黒人が投票しにくい?新たな投票法が米メジャーリーグやコカコーラも巻き込む騒ぎに

アメリカの新たな投票法が、スポーツ界や企業の反感を買い、製品のボイコット問題にまで発展している。 メジャーリーグ・ベースボール(MLB)は、南部ジョージア州が新たに定めた投票法(SB 202)への抗議として、7月に開催予定の今季オールスターゲームとドラフト会議の開催地を、同州アトランタからコロラド州デンバーに変更すると発表した。 また異議を唱えているのはMLBだけではない。アトランタが拠点のコカコーラ社も、CEOが同様に新法を非難する声明を発表。これを受け同州の知事や共和党議員らは「同社が制御不能なキャンセルカルチャーに貢献している」と主張し、自分たちのオフィスからコカコーラ商品を撤去すると発表した。 州法はどのように変更? ニューヨークタイムズ紙は、98ページにわたる新たな投票法を分析している。その上で、「選挙で共和党が民主党に負けたことをきっかけに、不在者投票により厳しく制限を設けることで複雑化し、有権者を混乱させようとしている」とした。 同紙が分析した、変更後の主な内容。 不在者投票をリクエストできる期間の短縮。 不在者投票や期日前投票には、厳格なID(身分)提示が求められる。 選挙管理人が不在者投票の申請書をすべての有権者に郵送することは違法。 街角の投票箱は引き続き置かれるが、設置数は削減される。 モバイル投票センターは基本的に禁止。 期日前投票は多くの郡で拡大されているが、人口の多い郡を除く。 列に並んで待つ間、有権者に対して食べ物や水の提供は軽罪となり得る。 事前登録した所と違う投票所へ行くと、投票が(さらに)困難になる。 選挙の問題が発生しても、投票時間の延長は困難になる。 投票率の高い選挙は、結果が出るのに長い時間を要する。 など 改正法の何が問題なのか この新たな改正法はジョージア州議会で共和党が提案し、ブライアン・ケンプ州知事が署名、先月25日に成立した。 改正内容について共和党は、「昨年の大統領選を受け、今後の不正選挙を防ぐ」名目で提案したという。しかし民主党からは、黒人やマイノリティの有権者に負担をかけるものだとの批判が上がっている。 黒人やマイノリティ(そしてなぜか投票ができることもある違法滞在者)の中には、運転免許証など政府発行の正式なID(身分証明書)を持たない人もいる。また、低所得者の多い地区では投票所の数が少なく、投票日に長い列ができる。そのためフードや水などが配られることがあるが、それも今後は禁止となる。 抗議の声を上げる企業はほかにも 抗議の声を上げた企業は、コカコーラのほかにアトランタを拠点とするデルタ航空やホームデポも、改正法が有権者の権利を抑圧するものとして非難している。 大企業の代表らも有権者の権利の擁護について触れ始めた。 【改正法の反対派】 (ジョージア州の法律とは明記していないものの)「我が国の選挙制度に不正が蔓延しているという疑惑について数々の調査が行われ証拠ゼロにも拘らず、選挙システムの完全性を疑問視している者がいる。同胞の投票権を侵害するような法律は間違い」(ユナイテッド航空) (CNNで有権者の権利の擁護を表明し)「我々は定期的に従業員に対し、彼らの投票権を行使するよう奨励しており、その基本的権利を妨げる可能性のあるものに反対を表明する」(JPモルガン・チェースCEO、ジェイミー・ダイモン氏) 改正法を非難し「投票はもっと簡単になるはずだ。テクノロジーよ、ありがとう」(アップルCEO、ティム・クック氏) バイデン大統領も「投票する権利の否定だ」「現代のジム・クロウ法」だと改正法を強く批判した一方で、州法が投票時間に与える影響について誤った情報を広めたとして、本来ならバイデン擁護派のワシントンポスト紙から「4つのピノキオ(嘘つき)」と批判された。 改正法の賛成派も応戦している。 【改正法の賛成派】 「投票を容易にし不正行為を困難にしたことに対して謝罪なんてない」(ケンプ州知事) (MLBやコカコーラ社に対して)「州民を故意に誤解させ、偉大な我が州の分裂を深めようとしている」「娯楽が党派的な政治の影響を受けているだけでなく、誤った政治的シナリオを広めているのは恥だ」(州議会議員) 「(MLBは)選挙の際に絶対に必要なIDカードを持とうとしない民主党の極端な左派を恐れている。自由で公正な選挙を妨げようとする野球をボイコットしよう」(トランプ氏) このように、両者は真っ向から対立している。 ちなみにMLBの決定について、ニューヨークポスト紙が報じた新たな世論調査では、全米の成人の39%、MLBのファンの48%、中でも熱狂的なファンの62%がアトランタからの会場変更を決めたMLBを支持すると回答した。また、民主党員の65%が支持を表明したのに対し、共和党員は14%にとどまった。 一方、ジョージア州の改正法そのものへの評価は、国民の42%が賛成、36%が反対とし、賛成派がわずかに多い結果だった。 Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

