理想のリーダーはどこへ? クオモ州知事の思わず耳を塞ぎたくなる「隠蔽疑惑と脅し」

ニューヨーク州はこの1週間、アンドリュー・クオモ知事を取り巻くスキャンダルで持ちきりだ。 クオモ氏率いる州政府が、新型コロナ禍における高齢者介護施設の死者数を隠蔽したとされる疑惑をめぐって、証拠収集のための弾劾委員会が結成されることが、州議会共和党員により18日に発表された。17日には、FBIと州東部地区連邦検事局による調査が開始したことも報じられている。 事の発端は先月、州司法長官のレティシア・ジェームズ(Letitia James)氏が、昨年3〜8月の高齢者介護施設での新型コロナによる死者数が、州により大幅に過少報告されていたと指摘する報告書を公表したことによる。 新型コロナによる州内の死者数は、4万5807人に上る。うち40%近くが介護施設の入居者とされる。 介護施設での死者数は今月10日の時点で1万3297人、16日の時点で1万3432人(総合的にあらゆる介護施設も含めると1万5049人以上)とされているが、先月18日の時点の公式な発表は8711人だった。 クオモ知事のトップ補佐官、メリッサ・デローザ(Melissa DeRosa)氏は今月10日、州議会の民主党議員らとのビデオ会議中に「死者数のアップデートを“凍結”していた」ことを認め、謝罪していた。大統領だったトランプ氏がツイッターを通して昨年8月、「州の対応が悪いため、介護施設入居者が殺されている」と言っていたころだ。デローザ氏が「(正しい)死者数を発表することで連邦政府による攻撃材料になりかねず、司法省による州政府の調査を回避するためだった」と釈明したことを、翌11日にニューヨークポストが報じた。 これらの疑惑に対して、15日にクオモ氏は会見を開き、釈明した。州保健局が、介護施設の入居者が病院で死亡したケースを明らかにしなかった結果であり透明性を欠いてたことを認めたが、正しい数字の追加作業は忙殺により「空き」ができ「後回し」となっただけだとし、「我々はいつも事実と科学的根拠に基づいている」と隠蔽疑惑を全否定した。 騒動はこれだけに止まらない。 クイーンズの州議会、ロン・キム(Ron Kim)議員がクオモ氏から電話があり、これらの騒動を封じ込めるような協力をするように脅されたと告発するなど、きな臭い話がボロボロと出ている。 新型コロナにより叔父が介護施設で亡くなったキム氏は、10日のビデオ会議に参加した1人で、隠蔽工作をめぐって州を激しく非難していた。クオモ知事からの電話は、翌11日夜のことだった。キム氏によると、クオモ氏は最初沈黙から始まり「あなたは立派な男か?私はあなたがどんなにあくどいか世間に伝えることができる。あなた(の政治家人生)はそこで終わりだ。破壊される」と言いながら、怒鳴り声を上げたとされる。その後も何度も執拗に電話をしテキストを送ってきたという。 これについてクオモ氏の広報官、リッチ・アッツォパルディ(Rich Azzopardi)氏は事実無根だと否定したが、犬猿の仲とされるニューヨークのビル・デブラシオ市長は、キム氏の発言を信じる旨を記者会見で表明した。クオモ氏からのコメントは発表されていない。 クオモ知事はこれまで、多くの州民にとってヒーロー的な存在だった(はずだ)。パンデミックになった昨年3月以降、毎日記者会見を開き、「事実」のみを公表するスタイルを通し、州民が過度に恐れることなく冷静に状況を判断できる道筋を開き、ここまで導いてきた。頼れるリーダーとしての手腕を発揮してきたことで、「次期大統領にもなれる素質のある真の指導者」、(離婚後独身であることから)「クオモセクシャル」などと、メディアに異常なまでに持て囃された時期もある。 一方、ロックダウンをし、飲食店への厳しいルールを設けたことで、労働者からは常に非難の的となってきた。 今回なぜこれほど、昨年の介護施設での死者数が問題になっているのか。それは3月以降、医療崩壊を避けるために、州の方針で新型コロナで入院し回復傾向にある9000人以上の患者を病院から介護施設に移し、これが介護施設死者数の増加に繋がったのではないかと、たびたび批判の的になってきたからだ。 そのたびに知事は「介護施設内での感染の多くは、入居者同士ではなく施設で働くスタッフからであり、介護施設での死者6300人(当時発表)には関係しない」「死亡したのが病院か介護施設か、誰が気にするのか?」などと発言し、批判を一掃していた。 州保健委員のハワード・ザッカー(Howard A. Zucker)博士も記者会見で、患者を移した判断は「正しかった」と説明した。知事が言うような死者数更新の「遅延」は組織ぐるみによるもののようだ。 この一連のニュースについて、あるニューヨーク市民はこのように呟いた。「あれだけ多くの感染者と死者数を出し続け、なぜメディアが持ち上げてきたのか理解できなかったけど、ようやくメッキが剥がれてきたということではないかな」。 「真実」だけを伝えてきたとされるクオモ知事。彼にとって、その真実とはどんなものなのか? 関連過去記事 コロナと闘った111日 NYクオモ知事が第1波収束宣言(ウイルスとの共存は続いていく・・・) (Text and photo by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

