正義訴え不法投獄、人権活動家フレッド・コレマツの人生を辿る ── 日系人強制収容から81年

1941å¹´12月7日(現地時間)、日本海軍は真珠湾を攻撃し、太平洋戦争が始まった。 アメリカでは日系人も「敵」と見なされ、2ヵ月後の42å¹´2月19日、フランクリン・D・ルーズベルト大統領(当時)により「大統領令9066号(Executive Order 9066)」が発令された。 これにより、主に西海岸に住んでいた12万人の日系人(うち3分の2はアメリカ生まれのアメリカ市民)が突然、自宅や事業、財産を没収されて収容所送りとなった。日本にルーツがあるという、ただそれだけの理由で。 Photo: カリフォルニア州マンザナー強制収容所(1942〜45年)の跡地。 日系人12万人が突然自由を奪わる(42年) これに対し「そんなのおかしい」「絶対に収容所なんて入らない」と異を立てた人物がいた。日系2世のフレッド・コレマツ(是松豊三郎、Fred Toyosaburo Korematsu)氏だ。 彼は日本から移民し苗木生産業を営んでいた両親の下、1919å¹´1月30日にカリフォルニア州で生まれ、アメリカ社会で育った。大統領令9066号が発令した際、23歳だった彼は、何も悪いことをしていない人を収容所に入れるなんて間違っていると、政府からの命令を断固拒否した。 5月に逮捕されるまで、彼は日本人に見えないようにするために目の整形手術を受け、スペイン人とハワイ人の子孫のクライド・サラ(Clyde Sarah)と名乗り、身を隠した。 「強制収容の不当性と違法性を主張し『絶対に入らない』と言い続け国を提訴しましたが、有罪判決が下されました。しかし最後まで諦めず、信念と正義のために闘った、公民権運動の先駆者です」 ニュージャージー州在住の日系3世、古本武司さんはコレマツ氏についてそう説明する。古本さん自身、カリフォルニア州のトゥリーレイク強制収容所で生まれ、現在は不動産事業をする傍ら、コレマツ氏の生き様や平和の尊さを伝える活動をしている。 刑務所と収容所に2年以上も収監されたコレマツ氏は、そこでも孤立した存在だったようだ。アメリカへの忠誠を誓い、和を重んじる人々からトラブルメーカーとして見られていた。それでも彼は「間違いは間違い」と、最後まで信念を曲げなかった。 「強制収容は人種差別ではなく軍事上必要」と最高裁(44年) 不当逮捕、投獄されたコレマツ氏に弁護士の支援者も現れ、42年の有罪判決後に最高裁まで上告した。しかし44å¹´12月、強制収容は人種差別ではなく軍事上必要だったと正当化され、彼にとって不利な判決が最高裁でも下され、前科者としてのレッテルが彼の人生について回ることとなった。(コレマツ対アメリカ合衆国事件 Korematsu v. United States) 「強制収容は憲法違反」と有罪判決の覆し(83年) しかし37年後の82å¹´1月、法史学者や活動家により「日系人による諜報(スパイ)活動は事実無根」「強制収容は憲法違反」が証明されると、コレマツ氏は再び国との対決を決意。そして翌年11月、サンフランシスコの連邦地裁でついに有罪判決が覆され、犯罪歴が抹消されることが確定した。これを受け、コレマツ氏は「人種・宗教・肌の色に関係なく、あのような扱いをアメリカ市民が二度と受けないようにしてほしい」と訴えた。 米政府、日系人へ謝罪と補償へ(88年) 生涯を活動家として捧げたコレマツ氏は、日系人が国からの謝罪と補償金を受けられるようロビー活動も支援した。それが実り、88年にはレーガン大統領(当時)が人権擁護法(Civil Liberties Act of 1988)に署名。大統領からの謝罪の手紙と補償金2万ドルが、日系人の生存者および遺族全員に贈られた。 98年には大統領自由勲章(民間人への最高位の栄誉)がクリントン大統領(当時)により授与されている。晩年は9.11後に深刻化したアラブ系米国人への差別反対を訴えた。 2005å¹´3月、86歳で生涯を閉じた。死後、彼の生涯を讃え、生誕日(1月30日)を「フレッド・コレマツ・デー(Fred Korematsu Day of Civil Liberties & Constitution、市民の自由と憲法のフレッド・コレマツの日)」と定め、人権や差別問題、正義への理解を深める動きが進んでいる。アメリカでアジア系米国人にちなんで名付けられた初の記念日でもある。 10年にカリフォルニア州で法案が通過したことから始まり、ハワイ州、バージニア州、フロリダ州、ニューヨーク市、アリゾナ州でも制定され、ユタなど他6州では布告も進んでいる。 「正しいと思う方に立ち上がり、問題提訴を恐れてはなりません」─ フレッド・コレマツ 没後、「フレッド・コレマツの日」が制定 前述の古本さんも自身が住むニュージャージーでの制定に向け、州政府に働きかけてきたが、昨年暮れに動きがあった。 古本さんら活動家の働きかけが実り、4年前にフォートリー市(ニュージャージー州)で制定されていたのに続き、昨年12月に同州でも法案が可決され、今年1月30日にフレッド・コレマツの日が制定された。 「アメリカの政治システムが正しく機能していることが証明されました。未来の行方は、我々一人一人の意思次第です」と、この日を迎えた古本さんは胸を撫で下ろした。「法案通過まで2年半もかかりました。小石を一つずつ動かすような活動でしたが、小石が集まると山になります。価値のあるものは達成まで時間がかかりますが、諦めなければ最後に勝利を収めることができます」。 同州での記念式典には、コレマツ氏の長女カレンさんもサンフランシスコから出席した。 戦後、コレマツ氏は結婚し2人の子を儲けたが、収容所時代や訴訟の話をすることはなく、カレンさんは高校の授業で友人を介して詳細を学ぶまで父親がどのような人生を歩んできたかを知らずに育った。 帰宅し問うと、父は静かにこのように言った。「自分は正しいことをした。政府は間違っていた」。 「父は国に忠誠を誓ったアメリカ人なのに、日本名を持っているだけで国から不当な扱いを受けました。この国にはいまだに人種や民族の差別があるが、これらはすべて無知が原因です。『正しいと思う方に立ち上がり、何かおかしいと感じるなら問題提訴を恐れてはならない』という父の信念を胸に、この国がより良い場所になるようこれからも教育活動を続けていきます」 カレンさんはこのように決意を新たにし、最後にこう付け加えた。 「父の人生を通して教えてくれたのは、たった1人でも変化を起こし不正を正すことができるということでした。40年かかったとしても、最後まで諦めなければ」 参照 関連記事 Text…

