クオモ氏辞任 「最後の置き土産」として残していったもの

ニューヨーク州では23日、セクハラ問題を受けアンドリュー・クオモ氏が知事職を退き、副知事だったキャシー・ホークル氏が翌24日、57代知事として就任した。 ホークル新知事は同州初の女性知事として注目されており、新政権において女性2人を主要な上級職に任命したと発表した。州ではデルタ株による新型コロナウイルス感染が再拡大しており、ホークル政権にとっても、コロナ対策が就任後の大きな課題となる。 クオモ氏とは犬猿の仲と言われたニューヨーク市のデブラシオ市長は24日の午前0時01分、「世界でもっとも素晴らしい都市」と、目の上のこぶとも言える知事の退任と新たな時代の到来を祝うかのような、思わせぶりなツイートをした。 クオモ氏は事前録画した退任スピーチの最後で、「次の市長、エリック・アダムス氏が新たな希望をもたらす(新知事と新市長により心機一転を図る)」と明言しため、そのコメントへの当てつけかもしれない。 2011年から10年間にわたって遂行してきた知事職を退いたクオモ氏だが、在職最終日に、殺人罪などで有罪判決を受けた受刑者など6人に恩赦を与えたことがツイッターで明かされ、米ヤフー!ニュースや地元紙ニューヨークポストなどでも報じられた。 その中には、3人の死者を出したブリンクス(セキュリティ企業)現金輸送車強盗事件に関与した76歳の男性受刑囚の出所放手続きも含まれる。 「6人に恩赦を与える。これらの人々は反省し、更生し、地域社会に貢献している」と在任最終日のツイート。 デビッド・ギルバート(David Gilbert)受刑囚(76歳): 左翼過激派のテロ組織、ウェザー・アンダーグラウンド(ウェザーメン)のメンバーだった同受刑囚は36歳だった1981年、ナイアック警察の巡査部長、巡査、ブリンクの警備員の3人を殺害し、3件の第2級殺人罪、4件の第1級強盗罪有罪判決を言い渡され、2056年まで仮釈放の可能性がない75年以上の終身刑に服していた。同受刑囚の息子であるサンフランシスコ地方検事、チェサ・ブーディン(Chesa Boudin)氏は、同受刑囚の釈放をクオモ氏に働きかけていたという。 クオモ氏は同受刑囚について、「服役中にエイズ予防教育への多大な貢献や、家庭教師、法律図書館の事務員、パラリーガルのアシスタント、教師の補助員などさまざまな業務の実績が称賛に値」が恩赦の理由だとした。 恩赦を受けた同受刑囚は、すぐには釈放されず、今後ニューヨーク州仮釈放委員会に出頭する予定だ。 グレッグ・ミンゴ(Greg Mingo)受刑囚(68歳): 1980年、当時27歳だったミンゴ受刑囚は、クイーンズ区の夫婦強盗殺人事件の犯人で、1983年から50年の終身刑で服役していた。家族は、同受刑囚の有罪判決について不十分な弁護活動によるものだと、長年無実を主張していた。クオモ氏は、同受刑囚について「服役中にGED(高校卒業同等と認定)およびパラリーガルの資格を取得し、献身的で尊敬に値するピアカウンセラー(として更生した)」と評価した。 ロバート・エーレンバーグ(Robert Ehrenberg)受刑囚(62歳): 1992年、当時33歳だったエーレンバーグ受刑囚は、強盗および男性を射殺し、50年の終身刑で服役中だった。クオモ氏は同受刑囚について、服役中に大学を卒業し、慈善事業のボランティア活動を行ったことを評価した。 ユリシーズ・ボイド(Ulysses Boyd)受刑囚(66歳): 1986年、当時31歳だったボイド受刑囚は、ハーレムの麻薬密売所で起きた殺人事件に関連し、第2級殺人罪で有罪判決を受け服役中だった。 ポール・クラーク(Paul Clark)受刑囚(59歳): 1980年、当時18歳だったクラーク受刑囚は、ブルックリン区のブロックパーティーで17歳の少年を射殺し、第2級殺人、殺人未遂、武器所持の罪で有罪判決を受けた。同受刑囚は同年、タクシー運転手の殺人と強盗未遂でも有罪判決を受け服役中だった。 ローレンス・ペンIII(Lawrence Penn III): 投資家から900万ドル(約9億円)以上を盗んだ罪を2015年に認め、2年間服役したプライベート・エクイティ企業、Camelot Acquisitionsの創業者。クオモ氏はペン氏にも恩赦を与えた。 クオモ氏はこれらに加え、先週も10人の重罪犯(うち3人は殺人犯)にも恩赦を与えていた。クオモ氏は10年間の在任期間中、合計で41件の恩赦要求を認めたことになる。支持者らは、ホークル新知事にも同等以上のペースで恩赦を与えることを求めている。 もちろん反論もある。ニコール・マリオタキス(Nicole Malliotakis)議員は「クオモ氏はニューヨーカーにさらなる餞別を残した…さらに5人の殺人者を街中に放った」とツイートし、クオモ氏の減刑措置を非難した。 そもそも極悪犯に、恩赦はなぜ必要なのかということだが、法務省のウェブサイトにはこのように書かれている。 裁判で有罪の言渡しを受けた人たちが,その後深く自らの過ちを悔い,行状を改め,再犯のおそれがなくなったと認められる状態になった場合などには,被害者や社会の感情も十分に考慮した上で,残りの刑の執行を免除したり,有罪裁判に伴って制限された資格を回復させたりということが行われます。 