮し手厚い環境を整えている。開会式にも出席せず、こぢんまりとセレモニーを行うなど徹底した新型コロナの感染防止対策で準備万端だったはず。しかし、現実は厳しいようだ。 これについてCNNは、「バイルス選手の感傷的なインタビューが、オリンピック選手のメンタルヘルス問題を人々に投げかけた」と報じた。 バイルス選手がメンタルヘルスの話をしたのは、筆者にとって目新しいことではなかった。4月にオンラインで開催された「チームUSAサミット」では、1年以上に及ぶパンデミック中の選手のメンタルヘルスが1つのトピックだった。バイルス選手も微笑みを浮かべリラックスした表情で登場したが、「昨年は非常にナーバスな時期もあった」と、揺れ動いた胸の内を明かしていた。 新型コロナの感染拡大、ロックダウン、練習場の閉鎖、オリンピックが延期か中止か・・・精神的なショックが続き、まるで出口の見えないトンネルをさまよっているかのような時間を過ごしてきたという。そろそろ引退を考える年齢(24歳)にさしかかっていることも言葉の端々で匂わせた。体操選手としての自身の限界を感じているのかもしれない。 バイルス選手は29日に個人総合決勝が予定されており、28日はメンタルの休息にあてるようだ。メダルの女王として、なんとか最後の踏ん張りを見せてほしい。 Updated: ãƒã‚¤ãƒ«ã‚¹é¸æ‰‹ã¯28日、個人総合決勝出場の辞退を発表。 大坂選手のメンタルヘルス問題。本当に「うつ」なのか? メンタルヘルスの問題と言えば、テニスの大坂なおみ選手もそうだ。 長期にわたるディプレッションを告白し、全仏オープンを棄権した​​大坂選手。その後、全英オープンも欠場して休養し、オリンピックで久々にコートに戻ってきたばかりだった。しかし27日の女子シングルス3回戦でミスを重ね、世界ランク42位のチェコ選手にストレートで敗れ、ベスト8進出を逃した。 全仏オープンの時期は日本のメディアで「うつ状態」と大きく報じられたが、その後スポーツ系の雑誌の表紙を水着姿で飾り、自身のバービー人形やNetflixのオリジナル番組がリリースされ、オリンピックの開会式で聖火台に火を灯す大役を果たした彼女に、「うつではなかったの?」「内向的な性格には見えない」と世間の風当たりは強い。 英語「Depression」の意味とは 大坂選手の言う「Depression」とはどういう意味なのか。ニューヨーク州ライセンスを持つメンタルヘルス・カウンセラー、心理療法士のダニエル・ファン氏(Daniel Huang, LMHC)に話を聞いた。 まずファン氏は、メンタルイルネス(精神障害、うつ、心の病気)について、「白か黒か(うつかうつじゃないかといったレベル)の話ではない」と言う。 症状の軽いものから自殺をするほどの重いものまで段階があり、診察なしでは言い表せないと言う。ファン氏が心の治療にあたっているハミルトン-マディソンハウスでは、入院治療までを必要としない患者を受け付けており、カウンセリングをした上で各人の症状に応じて治療する。 メンタルイルネスを引き起こす要因もさまざまだ。遺伝的なもの、性格的なもの、育った環境、職場や家庭のストレスなど外的なものなどが、複雑に絡み合う場合もある。自殺未遂を起こすほどの深刻な患者は以前は年間1、2人程度だったが、パンデミック以降、失業や孤立などのストレスが加わり、その数は10人ほどに膨れ上がっている。 大坂選手の症状として、どのような状態が考えられるだろうか。ファン氏は「直接診察していないし、自分はスポーツ専門のカウンセラーではないのではっきりしたことはわからない」と前置きをしながらも、「開会式の様子などを観る限り、自殺を考えるほどの重度の症状ではないように見えます」と言う。 ただし、重くないと言えど、心がどれほど病んでどれほど辛いかは他人には決してわからない。 大坂選手が発したツイートの中の一文:I have suffered long bouts of depression since the US Open in 2018 and I have had a really hard time coping with that.(2018年の全米オープン以来、私は長い間ディプレッションで苦しんでおり、対処するのにとても時間がかかっている)の解釈について、英語ネイティブの立場から、ファン氏はこのように答えた。 「Depressionをどう解釈するかは先ほど述べたように、人によって症状や状態が違うのでわからないが、この一文から私が感じることは、大坂選手の気分が良くない、普通ではない状態が、数日単位ではなく数週間、または数ヵ月という長いスパンで続いているというのは確かでしょう」 ツイート内容の訳語を含む関連記事 「気分の落ち込みは18å¹´USオープンから」 大坂なおみ全仏棄権と衝撃告白、各界の反応は? 最後にファン氏は、スポーツ選手に限らず、一般の人々がメンタルヘルスを健康に保ち重症化させないために、このようにアドバイスした。 「人は落ち込んだ気持ちや悪い状態を隠す傾向にあるのですが、そのような状態は悪化する前に早めに告白してしまうのが良いです。その点では大坂選手は(自殺などを起こすような)重症化する前の段階で、自分がどのような状態にあるのか、どんな気持ちなのかを包み隠さずに話しました。良いお手本だと言えるでしょう」 オリンピック・パラリンピック競技大会概要 …

【東京五輪】開会式当日と翌日、米主要紙の一面を飾った話題は?