NYで多発するアジア人差別(3)日系三世女性の見た、故郷「アメリカ」

(前回「NYで多発するアジア人差別(2)暴行受けた日本人ミュージシャン、その後」の続き) 昼間にミッドタウンを歩いていて、突然殴る蹴るの暴行を受けた女性。地下鉄車両でいざこざとなり、首を締められて意識不明となった男性・・・。ニューヨークでは、アジア系の人々をターゲットにしたヘイトクライム(憎悪犯罪)や嫌がらせのニュースが後を絶たない。 アジア系の移民がアメリカに到着して約150年が経つとされるが、依然差別も多い。過去には、中国系移民排斥法や日系人強制収容、昨年以降は新型コロナのパンデミックによるアジアへのヘイト感情が高まっている。 筆者が報道で知る限り、被害に遭っているのは男性は年齢問わず、女性は年配の方が特に多いようだ。アジア系の若者に話を聞くと、「高齢の母親が心配」「以前のように両親に外を歩いてほしくない」といった声が聞こえてくる。またある女性は「私はここで生まれ育ったが、人生で初めてハンマーを持参して歩いている」と語った。 本稿では、この国で生まれ育った日系アメリカ人三世に話を聞いた。ニューヨーク在住のジュリー・アヅマ(Julie Azuma)さんは70年代後半から80年代にかけて、アジア系の公民権運動に参加していた。彼女の目を通した、故郷「アメリカ」とは? リドレス運動で日系人同士の強い絆ができた 「あの事件をきっかけに、アジア系の命は大切ではないのか、価値がないのかと、民族の垣根を超え全米中のアジア系が初めて一体となって立ち上がりました」 アヅマさんはそう言いながら、80年代に起こったアジア系の公民権運動「ヴィンセント・チン事件」の記憶をたぐった。 当時、発生現場のミシガン州デトロイト周辺で最初の抗議運動が起き、全米中に波及。ニューヨークでも若者を中心に人々が立ち上がった。デトロイトでの動きを注視しながら各地で抗議集会が開かれ、皆が一致団結して正義のために闘った。 「その時、すでにニューヨークエリアには強い絆がありました」 アヅマさんはチンさんの抗議運動に先駆け、別の社会運動に参加していた。70年代後半から活発化したリドレス運動だ。 リドレス運動: 全米の日系アメリカ人が米政府に対して、第二次世界大戦下で強制収容所(Concentration camp、Internment camps)に入れられた約12万人の日系人への補償や謝罪を求めた運動。その結果、市民自由法(Civil Liberties Act of 1988)がレーガン政権下の88年に成立し、政府が日系人に対して公式謝罪した。 彼女をリドレス運動へ突き動かしたものは、自分が生まれる前に家族が入れられていた強制収容所のことを知りたいという欲求だ。その背景には日系人がこの国で歩いてきた過去の複雑な心情が渦巻いていた。 もしあなたの家族が何も悪いことをしていないのに、ある日突然、大きな権力に連れ去られ、収容所に入れられたら、どう思いますか? 日本人だからというそれだけの理由で、すべての財産と自由を奪われ、塀の中での生活を強要されたら、あなたどう思いますか? 戦後、強制収容所の話題を家庭に持ち出すのは禁句だった。「収容所に入れられた祖父母(一世)、両親や親戚(二世)は誰も当時のことを語ろうとしませんでした。辛い日々はひと時も思い出したくない、もう過去のことを話したくないということでした」とアヅマさん。「子どもにとっても、聞いちゃいけない触れてはいけないものでした」。 よってアヅマさんのような戦後生まれの人は、日系人であっても強制収容所の「実態」や悲惨さを知らずに育った。「(知らなすぎて)夏のキャンプや楽しげなパーティーくらいの認識でした。誰も話すことを拒否している以上、知る手段がありませんでした。ティーンになったある日、図書館で真実を知るまでは」。 70年代にリドレス運動が活発化したとき、二世より上の世代は「この件には関わりたくない」と運動への介入を拒否した。一方、アヅマさんのような三世以降の若い世代は、家族に何が起こったのかを知りたいと、積極的に運動に関わった。 ニューヨークでも日系人同士が集結し、頻繁にミーティングを開いては語り合ったり必要な人を紹介し合った。ミーティングを開く利点の1つは、経験者から直接体験談を聞く貴重な機会があったこと。そうして、人同士が繋がり知識が増えていった。 「他都市に比べてニューヨークは、リベラルで独立精神が高い個人主義者、アーティストやパフォーマータイプの人が多く、熱いムーブメント、日系人同士の強い絆が生まれました。年齢問わず在米歴の浅い人や白人層も参加するようになり、素晴らしいコミュニティに成長しました。そして我々はついに、政府からの謝罪を勝ち取ることができたのです」 日系アメリカ人としての経験談 アヅマさんはイリノイ州シカゴで生まれ、ミズーリ州セントルイスの大学に通った。そこは多くの住民が白人で、アジア人や黒人はほとんどいない街だった。アメリカで育った者として、これまで受けた差別はあるかと聞いたところ、このような答えが返ってきた。 「直接的な人種差別(レイシズム)を受けたことはありません。ただ私が思うのは、ペイトロナイジング(Patronizing)というものはあるということです」 ペイトロナイジングとは、軽蔑的で見下す態度、相手が重要でない人物として扱うことを指し、目に見えない差別のことだ。 「狭い歩道を歩いている時、向かいから来る人は私がよけることを期待してよけてくれません。私は礼儀正しくと両親に教えられて育ったので、道で誰かにぶつかることはありませんが、そんな私はいつも、人をよけながらくねくねと歩くことを余儀なくされています」 「また私はよくこんな質問をされます。『あなたはどこから来ましたか?』と。その言葉の裏には『両親はどちら出身ですか?』という意味が隠れているのかもしれませんが、私も私の母もアメリカで生まれました。また90歳になる女性の知人がいます。彼女の先祖は1894年に移民してきました。そんな彼女でも『国から出て行け』と言われたことがあります。私の家族も知人の家族も、世紀をまたいでこの国に住んでいます。それでも日系人は、アメリカに近年やって来た人からよそ者のような扱いを受けることがあります」 アヅマさんは、アジア人女性の扱われ方についても疑問を呈する。自身の経験を通して、女性は恒常的に平等に扱われていないと感じてきた。 「ティーンのころ、タクシーの運転手など知らない男性が私に突然、ベトナム戦争中に付き合った女性の話をしだしたり、アジア諸国の女性と関係を持ったとか昔の彼女のことを話しだす人がいました。これらは婉曲的にアジア人女性を1人の人間としてではなく、性的オブジェクト(性的満足のためにみなされる対象物)や人間以下として見ていることを表しています。アジア人女性の価値はその程度だから、取り扱いがぞんざいになるのです」 アヅマさんはレイシズム(人種差別)のほか、ホワイト・プリビレッジ(白人男性の優遇)についても、よく考えることがある。「日本で育てばおそらく自分とは違う考え方を持っているでしょうが、多くの日系人はこの国のメインストリームより下にいると感じています。またある日、私は気づきました。アメリカに住む日本人(移民一世)は、私たち日系人が置かれている立場と無縁のようだと。彼らは人種差別や偏見に気づくことがそれほどないようです」。 アジア系市長はこの街を救えるか? ところでニューヨークでは今年の6月、次期市長選が迫っており、大統領選にも出馬したアンドリュー・ヤン(Andrew Yang)氏が市長選に出馬している。 アジア系のヤン氏が市長に選ばれたら、ニューヨークはより良い街に生まれ変わることができるだろうか? 「市長といえば、数年前に台湾系アメリカ人の有能で厚い信頼を寄せられていた市会計監査役、ジョン・リウ(John Liu)氏が有力候補だったのですが、何かが起こりデ・ブラシオ氏が選ばれました」とアヅマさん。 一方ヤン氏だが、彼女は2年前にアジア系アメリカ人弁護士協会の会合で、彼に一度会ったことがあると言う。その上でこのように語った。 「私はヤン氏が市長として必ずしも適任者とは思いませんし、アジア系の住民は人種に限らず有能な人を選びたいと思っているはず。その一方で私はヤン氏の政治への情熱は買っています。大統領選へヤン氏が出馬して以来、アメリカ全体でのアジア系の存在感が増しているのを実感するので、サポートしたい気持ちもあります。もしニューヨーク市でアジア系の市長が誕生するなら、グローバルな政治との良い関係性に繋がっていくでしょう」 ### アジア系差別の関連記事 関連記事日本人に間違われ「動物以下の扱いで」殺されたヴィンセント・チン事件(’82) NYで多発するアジア人差別(1)在住者の私の経験談 / (2) 暴行受けた日本人ミュージシャン、その後 ユナイテッド航空の乗客引きずり降ろし。アメリカで生きているアジア人として思うこと アジア系へのヘイトクライム急増、女性誌編集長のアジア人侮辱ツイートが大問題に(ニューズウィーク) (Interview Text by Kasumi…