このように恩赦は,有罪の言渡しを受けた人々にとって更生の励みとなるもので,再犯抑止の効果も期待でき,犯罪のない安全な社会を維持するために重要な役割を果たしているといえます。 これらの記事にも詳しく書かれている。 元特捜部主任検事、前田恒彦さんのヤフーニュース個人の記事「恩赦と懲戒免除 なぜあるのか」 恩赦とは、特別な恩典として罪を赦(ゆる)すというもので、行政や立法といった裁判所以外の判断により、刑事裁判の内容やその効力を変更させたり、消滅させるという制度だ。 例えば、2018年に限っても、アメリカのトランプ大統領が人種差別で服役した黒人初の亡きボクシング・ヘビー級王者に恩赦を与えて名誉回復を図ったり、マレーシア国王が同性愛行為で服役していた元副首相に恩赦を与えて釈放したり、ミャンマー大統領府が政治犯36名を含む服役中の受刑者8541名に恩赦を与えたことが広く報じられた。 「退任直前のオバマが、駆け込み「恩赦」を急ぐ理由」(ニューズウィーク 山田敏弘氏) アメリカでは大統領が犯罪者に対して恩赦を与えることが伝統になっている。 元オバマ大統領の減刑措置は1023件以上。囚人を無罪放免にして釈放できる完全な恩赦などは70件以上。 ロナルド・レーガン大統領は、ニューヨーク・ヤンキースのオーナーで違法な選挙資金を提供したとして起訴されたジョージ・スタインブレナーに恩赦を与えた。ジョージ・H・W・ブッシュ大統領(父ブッシュ)はイラン・コントラ事件に関与した国防長官などに恩赦を与えている。もっとひどいのはビル・クリントン大統領で、クリントンは違法薬物で1年服役していた自分の実弟に恩赦を与え、またクリントン夫妻の汚職疑惑であるホワイトウォーター問題で有罪になった人たちも赦免し、公私混同と批判された。 「トランプ米大統領、側近29人に恩赦や減刑 マナフォート元選対本部長ら」(BBCニュース翻訳記事) ドナルド・トランプ米大統領は23日、元選対本部長のポール・マナフォート受刑者(71)ら側近29人に恩赦や刑の減免を与えた。 ご多分に漏れず、アメリカの伝統である置き土産(恩赦)を残してオフィスを去って行ったクオモ氏。右腕だったメリッサ・デローザ氏が23日に発表した声明によると、退任後は娘3人を含む家族との時間や、在任中はあまりできなかったであろう釣りに行くのを楽しみにしているという。特に昨年以降は新型コロナ対策のため休みなく州民のために尽力してくれていたから、しばらくゆっくりしながら今後のことについて考えるようだが、いずれにせよ自分のオフィス(政権)を持つことについては懲りたのか、「興味がない」と答えている。 過去記事 メッキが剥がれた元ヒーロー・NY知事がセクハラ辞任。CNNまで非難され騒動が収まらないワケ 理想のリーダーはどこへ? クオモ州知事の思わず耳を塞ぎたくなる「隠蔽疑惑と脅迫」 「クオモ知事は特権を乱用し、セクハラ・パワハラを常習化した」被害女性が赤裸々告白。市長も眉ひそめる Text by…

NY屋内活動に「ワクチン接種証明」義務づけ 全米初の試みが始まったが・・・街の様子は

ニューヨーク市は17日、屋内飲食と屋内アクティビティの利用時に、新型コロナウイルスのワクチン接種証明の提示を義務づける新施策を開始した。 施策は「Key To NYC Pass」と呼ばれるものだ。屋内レストランやバーほか、映画館、コンサート会場、劇場、博物館、ジム、スポーツ試合など屋内アクティビティ施設において、従業員と12歳以上の利用客は、少なくとも1回のワクチン接種を終えていなければならない。入り口では「ワクチン接種証明書」もしくはデジタル管理された「ワクチンパスポート」の提示が求められる。 感染力の強いデルタ株が広がる中、頭打ちとなったワクチン接種率を後押しするための施策で、3日デブラシオ市長により発表された。市長は記者会見で、「いよいよワクチン接種が必要な時が来た。接種を受けた人はこの街であらゆることを満喫できる。しかしまだ受けていない人は、残念ながら多くのことができなくなる」と述べた。 似たような試みはフランスやイタリアでも導入されているが、全米の都市としてはニューヨーク市が初となった。 1ヵ月の移行期間の後、9月13日より罰則化される。ルールに従わない店や施設には1回目の違反時に1000ドル(約10万円)、2回目の違反時に2000ドル(約20万円)の罰金が課せられる。 ワクチン接種についてほかにもニューヨーク州では、9月6日のレイバーデーまでに州の職員に義務付け(もしくは毎週の検査でも可)、医療従事者や介護施設に勤務するヘルスケアワーカーにも義務付けるなど、じわじわと接種の義務化が進んでいる。 街はどのように変化しているのか、店や施設は早速新ルールを適用したのか、17日から20日にかけて街の様子を見に行ってきた。 ワクチンが義務化された街の様子 ちなみに筆者は5月に接種を受けたが、これまでの3ヵ月間で接種証明書などの提示を求められたことはなく、唯一6月にスイスに入国する際に必要になっただけだ。友人・知人の多くも同様に提示を求められたことがないと言い、1人だけ「クリスピークリーム(ドーナツ屋)で無料ドーナツを配る時に証明書を見せた」という人がいるだけだ。 17日から20日にかけてはどうだったかと言うと・・・。 