18億円新築コンド最上階「ペントハウス」から見た圧巻の景色【NY高層階の暮らし】

Photo: (c) Kasumi Abe ニューヨークは地上と上空からの景色がまったく異なり、両方のアングルが絵になる街だ。今回筆者は、マンハッタンにある新築コンドミニアムの最上階、ペントハウスの住居スペースを訪れた。 場所は、歴史的景観が眺望に入るノマド地区にある。 ノマド地区は以前は問屋街として栄えてきた街だが、2000年代以降もっともおしゃれなエリアの1つに進化した。そのきっかけは、クリエイティブ界隈では誰もが知るエースホテル(ACE Hotel)の進出だ。2009年の開業以来、ラグジュアリーホテルやミシュランレストランが続き、街は開花した。 エースホテルがノマドに目をつけた理由の1つに、素晴らしいヨーロッパのバロック建築物群の景観があっただろうというのは想像に難くない。この界隈に佇むビルはどれも歴史的な深みがあり美しい。 パンデミックの終焉と共に世界中からおしゃれな人々が舞い戻り、そんな人々が街に彩りを添えさらに活況を呈する。 「今もっとも新しくホットで勢いのある地区です」と言うのは、米不動産会社コア(Core)アソシエイトブローカーのジョン・ハリソンさん。「リッツ・カールトンや高級会員クラブ&ホテルのネッドも昨年開業し、おしゃれな街をさらに牽引しています。ラグジュアリーさと便利で洗練された生活の質を両方求める人にとって最高の立地なのです」。街づくりのプロもそのように太鼓判を捺す。 NoMad そんなノマド地区に完成したばかりの高級コンドミニアム、ローズヒル(Rose Hill)。ディベロッパーであるロックフェラーグループが手がけた最新の住居用高層ビルだ。 121のユニットを擁す45階建てで、42階から上はペントハウスになっている。3ユニットのうちの1つを訪ねた。 「わぁ!!」。ハリソンさんが玄関ドアを開けてくれた瞬間、思わず感嘆の声が漏れた。素敵な家にお呼ばれし玄関を開けた瞬間にテンションが上がることがある。または家探しで30軒もの見学後、中に入った瞬間ここだ!と直感でわかる。ついに運命の家に辿り着いた、まさにその心境だ。 眩いばかりの自然光の向こうには絶景が広がっており、期待が一気に膨らむ。 なんてったってここから見える景色は、43階の目の高さのニューヨーク摩天楼だ。ここに住むことができるのは「成功の証」。高所得者の中でも限られた層だけが手にできる「億万長者の景色」とでも言おうか。 家を見せてもらう場合、筆者はリビングルームからチェックすることが多いが、ここはいきなりバルコニーから見せてもらうことにする。 高層ビル群の中に住居を持つと、いくら高層階でもお隣さんの窓がすぐ目の前なんてことはニューヨークの高層ビルあるあるだが、ここは周囲に景観を遮るものがないのが良い。 景色もド迫力だが、バルコニーの大きさにも驚いた。ここで週末のブランチをしたら最高に楽しそうだ。「夕暮れ時はさらに綺麗なんですよ」とハリソンさん。夜は“1000万ドル”の夜景を見ながらワインやシャンパン、ウイスキーグラスを傾けるのがご一興。 目の前の絶景に言葉を失ったところで、室内に戻る。 まずはキッチン。料理が楽しくなるアイランドタイプだ。床から天井まで全面窓なので自然光がさまざまな角度から射し、室内は明るい。 この家にテレビは要らない。キッチンカウンターに立ち、外の景色を眺めながら料理をする。オープンスペースにもできるため、右奥のリビングにいる家族とのコミュニケーションも取りやすい作り。 団欒スペースのリビングルームには、温かい雰囲気を醸し出すおしゃれな暖炉がある。ここでゲストを迎えたり、家族でボードゲームをしたり、仕事から帰宅後に一息ついたり ── 。 その奥は書斎・オフィススペースになっている。ここで仕事をすれば捗ること間違いなし。 「上もぜひ見てください」とハリソンさん。なんとこのペントハウスは43、44階と2フロアにまたがっているのだ! 上階では、すべてのものがさらに想像を超えるスケールで我々を待ち構えていた。まるで高級ホテルの一室のような、広々とした寝室空間。 全方向、どの角度から見ても「絵」になる圧巻のペントハウスで、筆者は終始、声を失った。これまで見てきたレジデンシャル・ビルディングの中で確実に五指に入る物件だった。 見るものすべてが想像を超え、ここに住むことになる人たちは一体どんな仕事をし、どんな人生を歩んできたのかと思いを巡らせる。きっとこれも想定をはるかに超越するものであろう。 気になる購入価格は、日本円に換算して約17億8000万円也。加えて共有費と税金が毎月140万円ほどかかる。これほどの価格帯であっても3つのペントハウスのうち2つはすでに完売済みで、このユニットが現段階で残っている最後の1室ということだ。 「このローズヒル(ビル)はプロジェクトの立ち上げ以来、販売速度が速く、一部のユニットはすでに売り切れてしまいました」とハリソンさん。アメリカでは住宅ローンの金利が上昇しているが、富裕層を対象とした高級物件の需要は依然高いことを示唆している。 43〜44階の「PHB」フロアプラン Rose Hill「Penthouse B」 価格:1299万5000ドル(約17億8000万円) 2ベッドルーム、3バスルーム、リビングルーム、キッチン、書斎/ラウンジエリア、2バルコニー 室内面積:2,610平方フィート(約242.5平方メートル) バルコニー面積: 613平方フィート(約57平方メートル) 税金は月5,711ドル(約78万3000円)、共有費は月4,255ドル(約58万3000円) NYの住まい関連記事 【億ションのお宅拝見】 Text and photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