波乱の東京オリンピックがいよいよ始まった。 すでに日本をはじめとする各国選手が金メダルを獲得したり、メダルの有力候補と言われていた選手が思わぬ不調だったりと、感動や驚き、失望が起こっている。 筆者はこれまで、アメリカ在住の立場、およびUSチームのオンラインサミットに参加した経験から、日本のメディアにこのように聞かれることが度々あった。東京オリンピックについて「アメリカではどのように受け止められているのか?」「アメリカの人はどう思っているのか?」。 筆者の答えはこのようなものだった。 「春以降、少しずつメディアがオリンピック関連の話題を取り上げるようになった。特に主要紙のスポーツ記者は、金の亡者であるIOCの腐敗について非難し、コロナ禍での開催反対の立場を取っている。一方で一般の人々はと言うと、多くの人がオリンピックに関心を寄せていない。日々アメリカ国内の問題が山積みなので、オリンピックまで気持ちが届かないのだろう。しかし、大会が始まって自国の選手がメダルを取ったら目を向け始めるだろう」 これは街頭インタビューや、友人やパーティーで出会った人との会話から、筆者が感じたリアルな感想だった。日々さまざまな人に話を聞いてみても、オリンピックが直前に迫った時期でさえ「今度のオリンピックは北京だよね?」「今年開催?来年に再延期では?」など、日本からすると到底信じられないようなコメントが返ってくるのが1人、2人のレベルではなかった。それほどアメリカの一般の人々は、(開催まで)オリンピックへの興味や関心がもともと薄い。 もちろんすべての人ではない。少数派ながら「誰がメダルを取るかなど、オリンピックは気になる」と言う人や、「関心はあったけど、昨年延期が決まった時点で関心の糸が切れた。今年開催なら好きな競技はチェックする」と言う人もいる。 開会式の2週間前から、アメリカでの放映権を持つNBCがオリピック関連のCMを大々的に放送するようになり、機運が高まってきた。地方紙や深夜帯のテレビ番組までもが東京オリンピックのさまざまな問題やゴシップ(緊急事態宣言や選手の陽性判定、担当者解任・辞任、トイレ臭、選手村の簡易ベッドなど)を取り上げるようになり、(ネガティブな話題も含んだ)オリンピックムードが出てきたところだった。 実際に開会式が終わり、日本では評価が二分している。大絶賛する声が多いが、中には否定的な意見もあるようだ。果たしてアメリカは他国開催の開会イベントに興味を持ったのだろうか? 筆者は、東京オリンピック開催日の米主要紙の朝刊がどのような話題なのか気になり、いくつかかき集めてみた。 開会式当日の各紙朝刊一面 ニューヨークタイムズ (新型コロナ)ニューヨークが新型コロナでロックダウンをした時期に支えてくれたエッセンシャルワーカーの特集 (国際)アメリカ軍のアフガニスタン撤退関連 (新型コロナ)ワクチン未接種者が感染拡大につながっている、など ウォール・ストリートジャーナル (国際)香港で子どもを扇動する絵本の発行団体が逮捕 (ビジネス、製造)世界的な半導体不足が2023年まで続く可能性 (経済)経済回復においての有価証券取引について、など ニューヨークポスト (セレブ、ゴシップ)ラッパー、ドクター・ドレーの離婚した元妻の慰謝料 (新型コロナ、スポーツ)ナショナル・フットボール・リーグが選手に新型コロナワクチン接種を促す (同紙の裏表紙=日本の新聞の一面にあたる右サイドは、スポーツ記事の一面だ。この日の話題はMLBのヤンキース対レッドソックス戦で、ヤンキースのブルックス・クリスキー投手の負け試合について) これらの新聞は、ニューヨークエリアで流通している主要メディアの一部だが、一面にオリンピック関連の見出しは見当たらなかった。 スポーツ記事も、どちらかというとNFLやMLBの方に関心が寄せられているようだ。 ならば中面はどうか? スポーツ面でやっとオリンピックの話題を見つけた。 これらの紙面を見る限り、主にUSチームの選手にフォーカスした記事だ。日本で大騒ぎになったオリンピック・スキャンダルに関する否定的な記事は見なかった。 開会式翌日の各紙朝刊一面 開会式の様子はNBCにて、日本のリアルタイムの半日遅れの午後7時30分から深夜まで放送された。 その翌朝の新聞は・・・。 ニューヨークタイムズ (オリンピック)東京オリンピックが厳粛な空気に包まれ、無観客でいよいよ開幕 (国際)ハイチのモイーズ大統領埋葬など、暗殺事件続報 (新型コロナ)ワクチンのブースター(追加免疫。接種完了から数ヵ月経った後に再び接種するワクチン)の必要性 (新型コロナ)ニューヨーク市長が市の職員にワクチン接種を義務付け、など ウォール・ストリートジャーナル (オリンピック)1年遅れの東京オリンピック、空の会場で開始 (経済)暴落から一転し、NYダウが3万5000ドル超え (ビジネス、製造)電気自動車への移行 (新型コロナ)科学者による長引く新型コロナの謎解き デイリーニュース (オリンピック)史上もっとも奇妙な五輪が開幕 (事件、ローカル)ブロンクスの住宅敷地内から、幼児の歩行に必要な特別なスニーカーが盗まれる オリンピック関連は開会式の翌日、一面および中面で大きく取り上げられていた。記事の内容は「無観客の中で行われた、オリンピック史上稀に見る奇妙な大会」という趣旨だった。開催国からするとオリンピックが世界の一大行事よろしく思うかもしれないが、アメリカではほかにも新型コロナや経済ニュースなど、新聞が伝えたい話題や事件が山ほどあるため、俯瞰して見てみると開会式はほんの1つのイベント扱いだ。 ドローンやピクトグラムの演出を賞賛する声がソーシャルメディアで話題になっていたり、無観客で寂しい、奇妙、長いなどのハイライト記事、『イマジン』の歌詞についての否定的な記事などを見たが、日本の一部のメディアや知識人のようなネガティブな評価をしている記事は筆者が確認する限り見なかった。(専門家や批評家でもない限り、人々はそこまで他国開催の「開会式」に注視していない) 最低の視聴率か? CNNは23日、FOXスポーツの元幹部で、メディアコンサルタントのパトリック・クレイクス氏のコメントとして「今大会はこれまでの夏季オリンピックで、おそらく史上最低のテレビ視聴率になるだろう」との分析を紹介した。 ただし、あくまでもテレビ視聴率の低迷の危惧であり、ストリーミングやソーシャルメディアなどでの視聴や、ハイライト、選手のインタビューなどのコンテンツの視聴などが悪いとは限らない。 CNNによると、もし視聴率が大きく低迷すればメイク-グッズ、つまり広告主に無料広告で補償しなければならなくなる可能性があるという。ただし低迷といえども、今夏にテレビ放送されるほかのどの番組よりもオリンピックの視聴率は高くなるだろうと予想している。 今後メダル獲得数が増えるにつれ、オリンピックが気になってしょうがないという人も必ずや増えていくだろう。 オリンピック・パラリンピック競技大会概要  第32回オリンピック競技大会(2020/東京) 7月23日~8月8日 33競技…

小山田圭吾いじめ問題で考える。90年代とは「そういう時代」だったのか?