【億ションのお宅拝見】NY高級住宅地グラマシーパークの9億円超!新築コンドの中身

素敵なコンドが完成したとの一報があり、筆者がこのたび内覧で訪れたのはニューヨーク・マンハッタン区ダウンタウンの閑静な高級住宅地、グラマシーパーク地区。 その一角に、昨年完成した高級コンドミニアム(分譲用の集合住宅)、250 EAST 21ST STREETがある。 Gramercy Park マンハッタンの中心地、タイムズスクエアから地下鉄で10分ほどの距離で、人の往来が激しいミッドタウンとは異なり、どことなくヨーロピアンな雰囲気が漂う落ち着いた住宅街だ。 「徒歩圏内に交通の要衝であるユニオンスクエア駅があり、ABCキッチン、グラマシータバーン、アップランドなど市内有数の人気レストランも点在するエリアなんです」。そのように太鼓判を押すのは、米大手不動産会社、ダグラス・エリマンのエクルンド・ゴメス・チーム(Eklund Gomes Team at Douglas Elliman)公認不動産ブローカー、エリス・バークマンさん。 「市民の憩いの場所、ユニオンスクエアパークやグラマシーパークなど公園も充実し、生活にとても便利です」 ここから徒歩数分の場所にある完成したばかりのコンド、250 EAST 21ST STREETを訪れた。 近隣のヨーロピアンな雰囲気に同化するような外観は、屋根面が2段で天井高のフランス風「マンサード屋根」、装飾が手すりに施された「ジュリエットバルコニー」など、当地では珍しいヨーロッパ風のデザインが各所に採用され、最先端の中に歴史や伝統が織り込まれている。建築界で名を馳せる、当地のIssac & Stern Architectsが手がけたもの。 1階のロビーに到着。ここでドアマンが出迎えてくれる。 エレベーターで、10階にある4ベッドルームの「10B」へ。 ドアを開けるとフォイヤー(ゲストを迎えるためのスペース)が広がり、住居とは思えないほど長い廊下が奥へ奥へと繋がっている。 壁には、装飾としてヨーロッパ風のモールディングが施されている。このようにお気に入りの絵画を飾ればデッドスペースにならず、ゲストのウェルカムスペースとして活かせる。 帰ってきたら、コンソールテーブルに鍵を置く。室内のインテリアデザインはすべて、ハイセンスな技法で知られるParis Forinoによるもの。 フォイヤーの奥、長い廊下を突き抜けると奥にはグレートルームが広がる。グレートルームとは、リビング、キッチン、ダイニングがひと続きになった開放感あるスペースのこと。 ゆったりと座れる8人用ダイニングテーブルと5人用カウンター付きアイランドキッチンを配しても、このようにまだ余りある広さ。アメリカではホームパーティーが文化の一部。このくらい広さに余裕があれば相当な数のゲストを招くことができる。 さらにその奥は、リビングスペースになっている。天井まである高さ10フィート(約3メートル)の大きな窓から、自然光が室内に柔らかく差し込む。 屋外スペースにはテラスがある。 このテラスは隣の2つのベッドルームとも繋がっていて、短距離走ができるくらい長くて広い。子ども用簡易プールやバーベキューグリルも十分に置くことができる。 天気が良い日はテラスで席で食事をすると、さらに食欲が増しそう。 日が暮れたら、ここから星空を眺めながらワインやウイスキーを嗜むのも一興。 次にプライマリーベッドルーム。このようにUS版のキングサイズを置いても十分な広さ。朝は目覚めてすぐにテラスに出て外の空気やお日様の光を体全体で浴びれば、活力ある1日のスタートを切れるだろう。 バスルームは住民用とゲスト用とに分かれ、全部で3.5箇所が各部屋に配置されている。洗面台は2人が同時に使える大きさなので、忙しい朝も混雑せずゆっくり使うことができる。 全米の中で不動産価格が格段に高いニューヨーク。今年の住宅価格は昨年に比べると下落傾向にあると報道されているが、インフレを抑えるための大幅な利上げを背景に、住宅ローンの金利は上昇している。 そんな中でも、250 EAST 21ST STREETのような高級物件には買い手がつき、バークマンさんによるとすでに90%が契約済みだという。 内見した10Bの購入価格は日本円で約9億2000万円ほどになるが、低層階やスペースがより限られた部屋は、少し価格が落ちる。それでも、399万5000ドル(約5億2500万円)からということだ。 「10B」のフロアプラン 250 EAST 21ST STREET「10B」 価格:699万5000ドル(現在の為替で約9億2000万円) 4ベッドルーム、3.5バスルーム、グレートルーム、キッチン 室内面積:2,468平方フィート(約229平方メートル) テラス面積:316平方フィート(約29平方メートル) NYの住まい関連記事 Text and photos…