Clubhouse「アメリカでも」爆発的ブレイク、主要紙認める。中国に情報漏洩の指摘も

筆者は先週(現地時間の2月8日)、以下の記事を通して、クラブハウス(Clubhouse)の本国アメリカでの利用状況や認知度について紹介した。 Clubhouseの流行は日本だけ? 本国アメリカでの意外な認知度と「日本と違う」使われ方 その後も周囲の知人に引き続き聞いたり、実際の利用状況をアプリ上で確認したりしている。実感として、アメリカでは一般の利用者は1月末から動き始め、2月2日の週以降に増え続けているようだ。招待待ちの人も多く、招待枠はeBayで89ドル(約9000円)前後で販売されている。 ツイッターやYouTubeがアメリカの政治家により積極的に活用されている一方、クラブハウスでは今のところ、バイデン大統領やトランプ元大統領ほどの大物政治家の登録は確認できない。筆者が確認できた中では、次期ニューヨーク市長選に望むアンドリュー・ヤン氏やバージニア州ティム・ケイン上院議員などのアカウントはある。またパリス・ヒルトン氏、アレクシス・オハニアン氏など、セレブや起業家などさまざまな著名人が、早くから積極的にアカウントを作っていたようだ。 積極的な利用者として見逃せないのは、イーロン・マスク氏だ。彼はカニエ・ウェスト氏と登壇を示し合せたり、ツイッターを通してロシアのプーチン大統領にクラブハウスでのトークを持ちかけるなど、話題に事欠かない。 米主要紙NYTも認めた「爆発的人気」 このように利用者数が日々「増殖」する中、現地時間2月15日になり、いよいよアメリカの主要紙ニューヨークタイムズが、このように大きく報じた。 「Clubhouse, a Tiny Audio Chat App, Breaks Through」(小さな規模の音声チャットアプリ、クラブハウスがブレイク中) 記事にはラッパーのヴァニラ・アイス氏が登場しファンと交流した事例を上げ、このように紹介している。 「誕生からわずか11ヵ月のこのアプリは、嫌がらせ、誤情報、プライバシー問題などの課題が残っているものの、テクノロジーや大衆文化をいち早く試したい人々の間で、急速に人気が爆発している」 昨年5月の時点では数千人のユーザーしかいなかったスモールサークルが、先月になると400万回近くダウンロードされるほどのアプリに大成長した。クラブハウスの企業アカウントをすでに作り、専門の発信担当者を採用する動きも出はじめたという。 脆弱なサーバー、不安なセキュリティ 今のところ、正式バージョン前のベータ版なので、依然iPhoneでしか利用できない。そんな中でも利用者が激増するあまり、今月10日にはサーバーが落ちるなど、構造的な脆弱さが指摘されている。 セキュリティ面でも、気になる報道がある。スタンフォード大学の研究者が、クラブハウスのインフラストラクチャの脆弱性を見つけ、中国への情報漏洩など、危険に晒されうる可能性を指摘した。 アプリのバックエンド・インフラストラクチャの開発に、中国・上海拠点のAgora(アゴラ)社が関わっていることがわかっている。アゴラのトラフィックをチェックする技術者であれば誰でもクラブハウスで誰が話しているかを確認した上で、国家安全保障上の脅威があると判断されれば、音声データを中国政府に明け渡すことも法的に可能だという。 これに対して、クラブハウス側はサーバー面やセキュリティ面の強化と改善を約束している。またアゴラ側は研究者の指摘内容について、自分たちにそのようなことはできないと否定している。 どちらにせよ生まれたばかりで成長過程にあるアプリ故に、個人情報の保護など利用者側の安全・安心面は、現時点でしっかり確証されているものではないようだ。 (Text and photo by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