図書館 求められず、何も聞かれず(要マスク着用) レストラン&バー(小規模経営店) 求められず、何も聞かれず(屋外スペースがあったので利用) レストラン&バー(一大有名チェーン店) 求められず、何も聞かれず(入り口に、ワクチン接種が完了していなければマスク着用を求めるサインあり) しかし、最後までワクチン接種済みか否かは聞かれなかった。 日本食レストラン(日本人経営店) 提示を求められた やはり真面目な日本人の国民性か、ルール開始と共にたまたま入った某日本食レストランでは、ワクチン接種証明書の提示を求められた。しかし証明書が実際に自分のものであるか否かの判断材料となるIDまでは求められなかった。 映画館 求められず、何も聞かれず(入り口の係員に話を聞いたら、今は入館を認めているが、9月13日からワクチン接種者しか入館できないと教えてくれた) 罰則化がスタートしなければ、大半の店はギリギリまで導入を見送っているようだ。確かに店側の立場で考えると、不況が長引く中、ワクチン接種証明書がないという理由だけで利用したいと言っている客を断るのは断腸の思いだろう。 ・・・と思っていたら、最後にあった!厳密にチェックしているところが。 マダムタッソー 提示を求められた マダムタッソーというハリウッドスターの等身大フィギュアを展示した観光施設の入り口では、「厳密」に証明書とIDの提示を求められた。 中には、未接種や証明書を携帯していない人が足止めされ、係員に懇願していたが「法律で決定したから」と入館を断られていた。 筆者は係員に、証明書の代わりにコロナ検査の陰性証明書は有効か否かを尋ねると、証明書もしくはワクチンパスポート「のみ」有効だと言われた。 現時点で「厳密に」チェックしている店や施設は少なかったが、9月13日以降は本格化していくだろう。 さまざまな場所をチェックしたが、ワクチン接種証明書の提示が必要なスポットは「観光客を相手にビジネスをしている場所」が多いと感じた。であれば、博物館は必要で図書館は不要の辻褄が合う。 ワクチンの義務化は果たしてうまくいくのか? 筆者は日本に住む人からさまざまな質問を受けることがある。 例えば「この義務化はうまくいくのでしょうか?」というものだ。筆者の考えはこうだ。「昨年以降、誰もが体験したことがないことに立ち向かっていて、そのたびに新しい試みをしているので、これについてもうまくいくかどうかは誰もわからない。トライ&エラーで試し、うまくいかなければ調整していくのだろう」。 州や市は昨年以降、経済を再開させるためにあらゆる対策を講じてきた。例えば、屋内飲食の再開も初めから100%オープンさせるのではなく25%からはじめ、感染状況を見ながら少しずつ調整し、100%再開を目指し進めてきた。この施策もトライ&エラーの1つだろう。 ワクチン反対派の反発や抵抗は非常に大きく、よくデモが起こっているが、反対派にはどう対応していくのか、そちらの方が気になる。屋外飲食スペースは増えたため、屋内飲食不可というのは未接種者にとって打撃は少ないかもしれないが、屋内アクティビティが利用不可というのは、冬季が長くて厳しいこの街では痛手だろう。 関連記事 全米の4人に1人が「ワクチン打たない」反ワクチン運動や職場訴訟も(動画あり) 未接種で解雇、接種証明書の転売 …「ワクチン接種か否か」で揺れる米国 またマダムタッソーを見ていて思ったのは、この施策の実行には、入り口でチェックするスタッフが追加で1人必要になり店側の負担も増える。そしてその担当者が、接種証明をどの程度チェックするのだろうか?客の多い時間帯はおそらく、IDと照らし合わせたり偽物か否かの判断が容易にできなくなるだろう(注:アメリカでは偽札や偽の卒業証明書などが多く、すでに偽の接種証明書も出回っている)。果たして、入り口でのチェックがどのくらい徹底されるのかは疑問だ。なにせ全米初の試みなので、他都市もニューヨークの今後の動向をうかがっているところだ。筆者も引き続き見守っていきたい。 NYのコロナ対策関連記事 – 2021å¹´6月 1å¹´3ヵ月ぶり「非常事態」が解除 NYはいま【昨年との比較写真】 – 2021å¹´5月 新型コロナに「打ち勝った」“先行事例”となるか?NYが復興へ前進、大規模再開へ 米「ワクチン接種でマスク不要」 NY中心地のマスク率は? 街の人の声は? – 2020å¹´10月…

メッキが剥がれた元ヒーロー・NY知事がセクハラ辞任。CNNまで非難され騒動が収まらないワケ

元部下など複数の女性からセクハラを告発されていたニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事が10日、ついに辞意を表明した。 知事は当初、セクハラ疑惑を否定し、辞任しない意向を示していたが、ジェームズ州司法長官が3日、クオモ氏が行ってきた行為をセクハラと正式に認定し、辞任圧力が高まっていた。クオモ氏は14日以内に退任し、キャシー・ホーコル副知事が、同州で初の女性知事として就任する。 クオモ知事はニューヨーク州で昨春、新型コロナが感染拡大して以来、毎朝絶やさず記者会見を開き、データに基づいた説得力のある説明で、力強いリーダーシップを遺憾無く発揮してきた。「独身でセクシーな知事」「最強のリーダー」「次期大統領候補」と一部の人々やメディアに異常なほど持て囃された時期もあった。 参照:筆者によるオーサーコメント 過去記事 自粛解除はいつ、どのように? 