日本人に間違われ「動物以下の扱いで」殺されたヴィンセント・チン事件(’82)── 全米アジア人差別

80年代版「ストップ・アジアン・ヘイト」「アジアン・ライブズ・マター」 この機会に思い出してほしい、中国系青年の悲劇 「日本人だから関係ない」ではない アメリカでは、アジア系の人々をターゲットにした嫌がらせ、偏見、中傷、暴行、差別が毎日のように起きている。日系、中国系、韓国系、フィリピン系など民族に拘らず、アジア系というだけでストレスのはけ口となったり事件に巻き込まれるケースが多い。 報道を見て「中国人のことか」と思うかもしれないが、日本人とて他人事ではない。そもそも地球規模で見れば、日本人も中国人も大差はない(私たちがプエルトリコ人とドミニカ共和国人を見分けられないのと同じ)。多くの国々では、差別のニュアンスを含まずにアジア系を十把一絡げで「チャイニーズ」と呼ぶ傾向がある。日本の古い世代の人が「白人=アメリカ人、黒人=アフリカ人」と見なすのと同じ感覚だ。 アジア系の人々へのヘイトが急増する今、多くの人が知らない悲劇をここで改めて振り返る。 「ヴィンセント・チン殺人事件」 39年前ミシガン州で、日本人に間違えられた中国系アメリカ人の青年が、冷酷に殺害された。事件当時を知る、日系アメリカ人三世にも話を聞いた。 アジア系差別の関連記事 NYで多発するアジア人差別(1)在住者の私の経験談 アジア系へのヘイトクライム急増、女性誌編集長のアジア人侮辱ツイートが大問題に 事件のあらすじ 中国生まれのヴィンセント・チン(Vincent Chin)さん(享年27歳)は、幼いころ養子としてアメリカに渡り、養父母の下ミシガン州で育った。自身の結婚式が数日後に迫った1982年6月19日、デトロイトにほど近いハイランドパークのストリップクラブで、独身最後となるバチェラーパーティーを友人らと楽しんでいた。 編注:アメリカでは結婚式前、ストリップクラブで独身最後の夜を男同士で楽しむ慣習がある。 そこには、クライスラーの工場で働いていたロナルド・エベンスと、自動車工場の仕事をレイオフされた義理の息子、マイケル・ニッツという、2人の白人男性も遊びに来ていた。その夜、チンさんと見知らぬこの2人はひょんなことから言い争いとなり、喧嘩はエスカレートしていった。 その場ではいったん収拾がついたものの、2人はチンさんの行方を追って街中を執拗に探し回った。そしてファストフード店の駐車場でチンさんを見つけ、ニッツがチンさんを羽交い締めにし、エベンスが野球バットを取り出し、チンさんの頭部を繰り返し殴打した。 脳死状態となったチンさんは搬送先の病院で幼馴染の看護師に治療を受けたが、頭部は「これほどの負傷を見たことがないほど酷い」状態だったという。その4日後の23日、チンさんは亡くなった。 80年代、反日感情が高まっていた 80年代、アメリカは不況の真っ只中だった。日米自動車摩擦が激化し、日本の安価で性能の良い車がアメリカ市場へ流入したことでビッグスリーの衰退を加速させた。オイルショックもあり失業者が増加。自動車産業で繁栄したデトロイトではジャパンバッシング(反日感情)が起こり、日本のみならずアジア系全体に対して苛立ちや恨みなど反アジア感情が高まっていた。 自動車産業の仕事に従事していた2人にとっても、アジア系は目障りだったのだろう。チンさんを日本人だと思い込んだ2人は「お前のような小さな●●(罵り言葉)のせいで、多くのアメリカ人が仕事を失ったんだ」という言葉を吐き捨て、それにより喧嘩がエスカレートしたと伝えられている。 バチェラーパーティーにいたチンさんの友人、ゲイリー・コイブさんの証言。「ヴィンセントは日本人ではなく中国人だが、犯人にとってその違いはどうでも良かったようだ。アジア系には変わりないので」と当時を振り返った。 いつの時代も、同じことが起こっている 「いつの時代も、同じことが起こっている。なぜか?それはこの国で生まれ育っても見た目が違うからです」と言うのは、ミシガン州の弁護士で日系アメリカ人3世のジェームズ・シモウラ(James Shimoura)さん。シモウラさんは地元で起こったチンさんの事件にいてもたってもおられず、事件当時アジア系コミュニティをアシストした1人だ。 シモウラ家は祖父が仕事の関係で、1914年に徳島からミシガンへ渡米。母方はサンフランシスコ・ベイエリアで農業に従事していた。その後第二次世界大戦が始まり、家族や親族は日系人強制収容所に入れられるなど、辛い時代を生き抜いて来た。 「日本人というだけで突然ある日、農地、自宅、財産をすべて奪われ強制的に収容所に入れられたのです」とシモウラさん。 「この日系人強制収容のほかに、過去には中国系移民排斥法もありました。日米貿易摩擦下でのチンさんの事件、パンデミックによる反アジア感情、さらについ最近アトランタのマッサージ店で発生した乱射事件など、背景にあるものはすべて繋がっています。ウィットマー知事(民主党)誘拐未遂事件もあったように、今でもネオナチや白人至上主義は存在し、全米どこでも起こりうることです」 チンさん事件が起こった80年代は、アジア系にとってとりわけ難しい時代だったという。その凄惨な殺害方法はもとより、司法組織によりアジア系の命が軽んじられた。 犯人は逮捕、拘留されたが・・・ 証言者もいたため、犯人2人は現場で逮捕され拘留された。郡裁判所での第一審の判決で、エベンス被告は第二級殺人罪で起訴(ニッツは無罪)となった。しかし後に、有罪判決は過失致死罪となった。懲役刑ではなく3年間の保護観察処分、そしてわずか3780ドル(当時の価値で約70万円程度)の支払いが命じられただけだった。チャールズ・カウフマン巡回裁判官が放った言葉は、こうだった。「2人は前科もないし、刑務所に入るような類の人たちではない…」。 人を残虐に殺しておいて、下された刑罰はこの程度だった。この理不尽な処遇に対して、全米のアジア系の人々は憤慨し、立ち上がった。 アジア人の命はそんなに軽いのか? 「チンさん事件の判決は、司法組織による動物以下の扱われ方です」とシモウラさん。 命を軽んじられたことで、ミシガンのみならず全米のアジア系の人々による大きな抗議運動に発展した。 「モダンヒストリーにおいて初めて、全米のアジア系が一体となる公民権運動となりました」(シモウラさん) 当時アジア系の弁護士や政治家は少なかったが、コミュニティの中では皆、互いを知っていた。共に団結し、事件の背景に「被害者の人種、肌の色、出身国に絡んだ動機」があったこと、いわゆるヘイトクライムであると訴えた。この動きにより、デトロイトでは非営利公民権団体、アメリカ正義市民団体(American Citizens for Justice)が結成され、正義のために闘った。 84年には連邦公民権訴訟に発展させることができ、エベンス被告は第二級殺人罪の有罪判決となり25年の懲役刑が下され、ニッツ被告も有罪になった。しかし3年後、有罪判決は覆された。 「2回目の裁判は残念ながら、より保守的なオハイオ州シンシナティに移された。同地ではこの事件に対する温度差があり、事情をよくわかっていない陪審員によって公正な審理が行われるはずもない。すべての容疑は取り下げられ、無罪となったのです」 民事訴訟は法廷外で和解し、エベンスは150万ドル、ニッツは5万ドルの支払いを命じられたが、弁護士を利用して財産を隠すなどし、今もその支払いは済んでいない。NBCニュースも「2人は刑務所に入っていない。エベンスはチン・エステートに対して800万ドル以上の債務を負っている」と報じている。 これらの事件をきっかけに、ヘイトクライムが社会問題化された。今でこそ犯罪の等級を上げたり刑期を延長できるなどの厳罰を科すことができるヘイトクライム法(Hate Crime Laws)は存在する。しかしチンさんの事件が起こったのはその法律ができる前だったため、公民権侵害で起訴するしかなく、判決がここまで不条理なものとなったのだ。 事件から39年。アジア系アメリカ人の若い世代には、ヴィンセント・チン事件を知らない人も多い。 日系アメリカ人としての経験談 シモウラさんが生まれたのは、終戦から8年後の1953年。反日の雰囲気は根強く残っており、60年代後半まで渦巻いていたという。 「幼いころは(日本人として)からかわれたり喧嘩やトラブルに巻き込まれたりすることも多かったです。高校でやっと学友に恵まれました」。学校はユダヤ系の人々が80%近くを占めていた。彼らの中には何人も親戚をホロコーストで亡くしており(同じような辛い体験を)共感し合うことができた。 大学を卒業したのは78年。有色人種には就職の面で大きな障壁があり、自由に仕事を選べる状態ではなかったという。ことさら弁護士ともなると狭き門だった。「今でこそ、アジア諸国はアメリカと貿易面で強固に結ばれているので、大手弁護士事務所はバイリンガルのアジア系弁護士をたくさん抱えています。しかし当時の大手はアジア系を雇わなかったし、州全体でもアジア系弁護士はたった20人程度でした」。 もしもチンさんが白人だったら・・・? もしもチンさんが白人であれば、という質問に対して「違う結果になったと思います」とシモウラさんは断言する。「そして、もしチンさんが白人を殺した逆の立場であれば、必ずや刑務所に送られたことでしょう。またもし容疑者や被害者が黒人の場合も、司法制度で(白人とは)異なる扱いを受けます」。 前述の通り、有色人種が直面している問題はすべて繋がっている。アトランタで起きた乱射事件もBLMムーブメントのきっかけとなった数々の事件や背景も、大きな相違はない。 アメリカでは29日、ジョージ・フロイドさんを殺害した白人の元警官、デレク・ショーヴィン被告(保釈金約1億600万円程度で保釈中)の裁判が始まった。21世紀のアメリカの司法が、この事件に対してどのような判決を下すことになるだろうか。…