【億ションのお宅拝見】NYクリエイティブ地区ブルックリン・ダンボの3億円超!新築コンドの中身

先日内覧したニューヨークの閑静な高級住宅地、グラマシーパークの新築コンドミニアム(分譲用の集合住宅)に続き、筆者が訪れたのはブルックリン区のダンボ地区。 ダンボ地区はマンハッタンに掛かる橋の袂に位置する。元は倉庫街で、今も昔ながらの煉瓦造りの建物や石畳が残り、独特の風情がある。 歴史的に若手のアーティストやクリエイター、テック系の人が多い理由は、マンハッタンの地価が高騰し、芸術家が広いロフトやアトリエで少しでも安く活動できるようにと、20世紀末ごろから倉庫街だったダンボに移ったからだ。今では倉庫やロフトをリノベートしたハイエンドなレストラン、世界的規模のホテル、テック企業が進出し、市内でも有数のハイエンドな地区(ネイバーフッド)として知られる。 DUMBO, Brooklyn 今では地価や物価が急騰し、不動産会社のPropertySharkによると、中央値で見ればダンボ地区はブルックリン区でもっとも高く、ニューヨーク市内でもトップ8位。(2020年の統計) 「ダンボは活気に満ちたウォーターフロントに位置し、人々がブルックリンで最も憧れる地区の1つです」 Front & Yorkのデベロッパーで米大手不動産関連企業CIMグループのジェイソン・シュライバー(Jason Schreiber)さんはそのように説明する。「豊かな緑地、歴史的建造物、人気飲食店などお出かけが楽しくなる魅力が多く、訪れた人はこの活気に虜になります」。 駅近の立地も当地では人気物件の指標の一つだ。地下鉄最寄り駅は、マンハッタンから1駅のYork駅。その駅を出てすぐ角に完成したのが、今回訪れた新築コンド、Front & York。 エントランスを入るとドアマンのいるレセプションがあり、その奥はライブラリー&コミューナルスペースとなっている。ここで住民同士が語り合ったり、コワーキングスペースとして仕事に利用したりと、使い方は千差万別。 さらにドアの向こう側は、住民専用の公園が広がる。 建物は21階建ての2つのレジデンシャルビルから成る。建築は、周囲の倉庫街との同化するよう、当地のMorris Adjmiが手がけた。Morris Adjmiは、ブルックリンブームの先駆けとして建築系やファッション系なら知らない人はいないワイスホテルの建築でも知られる。 早速、3ベッドルーム(4階)と2ベッドルーム(9階)のユニットへ。 入り口のドアを開けると、大きなウォークインクローゼットがあるのはとても便利。靴箱はもちろん、ベビーカーや冬物コート、趣味のゴルフセットや釣り具などここに入れておけば、部屋全体がすっきりと片付く。 奥のリビングルームはどちらも広く明るい設計。これらのインテリアデザインはすべて、当地のASH Staging(ASH NYC)が手がけた。 ユニットによっては、このような壮大な景色も部屋から見られる。「こちらは西方向なので、夕暮れ時や日が落ちた後はもっと素敵なんですよ」と、Front & Yorkのセールス担当、サラリン・ヘルスターンさん。 4階のユニット(4E)はカウンターキッチンで、夫婦どころか家族総出で使えそうなほどスペースたっぷり。調理台はトースターやコーヒーメーカーでごちゃごちゃしやすいが、冷蔵庫や食洗機までラグジュアリーで落ち着いた木製のイタリアンキャビネットでまとまめられているので、すっきりとした印象。 大切な来客のための、高級感あるゲスト用パウダールーム。こちらも広くてゆったりしたスペース。 一転、子ども部屋は白が基調で明るい作り。 Front & Yorkのさらなる魅力は、住居ビル内の充実した共有スペースにある。 プロのシェフを招いた調理イベントやYouTube撮影ができるキッチンスペース、コワーキングスペース、キッズルーム、屋内&屋外プールを備えたフィットネスクラブ、バスケットボールコート、演奏の練習や音楽イベントのためのミュージックルーム、ワイン・テイスティングルーム、ビリヤードバー&ゲームルーム、ペット用スパまで完備。コミュニティマネージャーが常駐し、住民のライフスタイルをサポートしてくれる。まるで一つの街であり、外に出る必要を感じさせないほどだ。筆者もさまざまな物件を見てきたけど、ここまでの充実度は希少! ニューヨークは全米の中でも不動産価格が格段に高いが、今年の住宅価格は昨年に比べると下落傾向という報道がある。一方インフレを抑えるための大幅な利上げを背景に、住宅ローンの金利は上昇している。 購入価格は4階のユニット(4E)が日本円で3億円超え、9階のユニット(9-19B)が2億円超えとなっている。当地でも比較的高い物件だが、シュライバーさんによると今年の初めから、購入希望者からの問い合わせが多く、販売に繋がっているという。 「目の肥えたバイヤーは美しく最高のデザインの住居空間を常に探していますから、Front & Yorkの屋外スペースや機能的な設備、エキサイティングなロケーションの良さなどが目に留まっているようです」(シュライバーさん)。 「4E」のフロアプラン 「9-19B」のフロアプラン Front & York 4E 価格:274万ドル(現在の為替で約3億7400万円) 3ベッドルーム、2.5バスルーム、リビング&ダイニング、キッチン 室内面積:1,647平方フィート(約153平方メートル) 9-19B 価格:197万ドル(現在の為替で約2億6900万円) 2ベッドルーム、2.5バスルーム、リビング&ダイニング、キッチン 室内面積:1,212平方フィート(約112.6平方メートル) NYの住まい関連記事 Text and…