小山田圭吾問題で、ネット上では「90年代はそういう(虐待も笑って雑誌が掲載するのが許された)時代だった」という擁護派からの意見も散見される。 筆者はまさに90年代、日本の雑誌社で編集者として働いており、記者としてのキャリアはメジャーミュージシャンへのインタビューからスタートした。1日2、3組を取材することもざらで、そんな生活が4年続いた。その経験をもとに、90年代の音楽、雑誌事情を少し振り返ってみたいと思う。 筆者は2002年以降アメリカで過ごしているので、最近の日本の音楽や雑誌事情には疎いというのを前提として読んでほしいのだが、結論から言うと、90年代が令和とは違うやや異質な時代だったというのは当たっているかもしれない。 YouTubeもSpotifyも、クラウドもない時代。CD発売前に編集者の元に届けられる音源(資料)はカセットテープ(後にCD)だった。我々はそれを事前に聴いてインタビューに臨む。レコード会社の担当者が売り込みも兼ねて基本的には来社し、手渡しで(時々郵送で)音源を届けてくれた。 Zoomもない時代。ミュージシャンへのインタビューは当然、対面形式だった。時々ホテルのカフェや会議室などを使うことはあったが、多くは所属事務所のマネージャーおよびレコード会社のスタッフと共にミュージシャン自身が我が社まで足を運び、ビル内のカフェで小一時間ほど取材を受けてくれていた。記事を起こすためのインタビューの録音には、手の平大のテープレコーダーを使用していた(よって文字化することをテープ起こしと呼んでいた)。 インタビュー時にミュージシャンが笑い話として、過去の不良行為を武勇伝のように話すことは1人、2人あったかもしれない。ただし、虐待とも言えるほどの内容を笑いながら話された記憶はない(それだけの仲になれなかったとも言えるが)。 ブログやウェブマガジン、SNSもない時代。雑誌というメディアは出版の中でも花形で、公に文章を発表するのは限られた人に与えられた特権だった。特に今回報じられた音楽雑誌は花形中の花形。業界誌の中でも尖った存在でアーティストはもちろん、レコード会社、芸能事務所、音楽プロデューサーなどから一目置かれていた。筆者と同じチームで働いていた別の音楽ページ編集の同僚は、ロッキング・オン・ジャパンに転職したいと履歴書を送っていた。この雑誌は、テレビではあまり観られない渋谷系と呼ばれるミュージシャンをよくフィーチャーした。長文インタビューなので、ミュージシャンにとってはコメントをカットされることもないし、読者にとっても創作の現場や普段の生活など、ミュージシャンの素顔を垣間見られる希少なメディアだった。筆者もインタビュー前の予習として「ジャパン」を熟読したものだ。 当時、コーネリアスや渋谷系の音楽を知らない人はダサいとされる風潮があった。しかし今や、小山田氏のことを知らない、初めて聞いたという人も多いことをネットで知り、時代の移り変わりを感じた。 テレビもそうだ。バラエティ番組で人を殴ったり熱湯風呂に落とし入れたり、肌の色や見た目、(今で言う)LGBTQを茶化したりなど、今では眉をひそめるような暴力や差別が公然と電波に乗りお茶の間に届けられていたし、それを笑う文化もあった。 90年代が今とは違う異質な時代だったからと言っても、これだけは断言できる。それはどのような時代でも、善悪の判断はつく(普通の感覚を持っている人間であれば)ということだ。90年代であろうと、あのような虐待の記憶は普通であれば話せなかったし、聞いても書けない内容だった。 またいじめや嫌がらせというのは、どの国でもどの時代でも存在する。決して許されるものではない。被害者が一生トラウマになるほどのものは虐待(Abuse、Torture)と言い、いじめや嫌がらせ(Bully、Harassment)とは似て非なるもので、それは日本のみならずアメリカでも共通しているということも、在米歴が長くなった立場から申し上げたい。 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

東京五輪の放映権持つNBCも。小山田圭吾のいじめ、虐待告白を米主要メディアが次々に報じる

米主要メディアも報道 小山田圭吾氏が過去に行ったいじめ、虐待告白について、アメリカの主要メディアも次々に報じた。 APスポーツ、ワシントンポスト、ABCニュースは17日「Japanese composer for Tokyo Olympics apologizes for abuse」(東京オリンピックの日本人作曲家が虐待を謝罪)と報じた。 これらの記事を書いたAPのYuri Kageyama記者は、小山田氏について「東京オリンピックの開会式で使われる楽曲の日本人作曲家」「コーネリアスの名でもよく知られるロックミュージシャン」と紹介した。そして、小山田氏が過去に行った障害を持つ同級生へのいじめ、1990年代の雑誌インタビューでの詳細ないじめ自慢、それに対する今回の謝罪、ソーシャルメディアで起こっている辞任要求などを淡々と説明している。 過去に行った問題行動であろうと、多様性と調和の実現を目指し人権に配慮した大会を目指すオリンピック・パラリンピックの基本理念に反すると唱える識者の1人として、東洋大学教授でメディア学者、藤本貴之氏のコメントの概要も取り上げた。 事実が明らかになり、問題化している以上、五輪開会式音楽という東京大会を象徴するような場面の担当者としては不適当であることは明白だ。そもそも、五輪憲章にも反するという人事ということも理解しなければならない。そこは組織委員会も真摯に受け止めなければ、東京大会は「凄惨ないじめ加害者が開会式音楽を担当した」という負のレガシーが語り継がれることになるだろう。これはもはや国辱だ。 (<いじめ五輪は国辱>りんたろー氏の小山田圭吾擁護に疑問より) 通常ワシントンポストの記事には多くの反響が寄せられるが、虐待の具体的な内容が説明されていないことで大きな問題と捉えられていないのか、はたまたこの問題自体に関心が寄せられていないのか理由は不明だが、18日現在でコメントはゼロだ。 このスキャンダルを看過できないのは、オリンピックの米国放映権を持つNBCユニバーサルの子会社、NBCニュースもそうだ。 NBCニュース(Corky Siemaszko記者)は18日「Tokyo 2020 Olympics composer apologizes for bullying disabled classmates」(東京オリンピックの作曲家が障害者の同級生いじめを謝罪)と、一連の小山田氏問題と東京オリンピックのこれまでのスキャンダルをより詳細に報じている。 ミュージシャンとしての小山田氏について、「Beck(ベック)やビーチボーイズのブライアン・ウィルソンといったアメリカの先駆的なミュージシャンと比較されることが多いが、日本ではキッチュな渋谷系の第一人者の1人としてよく知られる。それはバート・バカラックやフィル・スペクターといった60年代のアメリカン・ポップミュージック(の特徴)を多用したものだ」と紹介した。 いじめの内容について詳細まで触れていないメディアがある中、NBCニュースは「現在52歳の小山田は、スター性が高かった90年代に音楽雑誌のインタビューで、知的障害のある少年に排泄物を食べさせたり、ほかの学生の前で自慰行為をさせたりしたことなどを振り返っていた」と報じた。 また「これらの反省点について、後悔するどころか子ども時代のおかしな出来事として捉えていた」「それを自慢げに語っていた」と、人気ブログ「あらま! JAPAN」からのコメントを引用した。 ほかに英メディアのザ・ガーディアンやテレグラフも、このスキャンダルを報じている。 (つづく) Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