パンデミック以降、銃購入者が増加。「銃社会は危険と考えないアメリカ独特の価値観のワケ

2容疑者(共に21歳)、乱射事件直前に銃を購入 アメリカでは今月、大きな銃乱射事件が立て続けに発生した。16日、ジョージア州アトランタ市近郊のマッサージ・スパ施設3ヵ所で計8人が死亡(アジア系6人含む)、1人が負傷。それから6日後の22日には、コロラド州ボルダー市のスーパーマーケットで10人(警官1人含む)が死亡した。 偶然だがこの事件の容疑者は共に21歳の男だ。いずれも身柄は拘束され、動機など取り調べが進められている。 アトランタの事件のロバート・アーロン・ロング(Robert Aaron Long)容疑者は、殺害当日にディーラーから半自動拳銃を購入したと伝えられている。ボルダーの事件のアフマド・アル・アリウィ・アリッサ(Ahmad Al Aliwi Alissa)容疑者は、事件の6日前にルガーAR-556を購入したとされる。 こんな若者が、事件直前に銃を購入でき、乱射事件を起こしたというわけだ。 アメリカでは近年だけでも、大量の死者を出す銃乱射事件が頻繁に起きている。サンディフック小学校(2012年)、フロリダのゲイナイトクラブ(2016年)、ラスベガス(2017年)、マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校(2018年)・・・。 ニューヨークポスト紙は、「次はあなたの街で起こるかもしれない。通りで起きている戦争について、国は何か対策を講じてくれるのか?」と報じた。ニューヨークは全米でも銃規制が厳しい街の1つで、銃の持ち歩きなどは一切禁止されている。よって30年間にわたって銃による殺人事件は減少傾向にあったが、パンデミック以降の治安悪化により、再び銃がらみの事件が多発している。 バイデン大統領はボルダーの乱射事件後、連邦議会に対し銃規制の厳格化を求める働きかけを行った。ホワイトハウスのジェン・サキ報道官によると、実現の可能性がある銃規制の大統領令には、シリアル番号なしで自宅で製造できるゴーストガンの身元調査の要求や、ディーラーから銃を購入するためのFBIの身元調査で通らなかった場合に地元の警察に通知されるシステムが含まれるという。また今月、民主党の上院議員35人が、AR-15スタイルのライフルなど人気の半自動銃を含む「攻撃用武器」を禁止する法案を提出したばかり。しかしこれらは小手先だけの規制に見え、抜本的な改革にはほど遠い。今後どれほどの事件を防ぐことができるかは疑問だ。 NRA(全米ライフル協会)は政治と強い癒着があると言われており、共和党員と同じように一部の民主党員も銃規制に反対しているため、銃制度の廃止など抜本的な改革を期待できる状態ではない。 パンデミック以降、銃の売り上げUP さらに気になるニュースもある。米主要メディアは、アメリカでパンデミック以降、銃の売り上げがさらに伸びていると報じた。 USAトゥデイ紙によると、2020年の合法的な銃の売り上げは、前年比40%増の約3969万5315丁に上った。さらに今年1月だけでも、前年同月と比べ60%増え、413万7480丁だった。 この1月の数字は「記録が開始した1998年以来、1ヵ月間の銃の売り上げとして最多」という。 1月の売上がもっとも多かったのは、中西部イリノイ州だ。同州の人口は全米の4%足らずだが、銃の販売数は全米の4分の1にあたる100万2118丁。2番目は中東部ケンタッキー州。人口は全米の1.3%だが、販売数は42万1790丁にもなる。ちなみにニューヨーク州での販売数は全米の中で少ない方だが、それでも4万9184丁が売れた。 もちろんこれらは、闇雲に販売されているわけではない。連邦捜査局は、National Instant Criminal Background Check System(全米即時犯罪歴身元調査システム)のリストを使い、銃の販売を追跡、管理、公開している。犯罪歴があったり精神疾患があったりする人は購入できないシステムになっているが、 98年以降行われたバックグラウンドチェック(身元調査)約3億1000万件のうち、購入を拒否された数はたった150万件に過ぎない。身元調査が緩いという指摘があり、調査基準の強化も求められている。 なぜパンデミック中に銃の販売が伸びたのか? 銃の販売数が増加したのは1999年以降だ。1999年は年間で約913万丁、2006年に1000万丁、2011年に1500万丁、2013年に2000万丁、2016年は2500万丁と増えていった。 昨年は4000万丁近く、現在のペースで今年の売り上げを予測すると、5000万丁に達するのではないかとUSAトゥデイ紙は見ている。 銃の販売が昨年以降に急に伸びた背景として、さまざまな要因が考えられるが、その1つとして、新型コロナウイルスのパンデミックによって人々の不安感が高まったからではないかと、多くの社会科学者が指摘している。 CBSニュースやCNNが伝える情報によると、昨年初めて銃を購入した人は500万人以上で、中でもアフリカ系アメリカ人と女性の売り上げが急増した。特に、昨年9月までの女性への売り上げは、前年比の40%増という。 多くのアメリカ人は、日本人のように「銃があるから危険」とは考えない。合衆国憲法修正第2条により「銃を所有する個人の権利」が保護されていることは、自由を求めて闘ってきたアメリカ人にとって非常に重要だ。そして「銃を多く所持するほど、より安全が守られている」と考える。だから社会不安が人々の中で広がれば、自分や家族を守るために銃を購入する動機に繋がり、銃の売れ行きがよくなるというわけだ。 ちなみにこの憲法の考えについて、前述のニューヨークポスト紙にはこのようにある。 「合衆国憲法は、身を守るための武器として人々に銃の所持を許したのであって、戦争兵器として使用するために許したのではない。銃の所持を我々の祖先はどう考えるか。人々が銃を使って大量殺戮することなんて望んでいなかっただろうに」 関連記事 【加速する銃乱射】今年に入って255件、死者62人 数字で見るアメリカの現実と憂い 「問題は“銃”ではない」トランプ大統領の声明(概要)と銃社会を救う?レッドフラッグ法とは 毎日100人、年間4万人が銃で命を落とす国 3億丁ある銃器との共存やいかに? 容疑者は性依存症との報道も 8人死亡の米アジア系マッサージ・スパ連続銃撃事件 Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