【億ションのお宅拝見】NY高級住宅地グラマシーパークの9億円超!新築コンドの中身

素敵なコンドが完成したとの一報があり、筆者がこのたび内覧で訪れたのはニューヨーク・マンハッタン区ダウンタウンの閑静な高級住宅地、グラマシーパーク地区。 その一角に、昨年完成した高級コンドミニアム(分譲用の集合住宅)、250 EAST 21ST STREETがある。 Gramercy Park マンハッタンの中心地、タイムズスクエアから地下鉄で10分ほどの距離で、人の往来が激しいミッドタウンとは異なり、どことなくヨーロピアンな雰囲気が漂う落ち着いた住宅街だ。 「徒歩圏内に交通の要衝であるユニオンスクエア駅があり、ABCキッチン、グラマシータバーン、アップランドなど市内有数の人気レストランも点在するエリアなんです」。そのように太鼓判を押すのは、米大手不動産会社、ダグラス・エリマンのエクルンド・ゴメス・チーム(Eklund Gomes Team at Douglas Elliman)公認不動産ブローカー、エリス・バークマンさん。 「市民の憩いの場所、ユニオンスクエアパークやグラマシーパークなど公園も充実し、生活にとても便利です」 ここから徒歩数分の場所にある完成したばかりのコンド、250 EAST 21ST STREETを訪れた。 近隣のヨーロピアンな雰囲気に同化するような外観は、屋根面が2段で天井高のフランス風「マンサード屋根」、装飾が手すりに施された「ジュリエットバルコニー」など、当地では珍しいヨーロッパ風のデザインが各所に採用され、最先端の中に歴史や伝統が織り込まれている。建築界で名を馳せる、当地のIssac & Stern Architectsが手がけたもの。 1階のロビーに到着。ここでドアマンが出迎えてくれる。 エレベーターで、10階にある4ベッドルームの「10B」へ。 ドアを開けるとフォイヤー(ゲストを迎えるためのスペース)が広がり、住居とは思えないほど長い廊下が奥へ奥へと繋がっている。 壁には、装飾としてヨーロッパ風のモールディングが施されている。このようにお気に入りの絵画を飾ればデッドスペースにならず、ゲストのウェルカムスペースとして活かせる。 帰ってきたら、コンソールテーブルに鍵を置く。室内のインテリアデザインはすべて、ハイセンスな技法で知られるParis Forinoによるもの。 フォイヤーの奥、長い廊下を突き抜けると奥にはグレートルームが広がる。グレートルームとは、リビング、キッチン、ダイニングがひと続きになった開放感あるスペースのこと。 ゆったりと座れる8人用ダイニングテーブルと5人用カウンター付きアイランドキッチンを配しても、このようにまだ余りある広さ。アメリカではホームパーティーが文化の一部。このくらい広さに余裕があれば相当な数のゲストを招くことができる。 さらにその奥は、リビングスペースになっている。天井まである高さ10フィート(約3メートル)の大きな窓から、自然光が室内に柔らかく差し込む。 屋外スペースにはテラスがある。 このテラスは隣の2つのベッドルームとも繋がっていて、短距離走ができるくらい長くて広い。子ども用簡易プールやバーベキューグリルも十分に置くことができる。 天気が良い日はテラスで席で食事をすると、さらに食欲が増しそう。 日が暮れたら、ここから星空を眺めながらワインやウイスキーを嗜むのも一興。 次にプライマリーベッドルーム。このようにUS版のキングサイズを置いても十分な広さ。朝は目覚めてすぐにテラスに出て外の空気やお日様の光を体全体で浴びれば、活力ある1日のスタートを切れるだろう。 バスルームは住民用とゲスト用とに分かれ、全部で3.5箇所が各部屋に配置されている。洗面台は2人が同時に使える大きさなので、忙しい朝も混雑せずゆっくり使うことができる。 全米の中で不動産価格が格段に高いニューヨーク。今年の住宅価格は昨年に比べると下落傾向にあると報道されているが、インフレを抑えるための大幅な利上げを背景に、住宅ローンの金利は上昇している。 そんな中でも、250 EAST 21ST STREETのような高級物件には買い手がつき、バークマンさんによるとすでに90%が契約済みだという。 内見した10Bの購入価格は日本円で約9億2000万円ほどになるが、低層階やスペースがより限られた部屋は、少し価格が落ちる。それでも、399万5000ドル(約5億2500万円)からということだ。 「10B」のフロアプラン 250 EAST 21ST STREET「10B」 価格:699万5000ドル(現在の為替で約9億2000万円) 4ベッドルーム、3.5バスルーム、グレートルーム、キッチン 室内面積:2,468平方フィート(約229平方メートル) テラス面積:316平方フィート(約29平方メートル) NYの住まい関連記事 Text and photos…