満たすべき出口戦略の7基準とNY知事の「北風と太陽」作戦 外出制限後もNYで多くの感染者が出続けるのはなぜ? 最新調査データと意外な結果【新型コロナ】 コロナと闘った111日 NYクオモ知事が第1波収束宣言(ウイルスとの共存は続いていく・・・) しかし今年に入り、クオモ知事のメッキが剝がれ始めた。 高齢者施設内での新型コロナの死者数を修正していたこと、議員を脅迫していたこと、そして元部下など11人の女性にセクハラ行為をしていたことなどが明るみに出たのだ。 ほかにも、新型コロナ対応で発揮した自身のリーダーシップについての著書『アメリカン・クライシス』をスタッフに無理やり作らせて昨年10月に出版し、500万ドル(5億円相当)以上の支払いを受け取る見通しだ。また州内にあるタッパン・ジー橋を、地元民の反対を阻止して父の名のマリオM.クオモ橋に改名したりもした。 いかに権力を使ってこれらのことを好き勝手にしてきたかがわかる。 過去記事 理想のリーダーはどこへ? クオモ州知事の思わず耳を塞ぎたくなる「隠蔽疑惑と脅迫」 「クオモ知事は特権を乱用し、セクハラ・パワハラを常習化した」被害女性が赤裸々告白。市長も眉ひそめる 「ドラマの冷酷な男のリアル版」と友人談 クオモ知事の数々のスキャンダルが出始めた3月ごろ、筆者の友人の1人がこんな話をした。 「以前クオモのオフィスで働いていた友人J曰く、クオモってTVドラマ『ハウス・オブ・カード(野望の階段)』のフランク・アンダーウッド(Frank Underwood)をまさに地で行くキャラクターなんだってよ」 そのキャラクターはドラマの中で、若い女性好きの冷酷な男として描かれている。実際にクオモ氏を知るその人物は、ドラマを観るたびにクオモ氏のキャラクターを思い出すというのだ。 このエピソードや数々の報道からもわかる通り、クオモ氏という人物は長年にわたって知事特権を行使し、パワハラやセクハラ文化を常習化してきた。周囲をイエスマンで固め、御山の大将としてここまで来た。見えない圧力で周囲を封じ込め、冗談でもそれはダメと注意できる人がいなかったからこそ、いかに自分が世間一般の常識から乖離しているかがわからなくなってしまったのだろう。10日の辞任発表の会見で、筆者は最後の最後まで言い訳をしている知事の話を聞きながら、哀れみさえ感じた。 さらに、メッキが剥がれ始めたのはクオモ知事だけではないようだ。 クオモ知事には13歳年下の弟がいる。CNNの看板キャスター、クリス・クオモ氏だ。兄弟仲が良いことで知られ、昨年クリス氏が新型コロナに感染して自宅療養をしていた時期も、クオモ知事は自身の定例記者会見で弟のクリス氏をリモート出演させ、激励していた。 そもそもクオモ一家は公私混同で有名だ。 知事は弟のクリス氏のみならず、娘さえも新型コロナ関連の記者会見やマスク着用キャンペーンに参加させるなど、身内を巻き込む(アピールする)ことが多かった。記者会見の場で父や祖母、時に娘のボーイフレンドの話まですることもあった。筆者はその都度、少しひっかかっていたものの、こういうキャラクターなのだと思うことにしていた。 一方で弟、クリス氏は昨年クオモ知事が新型コロナ対応で英雄扱いされていた時、自身の番組に出演させ「私は弟としてあなたが大好きだ。あなたはこの国の最高の政治家だ」などと、公共の電波で兄を大袈裟に称えた。 兄弟愛は、越えてはいけない一線を越えた。そもそもCNNという主要メディアの著名ジャーナリストという立場のクリス氏による政治介入があってはならないのだが、クリス氏はあろうことか州政府に影響を与える「非公式な外部アドバイザー」を務めていた1人だったようだ。今般の知事の辞任に至るプロセスにおいても、クオモ知事や側近に対して「反抗的な態度をとって辞任しないように」などと助言をしてきたとされる。3日にジェームズ州司法長官が発表した報告書の中でも、クリス氏について4ヵ所の言及があった。 不信感や批判の矛先は、弟やCNNにも向き始めた。ワシントンポスト紙は「CNN must investigate Chris Cuomo(CNNはクリス・クオモを調査する必要あり)」とする記事を発表した。 クリス氏もCNNも、クリス氏の政治介入は問題だと理解しており、クオモ知事らへの助言はしないと発表していた。しかしメディアとしては、公平にスキャンダルを報道するべきだが、クリス氏の番組もCNNのほかの番組も、クオモ知事のこの大きなスキャンダルについての本来されるべき報道がされていない。これは身内に対する報道規制以外の何ものでもない。ワシントンポストが「クリス氏も調査せよ」と指摘するのはごもっともだ。「公平なジャーナリズムではない」「クリス氏も辞任に追い込まれるべき」とする専門家の意見もある。 クオモ知事の騒動は、辞任により収束する単純な話ではなさそうだ。 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

最多メダル米から見た東京五輪【まとめ】夏冬二刀流選手に、世界記録更新した選手は…