Clubhouseの流行は日本だけ? 本国アメリカでの意外な認知度と「日本と違う」使われ方

アメリカ人の意外な反応 日本で話題沸騰のアメリカ発の新SNS、クラブハウス(Clubhouse)。 昨年パンデミックの到来と同時期に誕生し、アプリの登録者は5月の時点で1500人、12月の時点で60万人だったのが、ここにきて急増中だという。データ分析会社Sensor Towerによると、今月2日の時点での登録者は約360万件に増え、過去6日間で110万件がインストールされた。この2週間ほどの日本でのブレイクの影響で、数字も日々更新中だ。 驚くかもしれないが、アメリカ在住の筆者がこのアプリについて初めて聞いたのは、1月26日のことだった。ヤフーニュースに掲載されたFUNQの記事を読んで、こんなアプリがあるのだと知った。 最近になって、知らないのは筆者だけかと心配になり、フェイスブックをチェックするもアメリカの友人でクラブハウスの話題を上げている人は1人もいない。周りの友人にも聞いてみたが「What is Clubhouse?」という答えしか返ってこない。念のためニューヨークでソフトウェア開発の運営をしているIT系の知人にも確認したが、やはりつい最近まで聞いたことはなかったという。 アメリカのIT業界は、西はサンフランシスコ(シリコンバレー)、東はニューヨーク(シリコンアレー)と言われており、シリコンバレーだけで話題になるケースも意外とあるので、西海岸の知人にも確認したが答えは皆、同じだった。(ヒアリングしたのは20〜60代) 西海岸が拠点の教育系ユーチューバー、Hapa 英会話でも、30代の自身の周りでも20代の家族の間でも、これまで聞いたことがなかった人が圧倒的ということだ。 しかし筆者は今日になって やっと1人、知っている人を見つけることができた!  ニューヨーク在住の知人はオンライン上で週2度、外国人対象にある会合を開いている。ダメ元で聞いてみたところ「先週、トルコ人がその話をしていたわ。面白いアプリだからおすすめって話題にしていたわよ」と教えてくれた。利用しているのは、当地在住のトルコ人のようだ。ということは、おそらくトルコの友人にも話題が伝わっていることだろう。 米メディアではいつ頃から話題に? アメリカの主要メディアを調べてみたところ、ニューヨークタイムズの昨年12月23日付の記事を見つけた。このような趣旨だった。 YouTuber、Viners、Dubsmashers、TikTokersそしてLinkedInなどまで、アプリ上での人気ユーザーがスターダムにのし上がった。次はシリコンバレー界隈のテック系や投資家に使われてきた音声アプリ、クラブハウスの番だ。 1月30日付のワシントンポストでも、クラブハウス関連の記事が1つだけある。 ラッパーのミーク・ミルがほかのラッパーを軽蔑するトークをしてルーム内が荒れたことから、クラブハウスに注目が集まった。失言などのモラル違反にどう対処していくのか、また一部のユーザーがお金を搾取し始めたなど、いくつか問題がある。 これらの記事が当時、一体どのくらいの人に読まれたのかは不明だ。通常、話題性の高い記事には何百ものコメントがつくが、ワシントンポストの記事へのコメントは今のところゼロだ。 次に、アメリカの大衆メディアの扱いはどうだろうか? そのほかのメディアがクラブハウスについて報じ始めたのは、2月2日の週になってからだ。大衆紙ニューヨークポスト、ウェブメディアのビジネスインサイダーなどが「クラブハウスの流行の兆し」について報じ始めた。 2月4日付のニューヨークポストは「What is Clubhouse? Everything to know about the invite-only app」(Clubhouseって何? 招待専用アプリについて知っておくべきこと)という記事を出した。クラブハウスが一般的に知られていない前提での記事なので、やはりこのアプリの知名度が、先週の時点でも一般的にそれほど高いものではなかったということを表しているだろう。 では先週、なぜ米メディアがいっせいに報じ始めたのかというと、著名人の登壇が関係する。1月31日にイーロン・マスク氏とヴラッド・テネフ氏(株取引RobinhoodのCEO)が、2月4日にマーク・ザッカーバーグ氏がクラブハウスで定期開催されている「ザ・グッドタイムショー」(The Good Time Show)に現れたのだ。 ツイッターやユーチューブのように多くの政治家にはまだ支持されていないが、一部のセレブ(俳優のケヴィン・ハートやラッパーのドレイクなど)がパイロットプログラムとして選ばれ、ルームを作っているようだ。アプリのアイコンや黒人用絵文字とも関連するのか、ニューヨークポストには「黒人のクリエイターやセレブが積極的に参加している」とある。 日本とアメリカでの使われ方の違い 筆者がクラブハウスを初めて聞いた時、友人同士で雑談をしたり聞いたりするアプリだと思っていたので、アメリカでは流行らないだろうと見ていた。しかし知れば知るほど、アメリカではベンチャーキャピタリストの討論、有名人のトークショー、DJイベント、ネットワーキング、スピードデート、演劇などとさまざまな用途で使われており、中でもシリコンバレーのテック系や起業色が強く、その界隈に興味がある人に利用されているようだ。 コロナ禍になってZoom上では、起業家や著名人を招いたバーチャル講演会やビジネス系フォーラムが頻繁に開かれるようになったが、アメリカでのクラブハウス(特に初期、シリコンバレーで人気が出たころ)の使われ方は、それにとても似ている。 メンター的な成功者がトークをし、聴衆(Z世代、ミレニアル世代)が話を聞く、というのがメインの使われ方だ。主催者に質問の場合に挙手しアンミュートとなるところや、モデレーター、タウンホール、ノミネートなどの「フォーラム(ビジネス)用語」が使われていることからも、Zoomで開かれるウェビナーの音声オンリー版や、ラジオの機能とLinkedInのコンセプトが合体したネットワーキング系のSNSといったところか。 ニューヨークタイムズの記事では、新しいアプリの多くがZ世代やミレニアル世代を意識したものであるのに対し、クラブハウスのパイロットプログラムとして初期に選ばれた登壇者は40、50代の成功者が多い。 一方日本では、起業家や芸能人によるルームも多いが、一般人によるルームも今のところ多いようだ。またフォロワーを増やしたい人がフォローバックし合うための「無言の部屋」もあるらしい…(!)。 どの国も、現在トークをする人への報酬システムはないが、今後は国ごとに使われ方が異なり、独自路線で進化していくかもしれない。 まだまだ謎の多いクラブハウス クラブハウスの運営元はアルファ・エクスプロレーション(Alpha Exploration Co.)で、CEOのポール・デイビソン(Paul Davison)氏とロハン・セス(Rohan Seth)氏が2020年2月、シリコンバレーで共同創業した。 現時点でツイッターのフォロワーは19万以上だが、ウェブサイトはほぼ空の状態。ダウンロードはアイフォンのみ、言語は英語のみ。スタッフは現在たったの10人ほどだという。 シリコンバレーという限られた地域で、しかもIT系の人々の間で話題になったというストーリーは、ハーバード大学の生徒間で使われていた初期のフェイスブックと似ている。しかしクラブハウスがフェイスブックと違うのは、アメリカの大衆に認知される前に、アジアに上陸し人気が出たということ。異例のグローバリゼーションが興味深い。 2月3日付のロイターは、1日の時点で無関係のClubhouse Media Groupの株が117%アップしたことを伝えている。中国ではAlibaba系のIdle Fishで招待枠が販売され、ユーザーは増えているようだ。中国のテック企業Agoraがクラブハウスのテクノロジーパートナーである可能性も報じられており、そのシェアが30%急上昇したという。「日本では投資家、テック系、メディアがクラブハウス界隈で盛り上がっている」とも書かれている。…

G7でワクチン承認されていないのは「日本だけ」だが、実は・・・。米紙はどう見た?