「魅力劣る人はより頻繁にマスク着用」研究で判明と米紙

6日、航空業界が機内でマスク着用を求めない方針を決めるなど、日本ではここに来てマスク着用ルールの自由化が進んでいる。 また学校の卒業式でも、マスクなしでの実施が容認されそうだ。 マスク着用は今後、個人の判断や意思に委ねられるケースが増えていき、「着け続けるか外すか」の議論が活発化している。 Photo: 今年1月9日、東京・渋谷を行き交う人々。 パンデミック中にマスク着用義務があったアメリカでは、昨年4月に空港や国内線の機内での着用義務が撤廃され、全米でマスク離れが一気に進んだ。 その後も州ごとにルールが分かれ、ニューヨークでは公共交通機関や駅で残っていたマスク着用義務も9月に撤廃され、着用するか否かは個人の選択となった。 その後、街の人はどうなったのかというと、徐々にマスク離れが進んでいき、現在はほとんどの人がマスクを着けていない。 ただしコロナ禍以前のような風景が完全に戻っているかというとそうでもなく、街を歩いていても電車の中でもイベントでも、一部の人はマスクを着けている。インフルエンザの時期というのもあるかもしれない。 しれない。 そんな中、7日付のFOXニュースやニューヨークポストは、興味深い研究結果をもとに「’魅力的でない’人はより頻繁にマスクを着用していることが判明」とする記事を発表した。 平均年齢が33、34歳の女性が半数以上の対象者を調査したこの研究結果は、心理学専門誌「フロンティアズ・イン・サイコロジー(Frontiers in Psychology)」に掲載されたものだ。「マスク着用は、新型コロナの感染予防から自己アピール戦略として(フェーズが)移行していることを示唆」とあり、FOXニュースが韓国のソウル大学校の心理学の教授や米ノースキャロライナ中央大学(NCCU)の心理学の客員教授に聞いた話をまとめている。 「ポストコロナの世界では多くの人々が脱マスクを喜んでいる中、一部の人はマスクを着用し続ける」状況を鑑み、「自己認識の魅力アップ(魅力的により見えること)がマスク着用の動機だとしても、着用し続ける理由の1つに過ぎないのだから、マスクをしている=醜いとするのは不適切」と断りを入れながらも、着用し続ける人にはあくまでも以下の傾向があるとした。 好印象を与えたい強い動機がある場というのは、例えば就職面接などだ。 ほかにも、パンデミック中のマスク着用の義務化については、専門家の意見も交えこのように分析した。 雇用機会均等法が厳しいアメリカでは、履歴書に写真を貼ることは禁じられているが、そのような国においても、現実的には、面接で外見が結果を左右する一つの要因になりうるということは、まことしやかに言われている。 例えば、最終面接に学歴も条件も遜色がない2人が残った場合、最終的に1人に絞る決め手は、「見た目の美しい方になるだろう」とされている(もちろん反対意見や例外もある)。 そのような見た目も重要な要素となる就職面接の場を仮の設定とし、マスクを着用するか否かの調査も行われ、このような結果を示した。 マスクを着けることによる自己認識の魅力は、好印象を与えたい強い動機がある場(仕事の面接や初デートなど)で効果を発揮するようだ。よって日常的な活動の場(例えば犬の散歩など)においては、影響はないという。 調査をもとにしたこの報道は、「ポストコロナの時代は、マスク着用が自己顕示と自己保護という2つの機能を果たすことができることを示している」と結論づけた。 また、調査は支持政党によるマスク着用の是非についての視点で行われたものではないこと、そして「時が経てば、マスク着用による意図しないメリットと結果がより多く明らかになるだろう」とつけ加えられた。 関連記事 Text and some photos by Kasumi Abe(Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