8日、東京オリンピックが幕を閉じた。 米オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)の発表によると、今大会には205の国と地域、国際オリンピック委員会(IOC)の難民選手団から、代表選手1万1650人以上が出場した。 メダルを獲得したのは、前回のリオ大会の86の国と地域をさらに上回る、史上最多の94の国と地域からの代表選手団だった。 ◆数字で振り返るUSチーム (USOPC発表) アメリカの代表選手数 626人 メダル数(世界最多。96年以来7大会連続) 113個(金39、銀41、銅33) メダリスト数 257人 うち29人が複数のメダルを獲得、7人は複数の金メダルを獲得 団体競技で27のメダルを獲得。女子バスケ(7大会)、男子バスケ(4大会)、女子水球(3大会)の連勝記録を更新 メダリストの男女比(トランスジェンダーの選手含む) 女性アスリート:164人 男性アスリート:93人 メダリストの最年少 17æ­³ メダリストの最年長 56æ­³ 選手村滞在の平均日数 13日間 大会期間中の新型コロナ陽性者 代表選手および関係者1600人のうち、陽性判定は2人 すべてチームUSAに限った人数 ◆選手別ハイライト アリソン・フェリックス選手(陸上) 2004年のアテネ以来5度目のオリンピックとなったアリソン・フェリックス選手は、今大会で女子4×400mリレーで金メダル、個人400mで銅メダルを獲得。 オリンピックメダル総数は11個(金7、銀3、銅1)となり、カール・ルイス元選手(10個)を抜いて米オリンピック陸上史上もっとも多いメダル数となった。35歳のフェリックス選手は五輪キャリアに幕を閉じることを表明しており、今大会で有終の美を飾った。 シモーン・バイルス選手(体操) リオ大会で4個の金メダルを獲得した体操女子のエース、シモーン・バイルス選手は、今大会でもメダリストとして有力視されていた。しかし過度な期待を背負ったことにより調子が狂い、メンタルヘルスを理由に団体総合決勝(銀メダル)と個人総合決勝を棄権した。後半は立て直し、種目別平均台で銅メダルを獲得し、オリンピックのメダル獲得総数は7個(金4、銀1、銅2)となった。 体操選手としては、シャノン・ミラー元選手と並ぶ、オリンピック史上もっとも多いメダルを持つ選手となった。 エディ・アルバレス選手(野球) 今大会で侍ジャパンに敗れ銀メダルを獲得したアメリカの野球チーム。中でもエディ・アルバレス内野手は、異色の経歴の持ち主だ。 2014年のソチ冬季五輪で、ショートトラック・スピードスケート男子5000mリレーで銀メダルを獲得しており、夏季と冬季の両大会の二刀流メダリストとして、オリンピック史上6人目(アメリカ人としては3人目)となった。 普段はMLBのマイアミ・マーリンズに所属している。 ◆世界記録を塗り替えた選手 ケイレブ・ドレッセル選手(水泳) ケイレブ・ドレッセル選手は、今大会で5個の金メダルを獲得した(4×100mメドレーリレー、4×100mフリースタイルリレー、100m自由形、100mバタフライ、50m自由形)。前回のリオ大会と合わせて7個の金メダリストとなった。100mバタフライでは、世界記録を更新した。 シドニー・マクローリン(陸上) シドニー・マクローリン選手は、今大会で陸上女子4×400mリレーと400mハードルで2つの金メダルを獲得。400mハードルは、これまでの世界記録を塗り替えた。 そのほか、東京オリンピックで塗り替えられた記録と世界中の選手たち(参考:ニューヨークタイムズ) ◆そのほか 惜しくも決勝で日本が負けた女子バスケットボール。アメリカの強さは健在だった。中でも、2004年のアテネ以来、5大会連続で出場しいずれも金メダルを獲得しているスー・バード選手とダイアナ・タウラシ選手は、今大会で5つ目の金メダルを獲得。オリンピックのバスケ選手として、史上もっとも勝利を収めた選手となった。 カリッサ・ムーア選手は、新競技の女子サーフィンで、初の金メダルを獲得。 女子バレーボールはこれまでどうしても金メダルに到達できなかったが、今大会で念願だった初の金メダルを獲得した。 サラ・ロブレス選手(重量挙げ)は、リオと東京の2大会で2つのメダル(銅)を獲得した初のアメリカ人女性選手となった。 ザンダー・シャウフェレ選手とネリー・コルダ選手(共にゴルフ)は、男女のゴルフ個人タイトルを独占し、アメリカ人として121年ぶりに個人種目でオリンピック金メダルを獲得した。 レスリングチームは、1984年以来最多となる9個のメダルを獲得した。 メダルを取った選手、取れなくても最善を尽くした選手・・・。ほかにも、国籍問わず多くの選手が希望と勇気を与えてくれた。 24日から始まる東京パラリンピックでは、さらにどのような感動が待っているだろうか。 オリンピック・パラリンピック競技大会概要  第32回オリンピック競技大会(2020/東京) 7月23日~8月8日 33競技…

米オリンピック視聴率激減が示すこと。アメリカ人は本当に五輪を観なくなった?それとも・・・