「大丈夫、じゃなくてもいい」東京五輪直前、大坂なおみ選手が伝えたかったこと

テニスの大坂なおみ選手が米タイム誌の東京オリンピック直前特集号(19日)に手記を寄せ、8日電子版でも公開された。 大坂選手は全仏オープン(ローラン・ギャロス)直前の今年5月、ソーシャルメディアを通じて「記者会見でアスリートの心の健康状態が無視されている」と問題提起し、全仏中は試合後に会見を行わない意向を表明した。それが発端で思わぬ騒動に発展し、全仏オープンの棄権を発表。 その発表の際、実は2018年全米オープン以来、記者会見での記憶がトラウマとなり、気分の落ち込みや憂鬱な気分に長い間、悩まされていることを告白した。日本のメディアでも「うつ状態」などと大きく報じられた。 大坂選手はその後充電期間に入り、アメリカのスーパーに姉のまり氏と食品の買い物に行く姿などがキャッチされていた。また先月28日から今月11日まで開催の全英オープン(ウィンブルドン選手権)にも欠場している。一方、23日から始まる東京オリンピックには初出場する意向を示している。 関連記事 「気分の落ち込みは18å¹´USオープンから」 大坂なおみ全仏棄権と衝撃告白、各界の反応は? タイムに寄せた手記で、大坂選手は5月以降の騒動をこのように振り返った。 人生とは旅です。 これまでの数週間、私の旅は予想外の道をたどりましたが、(その経験が)私に多くのことを教えてくれ、私に成長をもたらしました。私はいくつかの重要な教訓を学びました。 大坂選手の言う重要な教訓とは何だろうか。 学びその1: すべての人を喜ばせることはできない(全員の同意や理解、満足を得ることは難しい)。 自分が生きてきたたった23年間でも、世の中にあるたくさんの分断を見てきた。(昨年以降のBLM関連でも)自分にとっては明らかに不当な差別問題でさえ、さまざまな意見が分かれるのだから、精神的なケアのために、全仏オープンの記者会見を欠席すると発表した時、その後の展開について、覚悟しておく必要があった。 学びその2: 誰もが心の健康に関わる問題を抱えている。あるいは周りにそのような人がいる。 これは自分の下に届いた数多くのメッセージから知ったこと。私たちは皆、感情や情緒を持つ1人の人間である、という点でほぼ共通している。 また、自分の行動が誤解を招き人々を混乱させたのかもしれないが、プレス(記者やメディア)と記者会見が混同されていると分析している。 「自分は(これまで素晴らしい関係を築いてきた)プレスのことは大好きだが、すべての記者会見を好きなわけではない」と再度、明確に表明。その上で、大多数のテニスライターは同意をしていないが、彼女自身の個人的な意見としては「記者会見の形式自体が時代遅れで、刷新が必要」と再び問題提起をした。 家族や友人、励ましてくれた世間の人々、ミシェル・オバマ氏など彼女を支援してくれた各界の著名人、パートナーであるスポンサー企業らに感謝を表明しながら、自分の性格について再び、内向的で注目されるのは苦手と改めて告白した上で、「自分がこれは正しい(&間違っている)と思うことは自分を奮い立たせて発言するようにしている」と言う。しかしその結果、代償として大きな不安に襲われることがよくあるとした。 「大丈夫、じゃなくていい」 彼女がもっとも強調したかったであろうアスリートのメンタルヘルスについて、個人的な症状や病歴はプライバシーの観点から二度と開示したくないし、メディアにもその辺は聞かないでほしいと釘を刺した。さらに、「自分にとっては新たな分野で、いつもはっきりした答えが自分にあるわけではない」としながら、 大丈夫、じゃなくてもいい。 辛い時には辛いと言っていい。 このように人々に共感してもらい、メンタルヘルスに対する人々の理解がより深まることに期待を寄せた。 競泳の金メダル保持者、マイケル・フェルプス選手に「あなたが話すことで命を救ったかもしれない」と言葉を送られたエピソードも紹介し、このようにも語っている。 もしそうであれば、(自分の症状を告白するだけの)価値がありました。 助けてくれる人はいるし、どんなトンネルの先にも光はあるものです。 東京オリンピックに寄せて 手記の中には、迫り来る東京オリンピックについても言及している。 この数週間、大切な人と時間を過ごして充電し、反省すると共に前を向くことができました。東京でプレーできることをこの上ないほど楽しみにしています。オリンピック自体が特別なものですが、日本のファンの皆さんの前でプレーする機会を得られることこそが夢のようです。皆さんに誇りに思っていただけるようなプレーをしたいです。 気分の落ち込み、反省、そして充電を経て再び心身ともに強くなった大坂なおみ選手が誕生したようだ。日の丸を着けた大坂選手の、東京オリンピックでの活躍が楽しみでならない。 Naomi Osaka | Official Trailer | Netflix 今夏「Naomi Osaka旋風」到来の予感! 今月16日より、ネットフリックスで大坂なおみ選手のドキュメンタリーがスタートするとして、アメリカでも大注目されている。 予告編で大坂選手は、幼少時の家族の写真なども交え「母はいつも残業し、時には車内泊をするなどし、子どもたちのために自分を犠牲にしてきた。そんな母を自分がテニスをすることで救い、母には幸せになってほしかった」と振り返っている。大坂なおみ選手の知られざる生い立ち、強さの秘訣、テニス選手だけではない1人の女性としての一面も垣間見られそうだ。 関連記事 「気分の落ち込みは18å¹´USオープンから」 大坂なおみ全仏棄権と衝撃告白、各界の反応は? 大坂なおみ、女子スポーツ界長者番付で世界トップ&年収で新記録樹立! 米メディア発表 大坂なおみ優勝 黒人差別に対するメッセージも含め米メディアはどのように報じたか 大坂なおみ選手と重国籍問題 アメリカ国籍を選んだ「元日本人」に聞いた 大坂なおみ「世界トップアスリート」に。米紙に語った「私にとって、もっとも大きなことは・・・」 大坂なおみ帰国会見「自身のアイデンティティについてどうお考えですか」 インタビュアーとして思うこと Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース…

「こんなに美しい家だった」フロリダのビル崩壊から1週間。二段ベッドの持ち主、崩壊前の部屋の様子は?