イギリスを皮切りにアメリカ、EU諸国、イスラエル、アジアでは中国、シンガポール、ネパール、ミャンマーなど、世界各国で次々と新型コロナウイルスのワクチンが承認されている。 そんな中、イギリスでの開始から2ヵ月経っても、未だに日本だけがG7の中で唯一「承認すらされていない」と、アメリカでも報じられている。 菅首相は2日、国内での接種開始を前倒しして今月中旬を目指す考えを示した。遅れにはさまざまな事情があるにせよ、世界に「大きく出遅れた」感は否めない。 1日(日本時間の2日)付の主要紙ワシントンポストは、Japan’s pharmaceutical industry is huge. But it was left behind in the race to get vaccines to Japanese citizens.(日本の製薬業界は大きいが、国民へのワクチン接種の(世界的な)競争で取り残された)と報じた。 記事にはこのようにある。 G7の中でワクチン接種プログラムの開始を待っているのは日本だけ。しかし裕福な国で、ワクチン接種が始まっていないのはオーストラリアと韓国も同様。 日本が大きく遅れを取っている理由についてまとめると、このような内容だ。 日本は、アメリカと中国に次ぎ3番目に大きな医薬品市場だが、パンデミック初期のころも厚生労働省は、精度に関する懸念から検査キットの導入に消極的で、検査開始に時間がかかった。現在も、国外からのワクチン調達に苦労しており、国内でのワクチン開発も大きく遅れている。承認されても浸透しづらいだろう。 その理由として、非常に慎重な官僚の文化、ワクチンの安全性に懐疑的な国民性、国内のワクチン業界の競争力の低さ、これまでの訴訟問題や議論、パンデミックへの準備不足、などを上げている。 以下は概要となる。 パンデミックへの準備不足: 厚生労働省は2016年の報告書の中で、すでに警告を発していた。それは『日本のワクチン業界は競争が激しくなく、ワクチンの安全性に対する国民の意識が低い。パンデミックが発生したら、日本は深刻な状況に直面するだろう』という内容だった。「この報告書は、パンデミックへの備え不足を警告していた世界中の報告書と共に棚上げされた」とある。 つまりパンデミックへの準備不足は、日本だけではないということだ。 ワクチン業界の競争力の低さ: WHOによると、世界中で臨床試験が行われている63のワクチンのうち、日本のものは1つ(アンジェス)だけ。しかし、それすら今年末までフェーズIIIの試験に入ることができない。 安全性に懐疑的な国民性と、訴訟問題: 1994年、日本政府は「ワクチンの義務化を放棄したが、同時にワクチンの安全性について国民に啓蒙することもやめてしまった」。これはどういうことかと言うと、予防接種法改正により、予防接種が社会防衛から個人防衛として大きく舵を切ったことだ。昭和時代の終盤に相次いだ予防接種禍訴訟が背景にある。2013年、比較的軽微な副作用で物議を醸した子宮頸がん予防のHPVワクチン接種の推奨も中止となった。 「これにより、数千人の命が(子宮頸がんによって)奪われた可能性がある」と記事にはある。日本人がワクチン接種による利点の方に目が向かないのは「『完璧さ』への期待、過ちへの不寛容、物事が完璧でない場合に責任の所在を明らかにする傾向など、さまざまな日本の文化に根ざしている」(在日経営コンサルタント)。 接種を様子見しているのは日本人だけ、ではない アメリカでの新型コロナウイルスのワクチン接種は、12月14日に開始した。筆者の住むニューヨークでも、フェーズごとに優先順位をつけて接種が進んでいる。フェーズ1aと1bまで(エッセンシャルワーカーや65歳以上)が接種可の対象となっており、2日よりタクシー運転手や飲食店の従業員もフェーズ1bの対象内となった。 ちなみに接種はすべて無料で行われている。「すべての人」が接種を受けられるのは当初第2四半期とされてきたが、最新の情報では「夏ごろ」になる見通しだ。ただし、最近になってワクチン不足が叫ばれ始めているので、その時期もずれ込むかもしれない。 アメリカの報道では、連日のように予防接種を受けたり接種会場に並んだりする人々の姿が映し出されている。一方、1日付のニューヨークポストでは「アメリカ人の半数が新型コロナワクチンを拒否または様子を見る」という、最新の調査結果が発表された。 カイザーファミリー財団(Kaiser Family Foundation)による世論調査では、ワクチン接種を希望する人の数は12月以降増加しているが、それでも51%の人が接種を「拒否または延期する」と答えた。約半数がワクチンの副作用や有効性に関する十分な情報がないと答えており、その内訳は31%が接種前にワクチンの有効性と副作用についてさらなる結果を見たいと述べ、13%は接種を拒否、7%は(旅行や就職などで)必要となった場合のみ接種するとした。一方で回答者の41%は、できるだけ早く予防接種を受けたいと答えており、その数は12月に比べて7%増加した。6%は世論調査が実施された時点(1月)で、すでに接種を受けていた。 また世論調査には、黒人とヒスパニック系の成人で若い世代は、情報不足に警戒しているが、これらの層の中にも先月以降、予防接種を受けたいと考え始めた人が増えているとある。 日本人の傾向としてワクチンに懐疑的と言われているが、同調査によるとアメリカの人も半数近くは接種に前向きだが、同数の人が足踏みしているということだ。ちなみにアメリカでは農村部に住んでいる共和党支持者ほど、接種にためらう傾向にあるという。 アメリカのメディアでは最近になって再び、東京オリンピックについての報道を見かけることも増えてきた。日本でのワクチンの承認や浸透について気になるのは、オリンピックの開催にも関わってくることになるからというのも一理あるだろう。 関連記事 【新型コロナワクチン】死者30万人超の米国 初接種の感想は?一般はいつから? (Text and photo by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース…