気球だけじゃない。アメリカに忍び寄る中国の「スパイ活動」

数日間にわたりアメリカ本土上空を飛行していた中国の偵察用とされる気球(スパイバルーンと呼ばれている)は4日、サウスカロライナ州のマートルビーチ(大西洋)沖上空で、米空軍の戦闘機、エアフォースF-22によって撃ち落とされた。 米軍は、撃墜のためにF-22が離陸する様子や、撃ち落とされた気球の瓦礫の回収作業の様子を公開した。 戦闘機F-22が気球を撃ち落とす瞬間の映像 米軍の発表をまとめた地元メディアによると、気球の高さ(直径)は200フィート(約61メートル)で、重さ数千ポンドだったという。 自爆用の爆発物を搭載していた可能性について指摘する報道もある。気球の残骸は回収され、FBIの研究ラボで詳しい分析が進められているが、撃ち落とし一安心、とはいかない。 アメリカに忍び寄る中国の「スパイ活動」 この国にじんわりと忍び寄る中国の諜報活動(スパイ)は、今回の気球だけではない。 ワシントンD.C.のシンクタンク、Center for Strategic and International Studies(戦略国際問題研究所=CSIS)は2021年、2000年以降に中国がアメリカに対して行った160件のスパイ活動をリストにまとめた。 それらのスパイ活動は、軍事技術の取得を目的としたもの、商用テクノロジーの取得を目的としたもの、民間機関または政治家の情報を取得しようとしたもの、サイバー攻撃に関係したものなど広範囲にわたる。 またそれらのスパイ活動の24%が2000年から09年にかけて、残り76%が10年から21年にかけて発生したもので、「北京(中国共産党)による悪質行為は近年増加の一途をたどっている」(ニューヨークポスト)。 また、160件のスパイ活動のうち89件が習近平国家主席が実権を握った後に発生したものだと、報告書には付け加えられている。 以下は、アメリカが中国からのスパイ活動だと非難しているものからいくつか抜粋して紹介する。 ハッキング 米司法省は20年、アメリカ及びそのほかの国にある100社以上の企業のコンピュータ・ネットワークにハッキングしたとして、中国国籍を持つ5人を起訴。 中国国内で逃亡中とされるハッカー集団は、中国共産党の承認を得て活動するサイバー攻撃グループ「Advanced Persistent Threat 41(APT41)」の一員と見られている。 人工衛星 18年5月時点で、中国は120基以上の人工衛星を打ち上げ、地球を周回させ、軍事や商用目的で偵察とリモートセンシング(遠隔探査)を行っていると、19年の米空軍による機密扱いではない報告書で明かされている。 「これらの衛星により、中国人民解放軍(PLA)が近隣地域の競争相手(インドや日本など)や要注意な国や地域(韓国、台湾、東シナ海、南シナ海など)の状況認識を可能にしている」「中国は(軍民両用で使用される)デュアルユース技術を備えたより高度な衛星技術を開発し、一部の分野では世界をリードしている」と報告書は付け加えた。 機密エージェント(工作員) 20年7月、知的財産の盗難疑惑に対応し、米政府はテキサス州ヒューストン市にある中国領事館の閉鎖を中国に命じた。それから2ヵ月後、当時のマイク・ポンペオ米国務長官は「ニューヨーク市マンハッタン区の中国領事館が北京のスパイプログラムの主要な拠点として使用されている」「彼らは通常の外交から一線を越え、スパイと似たような活動に従事している」と地元紙に語った。 元CIA防諜長官のジェームズ・オルソン氏も「常に100人を超える中国のスパイがニューヨークで活動している。その活動は大規模だ」と述べた。 ハニートラップ ハニートラップとは、主に女性のスパイが男性に対して色仕掛けで誘惑し行う諜報活動のこと。 ニュースサイトのアキシオスは20年、中国の女性スパイと見られるファン・ファン(Fang Fang、別名Christine Fang)という名の人物が、エリック・スウォルウェル下院議員 (民主党、カリフォルニア州) をはじめ、複数の政治家に近づいていったと報じた。ファン氏は留学生として渡米し、サンフランシスコの中国系米国人政治団体メンバーとして活動。民主党系の知事や市議会議員に人脈を広げていったとされる。 ファン氏は諜報活動を米中西部にも広げ、少なくとも2人の市長と付き合っていたと報じられている。 Photo: 大統領候補として、19年カリフォルニア州民主党大会で演説をしたスウォルウェル下院議員。 ほかに法執行機関や教育機関でも、スパイ容疑の逮捕者が出ている。 16年、中国生まれでアメリカの市民権を取得したFBIのベテラン電子技術職員の男が、11年から16年の間に、FBI職員のIDや出張スケジュール、内部組織図などの機密情報を中国に提供した罪で逮捕された。 20年には、NYPD(ニューヨーク市)警察の警官および米陸軍予備役の男が、マンハッタン区の中国領事館に勤務する職員に情報を渡した容疑で逮捕された(その後起訴は取り下げ)。 同じく20年、NASAの研究者でテキサスA&M大学の教授が中国政府が運営する広東工業大学との関係を隠しながら、連邦補助金で最大75万ドル(現在の為替で約9800万円)を受け取った罪で逮捕された。 以上は、報道(明らかになっているもの)のほんの一部だ。また前述のCSISのリストにあるスパイ活動は、オープンソース(公開されている資料)から得られたものだけで、日本を含む他国でのスパイ活動や、中国にある米企業や個人へのスパイ活動は含まれていない。よってインシデントの数は、実際にはこれより多いと見られている。 関連記事 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