容疑者は性依存症との報道も 8人死亡の米アジア系マッサージ・スパ連続銃撃事件

16日、米ジョージア州アトランタ市および近郊のマッサージ・スパ施設3ヵ所で相次いで銃撃事件が起こり、計8人が死亡、1人が負傷した。 いずれの店もアジア系が経営しているとされ、亡くなった8人のうち6人はアジア系、2人は白人だった(うち7人が女性、1人は白人男性)。その後、ロバート・アーロン・ロング(Robert Aaron Long)容疑者が逮捕された。3ヵ所での発砲は、ロング容疑者1人による犯行と見られている。 アメリカでは新型コロナウイルスのパンデミックとなった昨年以降、アジア系の人々をターゲットにした差別、嫌がらせ、ヘイトクライム(人種、民族、宗教、性的指向に係る憎悪犯罪)が急増しており、連日のようにアジア系の人々が被害にあった事件が報道されている。 関連記事 NYで多発するアジア人差別(1)在住者の私の経験談 NYで多発するアジア人差別(2)暴行受けた日本人ミュージシャン、その後 そんな中、アトランタの銃撃事件も被害者にアジア系が多いことから、アジア系へのヘイトクライムではないかと見られ、発生当初は現地メディアの報道もそのような可能性をほのめかす見出しが並んだ。 バイデン大統領も「動機が何であれ、心配は高まっている」とアジア系の人々への気遣いを寄せ、いかなる差別やヘイトクライムも許さないとするコメントを発表した。 容疑者は警察の取り調べで、襲撃した店を以前利用したことはあると供述しているが、容疑者本人からアジア系へのヘイト(憎悪)が事件の動機につながったとのコメントは今のところ出ていない。 通常の犯罪ではなく「ヘイトクライム」と認定するには、確固たる証拠が必要とされており、この事件がヘイトクライムになるか否かは、今後の捜査で明らかになるだろう。 犯人像:物静かな高校時代。現在はセックスアディクション 現地メディアの情報からの最新情報や見えてきた犯人像を抜粋する。 ロング容疑者は、ジョージア州ウッドストック市出身の21歳。2017年に高校を卒業した。両親と妹がいるが家出をし、19年1月以降、家族と連絡を取り合っていなかったようだ。 容疑者のインスタグラムのアカウントには、好きなものや自分の人生を表現するものとして「ピザ、銃、ドラム、音楽、家族、そして神」と書かれていた。 元同級生らは、容疑者を「物静かで、落ち着いて、いつも冷静だった」「友人は多くなかった。社交的でなく、いつも1人の世界に没頭していた」と証言している。容疑者として公開された写真も、高校時代とはまったく違う雰囲気だといい、こんな事件を起こすような人物ではなかったと、ショックを隠せないようだ。 容疑者はアトランタでの殺傷事件後、同様の事件を起こすためにフロリダに向かおうとしていた。容疑者の両親が、事件後に公開された防犯カメラの映像を観て息子が罪を犯したことを知り、警察に通報。その後、容疑者の携帯電話で居場所が追跡できたことが、迅速な逮捕につながった。 事件現場は「マッサージパーラー」だった 現在の容疑者について、17日朝になり、現地警察は報道機関を通して「セックスアディクション」(性依存症)と発表し始めた。 「Young’s Asian Massage」など報道された3店はいずれも、事件発生直後はアジア系の人が働いているマッサージ店やスパ店と報じられており、通常のマッサージやスパの店での事件だと思っていた人も多い。だからこそヘイトクライムではないかとささやかれていたのだが、「マッサージパーラー」(スパとも呼ばれている)ということが明らかになった(そのようなマッサージパーラーはアジア系が人気のようだ)。 マッサージパーラーは「売春ビジネスの最前線であることが多く、男性に性的に奉仕することがしばしば期待されている」と報道されている通り、すべてとは言えないまでも、性的欲求を満たすサービス、または表向きには通常のマッサージサービスを提供しているが店奥に入ると隠れたサービスがあるなど、さまざまな形態がある。いずれにせよ、事件現場が通常のマッサージ店ではなくマッサージパーラーということなので、容疑者がこのような事件を起こした動機は、当初言われていたヘイトクライム以外にほかにもあるかもしれない。 チェロキー郡フランク・レイノルズ保安官は「容疑者は、銃撃した3店をいずれも頻繁に訪れ利用していた可能性が高い。ヘイトクライムと断言するには時期尚早」と、現地メディアを通して発表している。 事件の動機の解明が待たれる。 Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

「うっかり発言」防止のためかバイデン氏は単独会見ゼロで雲隠れ。移民問題に苛立つ国民

バイデン政権が発足して、もうすぐ2ヵ月になろうとしている。経済立て直しのため、3月12日には1兆9000億ドル(約190兆円)の新型コロナ救済パッケージ法案に、バイデン大統領が署名し、新たな支援制度が実現化される予定だ。 この救済パッケージには、3度目となる給付金(成人1人あたり1400ドル=約14万円、収入によって制限あり)も含まれる。 関連記事 【コロナ特別定額給付金】貯金の日本。アメリカ人は「2度の支援金」一体何に使ったか? 48日間、公式会見なしの大統領 一方でこの2ヵ月間のバイデン大統領の実績や存在感、主導性について、疑問を投げかける主要メディアもある。 FOXニュースは3月9日、「Biden has gone 48 days as president without formal news conference」(バイデン大統領は就任から48日間、公式記者会見なし)と報じた。American Presidency Projectのデータを基にしたCNNの分析によると、過去100年にわたって前大統領15人は全員、就任後33日以内に単独記者会見を開いてきた。 ニューヨークポスト紙は「48日間というこれまでの大統領で最長期間、単独会見なし」と指摘。今後の会見の予定もないという。バイデン氏は訪問先で記者団の質問に答えることはあるが、カメラとマイクを切るなどして厳重に報道規制をしている様子が窺える。先日は視察先で、カメラとマイクの遮断を条件に記者団の質問に答えた。しかしここ数週間で再び悪化している移民問題について聞かれても、大統領からの返答はなかったと報道された。 単独会見がこれだけ長く開かれない理由について、ホワイトハウスのジェン・サキ(Jen Psaki)報道官は「バイデン大統領は、COVID-19のパンデミックに関連する歴史的な危機で多忙を極めているから」とした。しかしパンデミック対応は今に始まったことではない。トランプ前大統領は会見を頻繁に(パンデミック後の昨春以降は毎日)開いており、そのたびにメディアに扱き下ろされていた。 バイデン大統領は選挙活動中から、数々の言い間違い、勘違い、物忘れ、さらに口だけで行動や実績が伴っていないことや発言内容が日によって違うことなどが指摘されている。バイデン氏が「演説」をする際、台本が書かれたスピーチプロンプターが欠かせないとされている。もちろん演説や記者発表では政治家がよく使うものだが、バイデン氏は台本があってもたまに読み間違える。「演説」はしても「単独会見」を開かないのは、カメラが回っている生放送の場で、記者の辛辣な質問に対応できないからでは、と囁かれ始めた。 バイデン政権が発足して1ヵ月間の評価をしたのはCNNだ。「バイデン大統領が就任して最初の1ヵ月間の発言はトランプ氏のそれと比べて一貫して事実に基づいているが、それでもアドリブの際にいくつか不正確なコメントをした」と指摘した。 記事では、1月20日から2月19日までのバイデン氏による疑わしきコメント40件を、大統領発言を追跡するウェブサイト、Factbaseのデータに基づき調査をし、具体的に発言と事実の相違を指摘している。(以下は一例) ウォルター・リード陸軍医療センター訪問について バイデン氏「副大統領時代、毎年クリスマスはウォルター・リード陸軍医療センターを訪れた」 CNN「副大統領として8回のクリスマスのうち5回、ウォルター・リードを訪れた公的な証拠があるが、毎年訪れた事実はない」 中国の習近平国家主席と一緒にいた時間について バイデン氏(副大統領時代から習主席をよく知っているという話から、歴訪などで)「1万7000マイルを共に移動した仲だ」と2度主張。 CNN「会議などで多くの時間を共に過ごしたのは事実だが、1万7000マイルを『共に』移動した事実はない」 バイデン氏が就任した最初の1ヵ月間の公での発言量は、トランプ氏のそれより約34%少ないが、少ない発言の中でも、そして単独の記者会見を行なっていない状態でも、バイデン氏は「事実に基づいていない発言」をしている。そして発言がなければ、大統領として指摘される問題も少なくなるのは当然だ。 これらもホワイトハウスがバイデン大統領の単独記者会見を開かない(開かせない)理由の1つだろうか。 国境に「津波がやって来た」とトランプ氏 ここ数週間で共和党のみならず民主党からも懸念の声が上がっているのは、バイデン政権の移民問題のハンドリングのマズさだ。 バイデン政権は前政権の移民政策を根本からひっくり返したため、中央アメリカからの移民が大量にメキシコとの国境にやって来ており、国境近くにある避難収容所に拘留されている移民の子の数が激増中だ。この2週間で3倍に増え、避難収容所と政府機関を圧迫している様子が、ニューヨークタイムズ紙などで伝えられている。 人権の尊厳の観点に加え、市民権(選挙権)のない移民でも違法で投票できるようになっており移民は民主党に投票することが多いため、民主党は不法移民の受け入れに比較的寛容的とされている。それでもバイデン政権発足後の移民流入問題は目に余るものがあり、最新の世論調査では大多数のアメリカ人が、バイデン氏の移民政策に反対していると報じられている。 ホワイトハウスのサキ報道官も、移民の過剰流入については失敗と認め、国境越えを思い留まらせるよう、さらなる努力が現政権に必要であるとした。トランプ氏は移民の過剰流入について「もはや制御不能となり、津波を引き起こした」とバイデン政権を非難した。 バイデン政権はさまざまな問題や不安を抱えているが、まだ始りに過ぎない。 (Updated: 3月11日、バイデン大統領は新型コロナ救済パッケージ法案に署名した。また同日8pmESTより、プライムタイム初となる「演説」を行ったが記者の質問には答えず、「単独記者会見」が行われていない期間は歴代最長を更新中) Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