NYにもいた炎上系ユーチューバー。ドッキリ企画の度が過ぎて逮捕

レッドオーシャンのユーチューブ界。少しでも視聴回数を稼いだりライバルに差をつけようと、中堅ユーチューバーの多くは必死だ。 観ていて気分が向上したり、世のためになったりする内容であれば誰からも文句は出ない。しかし中には、シャレにならないほど度が過ぎるものを作り拡散する者もおり、たびたび問題になる。 ただの炎上商法なのか、動画アップにのめり込んでいくうちに常識・非常識を線引きするネジが緩んでくるのか、人を傷つけることを平気で行ったり、他人を巻き込んで周囲や社会に迷惑をかけたりと、その非常識たるや甚だしい。 ドッキリ企画の度が過ぎて御用 28日、お騒がせユーチューバーのPrince Zee(プリンスジー)こと、ジーシャン・サロヤ(Zeeshan Saroya)容疑者(30)が逮捕された。 Prince ZeeのYouTubeチャンネルは、15万9000人以上の登録者がいる。 サロヤ容疑者はニューヨークの中心地タイムズスクエアで1月10日午後3時ごろ、動画のドッキリ企画として、運転中に突然気を失った人物を装い、市警察や市消防局を出動させ騒ぎを起こした。 13分の動画は、容疑者らが綿密に企画を練っている段階から収録が始まる。そして「道路のど真ん中で突然運転手が気を失ったら、ニューヨーカーはどのような反応をするか、検証してみよう」と言っている。 動画の中でサロヤ容疑者は、突然車内で気を失った運転者を装い、頭をハンドルに打ち付けそのまま動かなくなった。周辺にいた警察は鳴り止まないクラクション音に気づいてすぐに集まり、車の窓ガラスを割って容疑者を救助した。 そのあと救急車も出動し、容疑者は自力で歩いて乗り込もうとしている。その後知人が迎えに来たため、容疑者は解放された。 容疑者は警察に破壊された車をチェックしながら、「この検証で最も大切なのは、警察も救急隊も行動が早かったということだ。この動画を観た視聴者は、おそらく自分のことを嫌いになっただろう」とコメントしている。 動画は25日にアップされすべてが作り話だったことが判明し、28日に行政妨害、虚偽の事故報告、迷惑行為などで逮捕、起訴となった。ただし、容疑者は出廷命令書を受け取った後、釈放となっている。 この動画は29日現在で16万回以上が再生されている。コメントには「間違いだ」「まったく面白くない」「皮肉にも再生回数が伸びている」「逮捕されるべきだ」という至極真っ当な意見が多いが、トップには「登録者100万人を目指そう」と容疑者の間違った行動を煽っているものもある。また、低評価が2300に対して、高評価が8300と多い。 元祖、お騒がせユーチューバーは今 アメリカの元祖炎上系ユーチューバーと言えば、ローガン・ポール(Logan Paul)氏もその一人。現在25歳となった彼は、俳優やシンガー、ボクサーとしての顔も持つ。ユーチューバーとしても健在で、メインチャンネル登録者は2280万人、2つのサブチャンネル登録者は515万人と9万6900人と、安定の大人気を誇っている。 ポール氏が炎上したのは、2017年12月31日にアップした動画だ。日本を訪れた際、山梨県青木ヶ原樹海で自殺した男性の遺体を録画してユーチューブに上げ、これが大炎上した。 当時チャンネル登録者数は約1500万人で、この動画はすぐに削除されたが、アップから24時間以内に630万回も再生された。 ほかにもポール氏は日本滞在中、築地市場でフォークリフトに勝手に乗りこんだり、人混みの中で服を脱いだりとお騒がせ&いたずら行為をし、大批判された。 2018年1月2日にアップした謝罪動画は、5900万人以上が視聴している。ユーチューブ社はその8日後、ポール氏のチャンネルをGoogle Preferredや優先広告プログラムなどから削除すると発表し、一時的に広告出稿も不可措置を取ったが、同社CEOのスーザン・ウォジスキー(Susan Wojcicki)氏は、ポール氏は同社の規約に違反しておらず、チャンネルを削除しない方針を発表した。 自らの行いを反省したポール氏は同年1月24日、自殺予防の啓蒙動画を発信し、これまでに3000万人が視聴している。 動画の中で、ポール氏は自殺防止団体へ寄付したことも語った。また、専門家への取材を通し、自殺を引き止めるために周りがやるべきこととして「尋ね、話をひたすら聞き、一緒にいて、繋がることを手助けし、気にかけてあげること」が大切だと話した。 アメリカのみならず、日本でもたびたび問題になっているユーチューバーやインフルエンサーの不祥事や行き過ぎた問題行動。せっかく知名度や社会的認知を手に入れることができたのなら、おふざけはほどほどに、少しでも人を救ったり社会のためになる行動を取るべきだろう。 過去のYouTube関連記事 SNS疲れとインフルエンサーの憂い 任天堂を誰よりも愛した米YouTuber死す (Text and photo by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

逮捕者135人の一部は釈放、 警官2人が自殺 ── 議事堂乱入事件、その後

すでに釈放された逮捕者も 1月6日にワシントンD.C.の連邦議会議事堂で起こった乱入事件から、3週間が経った。 デイリーニュースなど米主要メディアによると、これまでに400人の容疑者が特定され、大陪審の召喚状と捜査令状の発行は500を超えている。 実際の逮捕者は今のところ135人に上る。その中には、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党)のパソコンを盗み、ロシア情報当局に売り渡そうと企て、政府所有物の窃盗罪などで逮捕されたライリー・ジューン・ウィリアムズ(Riley June Williams)容疑者(22歳)も含む。同容疑者は先週すでに釈放されており、現在は母親宅で監視下に置かれている。 詰めが「甘過ぎた」警備 あの日、大きな衝突が勃発する懸念はあったものの、議事堂警察(USCP)は連邦機関に警備の応援を事前に要請しておらず、結果的に乱入や暴動を許すことになってしまった。その警備態勢の不備や詰めの甘さが指摘され、スティーブン・サンド(Steven Sund)議会警察署長は、16日付で辞任した。 議事堂警察を代表する組合は27日、「指導する立場としての準備不足に怒りとショックを覚え、許しがたい」との声明を発表した。この日警備にあたっていた警官1200人に、事前に正しい情報伝達がされていなかっただけでなく、ヘルメットを配られずに頭部に外傷を負った警官もいたとある。 警官3人が死亡(1人は殉職、2人は自殺か) 事件後の悲劇は続いている。あの場で対応していた議事堂警察の中で、身体的もしくは精神的なトラウマなどの損傷を受けたのは140人近くいることがわかっており、その後の相次ぐ死亡も伝えられているのだ。 警官として15年以上のキャリアを持つハワード・リーベングッド(Howard Liebengood)警官(享年51歳)は、乱入事件のあった6日から3日後の9日に死亡したと、翌10日議事堂警察が発表した。 リーベングッド警官は2005年より議事堂警察に勤務し、上院の守衛部門に配属されていた。死因など詳細は明らかにされていないが、情報筋による証言をもとにした主要メディアの報道では「明らかに自殺」とされている。死亡した9日は、自身の非番の日だった。AP通信は、乱入事件が自殺の直接の原因かどうかは不明とした。 27日になり、別の警官の自殺も伝えられた。12年のキャリアのあるジェフリー・スミス(Jeffrey Smith)警官は、15日に死亡した。コロンビア特別区首都警察(MPD、通称DC警察)のロバート・コンティー(Robert Contee)署長代理は、「事件の余波」が自殺に繋がったとする見方を示した。 自殺ではなく、群衆によって「殺された」警官もいる。事件の翌日、議事堂警察のブライアン・シックニック(Brian D. Sicknick)警官(享年42歳)は、襲撃によって亡くなった5人のうちの1人として、報じられた。 2008年から議事堂警察に所属していたシックニック警官は、同署の緊急出動部署に配属されていた。事件日は暴徒化した人々との衝突時に消火器で殴打されるなどで負傷し、いったん自身の部署がある部屋に戻ったものの、そこで倒れて病院に搬送され、翌日夜に死亡が確認された。シックニック警官の死に関しては、誰も逮捕、起訴されていない。 関連記事 トランプ支持者は、厳重なハズの議事堂を「なぜこれほど簡単に」襲撃できたのか? ── 現地で深まる謎 今年最初の「悪夢」… 怒りのトランプ支持者が議事堂を占拠しカオス状態に (Text and photo by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