オフレコの差別発言で首相秘書官が更迭 「もし米国だったら?」記者の立場で考察

性的少数者(LGBTQ)や同性婚に対しての差別的な発言をし、更迭された荒井勝喜首相秘書官。オフレコを前提にした取材の場だったとは言え、岸田政権を支える人物による差別発言は到底許されるものではない。筆者もこの発言をスクープした毎日新聞の記事を読んでショックを受けた。 一方で、「オフレコでの発言」が大きく報じられてしまったことに引っかかったというのも事実だ。毎日新聞の別の記事によると、その場には報道各社の記者約10人が参加していたようだ。その中で同紙がオフレコのルールから外れ、スクープしたことになる。 筆者はアメリカで記者をしているので、これがアメリカなら…と考えてみた。アメリカでは通常、オフレコ発言は一般公開されず、オフマイク発言はそれほど重視されない。 発言がオフレコであったことが影響してか、米主要メディアでの報道は今の所それほど多くなく、岸田首相が更迭したというニュースや日本での同性婚の実情についてウォール・ストリートジャーナルやAP、ヤフーニュースなど一部のメディアが報じるに留まっている。 通常であればResign(辞任)という言葉が並ぶのであろうが、本件のヘッドラインにはFire(クビ、解雇)という強い言葉が並んでいる。そのようなところからも、岸田政権による「日本政府はいかなる差別発言も容認できない」という強いメッセージを感じた。 過去記事 オフレコではないが、「オフマイク」発言がアメリカで重視されなかった例 もしホワイトハウスにおいて、オフレコの発言が記事化されるなどメディアとしてのルールが守られなかったり、愚問が出たり、度が過ぎる攻撃的な態度を見せたりするメディアや記者は、プレスパスが無効になったり更新ができなくなる。いわゆる出禁だ。ホワイトハウスでなく一般の取材なら、情報源から今後お呼びがかからなくなるだろう。 ホワイトハウスのブリーフィング(定例記者会見)の場というのは、当然だが一般の人は入れない。記者の中でも、ホワイトハウス特派員という主要メディアの選ばれし精鋭だけが、報道官の担当者から「許可」を受け、中に入れてもらっている。記者席はたったの49席しかない。そこにどのくらいの記者が出席希望を出しているかは情勢によって日毎変わるが、トランプ前政権下の2017年にエスクァイア誌が報じた記事によると、数千の応募があった。49席に対してこれだけの参加希望があるのだから、ホワイトハウス側からすると、一部の記者を出禁にしても広報的に何ら問題はないと考えるのが普通だろう。 ◉ホワイトハウスがメディアや記者を出禁にした事例 以上はニュースになった一部であり、質問を独占したり、愚問や攻撃とも取れる質問をした記者は、こっそりプレスパスのリストから排除されている。 過去記事 筆者は日本とアメリカ両国で記者をして20年以上になるが、どちらの国でも「オフレコで」と言われることはたまにある。 オフレコにはいくつかの種類がある。 など。これらに加え、写真や動画撮影もオフレコ、オンレコとあり、事前に取り決めた上で取材をする(何も言われない場合はオンレコ)。 例えばつい数日前にニューヨーク市内で行った不動産の取材では、事前にインタビュイーのコメントはオフレコを通達された(上記(1)の事例)。「記事で引用するコメントはすべてメールで答えるので当日のコメントは引用しないで」と言われ、了承した上で取材をした。正直オフレコを求められるのは面倒なことではあるのだが、面会が実現できるのは相手あってのことだし、実際に会い(現場に行き)写真を撮影したり同じ場の空気を吸うだけでも十分価値があると判断したものであれば、先方の希望には敬意を払って承諾し、オフレコの約束は守る。録音もしない。 上記(4)の場合は、インタビュー中に「今から申し上げることはオフレコなんですが」とか「今言ったことは書かないでください」と言われるケースだ。この場合も筆者は記事に書かない。録音データもすぐに削除する。 筆者がオフレコを記事にしないのは、信用問題に関わるからだ。インタビュアーとインタビュイーとの間には、明文化されていなくても暗黙の信頼関係があって取材が成り立っているが、相手の意向に反して発言を引用したり、写真や動画をこっそり撮影(盗撮)したり、断りもなく録音したりしていると、相手との信頼関係は崩れていく。信頼関係が崩れると、相手は2度と取材に応じてくれないだろう。筆者はフリーランスの記者なので、もし出禁リストにでも入ろうものなら死活問題だ。 でもフリーランスではなく新聞社や出版社の社員なら、メリット・デメリットを天秤にかけ、会社的にそれほど問題ではないかもしれない。 オフレコの本当の意味とは?(米紙) オフレコについて、「‘オフレコ’の本当の意味とは?」という、ニューヨークタイムズの2018年の記事も興味深い。 この記事が取り上げたのは、首相秘書官と毎日新聞の記者の関係とは逆の事例だ。 トランプ氏が大統領だった同年、ニューヨタイムズの発行人、A.G. スルツバーガー氏との会談において、ホワイトハウスの事前要請により両者の会話を公にしないこと(非公開=オフレコ)に両者が同意していた。にも拘らずトランプ氏はこの件について陽気に(悪気なく)ツイートしたという。また16年、テッド・クルーズ議員が数名の記者と同氏の会社が経営するホテルの飲食店でオフレコの会合を行った際も、事前の合意に基づきそれを報じた記者はいなかったが、翌朝の記者会見でクルーズ氏はカメラの前でこの件を明かしたという。オフレコ情報がクルーズ氏により明るみに出た今、「声を大に発表するのは気持ちいい」と記者は述べている。 これらの事例を基に「特定の会話の条件をめぐる論争は、多くのジャーナリストにとって常に懸念事項」と同紙は述べている。政治記者であるこの記者も「あらゆる政治家から、失言について事後に(オフレコを)嘆願されたことがある」とした。その都度「本名で報じるか、名前なしで報じるか、役職だけでぼかして報じるか?」と自問するそうだ。 また同記事は、オンレコとオフレコの取材について、簡単にまとめている。 公開(オンレコ)の取材 非公開(オフレコ)の取材 最後に、オフレコの発言をなぜ毎日新聞の記者は発信したのか。 まず、新聞社はスクープを常に探している。首相秘書官の差別発言は口が滑ったのか、はたまたオフレコだから絶対に記事にならないと過信し本音を明かしたのかは知る由もないが、このような要職の人物の差別発言を、一記者として新聞メディアとして野放しにすることはできないと判断したのだろう。オフレコという取り決めだったが、事前に本人に通達した上で掲載したとある。 筆者はこのスクープ記事を見たときに、日本の多くの記事ではまだ珍しく記者の名前が書かれていることに気づいた。一般的にアメリカの新聞社や雑誌社は文責を明らかにするため、記事は記名制だ。一方日本の新聞社や雑誌社が発信する記事は、文責が明らかにされておらず、一体誰が発信している記事なのかがわからないものが多い(よって、書きたい放題の記事も近年ネット上には散見される)。そんな中このスクープ記事には、記者の名前がきちんと入っていた。その場で問題発言を耳にした記者にとって、文責を明らかにした上で、聞くに耐えがたく社会的に到底容認できない問題発言を、正々堂々と報じたということだろう。 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