NYで多発するアジア人差別(2)暴行受けた日本人ミュージシャン、その後

(前回「NYで多発するアジア人差別(1) 在住者の私の経験談」の続き) ヘイトクライムか、暴力事件か アメリカそしてニューヨークでも、アジア系の人々をターゲットにしたヘイトクライムの事件が急増している。 在ニューヨーク日本国総領事館は、在留邦人に対して注意喚起をしている。大橋建男(たてお)領事部長によると、同領事館に寄せられたヘイトクライムの相談は2019年はゼロ、20年は1件、21年は今のところゼロと、急増はしていない。ただし、すべての被害が届けられているとも限らず、実際にはほかにもあるかもしれない。 邦人が被害に遭った最近のケースと言えば、同領事館の発表では、2月7日メトロノース鉄道で邦人女性が受けた暴行事件がある。女性が車両で、20代くらいの身綺麗な男女2人に物乞いで絡まれたため、IDの提示を求めたり携帯電話で撮影をしたりしたところ、2人が女性を罵倒し始め、髪を掴まれ頭を窓に打ち付けられるなどした。ほかの乗客が車掌を呼ぶと2人は逃げて行ったという。 同領事館では、この事件をヘイトクライムには含んでいない。「人種差別の要素があったかどうか」が判断の基準になるからだ。 ヘイトクライムにせよ暴行にせよ、被害に遭った時の対処として、大橋さんは「相手に反応せず、その場から離れることが大切です。また被害に遭ったら、警察と共に領事館にも届け出てください。事案を把握した上で状況によっては警察に申し入れをすることも可能になる」とアドバイスする。 「ヘイトクライムに遭った」日本人ミュージシャン 「差別のない社会のために声を上げることが大切」 ジャズピアニスト、海野雅威(うんのただたか)さんは、コロナ禍のニューヨークで、突然若者グループに暴力を振るわれた一人だ。 昨年9月27日午後7時20分ごろ、海野さんはハーレムの駅で地下鉄を降り、地上に出ようとしていた。改札口では男5人と女3人がマスクもせず大声を上げながらたむろし、通行を邪魔するように出口を塞いでいた。そこから出ようとしていたのは海野さん1人だけで、8人組は海野さんに突然言いがかりをつけてきた。 「直前に彼らと目があったとか何かがあったわけではなく、すべてが一瞬のうちに起こりました」と海野さん。殴られているときに「アジア人」「中国人」という言葉が聞こえてきたと言う。盗まれた物は何もない。犯人はいまだ逮捕されていないので仮定であると前置きしながら、「鬱憤が溜まっているところに目障りなアジア人が来たので、ストレス解消に殴ってしまえという通り魔的な犯行だったとしか思えないです」。 殴る蹴るの暴行を受けた海野さんは、右側の鎖骨骨折と全身を打撲する重傷を負い、病院に運ばれた。後日手術し、数ヵ月のリハビリの甲斐もあり箸を持てるようになったが、ピアノを以前のように長時間弾けなくなった。傷ついたのは心もそうだ。現在は療養も兼ねて一時帰国し心療内科に通っているが、テレビで暴力的なシーンが少しでも目に入ると突然フラッシュバックしたり、夜中うなされたりすることもある。 「通りすがりの人の人生を台無しにするなんて、許されることではありません。警察も犯人を捕まえるべきです」 海野さんは当初から警察にヘイトクライムだと訴えていたが、断定するためには動画など確固たる証拠が必要ということで「その可能性あり」と曖昧に処理された。「被害者の気持ちを思って捜査しているとは思えなかった。パトカーにはねられて亡くなった日本人の事件もそうですが、アジア人を軽視していると感じます」。 事件翌日に妻を通して日本領事館に報告したが、あっさりした対応だったという。「大使から後日手紙をいただきそれ自体は非常にありがたく、日本政府として声を上げて動いてくれるかと期待していたのですが」。 自分が被害者となって感じることは、アジア人への暴力に対しての抗議は当地の中国系や韓国系コミュニティの方が精力的で、日本人はアジア人としての共同体の意識をあまり持っていないのが残念だと、海野さんは振り返る。 「自分は関係ない、間違っていないという意識が、差別を生むことに繋がっています。ダメなものはダメと声を上げることが人種、性別、年齢に関係なく大切です。差別のない方向に向かっていくために声を上げることが求められているのですが、日本は発言力、発信力、抗議する力が歴史的に見ても残念ながら弱い。ヘイトクライムに対して日本人として、日本政府として、日本のメディアとして、一人ひとりが当事者意識を持って関われるか、どのような対応をしていけば安心して暮らせる社会に変えていけるか、考え行動することがまさに問われていると思います」 過去記事 ユナイテッド航空の乗客引きずり降ろし。アメリカで生きているアジア人として思うこと 「日本には差別がある」ナイキ広告が炎上し世界に波及 本国アメリカではどう映った? ニューヨークで犯罪やトラブルに巻き込まれたら。実体験を通して「冷静さ」を保つことの重要性を知る (Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