NY1億円超高級コンド内見。「眞子さんをよく見かける」ヘルズキッチン住民の目撃情報も

筆者がこのたび訪れたのはニューヨークにある高級ホテル…ではなく、完成したばかりの新築コンドミニアムだ。マンハッタン区ミッドタウンの西端、ハドソン川にほど近いヘルズキッチン地区の一風変わった高級住居用ビル、The West(ザ・ウェスト)。 12階建てのこのビルは、低層階が昔ながらのインダストリアルなこの界隈の空気を受け継ぐウェアハウス風。高層階は一転、近未来的な凹凸が無造作に配置されたファサードが特徴だ。これら相反する2つのエレメントが見事に合体し、唯一無二の造形物として仕上がった。 市内にあるCitizenM HotelsやUrbyなどで実績があるオランダの建築家集団、Concrete(コンクリート)による最新作だ。低層階の外壁に使われているのは普通のレンガではなく、StoneCycling(ストーンサイクリング)による「アップサイクル・レンガ」を使うなど、サステイナビリティ(持続可能性)への配慮が細部に見え隠れする。 緑が眩いスペーシャスなエントランスに足を踏み入れると、フレンドリーなコンシェルジェが笑顔で出迎えてくれた。外観から予想しなかったヒューマンタッチなおもてなしが、訪問者にひとときの安堵感を与えてくれる。奥のスペースは、リモートワークをしたりゲストを出迎えたりなどさまざまな目的に活用できそうな温室風の明るいライブラリーが広がっている。仕事がサクサクと捗りゲストとの会話も弾みそうだ。そんな生活の1シーンを想像しながら、エレベーターでスタジオタイプ(日本のワンルーム)と1ベッドルームの部屋へ。 ドアを開けると、奥の窓から部屋いっぱいに柔らかい光が射し込んでいる。モデルルームのようにすでに家具や小物が配置されていて、自分がもし住んだら「ここで仕事をして」「休憩はここで外を見ながらコーヒーを飲んで…」などイメージがつきやすい。 The West インテリアごとお買い上げ? 「ここにあるものを“丸ごと”購入も可能ですよ」と説明するのは、米不動産会社コーコラン・サンシャインのシニア・セールスディレクター、アンジェリ・ディチキス(Angeli DeCecchis)さん。コンドの購入となると、日本と同様に家具が何もないまっさらな状態が主流だが、The Westでは家具はもちろん壁に掛かった絵画、テーブルに置かれた写真集や照明器具、キッチンツールやカトラリー、ベッドリネンに至るまで、室内にあるものすべて「込み」でユニットをお買い上げすることもできる。 このようなスタイルは、鍵を回せばすぐに住むことができるという意の「ターンキー」物件と呼ばれるもの。 インテリアコーディネートは、プロ集団のASH Staging(ASH NYC)によるもの。 通常、新居に引っ越す場合「壁やカーペットは何色にしようか」「どんな絵を飾ろうか」と迷いながら自分たちの城をクリエートしていく。それも一興だが、ターンキー物件の場合、プロのインテリアコーディネーターが世界中からハイセンスの家具や小物を厳選し配置しているので、あれこれ考え、買い物に出かけてどれにするか迷い、支払って運送を待ち…といった一連の手間暇がいっさいかからない。 「購入の手続きさえ済めば、明日からでもここで生活が始められるんです」(アンジェリさん)。この便利さから、ターンキー物件は州外や国外に住む人がニューヨークを訪問する際の一時滞在としての場所、セカンドハウスとしても人気だという。 建物内にはライブラリーのほかに、スポーツジム、キッズルーム、コミュニティダイニングルーム(パーティーやイベント用)、犬のグルーミングルーム、倉庫なども完備。また屋上プール、カバナ、バーベキュー設備、ドッグパーク、外ヨガスペースまであり、あらゆるものが敷地内で完結する。 周りに景色を遮る高層ビルがないので、開放感ある見晴らしだ。当地ではパンデミック以降、バックヤードやテラスなど屋外スペースを人々が渇望するようになったが、そのような需要を満たしたアパートメント・コンプレックスだ。 ◎ビル内アメニティを見る いくらあれば住める? Studio #718(484ft²、約45平米) 95万ドル(約1億2900万円) 1BR #723(672ft²、約62平米) 135万5000ドル(約1億8500万円) * ターンキーパッケージ価格 * 当地では購入価格に加え、毎月の共益費と税金が別に必要。例えばStudioの場合22万円ほど毎月かかる(共益費670ドル(約9万2000円)、税金919ドル(約12万5000円)) 新築でこれだけアメニティ設備が完備しているThe Westの価格が高いかお得か? 当地のアパートの不動産価格は、立地はどのストリートか、ユニットは何階で方角はどちらか、ベランダの有無など細かい条件によって異なってくるため一概に比較はできないものの、参考程度にマンハッタンの1ベッドルームの販売価格と賃貸の「中央値」も添えておく。 不動産会社のトリプルミントによると、昨年9月の時点で以下の通り。「マンハッタン内」でもっとも高いエリアと低めのエリアも調べた。ヘルズキッチンは、あくまでも「地区」としてはちょうど中間あたりに位置する。 販売価格の中央値 ヘルズキッチン 104万5000ドル(約1億4000万円) ノーホー 219万7500ドル(約3億円) フォートジョージ 34万4000ドル(約4600万円) 賃貸(家賃)の中央値 ヘルズキッチン 3903ドル(約53万円) ハドソンスクエア 7250ドル(約98万円) フォートジョージ 1750ドル(約23万円) NYの「中央値」と「平均」の家賃について 関連記事 小室夫妻も想定外のインフレに悲鳴? 日本人は知らない「ニューヨーク家賃事情」のリアル 年間30万円以上アップもあり得る(マネー現代) * 記事内はすべて1ドル136円計算 眞子さんを「よく見かけます」とヘルズキッチンの近隣住民 最後にヘルズキッチン地区と言えば、小室眞子さんと圭さん夫妻が昨年新居を構えたことで、日本での知名度が一気に上がった。 この地区は、中心地タイムズスクエアから徒歩圏内にあり便利な立地。文化施設や観光地がない替わりに、低層の住居ビルと多国籍レストランが連なり、地元の人が普段使いするアーミッシュマーケットやこぢんまりとしたカフェも。昔ながらの車のリペアショップが今でも残っていたりとインダストリアルな雰囲気も漂うリラックスした下町の雰囲気だ。 「ヘルズキッチンの不動産は今、活況を見せています」とアンジェリさんも太鼓判を押すように、ハドソン川近くの西端エリアがディベロッパーにより再開発され、新築アパートメントが次々に建てられている。この地区に目をつけているのは、投資家というよりどちらかというとミレニアル世代を中心とした若いローカルバイヤーやファミリー層が住居用として購入するケースが多いようだ。 土地柄もあり、内見中は関係者らと自然に小室眞子さんの話にも及んだ。筆者が「ヘルズキッチン地区は日本でも結構知られるようになったんです」と言うと、「(英語の)記事を読みました」と、筆者が説明するまでもなく眞子さんはこの地区の人々にすでに認知されていた。筆者の周りではほとんどの人が知らないため「私にとって、あなたは彼女を知る最初の人です」と伝えると、眞子さんを目撃したのは1、2度ではないと言い「この界隈を歩いているのをよく見るわ。(元プリンセンスとわからないほど)服装は控えめで目立たない感じです」と、その慎ましさに好感を持っている様子だ。「いつもマスクを着けて、1人で歩いているわね。サリヴァンベーカリーでフレンドリーに店員に挨拶しているのを見かけたことも。新天地での生活を楽しんでほしいです」。アメリカ移住から8ヵ月になる眞子さん。筆者の経験からも移住から半年は新生活に慣れるのに必死だが、それ以降は徐々に環境や生活習慣に馴染んでくるもの。眞子さんが近隣住民に迎え入れられこの地に解け込んでいるのが、地元の人の話から伝わってきた。…