オリンピックのアメリカ放映権を持つ米NBCユニバーサルにとって、コロナ禍の東京オリンピックは最大のチャレンジとなっているようだ。 同社は2つの放送ネットワーク、6つのケーブルチャンネル、そしてストリーミングプラットフォーム「Peacock」で、合計7000時間に及ぶオリンピック放送をするために、10億ドル(約1000億円)以上もの巨費を投じたとされている。 それにも拘らず、8月3日の夜までの平均視聴者数は1680万人。もっとも視聴率が高かった日は先月25日で、それでも2000万人強だったとニューヨークタイムズが報じた。 アメリカの人口は日本の3倍の約3億3000万人だ。​​1680万人という数字が低いと見るか高いと見るかは人それぞれだが、少なくとも2016年のリオ五輪の同時期の数字、2900万人と比べてみても、1220万人も激減したことがわかる。 視聴率の低迷と言えば、先月23日の開会式もそうだ。NBCは朝の時間帯とゴールデンタイムを使って開会式の模様を伝えたが、視聴者数はテレビとストリーミングの両方で1700万人弱だった。こちらの数字も、開会式として過去33年間で最低値だ。 フォーブスによると、これまでの開会式の視聴者数は、平昌オリンピック(2018年)が2830万人、リオオリンピック(2016年)が2650万人、ロンドンオリンピック(2012年)が4070万人、北京オリンピック(2008年)が3490万人だったので、それらと比べても東京オリンピックの数字はかなり少ない。 視聴者数が低迷すればNBCユニバーサルはメイク-グッズ(広告主に無料広告で補償)しなければならない。同社は現在、広告主の一部に無料広告を提供するための提案中だと、ニューヨークタイムズは報じている。 今大会の視聴者数は開会式も試合開始後も激減しているが、それでもオリンピック放送自体がほかのエンタメ番組より高視聴率だという。例えば、CBSテレビの高視聴率番組『ビッグ・ブラザー』でさえ、最新の視聴者数は400万人を下回っている。 またNBCによると、パンデミック以降のゴールデンタイムの単独のエンタメ番組としては、今大会の開会式は、2番目に多い視聴者数だ。トップはオプラ・ウィンフリー氏によるヘンリー王子とメーガン妃の暴露インタビューだった。(高視聴率のスーパーボウル後に放送された番組を除く) 視聴率低迷の要因とは? 過去のオリンピックに比べて東京大会の視聴率が激減していることについて、各メディアが要因を探っている。 パンデミックによる1年の延期に加え、無観客試合、一部の選手の陽性反応、日本の世論の反対運動などのネガティブなニュースが人々のオリンピックに対する情熱を削ぎ、視聴率を低迷させた可能性は否定できない。 また、人気選手の欠場や早期離脱が相次いだことも影響がありそうだ。薬物検査で大麻の陽性反応があり、資格停止処分を受けた陸上のシャカリ・リチャードソン選手をはじめ、療養のためオリンピック出場を見送ったバスケットボールのレブロン・ジェームズ選手、出場はしたものの不調だった体操のシモーン・バイルス選手やテニスの大坂なおみ選手などだ。 ほかにもさまざまな声は上がっている。例えば、オリンピックのスケジュールが複雑すぎて視聴者が観たい試合を見つけるのが難しかったり、NBCの本放送で気が散るような分割画面の広告が多いことも酷評されている。 しかしもっとも大きな要因として、どうやら人々の視聴習慣の変化が影響しているようだ。アメリカ人、特に若い世代の人々は従来のテレビ視聴習慣からパソコンやスマホ上でのストリーミングの視聴習慣にシフトしている。 これを裏付けるものとして、NBCのウェブサイトやアプリでの平均視聴率は、リオオリンピック(16年)で72%、平昌オリンピック(18年)で76%も増えた。 実際に筆者の周りを見ても、年齢層が高い家庭のリビングルームにはテレビがある(だいたい壁に取り付けられている)が、筆者が以前勤務していたIT企業の同僚(主に30代以下)は7年前の当時でも、誰一人テレビを持っていなかった。大学生に最近話を聞く機会があったが、彼らのようなZ世代はあまりニュースや世界の出来事に関心がない。それでもパンデミック以降、新型コロナの最新情報を入手するために両親の加入するケーブルを観ることが増えたというが、基本的にはYouTube、Netflix、TikTokなどで情報収集するとのことだった。 Netflixをはじめとするストリーミング・プラットフォームが伝統的なテレビの優位性を奪い始めたころでも、ライブ試合やイベントの生放送はやはりテレビが強かった。しかし最近では、NBAなどスポーツ試合やアカデミー賞などの大型イベントでさえ、テレビ視聴率が低迷していることが伝えられている。 フォーブスによると、今年のNBAファイナルの視聴者数は、短縮された昨年シーズンよりは多かったものの、パンデミック前に比べるとはるかに少なかった。また先月のMLBオールスターゲームの視聴者数は、過去最低だった2019年からわずか1%しか増加せず、年間でもっともテレビで視聴されるスーパーボウルは今年、過去10年以上でもっとも少ない視聴者数を記録した。 アメリカでテレビ放送にあまり元気がない分、ソーシャルメディア上は賑やかだ。NBCユニバーサルのTikTokのオリンピックチャンネルのフォロワー数は、開会式以降348%も増加した。 つまりコロナ禍の影響も多少はあるが、深刻な視聴率低下はテレビ全体で起こっていることで、オリンピックに限ったことではないようだ。 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

「メダルに匹敵」日本のコンビニ。東京五輪に批判的だった米主要紙が一面でついに大絶賛