中国の偵察気球「あと数日間、米上空を飛行か」「撃墜しない理由」…米英メディア報道

アメリカでは、国土の上空飛行が確認された中国の気球の話題で持ちきりだ。 米北部上空で確認されている気球について、中国はコース外に飛ばされた民間の気象観測気球であると主張し、珍しく謝罪の意を示した。一方、アメリカ側はその気球を中国の偵察気球(スパイバルーン)と見ており、「明確な主権の侵害と国際法の違反にあたり、受け入れられない」と強く非難している。 この日夜、中国・北京に向け出発予定だったアントニー・ブリンケン国務長官は、この気球問題が中国との会合の話し合いの中心になることを望まないとし、訪問の延期を発表した。 ガーディアンの動画ニュース インディペンデント紙は、中国の偵察気球について「米国防総省は気象研究用の気球だとする中国の主張をきっぱり否定。撃墜を含む『対応策を検討中』」と報じた。 アメリカのパット・ライダー准将は、3日正午の記者会見で「(中国の)声明は承知している。しかしながら実際、我々はそれが偵察気球であることを知っている」とし、「我が国の領空においていかなる飛行物体の侵入も容認できない」「アメリカは引き続き、対応の選択肢を検討している」と述べた。 またライダー准将は同日の時点で「この気球がアメリカの中央部の上空、約6万フィート(1万8300メートル)上空を東方向に移動していることを確認した」と述べた。気球には操縦能力があり「飛行コースが変更した」という。そして「あと数日間、アメリカ上空にある可能性が高い」との見解を示した。 USAトゥデイによると、一般的な商用機の飛行時の最高高度は約3万5000フィート(3万3000〜4万2000フィート)。軽飛行機でも通常1万フィート近くだという。この偵察気球は、航空機よりさらに高い上空を飛行していることになる。しかし高度の変化によっては(カメラの望遠レンズなどで)地上から確認することもできているようで、同准将は偵察気球の位置に関する正確な詳細を明らかにすることを拒んだものの、「一般的に空を見上げ、気球がどこにあるかを見ることはできる(確認時にできた)」と付け加えた。 米国防総省の発表によると、この気球は150の核弾頭を収容するモンタナ州のマルムストローム空軍基地を含む「機密がある多くの施設」の上空を通過し、3日午後には、カンザス州北東部やミズーリ州北西部の上空でも確認されている。 マイク・ペンス前副大統領やマイク・ポンペオ前国務長官などから、バイデン政権の弱腰が非難され、気球を「撃ち落とすべき」との声が上がっている。 しかしCNNに出演した専門家によると、この気球はバス3台分の大きさでメタルが使われ、撃ち落とさない理由として「撃ち落とすことによる破片が地上に与える損害が、気球自体が与えるリスクを上回ると判断した」という。またこの気球には、中国がすでに使用している地球低軌道の偵察衛星より多くの情報をもたらす能力はないこともわかっている。 あらゆるリスクを回避するため、アメリカ側は今のところ偵察気球を撃ち落とす選択をしていないようだ。 アメリカでは近年、ハワイとグアム上空でも中国からの偵察用とされる同様の飛行物体が確認されている。 米国内の中国関連記事 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

値上げラッシュ、インフレ進む米国でも以前より「安くなったもの」がこんなにあった! 