海を越え愛され続けるNYの「リトル日本」。思わず息を呑む「ホリデー仕様の絶景」に地元民の反応は

ニューヨークのブルックリン区にあるブルックリン植物園(Brooklyn Botanic Garden)。52エーカー(約21万平方メートル)の広大な敷地には、在住者なら誰もが知る「日本庭園」(Japanese Hill-and-Pond Garden)が併設されている。 この植物園が桜の名所でもあることから毎年春になると「桜祭り」(Sakura Maturi)が開かれ、日本のポップカルチャーファンが着物やコスプレ姿で集まる。ここはいわばニューヨークの「リトル日本」であり、在住日本人にとって心のオアシスのような存在だ。 当地の長く厳しい冬季は、植物が枯れてしまい、日本庭園も注目を集めることはそれほどない。しかし今年は、同植物園で光と音楽の装飾イベント「Lightscape at Brooklyn Botanic Garden」がホリデーシーズンの11月19日から来年1月9日まで開催されている。 日暮れと共に園内の明かりが灯りはじめ、周辺の植物やオブジェが煌びやかにライトアップされ、いつもとは違った顔を見せている。春と秋には桜や紅葉で彩られる日本庭園も、期間中はホリデー仕様だ。 106歳、NYの日本庭園 Japanese Hill-and-Pond Gardenは、アメリカに現存する中でも歴史が長くもっとも人々が足を運ぶ日本庭園の1つとされている。1907年に渡米した造園家の塩田武雄氏が手がけ、1915年に開園した。同植物園によると、当時日本式の庭園が流行し、美術館やホテル、裕福な人々の住宅の庭などに、その美的センスが取り入れられたという。 これまで火事が発生したり、第二次世界大戦下で一時閉鎖されたりするなど苦難の時期もあったが、戦後は日系アメリカ人の庭師、フランク・オカムラ氏が庭園の修復や手入れをし、1世紀以上経った今も地元の人々に愛され続けている。 この日本庭園もホリデーライティング用にお色直しをされているわけだが、神社、鳥居、橋、石灯篭などに装飾が施されている訳ではない。これは植物園サイドからの日本文化に対する最大の敬意であろう。煌びやかにライトアップされているのは周囲の樹木や歩道、池などで、それらのイルミネーションが朱色の鳥居をダイナミックに魅せている。特に夕暮れ時は、夕日のバックグラウンドと相俟って思わず息を呑むほど美しい。来園者の多くがまずここで歩を止め、幻想的な景色に見入っていた。 イルミネーションを見るために訪れた近所に住む女性は、「毎年春の時期に日本の祭りを楽しみに来園するけど、今の時期にこのような神秘的な日本庭園を見たのは初めて」と、うっとりしながらケータイで写真を撮っていた。日本を訪れたことがあるという男性は「ニューヨークにいながらこんな素晴らしい光景を見られるのは嬉しい」と話した。 このホリデーイルミネーションではほかにも、全長1マイル(約1.6キロメートル)の遊歩道に続く10万個以上の電球による光のオブジェやポエムなどを楽しむことができる。 これら枯れ木に「光の花」を咲かせたデザインは国外から地元までさまざまなアーティストや詩人らがクリエートしたもので、イギリスに拠点を置くカルチャークリエイティブ社(Culture Creative)が1つのライトスケープ作品として仕上げた。 植物園の担当者によると、「ライトショーとしてはニューヨーク市内で最大のもの」で、同植物園が行うのも初めての試みだとか。まだコロナ禍の最中だが、巣篭もりしがちなこの季節に「人々に外に出るきっかけとなるような、そしてこれまで当園に足を運ぶことのなかった人々への訴求にもなるような『ワォ』と思わず声を上げる真冬の目玉アトラクションとして計画に3年の年月を費やし、満を辞して今年やっとお披露目が叶いました」。 当地にはほかにも、世界一有名と言われるロックフェラーセンターのクリスマスツリーが今月1日から点灯され、多くの観光客が足を運んでいる。アメリカ最大のイベント、クリスマスを今週に控え、ニューヨークはホリデームードが一層高まっている。 * 筆者が撮影した光と音楽の装飾イベント「Lightscape at Brooklyn Botanic Garden」の動画 Text and photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