米主要紙もついに大絶賛 米主要紙ニューヨークタイムズは8月1日、「メダルに値する食事を見つけたとき」というタイトルで日本のコンビニエンスストアの素晴らしさを、一面およびスポーツ面で大きく報じた。 同紙は識者や日本に駐在する特派員が中心となって、これまで、日本での新型コロナウイルスの感染拡大を懸念して大会中止を訴えたり、金の亡者として腐敗したIOCを非難したりする記事を発信し、東京オリンピックの開催について強硬な姿勢をとっているのが特徴的だった。 8月1日発行号では一転し、一面を使って日本のコンビニ文化を大枠で取り上げた。 8月1日号の一面: アメリカでワクチン接種率の低い州 議事堂襲撃事件のその後 アフガニスタンからの難民増加 ── など これらに加えて、「メダルに値するほど」上質な日本のコンビニの食べ物や文化を一面(右下枠)で、そして続きをスポーツ面の大枠で紹介している。 普段はアメリカ国内で活動するアンドリュー・ケー(Andrew Keh)記者は、オリンピック取材のため、東京に滞在中だ。初の日本滞在か否かは不明だが、同記者はこのように述べている。 「ホテルからプレスセンターまで徒歩10分。この間、3つのコンビニがあるが、それらが私を誘惑しなかった日はほとんどない」 「アスリートでさえ、パンパンに詰まったコンビニ袋を提げている姿を見かけるほど」 滞在先から会場への移動中、バスの車窓から見えるさまざまな飲食店に誘惑されているそうだが、記者も選手らと同様に、感染拡大防止のため、取材先への往復以外での外出は禁止されている。そんな厳しい取材規制が敷かれる中、彼らを救っているのが、日本のコンビニだそう。 コンビニは言わずもがなアメリカで誕生したものだ。日本では1973年、前身となるヨークセブンが設立され、アメリカのセブンイレブンとライセンス契約を締結し、翌年に第1号店を東京都江東区にオープンした。本家アメリカのセブンイレブンは今も健在だが、日本のそれとは比べものにならない。 日本のコンビニはどこも蛍光灯で明るいが、本家は小暗い。売られているラインナップも日本のものとはまったく異なる。「いらっしゃいませ」のような元気の良い掛け声もなければ、サービスもよろしくない。 関連記事 筆者が以前レポートした、アメリカのセブンイレブン アメリカの「セブンイレブン」、日本と「商品」は全然違っていた…!(現代ビジネス) ケー記者によると、東京オリンピックのプレスセンターには、2つのレストランがあるという。うどんやビーフカレーなど、日本の定番ランチを提供するカフェテリアと、ピザやハンバーガーなどを提供するレストラン。しかし同記者は「ホテルにある飲食店もそうだが、どこも量が少なく、いつも同じで限られたメニュー」。 そんな彼らの胃袋を満たしているのが、コンビニというわけだ。コンビニは「クオリティが高く、バラエティ豊かで、24時間営業していて、どこにでもある」。 筆者が知る限り、このような店はアメリカには見あたらない。 また同記者は、日本のコンビニを以下のようにも絶賛している。 セブンイレブンのコーンドッグに付いてくるケチャップのパックは、ひとつまみでケチャップとマスタードが同時に噴出する(便利な)作り。 冷たいそばは、麺がピタッとくっついて見た目が悪い。しかしつゆ、ネギ、ワサビ、ふわふわのとろろなど、プラスチックの袋に入ったたくさんの付属品を(イケアの商品のように組み立てが必要だが)開けて入れると、戸惑いは満足感へと変わった。 (準備していなかったが現地で必要となった)日焼け止めをファミリーマートで、ハンカチをローソンで、シャツとネクタイをセブンイレブンで調達できた。 日本のコンビニには、リカー類からお泊りセットまで何でもあるが、アメリカでリカー類を購入するためには、基本的にリカーストアに行かなければならない。アメリカのドラッグストアが日本のコンビニに一番近いが、コンビニほどの商品ラインナップと品揃え(&美味しさと安さ)がしかもコンパクトなスペースで実現できている事例を見たことがない。 また、日本に住んでいたらきっと当たり前すぎて気づかないだろうが、カットしやすい切り口のパッケージや、片手でもカットできる作りのサランラップ、おにぎりの白米と海苔を分けたパッケージのアイデアや機能も秀逸だ。痒いところに手が届く商品開発は、日本独自のアイデアと技術と顧客への思いやりからだろう。 コンビニもスタバもマクドも、もとはアメリカで誕生したものだが、日本に上陸後、日本独自の工夫で進化しているのだ。 万能ではないコンビニ、問題点は? ケー記者は、コンビニの落ち度にも目を向ける。彼の目を通した問題点は、「信じられないほどの量のプラスチック包装」。 筆者もこれには同意する。日本は見た目の良さが重視されるあまりに、過剰包装が異常に多い。雨の日に紙袋にかけられるビニール袋もアメリカにはない。アメリカにも以前は無駄な包装があったが、環境保全のためにプラスチックが年々削減され、代わりに紙製のパッケージが使われるようになった。 ほかに同記者は、「コンビニの店員は日本の終わりの見えないコロナ戦争の最前線に立たされ、常に感染のリスクを背負っている。その割には、国内でもっとも低賃金の仕事の1つだ」 と、劣悪な労働環境にも目を向けた。 アメリカ人が恋しいアメリカ食は? ニューヨークタイムズの記事から外れるが、アメリカにも美味しい食べ物はたくさんある。ホットドッグ、熟成ステーキ、グリルドチーズ、マックアンドチーズにアルフレッドパスタ、肉汁滴るハンバーガー・・・。