米フロリダ州マイアミ・デイド郡サーフサイド町で住居用ビルが倒壊し、1週間が過ぎた。 米主要メディアの情報をまとめると、7月1日までに子ども2人を含む18人の死亡が確認され、行方不明者は145人以上になっている。 また1日朝のダニエラ・レヴィン・カヴァ知事の記者会見によると、現場では不眠不休の捜索活動が続けられているが、29日に瓦礫が落下するなどし難航している。また、倒壊を免れた建物の残りの部分も不安定な状態で、再び崩壊する可能性があるとし、現場で捜索活動を行なっている救助隊の安全が確保されるまで、生存者の捜索を一時中断したとの発表があった。 事故以来、地道な救出活動が続けられてきた。(ダニエラ・レヴィン・カヴァ氏のツイッターより) 何が起きたのか? 事故は、先月24日午前1時半ごろ起きた。コンドミニアムと呼ばれる12階建ての住居用ビル(築40年)が突如崩壊したのだ。 ニューヨークタイムズのまとめたある生存者の証言では、就寝していたところ、突然火災警報器が鳴り響き、建物が揺れて破片が落下し、崩れたとある。 倒壊したのは、シャンプレイン・タワーズ・サウス(Champlain Towers South)と呼ばれる建物の北東部分だった。全体で約135世帯分あり、崩壊したのはうち55世帯分のスペースだ。 不動産情報のHQ Realtyでは、3ベッドルームの賃貸が6500ドル(約65万円)、4ベッドルームの購入が310万ドル(約3億1000万円)などとしてリストに上がっている。スペイン語圏の高所得者層も対象に、英語とスペイン語両方の記載。 倒壊の原因は? 倒壊の原因について調査が進められているが、決定的な理由はまだ解明されていない。ただし映像を解析しビルの下層部に注目した専門家からは「進行性崩壊」として知られる構造的障害や、40年前の建築基準法で許可されていた設計上の欠陥や劣化など、さまざまな理由が重なり、倒壊の原因に繋がった可能性が指摘されている。 2018年の調査によると、プールデッキ下のコンクリートスラブに見つかった「重大な構造的損傷」をはじめ、防水上の欠損や、地下駐車場とプール設備室の柱や壁に大量のひび割れ、崩れなどの問題があることが確認されていた。コンドミニアムと呼ばれるビル形態のため、取締役会の承認を経て、これから大規模な修理が行われる予定だったという。 事故の2日前にプール周りを調査し撮影した専門業者も、「(プールデッキの下にある)駐車場の至る所に水が溜まっていた」とマイアミ・ヘラルドに語っている。写真から、ひびの入ったコンクリートや腐食した鉄筋、床の水たまりなどが確認できる。 崩壊した建物から道を挟んだ向かいに住む女性は、建物が倒壊する15分前、駐車場からの水漏れを確認しており、その様子をビデオで撮影し、後にTikTokにアップしていた。(NBCニュース) 二段ベッドの持ち主は? この事故に関する数々の報道で、崩壊後にかろうじて残された部分に子ども用の二段ベッドがそのまま残され、人々の生活が昨夜までそこにあったことがリアルに映し出されたことも印象深い。 「この二段ベッドには子どもが寝ていたのではないか」「子の安否は?」など数々の憶測が飛び交ったが、この部屋に子どもはいなかったようだ。 最上階のこのユニットの持ち主は、ニューヨーク出身の女性弁護士だった。リモートワークが進む中で「再出発の地」として同地に移住し、3月から借りていた家具付きのペントハウスであることが、複数のメディアによりわかっている。弁護士の友人談によると、この二段ベッドのある部屋を、女性弁護士はホームオフィスとして使っていたようだ。 アパート探しのウェブサイト、Apartments.comでも、この女性弁護士が後に借りることにした家具付きのユニットや二段ベッドの写真を確認することができる。2ベッドルーム、2バスルームを備えた素晴らしいペントハウスだった。この弁護士は現在も行方不明のままだ。 この女性弁護士のように新天地として同地を選び、海の見える部屋で働いていた人、リタイア後の老後生活をこの地で悠々自適に暮らしていた人、中南米から旅行で来ていた人、たまたま両親のもとを訪れていた人。この建物にはつい最近までさまざまな人々の生活があった。 このような建物が崩壊するなんて、誰が想像できただろうか? Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

「韓国人になりました」… BTSが好きすぎて整形を重ね、ついにジミンになった白人インフルエンサー

Kポップ、特にBTS(防弾少年団)の大ファンだという白人男性が、BTSやKポップシンガーのような見た目になるために美容整形手術を受けて生まれ変わったとして28日、米ニューズウィークやニューヨークポストなどが報じた。 英国生まれの29歳、オリ・ロンドン(Oli London)さんは、BTS、特にジミンさんが好きすぎて「あのような見た目になりたい」と、8年間で18回の美容整形手術を受けてきた。そして、やっと理想の姿が完成したとして、「自分のことを今、韓国人として識別している」「本当に幸せ」と語った。 「私はついに韓国人になりました。私は変わりました。とても幸せ」とロンドンさん。整形手術は韓国のソウル市で受けたそうだ。 ロンドンさんはこれまで、「韓国の文化に深い敬意を払っている。(しかし)自分の人種までは変えていない」と見た目を限りなく韓国系の顔にしたと語り、自分の性については「男性でも女性でもないノンバイナリー」だと認めている。 18回の整形手術にはフェイスリフト、額リフト、こめかみリフト、カンソプラスティと呼ばれる目の周りの手術、そして歯の美容手術が含まれ、かかった費用は15万ドル(約1500万円)以上。 「私のことを知らない人は、きっと私のことを韓国人だと思うだろう」「私は人生で初めて、自分のことを美しいと思いました」とロンドンさんは満足そうだ。 ロンドンさんの整形前の写真 自分が誰かと、これまで自身のアイデンティティについて悩んできたというロンドンさん。今はBTSのような見た目に生まれ変わり、韓国名として「ジミン」を名乗ることで、自身のアイデンティティを確立したようだ。 ロンドンさんはインスタグラムで30万人、ユーチューブで2万9000人のフォロワーを持ち、特に若者に影響力があるインフルエンサーとして知られる。ただ整形を重ねると、一般的にどの人も「もっと、もっと」と歯止めが利かなくなりがち。アメリカでは最近、美容整形を重ねたとされるクロエ・カーダシアンさんに対して、「昔の方がよかった」「まるでマイケル・ジャクソンのようだ」と話題が集まったばかり。 ロンドンさんも整形前の顔は十分素敵だったし、これ以上の整形は不要だと思われるが、本人からしたら余計なお世話なのだろう。 BTS関連記事 BTSを「未来のグラミー賞にとって重要な存在」と海外メディアが報じたワケ (現代ビジネス) NYタイムズスクエアの年越し2019-2020 ï¼ˆãƒŽã‚¢ãƒ‰ãƒƒãƒˆï¼‰ Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