NYで多発するアジア人差別(1) 在住者の私の経験談

チャイナタウンの近くで男性が見知らぬ者から突然刃物で刺されたり、歩道で女性が突き飛ばされて大怪我をしたりするなど、ニューヨークでは今年に入り特に旧正月あたりから、再びアジア系の人々をターゲットにしたショッキングな事件が多発している。 新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、当地で増加するヘイトクライム(憎悪犯罪)に対処するため、ニューヨーク市は「Stop Asian Hate」を呼びかけ、差別撲滅のための啓蒙キャンペーン”I Still Believe in Our City” (それでも私たちの街を信じている)をスタートさせた。 市は「誰でも差別なく生きる権利がある」と呼びかけ、嫌がらせがあった際にどうするべきか、日本語を含む各言語で情報を発信している。 市やメディアの報道によると、市内で起こったアジア系に対するヘイトクライム事件は、2019年は1件だったが、20年は30件に増加した。うち16件は暴力がらみの犯罪だった。また嫌がらせや偏見なども含む報告は、19年2月から12月の間は30件だったのに対し、20年の同時期は205件に急増。アジア系の女性の方が男性より3倍多く、言葉による嫌がらせを受けている。 これらは報告されているものだけなので、実際の数はもっと多いのではないかと見られている。 「アジア人差別は実際あるの?」筆者の経験談 経験談を語る前に、筆者の見解をまず伝えておく。 国がどこであろうと、一般の人は基本的にある程度の常識や良心があると信じている。見知らぬ人に汚い言葉や態度で絡んでくるのは、ごく一部の無知で「ちょっとおかしな人」なのだと思う。 それを前提に、在住者としての経験談をシェアしたい。 ニューヨーカーは一般的にフレンドリーな性格で、筆者にとってここに住む大半の人は、コロナ禍になっても特に変化は見られない。 ただ思うこともある。以前は道で目が合うとニコッとする人が多かったが、最近は減った気がしている。近年、外国人が多くなり当地の良き習慣がなくなりつつあるのか、コロナになって人々に心の余裕がなくなってしまったからなのか、理由は不明だ(マスクをしているというのもあるかもしれない)。 次に、アジア人へのヘイトのようなものは、コロナに関係なくアメリカには以前からあった。例えば筆者が2000年代初頭、アジア人のほとんどいないペンシルベニア州の田舎を訪ねた時のこと。レストランで食事をしていたら、隣に座った女性2人のうちの1人が私をチラリと見て、このように言った。「私最近、中国人に仕事を取られたのよね」。明らかにアジア人である私に向けられた言葉だと直感でわかった。 トランプ元大統領は、選挙期間中に何度「中国ウイルス」という言葉を発したか。最近では2月28日のCPACで、久しぶりに公の場で演説し世界中に注目されたが、何度もこの中国ウイルスという言葉を繰り返した。世界で最も影響力がある人物の1人により、世界中の人々に「コロナ=アジア」が刷り込まれてしまった。アジア系の人を見て「仕事を取られた」「ウイルスを持ってきた」などと言ってしまうような無知な人々は近年、増加したことだろう。 さて前置きが長くなったが、この1年間のニューヨークでの筆者の経験として、結論から言うと、筆者自身がアジア人を標的とした暴言や暴力など「あからさまな差別」を受けたことは今日まで一度もない。 ただ、気になることがまったくないわけでもない。 一つは昨年、客のいない早朝のモール内の某有名カフェチェーンで、クロワッサンとコーヒーをオーダーした時にこんなこともあった。まず女性スタッフがとても無愛想だった。感染防止対策で店内飲食が不可のため、まずモールから屋外に出てレシートを見ると1ドル(100円程度)が上乗せされていた。そしてコーヒーカップの蓋が洗剤臭かった。私がアジア人だからそのようなことが起こったのか、それともスタッフ側の問題なのか、いまだに真相はわからない。(戻るのが面倒なのでクレームは入れず、その店には2度と行かないと決めた) アパートの住民にも気になる人がいる。2年前に引っ越してきた40歳くらいの男性は、私と道で会っても目を合わせないし挨拶もしない。ある日、筆者が隣人と表で立ち話をしていたら、その男性が通り過ぎて行き、彼の笑顔を初めて見た。私は彼に対して失礼なことを一度もしていないので、彼が無愛想なのは私がアジア人だからか、それとも彼の心の問題なのか、この辺の判断もつかない。そもそも感じの悪い隣人というのは、どの国にも存在するものでもある。 当地に住む日本人の知人にもヒアリングしてみたら、「通りがかりに暴言を吐かれたことがある」という人が何人かいた。ただし「アジアや特定の国を指す言葉を吐き捨てられたわけではないので、アジア人である自分に向けられたものなのか周囲の人に対して言ったものなのかは不明」とのこと。 結局のところ、アジア系へのヘイトクライム急増の真相は、住んでいても実感としてよくわからない。私も周りの人々も「あからさまなアジア人差別」を受けたわけではなく、トラブルがあってもその背景に人種差別的な動機があったのかどうかは不明だ。 ただし「ウイルスを持ってくるな」と言われたり、唾を吐きかけられたり、駅や電車で暴行を受けたりしたなどの話は報道され、いくつか人づてにも聞くので、もう少し多くの人にヒアリングすれば、さまざまなケースが出てくるかもしれない。 また遅い時間帯や治安の悪い場所には不審者や精神障害者が増えるため、アジア系の人々が標的となる事件が起きやすいのかもしれない。 (次回は、実際に暴行を受けた日本人に話をお聞きします) 過去記事 ユナイテッド航空の乗客引きずり降ろし。アメリカで生きているアジア人として思うこと 「日本には差別がある」ナイキ広告が炎上し世界に波及 本国アメリカではどう映った? (Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

「クオモ知事は特権を乱用し、セクハラ・パワハラを常習化した」被害女性が赤裸々告白

ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事が窮地に立たされている。 パンデミック以降のこの1年間、クオモ知事のリーダーシップは特に目を見張るものがあった。感染状況を抑えるために、州民のために最大限に尽力してくれたとは思う。 なのに、ここに来てさまざまなスキャンダルが浮上している。 一つ目は、州政府の組織ぐるみによる、介護施設の死者数隠蔽の疑惑。 二つ目は、クオモ知事による、州議会議員への脅迫疑惑。 参照記事 理想のリーダーはどこへ? クオモ州知事の思わず耳を塞ぎたくなる「隠蔽疑惑と脅迫」 騒動はこれだけで収まらなかった。 ここにきて、なんとセクハラ疑惑まで浮上しているのだ。しかも長期にわたって、クオモ知事の周りでは「常習的」に行われてきたことのようだ。 クオモ知事のセクハラ疑惑とは? 事の発端は、マンハッタン区長に立候補しているリンジー・ボイラン(Lindsey Boylan)氏が、昨年12月に発信したツイートだ。彼女は2018年まで、クオモ知事の補佐官として州の経済開発局で働いていた。 ボイラン氏は高校時代、母親が職場で上司からセクハラを受けたことで、世の中にセクハラ問題が蔓延していることを知った。なかなか解決できない複雑な問題だが、加害者に対して屈することなく、闘うことを決めたと言う。 その上でこのようにツイートで告白した。 クオモ知事 @NYGovCuomo は私に対して、数年にわたりセクハラをしてきた。たくさんの人がそれを見た。自分の身や仕事が、一体どうなってしまうのかわからなかった。 これまで世代を超えて数え切れないほどの女性が犠牲になってきた。 ほとんどが声を上げられなかった。私は一部の @NYGovCuomo のような権力を乱用する男が嫌い。 州のトップによる人物からの性的嫌がらせが長期にわたって続いたことで、自身の職務にどう影響を及ぼすか不安だったであろう、当時の辛い胸の内を語った。 しかもセクハラを受けたのは、ボイラン氏だけではなかったようだ。このツイート後、ボイラン氏のもとに2人の女性から連絡が入り、同様にクオモ知事からパワハラ、セクハラまがいのことを受けたと告白されたという。 この時、クオモ知事は記者会見で「事実ではない」とボイラン氏の告白を一掃したため、当時メディアも大きくは取り上げなかった。 しかし今回、クオモ知事のさまざまなスキャンダルが浮上する中、再びボイラン氏が声を上げたことを、ニューヨークタイムズなど米主要メディアは見逃さなかった。ボイラン氏が24日、オンラインメディアMediumで発表した手記には、クオモ知事によるセクハラ&パワハラ疑惑の詳細が書かれている。 在職中にボイラン氏はクオモ知事から、上司を介して気持ちを告げられたり、州専用機内で膝が触れ合うほどの距離に座り「ストリップポーカーをしよう」と誘われたりと、州でもっとも権力のある異性からの「居心地の悪い言動」を受け、それはしばらく続いたという。 そして知事からの手招きだろうか、ボイラン氏は18年、経済開発副長官および知事特別顧問に昇進し、より知事と近い距離で任務にあたるようになった。 ある日、マンハッタンのオフィスでクオモ氏と2人きりで会議となり、終了後に会議室から出ようとしたところ、クオモ氏から承諾なしに突然口にキスをされたという。ボイラン氏はその場をすぐに離れたが、その日から通勤するのが苦になったという。彼女は同年9月に辞職をした。 ほかにも手記には、「知事から好意を寄せられた女性は(不快にさせぬよう)正しい対応を求められた」「無言の脅迫のようなものを知事は駆使し、女性を恐れさせて口を開かせないようにした」「知事特権を乱用し、セクハラを常習化した」「被害を受けても、多くの人は恐くて発言できない」「知事はセクハラやいじめ文化(パワハラ)を政権内に蔓延させ、それらの悪習が容認されるだけでなく期待されるような文化を生み出した」と、ショッキングな証言が書かれている。 また先日クオモ氏に脅迫をされたとするロン・キム州議会議員について、「守ってあげなければ、彼は仕事を奪われるだろう。それが(クオモ)政権のやり方だ。その中で働いていたのでわかる」と警告した。 手記を発表した理由について、「知事を尊敬してきた。仕返しをしたい訳ではない」と言う。容姿の言及を含むクオモ氏の不適切な言動や性的嫌がらせは、ほかの同僚や過去に関係のあった女性にも及んでいたようだが、ボイラン氏は現職の女性に迷惑をかけたくないとし、あくまでも「自分の体験記」であることを強調した。 「虐待的な行動をやめてほしいだけだ。怖くて声を上げられなかった人もいる。私の経験を些細なこととして受け流す人もいるだろう。でも私は、陰で悪行をする権力者をいくらでも知っているし、それについて黙っていられない」 この疑惑について、ニューヨーク市のビル・デブラシオ市長は、再び眉をひそめている。 25日の定例会見で、記者にクオモ知事のセクハラ疑惑について問われた市長は、「到底許されるものではない」として、州政府が関わらない独立した調査団による徹底的な調査の必要性を強調した。 市長は数日前も、キム氏の脅迫疑惑について「(知事による)パワハラまがいのいじめは今に始まったことではない」「自分は訴えた側を信じる」と、キム氏を支持する姿勢を見せていた。 女優で#MeToo運動の活動家、ローズ・マッゴーワン、さらにセクハラ撲滅運動の支援基金「タイムズ・アップ」を通してアシュレイ・ジャッドやエヴァ・ロンゴリアらも、セクハラ疑惑についてクオモ知事の調査を呼びかけた。 一連の騒動により辞任を求める声が上がっているが、クオモ政権の報道官はボイラン氏の発言を事実無根と否定し、専用機内での会話を否定した4人の補佐官の共同声明も発表した。一方でニューヨークタイムズ紙の取材では、セクハラの事実があったとする証言が匿名で出ている。肝心のクオモ氏からはコメントがない。 ニューヨークは、新型コロナの感染拡大、ワクチン配布の遅れ、経済低迷、高い失業率、治安悪化など、解決せねばならない最優先課題が山積みだ。州のトップによる死者数隠蔽、脅迫疑惑に加えセクハラ&パワハラ疑惑まで浮上したことで、州民にとって頭痛の種がまた1つ増えた。 (Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