NYグラウンドゼロだけではない「911慰霊碑」 建築家・曽野正之が込めた思い

911テロがアメリカで発生して今年で20年。 亡くなった犠牲者を悼み、悲劇を後世に語り継ぐため、ニューヨークにはいくつか911慰霊碑が建てられている。前回紹介したマンハッタンのグラウンドゼロがあまりにも有名だが、市内にはほかにもあるのはご存知だろうか? 関連記事: 911から20周年(1) アメリカ同時多発テロから20年「まだ終わっていない」… NY倒壊跡地はいま マンハッタン南端からフェリーで25分、スタテンアイランド(以下スタテン島)の北端にある慰霊碑、The Staten Island September 11 Memorial(別名ポストカーズ)。ここには、スタテン島に住みこのテロで犠牲となった人々が弔われている。 日本人の建築家、曽野正之さんによる作品で、2004年に完成した。 ポストカードの両側を折ってひし形にし、羽のように見立てたもので、真っ白で曲線を帯びたシンメトリーが力強くも美しい。 羽の間から見える視界は、ニューヨーク湾を越え、ツインタワーがかつてあったグラウンドゼロへと続く。 曽野さんはどのような経緯でこのプロジェクトに参加することになったのか、またどんな思いで完成させたのだろうか。曽野さんに話を聞いた。 2001年の同時多発テロとその後のアフガニスタン紛争の開始を経て、アメリカがイラク戦争へ向かっていたころ、ニューヨークの設計事務所でアソシエイトとして働いていた曽野さんもデモに参加し、反戦を訴えた。しかしその甲斐もなく、アメリカはイラクでの空爆を開始した。 「911の出来事で吐き気がするほどショックを受け、無力感に襲われて創作意欲を失った」。曽野さんは自身の作品、ポストカーズを見つめながら、当時の記憶を手繰り寄せる。 曽野さんは気分が塞ぎがちになりながらも、倒壊跡地で同僚らと復旧作業に参加した。そんな中、スタテン島の犠牲者のために慰霊碑を作ろうという区のプロジェクトが持ち上がり、曽野さんの仲間内でも話題になった。03年の初めのことだ。 グラウンドゼロなど911の復興計画は通常、指名コンペとなっており、世界的な超大御所建築家しか応募ができない。しかしスタテン島慰霊碑は、初めて一般公募から広く作品を募った。曽野さんも迷わず応募した。 昼間は設計事務所で働き、夜間自宅に戻り寝る間も惜しんで制作に取り組んだ。 まずは重要なコンセプトについて考えあぐねる中、このように想像してみた。 「もし自分が亡くなった方の家族や友人だったら…」 曽野さんは、暗い部屋の中で延々に問い続けた。「これはとても恐ろしく辛いプロセスだった」。しかし、そこから「犠牲者への手紙」「ポストカードの羽」というコンセプトが湧いてきた。 次の課題は「一番大切な犠牲者、個人個人をどう表現するか」ということだ。犠牲者が実際に存在していた人として、慰霊碑を訪れた人が一人一人を感じられるようにするには…? 締め切り間際のある日、曽野さんは友人の家に寄ることがあった。そこで、横顔の構図が元々好きな曽野さんが以前撮影したある写真の話になった。それを改めて見て「真正面の写真は辛いから横顔くらいがちょうどいい」と思い、犠牲者の横顔のシルエットの彫刻を思いついたという。そうして設計案がついに完成した。 コンペには多数の国から総数200案ほどの応募があったが、曽野さん案は見事にその中から選ばれたのだった。 プロジェクトがスタートし、曽野さんは遺族とコミュニケーションを取り、犠牲者の写真を見せてもらいながら、遺族と共に横顔を一つ一つ作り上げていった。 「横顔の写真って普段撮らないから、どうしても結婚式での誓いのキスの写真などになる。遺族の方々に人生でもっとも幸せだった瞬間を思い出させることになりとても辛かった。ただそうして一緒に作ることで意味のあるプロセスとなり、慰霊碑が遺族の方々にとっても彼らの一部になってほしいと思いました」と曽野さんは振り返る。 羽の内側に刻まれた263人の中で、1つだけ何も掘られていないものがある。「アルバムを開いて写真を選ぶのが辛い」と断られたからだ。作る過程で泣き出す人もいた。それだけ残された家族には、悲痛な事件だった。 完成以来、多くの人々がこの慰霊碑を訪れている。毎年9月11日には区主催の記念式典がここで行われており、曽野さんも欠かさず参加し犠牲者を弔っている。 911はまだ続いている ポストカーズのすぐ近くの湾沿いには、別の911慰霊碑、The Staten Island September 11 First Responders Memorial(911緊急救助隊慰霊碑)も14年から設置されている。 テロ後、倒壊跡地で救助活動や復興活動をした消防士や作業員が、瓦礫に含まれていた有害物質による健康被害で亡くなっており、石板には同区の被害者107人の名が刻まれている。こちらの設計も曽野さんによるものだ。 その石板は「大きな見えないリングの一部」なのだと曽野さんは説明する。 復興現場から出た瓦礫の総量180万トンを集めると、直径150メートルほどの球体になるそうだ。それをイメージし、一部が湾沿いの柵に設置された石板として現れ、見えるようにした。同区の処理場に埋め立てられた瓦礫や、消防士や作業員が粉骨砕身で立ち向かった壮絶な救出・復興作業など、「もはや見えなくなってしまったものが見えるように」という思いを込めた。 17年よりここに名前が刻まれ始めて4年経つが、今も毎年十数人ずつ名前が足されている。 「あのテロから20年が経ち、完全に過去のものとされていますが、今でもまだ終わっていないんです。この悲劇から学んだことを平和な未来への教訓にするため、何が起こったのかを特に若い世代に伝えることは、当地であの日を目撃した我々の責任だと思っています」 曽野正之(Masayuki Sono) 建築家 / ã‚¯ãƒ©ã‚¦ã‚ºãƒ»ã‚¢ã‚ªå…±åŒå‰µæ¥­è€… 幼少期を米ニュージャージーで過ごす。神戸大学と交換留学先のワシントン大学で建築学を学び、1998年ニューヨークに移住。2004年自身の作品、The Staten Island September 11 Memorialが完成。10年に設計事務所、Clouds…