1年3ヵ月ぶり「非常事態」が解除 NYはいま【昨年との比較写真】

「緊急事態は終わった。新しい章の始まりだ」 ニューヨーク州のクオモ知事は23日の定例記者会見でこのように述べた。 州では昨年3月7日にコロナ禍における非常事態が宣言されたが、今月24日をもって終了の期限を迎え、非常事態が解除された。 そもそもこの非常事態宣言とは当時、世界最悪の状況に陥った同州の新型コロナ感染拡大を受け、必要な予算、物資、州兵などの確保を目的に出されたものだったが、ワクチンの浸透と共に感染状況は落ち着いている。 1å¹´3ヵ月前といま(比較写真) 過去記事 (2020å¹´3月) 米海軍の病院船コンフォート到着 死者千人超えでも希望を捨てない人々(ニューヨーク、今日の風景) NY州最新の感染&ワクチン接種状況 ニューヨーク州の感染者数は、先月よりさらに減少している。 25日に実施された新型コロナ検査は9万7020回。うち、385件が陽性(全体の0.40%) 新型コロナウイルスによる入院患者(重症患者)数はこの日の時点で、371人 死者5人 州のワクチン投与実績…少なくとも1回接種は71.6% これまでに州内で投与されたワクチン接種数:2094万5467回 24時間以内に投与されたワクチン回数:11万7760回 少なくとも1回のワクチン接種を受けたのは、18歳以上の71.6%(すべての年齢層の59.4%) 必要回数分(1回もしくは2回)のワクチン接種を完了したのは、18歳以上の64.1%(すべての年齢層の52.8%) 非常事態解除後のNYのいま マスクの着用率は?(タイムズスクエア) 筆者は宣言解除の翌25日から週末にかけて、ニューヨークの中心地タイムズスクエアやセントラルパークなどに様子を見に行った。 まず、国内からの観光客だと思われる人出は先月よりさらに増えており、パンデミック前の活気が戻っていた。 州では先月半ば以降、ビジネスの入店・入場制限の規制のほとんどが解除され、地下鉄も本来の24時間営業に戻るなど、大規模に経済活動が再開している。ワクチン接種完了者は、公共交通機関や一部の商業施設を除いて、マスクの着用義務がない。 多くの人々はワクチンを打ったからこその「自由」を満喫しているようだった。大切な家族や友人とハグをし、さまざまな場所にマスクなしで躊躇なく行ける自由。パンデミックによりそれまでの当たり前が当たり前ではないと誰もが気づいたからこそ、なんてことのない日常がありがたく感じる。気候も良く、緊急事態が解除された軽やかな気持ちは皆、同じだろう。 同じだろう。 マスクの着用率は先月、ワクチン接種を完了した人でもまだ高いとレポートしたが、6月も後半になると、全員とはいかないまでも、マスクを外している人は大分増えていた。 マスクの着用率は先月、ワクチン接種を完了した人でもまだ高いとレポートしたが、6月も後半になると、全員とはいかないまでも、マスクを外している人は大分増えていた。 ニューヨークは毎年この時期、大規模なプライドパレードが開催されるが、昨年は中止、51回目の今年は「Pride March」と題してパレードが縮小し、ブロックパーティーやイベントが各所で行われている。 セントラルパーク 広大なセントラルパークでのマスク率はさらに少なかった(全体の1%ほど)。大多数の人はマスクなしで、ピクニックや読書、ジョギングなど思い思いの週末を楽しんでいた。 飲食店やバー 「QRコード・メニュー」がニューノーマル パンデミック以降、レストランやバーは歩道や車道だったスペースにテーブルを置き、感染防止対策をしているが、外は蒸し暑いからと屋内飲食する客も最近は増えている。 飲食店の中にはワクチン接種完了者のみを受け付ける店もあるようだが、筆者はこれまで一度もワクチン接種完了証明書の提示を求められたことはない。この店にはついうっかりしてマスクをせずに入店したが、通常通りに対応された。 飲食店の大きなニューノーマルの1つが、メニューブック/表の廃止だ。QRコードでメニューを見て注文するのが、飲食店での新たな常識となった(昨年の夏以降増えた気がする)。ミッドタウンにあるハンバーガーの美味しいこの店の女性サーバーに理由を聞くと、「衛生上の問題です。メニューは不特定多数の人がベタベタ触って不衛生だし、店側も客ごとに各ページを除菌するのは手間がかかるから」。そこで登場したのがQRコード・メニューというわけだ。 「もはや店内には紙のメニューはいっさい置いてないんですよ」との徹底ぶり。今後メニューブック自体が過去の産物として、新世代に「何それ?」と言われるようになるかもしれない。 またニューノーマルの1つだった、カクテルなど「アルコール類の持ち帰り」は25日以降はできなくなった。 州では、昨年3月の非常事態宣言と共に、バーやレストランの通常営業を禁止し、アルコール類も含むデリバリーもしくは持ち帰りに限り許可していた。 アメリカはもともとアルコールに関して日本より規制が厳しい。州によって多少異なるが基本的に路上飲みは一切禁止だし、ハードリカー類は酒屋でしか販売されておらず、当然夜間は閉まる。すべての酒類を購入するには写真付きIDを見せる必要も。そのような厳しい規制の中「お持ち帰りカクテル」は、市民にとって画期的なサービスだった。本来は禁止されているが、店の前の路上でこっそり飲む人も見かけた。 しかし今回、パンデミック前のガイドラインに戻るとして、本来のルール(持ち帰り禁止)となった。 関連記事 昨年10月の飲食店の様子 半数以上が廃業? この半年「生き残った」飲食店が行った新たな試みとは【NYで屋内飲食再開】 そのほか    地下鉄 スーパーマーケット オフィス 植物園、博物館 筆者はこの週末、ブロンクス植物園の草間彌生展「KUSAMA: Cosmic Nature」を訪れたが、世界の草間彌生人気を反映して、ここもものすごい人出だった。 温室や館内、土産店の入り口には「ワクチン接種済みであればマスク不要」とする注意書きがあり、接種完了済みの筆者はマスクを着けずに入ったが、接種証明書の提示は求められなかった。…