【コロナ特別定額給付金】貯金の日本。アメリカ人は「2度の支援金」一体何に使ったか?

新型コロナウイルス(Covid-19)の影響による景気回復のため、世界各国では国民や事業オーナーに対して、特別定額給付金措置がとられている。 日本では昨年、1人当たり10万円の特別定額給付金が支給された。その用途は一様ではないが、4割から6割の人が貯金したという調査結果もある。麻生副総理兼財務相は以前、給付金に消費を押し上げ景気を浮揚させる効果は薄かったという認識を示しており、菅首相も1月26日の衆院予算委員会で「再支給の予定はない」と答えた。 2度支給のアメリカは、3度目も? 新型コロナの大打撃を受けているアメリカ。パンデミックが長引くにつれて人々の財政難は日本以上に深刻で、特別定額給付金は昨年と今年の2度、支給されてきた。 1度目は昨春、大人(外国人も含む納税者)1人につき1200ドル(約12万円)。2度目は今月、大人1人につき600ドル(約6万円)だった。これに加え、17歳未満の子ども1人につき1度目は500ドル(約5万円)、2度目は600ドル(約6万円)ずつも追加給付された。 そして早くも、3度目の給付金の話が浮上している。 現在、バイデン政権によって協議されている1兆9000億ドル(約190兆円)の新型コロナ救済対策は、3度目となる給付金構想も含んでいる。 最終的には1兆〜1兆5000億ドル程度に落ち着くかもしれないが、どちらにせよこの対策案が通過したら次の給付金は4月ごろ、これまででもっとも多い大人1人につき1400ドル(約14万円)の支給になる可能性が高い。 また新政権は、過去2度にわたり給付対象外となった扶養家族の17歳以上〜大学生も対象内としたい考えだ。実現に向け、国民からの期待も大きく膨らむ。 何せアメリカの国内失業率は依然として高い。昨年4月の最悪期(14.8%)に比べて下降したものの、最新の数値(昨年12月)は6.7%だ。今年に入り第1週だけで予想を超える100万人の失業給付請求がされた。 参照記事 昨年3月、緊急支援金2.2兆ドルの経済対策法が成立。個人への現金給付、失業給付、助成金などに充てられた。 新型コロナで失業「来月の家賃が払えない」 救済金13万円はどこまで国民を救えるか アメリカの人々は給付金を何に使ったか? ワシントンポスト紙は26日、今月支給された2度目の給付金について、人々の消費動向を報じた。非営利調査組織Opportunity Insightsの調査結果をもとにした分析によると、年収が高い世帯より低い世帯の方が、給付金の受給期間の消費活動に大きな動きが見られた。 例えば年収7万8000ドル(約780万円)以上の世帯はこの2ヵ月間で、クリスマスの買い物以外に消費動向に大きな変化は見られなかったものの、年収4万6000ドル(約460万円)未満の世帯は給付金を受け取った今月上旬から、消費活動や支出額が大きく動いている。 年収に関係なく、初回の給付金の時期の方が2回目より消費動向に大きな動きが見られたのは、「収入が低い世帯は依然として不況に陥っている一方で、収入が高い層は仕事復帰したからだろう」と見た。 また、年収2万5000ドル(約250万円)未満の世帯の87.6%は、給付金を使い切ったとある。 センサス(米国国勢調査局)が初回の給付後に発表した内容によると、調査に回答した7万3472世帯の中で、給付金やビジネス支援金を食費に充てた人が約80%と、用途として最多だった。また別に、家賃や住宅ローン、光熱費、携帯電話やネット費などにも充てたかその予定と回答した人も多かった(77.9%)。半数近くの人は家庭用品にも、5人に1人は衣類にも使っていた。少数だが電化製品や家具、フィットネス機器、おもちゃやゲームなどの娯楽用品に充てたと回答した人もいた。 一方、年収7万5000ドル(約750万円)〜10万ドル(約1000万円)世帯の人々は何らかの支援金を受けても、生活費ではなく借金や貯金に充てる傾向が見られるという。アメリカでは通常、それくらいの年収世帯になってくるとその場しのぎの現金を必要としないため、給付金を受けても経済を回すアクセラレータには繋がらないようだ。現金給付の対象を年収約750万円辺りで線引きするのは、この国では妥当とする見方を示した。 関連記事 3高(家賃、物価、失業率)のNY コロナ危機の中、人々は今月をどう乗り切ったか (Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