理想のリーダーはどこへ? クオモ州知事の思わず耳を塞ぎたくなる「隠蔽疑惑と脅し」

ニューヨーク州はこの1週間、アンドリュー・クオモ知事を取り巻くスキャンダルで持ちきりだ。 クオモ氏率いる州政府が、新型コロナ禍における高齢者介護施設の死者数を隠蔽したとされる疑惑をめぐって、証拠収集のための弾劾委員会が結成されることが、州議会共和党員により18日に発表された。17日には、FBIと州東部地区連邦検事局による調査が開始したことも報じられている。 事の発端は先月、州司法長官のレティシア・ジェームズ(Letitia James)氏が、昨年3〜8月の高齢者介護施設での新型コロナによる死者数が、州により大幅に過少報告されていたと指摘する報告書を公表したことによる。 新型コロナによる州内の死者数は、4万5807人に上る。うち40%近くが介護施設の入居者とされる。 介護施設での死者数は今月10日の時点で1万3297人、16日の時点で1万3432人(総合的にあらゆる介護施設も含めると1万5049人以上)とされているが、先月18日の時点の公式な発表は8711人だった。 クオモ知事のトップ補佐官、メリッサ・デローザ(Melissa DeRosa)氏は今月10日、州議会の民主党議員らとのビデオ会議中に「死者数のアップデートを“凍結”していた」ことを認め、謝罪していた。大統領だったトランプ氏がツイッターを通して昨年8月、「州の対応が悪いため、介護施設入居者が殺されている」と言っていたころだ。デローザ氏が「(正しい)死者数を発表することで連邦政府による攻撃材料になりかねず、司法省による州政府の調査を回避するためだった」と釈明したことを、翌11日にニューヨークポストが報じた。 これらの疑惑に対して、15日にクオモ氏は会見を開き、釈明した。州保健局が、介護施設の入居者が病院で死亡したケースを明らかにしなかった結果であり透明性を欠いてたことを認めたが、正しい数字の追加作業は忙殺により「空き」ができ「後回し」となっただけだとし、「我々はいつも事実と科学的根拠に基づいている」と隠蔽疑惑を全否定した。 騒動はこれだけに止まらない。 クイーンズの州議会、ロン・キム(Ron Kim)議員がクオモ氏から電話があり、これらの騒動を封じ込めるような協力をするように脅されたと告発するなど、きな臭い話がボロボロと出ている。 新型コロナにより叔父が介護施設で亡くなったキム氏は、10日のビデオ会議に参加した1人で、隠蔽工作をめぐって州を激しく非難していた。クオモ知事からの電話は、翌11日夜のことだった。キム氏によると、クオモ氏は最初沈黙から始まり「あなたは立派な男か?私はあなたがどんなにあくどいか世間に伝えることができる。あなた(の政治家人生)はそこで終わりだ。破壊される」と言いながら、怒鳴り声を上げたとされる。その後も何度も執拗に電話をしテキストを送ってきたという。 これについてクオモ氏の広報官、リッチ・アッツォパルディ(Rich Azzopardi)氏は事実無根だと否定したが、犬猿の仲とされるニューヨークのビル・デブラシオ市長は、キム氏の発言を信じる旨を記者会見で表明した。クオモ氏からのコメントは発表されていない。 クオモ知事はこれまで、多くの州民にとってヒーロー的な存在だった(はずだ)。パンデミックになった昨年3月以降、毎日記者会見を開き、「事実」のみを公表するスタイルを通し、州民が過度に恐れることなく冷静に状況を判断できる道筋を開き、ここまで導いてきた。頼れるリーダーとしての手腕を発揮してきたことで、「次期大統領にもなれる素質のある真の指導者」、(離婚後独身であることから)「クオモセクシャル」などと、メディアに異常なまでに持て囃された時期もある。 一方、ロックダウンをし、飲食店への厳しいルールを設けたことで、労働者からは常に非難の的となってきた。 今回なぜこれほど、昨年の介護施設での死者数が問題になっているのか。それは3月以降、医療崩壊を避けるために、州の方針で新型コロナで入院し回復傾向にある9000人以上の患者を病院から介護施設に移し、これが介護施設死者数の増加に繋がったのではないかと、たびたび批判の的になってきたからだ。 そのたびに知事は「介護施設内での感染の多くは、入居者同士ではなく施設で働くスタッフからであり、介護施設での死者6300人(当時発表)には関係しない」「死亡したのが病院か介護施設か、誰が気にするのか?」などと発言し、批判を一掃していた。 州保健委員のハワード・ザッカー(Howard A. Zucker)博士も記者会見で、患者を移した判断は「正しかった」と説明した。知事が言うような死者数更新の「遅延」は組織ぐるみによるもののようだ。 この一連のニュースについて、あるニューヨーク市民はこのように呟いた。「あれだけ多くの感染者と死者数を出し続け、なぜメディアが持ち上げてきたのか理解できなかったけど、ようやくメッキが剥がれてきたということではないかな」。 「真実」だけを伝えてきたとされるクオモ知事。彼にとって、その真実とはどんなものなのか? 関連過去記事 コロナと闘った111日 NYクオモ知事が第1波収束宣言(ウイルスとの共存は続いていく・・・) (Text and photo by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止