美食家が唸る名実共に世界一 NY最高級のニューアメリカンを体験してきた「Eleven Madison Park」

水曜日の午後9時半すぎだというのに、店内は満席です。「ホンモノ」だけを知っている世界中の美食家の社交場的な存在である最高級レストラン、Eleven Madison Park(イレブン・マディソン・パーク)。 料理界のアカデミー賞と言われるJames Beard Foundation Awardで「アウトスタンディング・シェフ」にも選ばれた奇才、ダニエル・ハム氏が腕を振るう店。2017年には世界のトップレストランを決める毎年恒例のWorld’s 50 Best Restaurantsで、世界1位の名誉を獲得。またミシュランガイドのニューヨーク版でも、最高の三つ星を毎年取り続けています。 8-10品のテースティングメニュー ここで提供されるのはコンテンポラリー・アメリカ料理。季節や新鮮な食材の調達具合に応じて内容が変わる、8-10品のテースティングメニュー(1人335ドル。バーは5品コースで1人175ドル。税別、ドリンク別、チップ込み)を楽しめます。 この日(1月末)のメニューの中から私が選んだのは、 新鮮なキャビアと甘くないセイボリー・チーズケーキ(チョウザメ燻製入り、写真上、テーブルサイドで盛り付けてくれます) フォアグラのコールラビと生姜添え、ロブスターとマテ貝(ウニソース添え) その場で作ってくれる新鮮な自家製豆腐(写真上、黒トリュフをふんだんにかけてくれます) 仔牛の柔らか〜い頬肉 など、デザートも含め目にも舌にも楽しい全9品でした。 どれもが芸術品とも言える素晴らしい味と香りと盛り付けで、ペアリングのワインとの相性も完璧です。(ドリンクはオプショナル。ワインペアリングは2種類 – 1人175ドルと315ドル – から選択) 食事後、スタッフがこの日のメニュー表と、朝ごはん用の手作りグラノーラ(同店オリジナルの専用保存ケース入り)、そして同店オリジナルボトルのアップルブランデーのLaird’sを丸々1本を持って来てくれました。 心からのサービスに感激しきり。 通常の店はおもてなしと言えども、顧客が話をしている所に割って入るサーバーがいるところも珍しくない中、このお店は味、食材の品質、ホスピタリティー(おもてなしと心配り)、エンターテイニング、すべてが二重丸でした。 翌朝、手作りグラノーラがまた何て美味しかったことか! それをいただきながら、前夜の「夢」に改めて浸ったのでした。 予約について:(ウェブサイトによる完全予約制で、フード料金は予約時に支払う) [All photos by Kasumi Abe]All images and text are copyrighted. 本稿はTabizineに寄稿したものを一部加筆修正したもの。無断転載禁止