日本では値上げラッシュが毎日のように伝えられるが、アメリカでも日本以上の値上げラッシュが起こっている。 米国農務省(USDA)による経済調査サービス(ERS)の最新の報告によると、食品におけるCPI(消費者物価指数)は昨年11月から12 月までの上昇率が0.3%と高止まりの傾向が見られるものの、食品価格は2021年12月に比べ1年間で10.4%(スーパーマーケットでの食品価格は11.8%)も高くなった。 中でも値上がりが顕著なのが卵。鳥インフルエンザの影響で価格が高騰し、アメリカではエッグフレーション(Eggflation)なる新語も生まれるほど。もはやスーパーには12個入りのもので5~12ドル(640円〜1540円)の高級卵しか残っていない。ERSによると、価格は1年前と比べ32.2%上昇したとある。 スーパーの卵売り場には、どこもこのような張り紙が出されている。「卵生産業界で前例のない供給不足となっているため、ご希望の商品がない場合があります。供給不足を緩和しできるだけ早く通常の供給レベルに戻れるよう取り組んでまいります。心からお詫び申し上げます」 エッグフレーション関連記事 探せばまだある「価格が落ちたもの」 そんな物価高のアメリカにおいても、探せばまだ安いものはある。 詳しくは、昨年の拙稿を参照してほしい。 物価高騰のニューヨーク、じつは探せばまだこんなに「安いモノ」が残っていた!(マネー現代) この記事で紹介した「これまでずっと安いもの」とは少し違い、コロナ禍以降に「価格が落ちたものがある」と主要メディア、NPRは先月28日付のポッドキャストで報じた。 NPRの担当記者は米中貿易戦争の影響を調べるため、2018年以来、米小売最大手のウォルマートの同じ店舗に通い続け、価格の推移を記録した。 ウォルマートとは? 関連記事 担当記者はこの間、ウォルマートで売られているありとあらゆるものの価格を比較し続けた。その結果、全体的に商品価格がコロナ禍前と比べ23%も上昇したことがわかった。また、シュリンクフレーションと言われる内容量の減少も身を以て体験したようだ。 ただ意外だったのが、筆者も気づかなかったが、中にはコロナ禍前より「価格が安くなったもの」も存在するという。 以下のものは、2019年よりも現在の方が安い。 あくまでも、ウォルマートでの価格比較ではあるが、ウォルマートは大手でアメリカのスーパーの代表格であるから、この店での価格の推移はアメリカの一般的な価格推移と言ってほぼ間違いないだろう。 価格が落ちた理由はさまざまだが、例えばスクリュードライバーについては、このような理由があるようだ。 「ウォルマートは、工具のビッグブランド、スタンレー(STANLEY)社の商品を取り扱っているが、PB(プライベートブランド)であるハイパータフ(Hyper Tough)を作ったことで、より安く提供できるようになった」 またこれはウォルマートに限らないが、テレビ本体の価格が年々安くなっているのは周知の通りだ。さまざまなメディアが関連記事を出している。 アトランティック誌の記者は、「自分が子どもだった1980年代のテレビは、1メートルを超える立方体で、木製の箱に収められ、電子機器というより家具や家宝のような存在だった」と振り返る。 「昔はかなり高額だった。当時の販売価格は約800ドル前後。これは現在の価値で換算すれば2500ドル(約32万円)ほどになる」 新車の価格は10年前と比べほぼ横ばいだが、同誌によると、食品や医療などほとんどの価格は2000年以降に80~200%上昇した。一方、テレビの本体価格だけが97%も安くなった。 「65インチのサムソン製テレビが4年前は3400ドル(約43万円)以上したが、同じ商品が昨年は900ドル(約11万円)になった。ソニー製のテレビは昨年2300ドル(約29万円)だったが、現在は900ドル未満で購入できる」(WRDW) なぜ、テレビがこんなに安くなったのだろうか? まず、若い世代がテレビを観なくなり、需要が減りつつあるというのは理由の1つだろう。筆者の周りでもZ世代やミレニアル世代の多くは、テレビ自体を持っていない。代わりにテレビより利便性で優れ、たった数百ドルのアイパッドの方が需要は大きい。固定された場所にあるテレビと違い、ソファやベッドの上など好きな場所で映画やドラマ、スポーツを視聴できるツールに需要は流れている。 アトランティック誌によるとほかに、少数の大企業が独占するスマートフォン市場に比べると、テレビは大規模な競争市場のため、価格の下落が実現できるという。 さらに価格下落の理由の1つに、販売に頼らない『購入後の収益化』があると、前述のメデイアは述べる。 「各メーカーは視聴者が観ている番組を追跡し、その情報を広告主に販売することができる」(WRDW) 「今やインターネット機能のないテレビを見つけることは不可能に近い。デバイス(スマートTV)を安く販売する代わりに、視聴内容をリアルタイムで記録し、収集したデータを広告主に売ることで利益率を補っている。無料でサービスを提供する検索エンジン、SNS、電子メールのプロバイダーのようなものだ」(アトランティック誌) このような理由で、価格高騰の波に負けず、テレビの本体価格も近年、大幅な値下げが実現できているというわけだ。 インフレ関連記事 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

今夏配信の人気ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』続編が話題。NY撮影地にファン集まる

Photo: キャリーが住んでいたアパートを訪れた、SATCのファン。(c) Kasumi Abe ニューヨークを舞台に、90年代後半から2000年代前半にかけて一世を風靡したドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』(Sex and the City=SATC)。その続編が2021年12月、『And Just Like That…(セックス・アンド・ザ・シティ新章)』として蘇り、日本でも話題になった。 配信元のHBOマックスは昨年3月、『セックス・アンド・ザ・シティ新章』の続編となるシーズン2の制作に入ることを発表していたが、ここにきて続報が入ってきている。 米各紙(エル誌、ヤフー・エンターテインメントなど)の報告によると、シーズン2の配信開始は今年の夏ごろのようだ。そしてドラマの舞台、ニューヨークでの撮影の模様もいくつか伝えられている。 この人気ドラマシリーズの新作を待ちわびているファンの間では、ドラマ撮影地を巡るツアーも好評だ。 撮影地を専用バスで廻る「Sex and the City ホットスポットツアー」には、この日13人が参加した。うち2人は男性で、いずれもドラマは観ていないが連れの女性に誘われて参加したという。残り11人は全員、SATCファン。全米のみならずヨーロッパからの参加者もいた。サラ・ジェシカ・パーカー世代かと思いきや、意外や意外、20代や30代の女性が多かった。 ツアーを主催する「On Location Tours」のツアーガイド、ルー・マシュー(Lou Matthew)さんによると、『セックス・アンド・ザ・シティ新章』の影響もあって、撮影地を巡るツアーは今も多くの参加者から依頼があるという。若い世代がこのドラマに関心を寄せる理由については、母親の影響だと語る。 「『SATC』の熱狂的なファンだった親が娘へその面白さを伝えることで、娘もストリーミングやDVDで昔のドラマをチェックするなど、名作SATCは、親から子へしっかり受け継がれているようです」 ロンドンからニューヨークを旅行中のミラさんは、自身の誕生日に彼にお願いし、このツアーにカップルで参加した。「イギリスでもこのドラマはすごく人気です。ツアーでいろんな撮影スポットを実際に訪れて目にすることができ、それぞれのシーンが当時自分が抱いた感情と共に蘇ってきました」と嬉しそうに語った。 一行は、キャリーが住んでいたダウンタウンのアパート(タウンハウス、冒頭写真)も訪れた。「このビルの所有者は44年前に60万ドル(約7800万円)で購入したものなんですよ」とマシューさんは豆知識も紹介。現在の価格はビルが売りに出されていないため不明だが、「隣のビルが8年前に売りに出されていた時の価格は1800万ドル(約23億円)でした。不動産価格の高騰で現在の価値はさらに高いでしょう」(マシューさん)。 ツアーはこのほかにも、ドラマに登場したトレンディなレストランやバー、カップケーキの店など市内数ヵ所を廻った。 ファンはしばし撮影地を訪れてドラマに思いを馳せながら、新作の到来を首を長くして待っているようだ。 SATC 関連記事 Text and some photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