スイス・ジュネーブ現地の人々の反応【2021年米ロ首脳会談】

米ロ首脳会談の取材でせっかくスイスのジュネーブを訪れたので、現地の新型コロナウイルスの状況と会談に対する人々の反応も紹介する。 スイスは特に昨年の秋以降、コロナ感染が拡大したが、最近はイスラエルとアメリカに続くワクチン接種率の高さで、17日の時点で7日間平均の陽性率は251人と減少傾向にある。 ジュネーブでは店内や公共交通機関では依然マスクを着用せればならないが、屋外では人々の半分以上がマスクを外していた。ちなみに筆者も「うつさない・うつらない」ためにワクチン接種は済ませており、念には念を入れ、新型コロナの検査も出発前、サミット前日、最終日前日と1週間で3回も受け、すべての結果が陰性だと確認。安心して取材活動に集中することができた。 人気の日本食惣菜店で働くスタッフによると「ジュネーブはパンデミックで半年以上も店が閉まり死んだ街になっていたけれど、最近ワクチンの浸透でやっと活気が戻ってきた」と言った。 パレスチナ出身イギリス育ちで、当地に移住して20年以上になるタクシー運転手マンツールさんによると、パンデミックで飲食店などは大打撃を受けたが、「自分たちは働いて税金を納めると政府から手厚い保護として返ってくる」と不満そうな様子は見られなかった。ただ、観光客はまだ街に戻って来ておらず、早期の観光業復活に期待を寄せた。 世界的に重要なサミットを経済の大打撃を受けた都市で開催するのは、街の復興への重要なトリガーになる一方、会場周辺はテロを警戒し、最高レベルのセキュリティ態勢となった。ステイホームが呼びかけられ、車両やバスの侵入や一般の人々の通行は禁止され、迂回を強いられるなど混乱も見られた。メディアバッジを取得していた筆者でさえ、会談当日、メディアセンターに行くのに相当遠回りをさせられた。 「街の人は、市民生活に支障を来すのは容認できないという気持ちでいる」と話すのは、メディアルームに設置された新型コロナの検査会場で出会った、ドイツ語メディアで働くスイス人記者アナさん。 「空港に近い場所で開催すればいいのに、なぜこんな市内の中心にある会場を選んだのか、まったく理解不能。テロでも起こったらどうなるかと人々は心配していた」とやや強い口調で訴えた。 ただし、他都市もサミットを誘致していた中でジュネーブが選ばれたのは市民として名誉なことだと認め、「不満がありながらも、人々は『受け入れる』と言う気持ちでこの日を迎えた。ホスト国の私たちにとっても、大切なサミットになったことには変わりない」。 以前ニューヨークの政府機関で働いていたというバーバラさんは、散歩がてらサミット会場となった18世紀のヴィラ「Villa La Grange」を携帯電話で撮影していた。「誘致に成功しこの街に2人のリーダーを迎えることを、市民は誇りに思っている」。 一方でバーバラさんはこのようにも言う。 「ここは本来レマン湖畔に面した市民の憩いの場、グランジュ公園なの。中には素敵なレストランや花園、アクティビティもある。それなのにゲートを閉め、鉄線の柵で市民を外側に追いやった。私たちの人権や自由はどうなる?自国の国益ばかりで何が人権に関する協議よ。世界のリーダーが集まった時、本来なら市民の自由や人権こそ、話すべきではないか」 再開発で整った湖畔の説明もしてもらいながら、しばらく一緒に暮れゆく夕焼け空を眺めた。そして別れ際、笑顔でこのように言ってくれた。「ジュネーブは本来、鉄柵もゲートもない開かれた、自然豊かで美しい街。公園内や湖畔にある噴水の近くを自由に散策して街を存分に楽しんでほしい。また次回ゆっくりいらっしゃい」。 (写真をもっと見る) 関連記事 筆者が見過ごせないとコロナ禍で渡航までした理由ジュネーブで見た米ロ首脳会談【現地ルポ】 Text and some photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