豪邸を丸ごと「和」にしたニューヨーカー NY中心地に茶室、その理由は【お宅訪問】

豪邸を丸ごと「和」にしたニューヨーカー NY中心地に茶室、その理由は【お宅訪問】 「NYの自宅を丸ごと和の空間に全改築しました」。(c) Kasumi Abe 人はここを「ニューヨークのオアシス」と呼ぶ。私が初めてその存在を知ったのは、かれこれ10年ほど前のこと。今回ご縁があって、そこを訪れた。 場所は、映画などによく登場する、マンハッタンのフラットアイアンビル近く。レンガ造りの瀟洒な建物に到着し、入り口ベルを鳴らす。ドアが開き、オールドスクールなエレベーターでペントハウス(最上階)へ。 廊下奥のドアを開けた瞬間、驚いた。外界 ── クラクションが無造作に鳴り響く都会の喧噪、がいっさい遮断されたその空間に、落ち着きある「和の佇まい」が広がっている。 3フロアの豪邸を丸ごと大改築した家主、スティーブン・グローバス(Stephen Globus)さんとは何者ぞ? 彼の自宅で話を聞いた。 (以下スティーブンさんのインタビュー内容) 3フロアの自宅が丸ごと和の空間に Globus Washitsu まずこの階(ペントハウス)は、2間の茶室に縁側、日本庭園、和風の台所や風呂場があり、階段を上がった最上階にもギャラリースペースを兼ねた和室2間、屋外ルーフトップがあります。丸ごと和の空間に改築したのは2012年のこと。2フロア全体をGlobus Washitsu(グローバス和室)と名付け、茶室の庵号をマンハッタンのオアシスという意のKeisuian(憩翠庵)としました。 もちろん自分が住む家として改築したのですが、今では日本から来たアーティストが展示やパフォーマンスを行う場、そしてニューヨーカーにとって本物の日本文化に触れ合える機会の場としても使ってもらっています。例えば、ティーマスター(茶道家)による茶会や、画家によるペインティング・パフォーマンスなど、才能あるアーティストが自分たちの芸術を発表する場になっています。 Globus Ryokan 実は、下の7階も私の自宅で、そこも和室2間に床の間、水屋などを設けて丸ごと和の空間に改築しました。完成したのは2004年なので、この7階の方が先です。 こちらはGlobus Ryokan(グローバス旅館)という名のゲストハウスにし、ニューヨークを訪れたアーティストにパフォーマンスを披露してもらう代わりに、滞在スペースとして無料で提供しています。ここに寝泊まりした人は、かれこれ100人以上になります。 私は自分の活動を、カルチュラル・グッドウィル(文化に絡んだ親善活動)と呼んでいます。日本を訪れるときも、アーティストや茶道の家元、着物メーカーの人々に積極的に会い、文化啓蒙活動のニューヨークへの招聘をしています。 なぜ日本なのか? 我が家を訪れた人は、だいたいこのように聞いてきます。「なぜこのようにしたの?」「どうして日本?」ってね。 私の仕事の話から説明しますね。仕事は主に2つあって、兄弟で撮影スタジオを共同経営しているのと、ほかにはベンチャー・キャピタリストという顔も持っています。 ベンチャー・キャピタリストとして私はPlasmaCoという会社を興し、松下電器産業(現パナソニック)と、フラットパネル・スクリーンの開発に携わりました。今から24年前、1996年のことです。それで、縁も所縁もなかった日本を初めて訪れることになりました。 私はここで生まれ育った生粋のニューヨーカーです。それまでヨーロッパに行くことはよくあっても、日本はおろかアジアについての知識はありませんでした。 大阪の空港に降り立つと、私の目の前にはそれまでの人生で見たことがない世界が広がっていました。想像できますか? 西洋文化しか知らないニューヨーカーが、初めて見た「別世界」を。 特に、仕事の関係者に連れて行ってもらった、京都・龍安寺の冬景色は、今でも脳裏に焼き付いています。それは15世紀の日本そのもので、美しい庭園には雪が舞っていて、私は思わず息を呑みました。しかもその後、仕事の件で、携帯でニューヨークまで国際電話をかけなければならず、歴史とテクノロジーのコントラディクションも興味深い思い出です! とにかくそんなわけで、3ヵ月ごとに東京&大阪とニューヨークを行き来する生活が始まったんです。日本に行くたびに、新たな発見がありました。この「新世界」にはまったく違う物の見方、考え方が存在していました。人も言葉も食べ物も、何から何まですべてが違う。自分にとっては完全に「新ルネサンス」ともいえる体験で、すっかりのめり込みました。 特にハマったのが、文化と芸術面です。日本の文化はとても深く、知れば知るほど自分の知識が微々たるものであることを思い知らされます。そして一度ハマると、もっと知りたい欲求に駆られます。そんな深みとパワーが日本文化には秘められていますね。 畳の間が恋しくて… そのうち親友ができ、彼の自宅によく泊めてもらうようになりました。東京・新宿にある伝統的な日本家屋で、とてもピースフルでメディテーションにも最高の空間でした。さすがに新婚さんの邪魔はできないので、宿泊は彼が結婚するまでですが。そしてニューヨークに戻って来ると、次第にこんな気持ちを持つようになりました。「あぁ、畳の間が恋しい!」 ニューヨークでも畳の間を作れないか探してみたところ、宮障子(ミヤショウジ)という日本人経営の和専門インテリア&施工会社がマンハッタンにあり、すぐに依頼しました。と言っても、最初から3フロアを丸ごとリノベーションしたわけではなく、少しずつ。まず着手したのが7階です。 コンセプトにしても初めから旅館にしようと思っていたわけではなく、ただ自分のために和室を作りたかったのです。そうしたら噂が瞬く間に広がっていき、「茶会をできないか?」「陶器の展示会をしたい」と相談がくるように。特に茶会は、すぐさま人気を博すイベントになりました。でも7階の和室は茶会用に作ったわけではなかったから、茶道口(亭主用の出入り口)や炉(ろ)がない状態です。それで本格的な茶会を開くために、8階のペントハウスを今度は大改築することになったのです。 そうして、このような本格的な茶室の完成となりました。これも、宮障子なしでは成し得なかったでしょう。運命とも言える出会いで知り合った、ティーマスターの長野佳嗣さん(上田宗箇流)と北澤恵子さん(表千家流)に、一般向けに茶会を開いてもらっています。ここはニューヨークだから、うちはどの流派もウェルカムなのです。 普段はほかにも、アートパフォーマンス、着物の着付けクラス、古楽器の演奏会など、さまざまな文化交流イベントを開いています。 改築費用について知りたいって?ええっと…そうですね(記憶を辿る)、だいたい25万ドル(約2,500万円)以上はかかりましたかね。 異文化の啓蒙には苦労がつきもの 今後も私はスポンサーとして、日本文化の体験の場、継承の場を提供し続けていきたいです。 2016年には、日本人カップルの結婚式を本格的な神前スタイルで行ないました。世界のさまざまな宗教がこの街にはあるけど神社だけはないんです。そこで、福岡の宮地嶽(みやじだけ)神社の神主を招聘しました。ニューヨークの人々にとっても神道にとっても、よいイントロダクションになったんじゃないかな。 また、茶会イベントを始めてかれこれ15年が経ちますが、やっとここ数年で時代が追いついてきた感があります。今抹茶ブームで、どんなカフェでも抹茶ドリンクがあります。でもティースプーンや砂糖がセットで付いてきたりして、まるでカプチーノみたいに出されている。要はカフェで働いている人たちが、本物の抹茶の味も作り方も知らないからなんですが。 それで私はスポンサーとして京都の丸久小山園と提携し、茶道の講師を招聘し、正しい抹茶の点て方のトレーニングをカフェでしてもらったこともあります。 何でも初めのころは大変なんです。でも致し方ないことですね。寿司にしたって、今ではアメリカ人でも何人でも器用に握る時代になりましたが、初めのころは魚の切り身とライスをただ適当に掴んで出す、みたいなことがなされていました(!) 異文化が浸透していくプロセスは、たいてい苦労や努力がつきものです。 でも私たちの活動が少しでも抹茶ブームの火付け役となっているのだったら嬉しいです。また、素晴らしい日本の文化や芸術をもっと多くの人に体験してもらえるのであれば、それ以上の喜びはありません。 インタビュー後記 日本でもなかなかお目にかかれないような想像以上の和のお宅で驚きの連続でした。長野さんによる美味しいお抹茶をいただいたり、畳や障子に触れたりと、外国にいながら古き良き日本を満喫しました。 茶会は特に若者が多いのも印象的です。45ドルの参加費でも体験したい、そんな魅力があるのがニューヨークの茶の世界です。 海外で日本の魅力をこのような形で伝えてくださっている人々には、ただただ感謝と尊敬の念を禁じえません。 本稿は「Yahoo!ニュース個人」の記事 ã‹ã‚‰ã®è»¢è¼‰ã€‚無断転載禁止