NYオフブロードウェイ・ミュージカル「Stranger Sings!」3月まで延長上演

週末、オフブロードウェイ・ミュージカル『Stranger Sings!』(ストレンジャー・シングス)を観てきました。 ストーリーは、ネットフリックスで配信されたSFホラードラマシリーズ『Stranger Things!』(ストレンジャー・シングス、邦題『未知の世界』)のパロディおよび劇場版。舞台は1983年のインディアナ州の小さな町。行方不明になった少年を巡って、不思議な超常現象が繰り広げられます。 ファッションや髪型、ローラースケートなど栄光の80年代にタイムスリップし、笑いあり驚きありの楽しいお芝居でした。 天井には古典的なステンドグラスのライト。ステージは真ん中のフロアで、それをぐるっと囲むように観客席が設けられています(正面はまるで自宅リビングのようなソファタイプの椅子も)。四方八方から現れる演者の熱気や息遣いが直に伝わってきて迫力大。 先日観劇した『K-POP』もステージとの目線が近く、観客がステージを囲むという意味では似たような形式だったし、オフブロードウェイはこのように演者と観客との距離感が近いのも良いです。 当初、元日に終演予定だったけど、好評につき8週間延長され、3月5日までの期間限定公演になります。 Text by Kasumi Abe (ノアドット「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

妖艶に腰落とすポーズが全米で話題 お笑い芸人アツコ・オカツカさんって誰?

大谷翔平選手、大坂なおみ選手、BTSなどアメリカでアジア系の人々が話題になる中、エンタメ界ではある女性が大注目されている。 スタンドアップコメディアンのアツコ・オカツカ(Atsuko Okatsuka)さん。アメリカのショウビジネスの表舞台に彗星の如く登場し、頭角を現している。 オカツカさんは昨年、ニューヨークタイムズに「コメディ部門の2022年ベストデビュー」として選ばれた。 最近の話題作は、先月10日にオンエアが開始したHBO MAXオリジナル『Atsuko Okatsuka: The Intruder(ザ・イントゥルーダー)』だ。彼女は、HBOでコメディ番組を持った2人目のアジア系女性となった。 彼女の芸風は、自分のルーツに絡んだネタを笑いにしたものが多い。 ちなみにアメリカのコメディアンは、黒人が黒人を、アジア系がアジア系の特徴を笑いにするなど人種ネタを取り入れることは割と多い。そしてほかの人種がそれを大笑いするのも許される。 オカツカさんもこの国のマイノリティであるアジア系を逆手に取り、「親は自分にアツコ・オカツカと(アメリカでは聞きなれない名前を)つけたのに、自分たちの名前は英語名なんだよね。ご丁寧にありがとう、母さん」と自虐ネタを披露し、会場は大爆笑。「食べろ、食べろ」と年配のアジア系の人がよく言うセリフを使ったネタも、面白おかしく披露している。 彼女はちょうど1年前、ビヨンセの曲『パーティション』と共に艶めかしく腰を下ろすドロップチャレンジ(Drop Challenge)を披露し、ソーシャルメディア上で瞬く間に広がった。俳優のテリー・クルーズやテニスのセリーナ・ウィリアムズ選手などセレブが次々に真似をし、さらに話題となった。 つい最近、CBS局の人気番組『ザ・レイトショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』にもフィーチャーされ、ドロップチャレンジのことを話している。この番組のゲストにブッキングされることがどれほどすごいかは、ここ1、2ヵ月でゲスト出演したヘンリー王子や大坂なおみさんなどの錚々たる名前を見ればわかる。過去に近藤麻理恵(こんまり)さんも出演している。 アツコ・オカツカさんは日本にルーツを持つ日系人? 彼女の英語を聞く限り100%アメリカ人だが、名前は100%日本人だ。 彼女のルーツについて、ウィキペディアには「日本人と台湾人のハーフで、台湾で生まれ日本で10歳まで育ち、母親と祖母とアメリカに移住した」とある。自身も過去の動画で「私は日系と台湾系のアメリカ人コメディアンです」と自己紹介している。 また動画の中で、幼少期についてこのようにも告白。「ある日祖母に『2カ月、アメリカ旅行に行くわよ』と言われて渡米。そのうち滞在ビザが切れ、7年間オーバーステイ(不法滞在)となった」。 無名時代のお笑いのステージ(2016年) 5年前の映像で、「スタンドアップを始めて8年になる」と言っていることから、2010年ごろからスタンドアップ・コメディアンとして活動をしているようだ。以前より、日本の文化(アメリカでは聞き慣れない自分の名前や日本の変わったクリスマスなど)もネタにしている。最近は、祖母や夫をフィーチャーしたネタやダンスネタを取り入れたり、たまにセミヌードになり超セクシーな格好でSNS上に現れる。これらも話題作りの1つだろう。 筆者は彼女のインスタグラムやツイッターの中からいくつかのイメージを見て、一時期のブルゾンちえみさんをよりセクシーなアメリカ版にした印象を持ったが、どうだろうか。 志村けんさんが亡くなった時のインスタに、「日本にいた時、自分にとってのアイドルだった」と追悼していた。オカツカさんが日本のお笑いに影響を受けた芸人であることは間違いなさそうだ。 現在は3月中旬まで、コメディショウで全米ツアー中のオカツカさん。今年はさらに、アメリカ中を笑いの渦に巻き込んでいくことだろう。 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止