乱入防止の鉄線の外側で起こっていたこと ── 米大統領就任式【現地ルポ】

アメリカでは20日、新大統領のジョー・バイデン氏、新副大統領のカマラ・ハリス氏の就任式が無事に執り行われた。 今年は新型コロナウィルス感染拡大に伴い、規模が縮小され、式典はバーチャル形式で配信された。筆者も直前まで自宅で見届けようかと思っていたが、この歴史的な日の現地の様子を自分の目で見たいと急に思い立ち、1週間前にアムトラックのチケットを購入した。すでに売り切れ間近で、唯一購入できたのは午前3時25分ニューヨーク発の便だ。 列車は感染防止で空いていた。それでもカメラマンやユーチューバーらしき若者が何人か乗っていた。ばったり車内で会い「ノープランだよ。現地に行って決めようかと思って」と話している。そのうち、チケットを見に車掌がやって来て「オーマイガ〜ッ。店も開いてないのに、みんなD.C.に行くなんて。グッドラック!」と声をかけた。 早朝7時に首都ワシントンD.C.に到着。外はまだ薄暗い。いるのは警察犬を連れた警官と州兵、そしてジョギング姿の人が何人か。 6日に起こった過激派による議事堂乱入事件後、就任式のために州兵2万5000人が派遣された。出発前、友人は「ニュースでは危ないから近寄るなと言っているぞ。それでも行くのかい?十分気をつけて」と心配した。 確かに現地は戦場かと思うほど、ライフルを担いだ州兵がごまんと配備され、警官、爆薬探知犬、私服警官もたくさんいたが、逆に「安心感」に繋がった。有刺鉄線付きフェンスが張り巡らされ「議事堂には絶対に侵入できない」「何事も起こりえない」システムになっていたからだ。重装備の兵士の多くは鉄線の「内側」に1メートル間隔で立っている。彼らに緊迫した様子はなく、散歩中の人と笑い合ったりする姿も見かけた。すれ違いざまに目が合うと「おはよう」と向こうから筆者に声をかけてくれた兵士もいた。そこに立たされているだけの有り余る兵士を見て、「もう2度と暴動なんて起こすなよ」という強いメッセージ性を帯びた見せしめのように感じた。 正午:新大統領誕生 そうこうしていたら、就任式イベントの時間が迫り、柵の外側にも人がかなり増えてきた。 正午という時間をもって、正式に新大統領が誕生する。バイデン支持者も多く集まっていたから誕生と共にカウントダウンや拍手でも起こるのかと思いきや、所々で歓声は上がっていたものの、正午の時点で特に何もなかった。バイデン派、トランプ派、そのほか宗教団体が、それぞれお互いの主張を時に激しく遣り合っていた。 この日は6日のような過激派の姿はなく、キリスト教の保守的勢力(宗教右派)と呼ばれる人々の抗議活動が目立った。 このような一幕もあった。「トランプは間違った方向にリードしてきたと思う」と、バイデン支持者の女性がメディアのインタビューに応えていたら、通行人の年配の女性から突然ヤジが飛んできた。「ほらね、こういうことなのよ。このような振る舞いをしていいなんて、憲法でも(議事堂を指差しながら)あそこでも指導されていない。今の人が間違った方向の良い例ね」。 ジェシカファミリーは、DACA(ダーカ:不法移民の子に対して、強制退去処分を猶予する移民政策)を強く支持しており、「新政権にはICE(移民税関捜査局)を廃止してほしい」と期待を膨らませる。 「アメリカの危険な歴史の始まり」と危惧するのは、メガホンを抱えたニック・キメラ・ジュニアさん。ニューヨーク州ロングアイランドからやって来た。ただし彼はトランプ派でもバイデン派でもないと言い、「クライスト(キリスト教教派)だ」と胸元のバッジを指しながら自らをそう表現した。「数えきれないほどの胎児が中絶により犠牲になってきたが、新政権は中絶を支援する方向だ。また警察による残虐行為など、国が荒れていることも心配している」。 「同意できないからといって、お互い憎しみ合うのはやめよう」 この日の就任式では、ハリス副大統領、ミシェル・オバマ元米大統領夫人、ヒラリー・クリントン元国務長官の3人が、紫の衣装で臨んだことが注目を集めた。共和党のシンボルカラー(赤)と、民主党のカラー(青)を混ぜると紫になることから「融和」や「結束」の象徴なのだ。 しかしこの日、筆者が柵の外で目にしたものは、相手の意見を暴言などで遮る、互いの主張を一歩も譲らない人々だった。 また現場には、報道陣やユーチューバーらしき人々も非常に多かったのだが、ちょっとしたいざこざが起こったり過激な主張や行動をする人たちばかりが注目を集めていた。 そんな中、筆者はほとんど誰からの視線も浴びることなくひっそりと隅に置かれていたこのメッセージに注目した。 Stop Hating Each Other Because You Disagree (同意できないからといってお互い憎しみ合うのはやめよう) by TruthConductor. tv 心機一転、新たな4年が始まろうとしている。今まさに、このような姿勢こそがこの国に一番必要なのではないだろうか。 【この後ビデオも載せる予定】 (Text and photo by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

異例ずくめの「大統領就任式」(日本での視聴方法、スケジュール、豆知識)