筆者が見過ごせないとコロナ禍で渡航までした理由ジュネーブで見た米ロ首脳会談【現地ルポ】

6月に入り、ニューヨークに住む筆者のもとにある「お知らせ」メールが届いた。申請の締め切りは、会談日からわずか5日前。パンデミックが収束していない中での渡航に不安がなかったと言えば嘘になる。しかし、世界の主要リーダーが顔を合わせる滅多にない機会を見逃したくない一心で、気づけば着の身着のままで現地に飛んだ。 行き先はスイスのジュネーブ。16日に、アメリカのバイデン大統領とロシアのプーチン大統領の初の首脳会談(U.S. – RUSSIA Summit)が執り行われた。 両氏の会談といえば、バイデン氏が副大統領時代の2011年、プーチン氏とモスクワで握手を交わし、大統領に就任後も電話会談を2度している。しかしバイデン氏は、伝えたいことに誤解がないよう「実際に会って対話する重要性」を改めて強調していた。そして今回の大統領同士の初の直接対話が実現となった。 この会談をどうしても見過ごせなかった理由 この会談を見過ごせなかった理由は、2国間のみならず今後の世界情勢の鍵を握る重要な会合だったから。スイスの外務省にあたるFDFAよりメディアセンターの席が用意され、記者特例として到着後の隔離も免除されたのだから、行かないという選択肢はなかった。 言わずもがな、アメリカとロシアの関係は良くない。一触即発の状態だ。 ç±³NBCが会談直前に行ったインタビューでも、プーチン大統領自らが「ここ数年で最悪の状態」と認めた。「両国ほど核ミサイルを発射する準備ができているところはない」(タイム誌)のだから、さらなる関係悪化によって世界情勢が大混乱に陥る可能性も否定できない。アメリカの同盟国である日本にとっても、対岸の火事ではない。 特に近年、さまざまな問題をめぐって緊張がさらに高まっていた。双方が相手国の大使を追放するきっかけとなった(ロシアが関与していると見られている)相次ぐサイバー攻撃をはじめ、米大統領選の介入疑惑、また核軍縮など安全保障、ハバナ症候群、中国、中東、ウクライナとの関係、人権問題や制裁などについて双方の言い分は対立している。 会談に先立ち、米各紙や専門家の多くは悲観的だった。「両氏はサミットに警戒」(USAトゥデイ)、「双方は、軍事的脅威から人権問題まで困難な議題に向き合うだろう」(ニューヨークタイムズ)などと、冷え切った関係改善は容易ではないことを匂わせた。 会談前、大統領として初の欧州歴訪中だったバイデン氏は、「世界の民主主義の結集」と表現するG7やNATOのリーダーたちと直接対話をし、「パンデミックからの復興」と「より良い世界の再建」のために各国と連携することを改めて確認。同盟国のバックアップがあることを強調していた。 関係性を「最悪の状態」と認めたプーチン氏は一方で、言葉の端々に両国関係の問題解決のための共同作業をする「準備」ができていると、意欲もうかがわせていた。 会談当日 この会談では通例とは異なることがいくつかあった。1つは、遅刻魔のプーチン大統領が、時間通りに現れたこと。 プーチン氏の各国トップ陣を待たせるのは有名な話で、エリザベス女王を14分、トランプ前大統領を1時間近く、安倍前首相を2時間半、メルケル首相を4時間以上待たせたことも…。 筆者は事前に、プーチン氏がロシアからジュネーブ空港に到着するのは当日の午後12時30分で、日帰りするという情報を掴んでいたのでこの日も遅れるかと思いきや、予定時間に到着したので拍子抜けした。 この「遅刻なし」についてワシントンポストによると、事前に両国で示し合わせていたそうだ。プーチン氏にとって遅刻、つまり相手を待たせる行動は、自分が心理的に優位に立てる戦略の1つ。だが、今回の相手は強国アメリカだ。バイデン氏を会場で待たせるようなことがあってはならぬと、プーチン氏に先に会場入りしてもらうよう交渉がなされていた。 通例とは異なる2つ目は、会談後の記者会見が合同ではなく個別で行われたこと。CNNによると「米大統領5人と会談してきたプーチン氏にとって、合同記者会見で有利になることが多かった」。アメリカ側は今度こそ不利な立場を避けたいと、個別会見を提案したようだ。 これについて、メディアセンターへの道すがらに出会った、英語のニュースサイトで働くスイス人記者ミッシェルさんはこのように言った。 「バイデンにとっては個別会見は正解だった。あの年で8日間の欧州歴訪はタフだろう。前日エアフォースワン(大統領専用機)から降りる時の表情も疲労が滲み出ていた。一方日帰りのプーチンは気力が有り余っているだろうから合同会見はフェアとは言えない」 バイデン氏がジュネーブに到着した日の夜に筆者が乗ったタクシーの運転手も、運転手間でバイデン氏の気分が優れず病院を探している(いた?)と教えてくれた。信憑性については不明だが、筆者の目にも確かにバイデン氏は疲れているように見えたので心配だった。そして翌日はにこやかに会談に現れたので安心した。 プーチン氏の会見から見える会談内容 ワシントンポストによると、会談の期待値がそもそも低く設定されていたため、双方はいくつかの問題で「やや前進」という嬉しい余韻を残しながら、予定より早く終了したという。当初は5時間以上の可能性もあると見る米メディアもあったが、会談自体は3時間ほどだった。 合意内容は、核軍備管理に関する長期的かつ戦略的な対話の開始、サイバーセキュリティに関する専門家会議の開催、互いの国から追放された大使を再び戻す方針など、すでに多くのメディアで報じられている通りだ。双方が歩み寄った成果として評価すべきだろう。 筆者は会談後、プーチン大統領の通訳を介した記者会見をメディアセンターで聞いた。アメリカが重視したサイバー攻撃問題についての記者からの質問に「ロシアの関与はない」と改めて否定し、「逆に我が国へのサイバー攻撃のほとんどはアメリカからだ」と反論。ナワリヌイ氏や人権について聞かれた際も、アメリカのBLM運動や銃撃事件などを引き合いに出し「それらの人権はどうなのだ?」と批判した。ロシアでの民主化デモの参加者に対する取り締まりについては、1月に起こった議会議事堂襲撃事件の抗議者の逮捕と比較した。(バイデン氏はこれらの比較に首を傾げている) バイデン大統領がロシアとの関係で望んでいる、「安定した予測可能な関係」について、プーチン大統領はNBCのインタビューで「国際問題において最も重要なこと」と同調していた。実際にはそんな関係をロシアが阻止していると言われていることに対して、プーチン氏は「アメリカも国際社会の基盤を破るように条約や協定から離脱し、予想外のことをしている」と、厳しい表情で返すシーンも見られた。 バイデン氏からプレッシャーを感じたかと問われ、「アジェンダを設定する以外にプレッシャーはなかった」とプーチン氏。バイデン氏の印象については「政治経験が豊富で建設的な人」と表現し、リラックスしたフランクな会話がなされ「プロダクティブ(生産的)な会合になった」と評価した。 ほかにも、より安全な世界のための自然(気候変動問題)や海洋保護、新型コロナ対策や児童の健康について、議題はさまざまな分野に及んだという。ビジネスの話だけではなく、バイデン氏が母親の話をしてくれたエピソードも語った。 プーチン氏は記者の質問への反論後も「問題解決のために、両国は共同作業をしていかなければならない」「バイデン氏と話をし、合意することは可能だと感じた」と、歩み寄る姿勢を示した。 もしかするとプーチン氏の秀でた話術や交渉術の1つなのかもしれないが、狡猾で荒唐無稽なことを言っているだけの独裁者のようには聞こえなかった。また会談前の両首脳の記念撮影の際、リラックスして少し微笑んで座っているバイデン氏と、彼の表情を何度か一瞥するプーチン氏が印象的だった。 会談後に公開されたオフィシャルの写真は、筆者を少し安心させた。米ロ2国は「対立」「敵対関係」などと表現されることが多いが、それだけではない直接対話で生まれた人間模様を垣間見ることができる。 「安定した予測可能な関係」実現するか? 会談前に双方が伝え合った「生産的な会談を期待」(プーチン氏)や「異論がある時、予測可能で合理的に伝え合う」(バイデン氏)などは、有言実行された。 バイデン氏は個別会見で、会談の目的:(1)両国の利益のため世界のために、何をするべきかをはっきりさせる。(2)直接コミュニケーションをする。合衆国として同盟国の利益を損なうことには責任持った行動をとる。(3)双方が優先することや価値観をはっきりとさせる ── を果たしたことを明言。そして「自分が今やる事はやった。1年以内に、重要な戦略的対話が実際に行われているかどうかわかるだろう」と言い、今後も協力し合える関係になるはずと期待を寄せた。 両首脳がこの日会った際のボディランゲージも興味深かった。まずバイデン氏が先に手を差し出し、それに応える形でプーチン氏が大きく歩み寄り、しっかりと握手を交わした。まるでこの会談自体のアウトラインのような光景だ。 少なくともこの会談により「最悪の事態」は阻止できた。関係改善への第一歩を踏み出したと期待したい。 各国首脳会談 関連記事 過去のボディランゲージ 安倍・トランプ初の日米首脳会談。握手の仕方でわかる上下関係 2018年米朝首脳会談 世界のトランプを前に緊張を隠せなかった若き独裁者、金正恩 Text and some photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止