テロや暴動を警戒し、異例の警備態勢 ジョー・バイデン氏が第46代アメリカ大統領となる就任式が、現地時間の1月20日(日本時間の21日)に迫った。 今月6日の連邦議会議事堂の襲撃を受け、全米各州では警備が強化され、就任式が行われる首都ワシントンD.Cには2万人規模(最大2万5000人)の州兵が動員されるなど、デモや暴動に備え、最高レベルの警戒態勢が敷かれている。 この2万人超えの数がどのくらいの規模かというと、アフガニスタンとイラクに駐在する米軍が現在5000人ほどで、その4倍以上。在日米軍数は5万4000人弱なので、その半分〜3分の1がワシントンD.C.に配備されるということになる。 過去の就任式と比べても、今年の州兵の数は格段に多い。 オバマ氏(2009年)1万人 オバマ氏(2013年)6000人 トランプ氏(2017年)8000人 新大統領の就任&宣誓式は正午(日本時間の21日午前2時)から、連邦議会議事堂の一部であるルーフバルコニーで行われる。つまりこの時間をもって新たな大統領が誕生し、前大統領は任務終了となる。今年は新型コロナの感染拡大に加えて暴動への警戒が再び高まっているため、就任式の規模は大幅に縮小される。 議事堂前や国立公園ナショナル・モール、および周辺道路や一部の橋は閉鎖されるため、一般の人々がいつものように議事堂前で就任式を見守ることはできない。周辺の駅や博物館などもクローズする。 (1801年のジョン・アダムズ、1833年のジョン・クィンシー・アダムズ、1869年のアンドリュー・ジョンソンの元3大統領を除き)退任する大統領は就任式に同席してきた。しかしトランプ氏は出席しないと表明しており、20日朝にワシントンを出発しメリーランド州の空軍基地での送別会に出席後、フロリダ州にある別荘マー・ア・ラゴへ移動する予定が伝えられている。 FBIは、全米50州の州議会議事堂でもデモが起こる恐れがあるとして、全米中で警戒を呼びかけている。 豆知識:大統領就任式の歴史 首都としてのワシントンD.C.はまだ存在していなかったため、初の就任式(ジョージ・ワシントン初代大統領、1789年4月30日)はニューヨークのフェデラルホールで行われた。第2代ジョン・アダムズ大統領はフィラデルフィアで、第3代トーマス・ジェファーソン大統領からワシントンD.C.で行われるようになった。ケネディ大統領が暗殺されて第36代大統領となったリンドン・ジョンソン氏が、テキサスからの帰りの機内で就任宣誓を行った例もある。 就任式直前のブリーフィングを我々記者団に開いてくれた政治学者である、ジョージ・ワシントン大学の准教授および政治管理研究科ディレクター、ララ・ブラウン博士談(Lara M. Brown, Ph.D.) (リンカーン大統領就任時も警戒レベルが最大だった)奴隷解放の父、エイブラハム・リンカーン第16代大統領の最初の就任式(1861年3月4日)では、ワシントンD.C.の議事堂前に3万人もの群衆が集まり、アフリカ系アメリカ人の姿も多かった。ただし南部では新大統領の政策への反対者も多く、選挙の勝利確定後、リンカーン氏に対して誘拐計画や殺人予告が出るなどし、就任式の警戒レベルが引き上げられた。就任式から1ヵ月後、4月12日に南北戦争が始まり、翌年9月に奴隷解放宣言。1864年の選挙で再選を果たし翌年3月に2度目の就任演説を行ったが、その6週間後に暗殺され亡くなった。 出典:ワシントンポスト紙「Lincoln’s first inauguration met with threats of kidnapping, killing and militias」 大統領任期最短は、第9代のウィリアム・ハリソン氏。1841年、就任からわずか32日後に病死した。「就任演説の最中に肺炎にかかったとされている。通常寒い日が多く、それ以来演説はコンパクトになった」。(ブラウン博士) 20日の就任式スケジュール 就任式の当日のスケジュールを紹介する。 前述のように、正午から就任式が始まる(イベントは午前11時半から)。この中で新大統領が宣誓し、演説を行う。 毎回のごとく団結の呼びかけがテーマとなる。「通常この時期はまだ両党共に感情的ではあるが、この演説により反対派のパルチザンの批判が控えめになり、新大統領の支持率が上がることも事実」。(ブラウン博士) またイベントの一部として、プロ歌手による米国歌も披露される。今年の国歌斉唱はレディー・ガガが選ばれた。 前回トランプ氏の就任式(2017年) 前々回オバマ氏の就任式(2013年) 就任式の後、通常はパレードが行われるが、今年は新型コロナの影響で中止。その代わり今年は全米のヒーロー(医療関係者、エッセンシャルワーカー、兵士など)や人々を「つなぐ」がテーマの「バーチャルパレード」が、午後3時(日本時間の21日午前5時)からオンエアとなる。バイデン氏は大統領専用車と徒歩で、ホワイトハウス入りする。 日が暮れると、通常であれば華やかな就任舞踏会が開催される。しかし今回は趣向を変え、午後8時30分(日本時間の21日午前10時30分)から90分間、全米の“ヒーロー”にスポットライトをあてた特別番組「セレブレーティング・アメリカ」が放送される。 司会がトム・ハンクス。ほかにジョン・ボン・ジョヴィ、ジャスティン・ティンバーレイク&アント・クレモンズ、デミ・ロヴァート、エヴァ・ロンゴリア、ケリー・ワシントンなど豪華メンバーが出演予定。 通常は就任舞踏会でのファーストダンスは目玉だ。アメリカでは、結婚式など祝いの場で欠かせない大切な伝統の1つ。就任式の夜は和やかな空気の中で新大統領夫妻が披露する社交ダンスを見て、これから迎える4年間に思いを馳せ、幸せや団結、新たな決意を感じるもの。これがない就任式は物足りない気もするが、「ファーストダンスも事前に録画されたもの、もしくは当日人の少ない室内で踊るなど何らかの映像を公開する可能性は十分考えられる」。(ブラウン博士) トランプ氏の就任舞踏会のファーストダンス オバマ氏の就任舞踏会のファーストダンス ブルース・スプリングスティーン、フー・ファイターズ、ジョン・レジェンド、ジェニファー・ロペス&アレックス・ロドリゲス、ガース・ブルックスなども、就任式当日のゲストとしてラインナップされているが、詳細は明らかになっていない。 ライブで観る方法 今年の就任式は自宅での視聴が推奨されており、1日を通してライブストリーミングがメインとなる。 現地時間の20日午前9時(日本時間の午後11時)より、全米の主要放送局で放送が開始する。ホワイトハウスの公式ウェブサイト、バイデン就任委員会の関連のFacebook、YouTube、Twitter、Twitch、Amazonプライム・ビデオ、Bingなどでライブ配信される。(地域によって多少異なる) 日本からも大部分をリアルタイムで観られるだろうから、アメリカ史に深く刻まれるであろう異例ずくめの今年の就任式を、ぜひ見守ってみてはいかがだろうか。 (Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止