日本の食べ物のクオリティが高いと言っても、きっとどの選手もしばらくすると自国の食べ物が恋しくなるはずだ。 女子体操競技のオールラウンドで金メダルを取り一躍大スターとなったスニ・リー(Sunisa Lee)選手も、日本での滞在が長くなり、アメリカ食が恋しくなった様子。 同選手は国民食の代表格、ペペローニピザをホテルの自室で頬張りながら、メダル獲得を祝ったことが報じられた。 これを見たアメリカの人々も「なんて完璧な食べ物でお祝いを」と同調している。 ところで筆者は、4月に発表した東京オリンピック関連の記事で、このように書いていた。 また開催地、日本のイメージアップにも繋がっていくことは必至だ。報道やソーシャルメディアを介し、選手が発信していく素晴らしいオリンピック体験(試合はもちろん、日本文化、食べ物、コンビニ、自販機、日本人から受ける親切、ウォシュレットなど)は、必ずや「日本」という国の存在感を再び高めていくことになるだろう。 コンビニが外国人ウケすることは、容易に想像できた。今回は米主要紙でコンビニがクローズアップされたが、きっと自動販売機や公衆トイレも記者の心を掴んでいると、筆者は密かに思っている。 キラキラした見た目でハイテクで、なんでも出てくる安くて美味しい自動販売機。世界一清潔で高機能の(しかも無料で使える)トイレ(ウォシュレット、音姫、パウダールーム・ ・・)。これらも当たり前にあるようで、実は世界から俯瞰して見ると当たり前ではない。筆者は3年前、TOTOのニューヨーク支社を取材した。当地でウォシュレットを購入するのは、日本の駐在員に加え、日本旅行から戻って来たばかりのアメリカ人も多いとのことだった。 世界に誇ることができる、知っているようで知らない日本のスゴさ。実は外国人から教えてもらうこともあるのだ。 Text and photo by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

メダル候補の失速とメンタルヘルス── 大坂なおみ選手は「うつ」なのか?英語の意味を米心理療法士が解説

アメリカの体操の女王も不調 オリンピックにはやはり魔物が棲んでいる? 東京オリンピックでは、日本をはじめとする各国選手が続々とメダルを獲得する中、メダルの有力候補だった選手も次々と敗退している。 体操で過去4つの金メダルを持ち今大会でも有力候補のシモーン・バイルス(Simone Biles)選手もそうだ。開会以来、着地で幾度となくバランスを崩すなど本来の実力を思うように発揮できず、27日団体総合決勝で途中棄権した。チームとしてはロシア五輪委員会(ROC)に破れ、銀メダルを獲得した。 途中棄権の理由についてバイルス選手は、身体的な問題ではなく「自分のメンタルヘルス(心の健康)を保つため」と話した。また「頭で考え過ぎてしまっている」「年齢を重ねるごとに緊張するようになった」と、絶対王者らしからぬ不安な気持ちが露呈した。 スター選手を擁するアメリカの体操チームは、選手村に入らず選手にホテル滞在をさせるなど、体と心の健康に配慮し手厚い環境を整えている。開会式にも出席せず、こぢんまりとセレモニーを行うなど徹底した新型コロナの感染防止対策で準備万端だったはず。しかし、現実は厳しいようだ。 これについてCNNは、「バイルス選手の感傷的なインタビューが、オリンピック選手のメンタルヘルス問題を人々に投げかけた」と報じた。 バイルス選手がメンタルヘルスの話をしたのは、筆者にとって目新しいことではなかった。4月にオンラインで開催された「チームUSAサミット」では、1年以上に及ぶパンデミック中の選手のメンタルヘルスが1つのトピックだった。バイルス選手も微笑みを浮かべリラックスした表情で登場したが、「昨年は非常にナーバスな時期もあった」と、揺れ動いた胸の内を明かしていた。 新型コロナの感染拡大、ロックダウン、練習場の閉鎖、オリンピックが延期か中止か・・・精神的なショックが続き、まるで出口の見えないトンネルをさまよっているかのような時間を過ごしてきたという。そろそろ引退を考える年齢(24歳)にさしかかっていることも言葉の端々で匂わせた。体操選手としての自身の限界を感じているのかもしれない。 バイルス選手は29日に個人総合決勝が予定されており、28日はメンタルの休息にあてるようだ。メダルの女王として、なんとか最後の踏ん張りを見せてほしい。 Updated: ãƒã‚¤ãƒ«ã‚¹é¸æ‰‹ã¯28日、個人総合決勝出場の辞退を発表。 大坂選手のメンタルヘルス問題。本当に「うつ」なのか? メンタルヘルスの問題と言えば、テニスの大坂なおみ選手もそうだ。 長期にわたるディプレッションを告白し、全仏オープンを棄権した​​大坂選手。その後、全英オープンも欠場して休養し、オリンピックで久々にコートに戻ってきたばかりだった。しかし27日の女子シングルス3回戦でミスを重ね、世界ランク42位のチェコ選手にストレートで敗れ、ベスト8進出を逃した。 全仏オープンの時期は日本のメディアで「うつ状態」と大きく報じられたが、その後スポーツ系の雑誌の表紙を水着姿で飾り、自身のバービー人形やNetflixのオリジナル番組がリリースされ、オリンピックの開会式で聖火台に火を灯す大役を果たした彼女に、「うつではなかったの?」「内向的な性格には見えない」と世間の風当たりは強い。 英語「Depression」の意味とは 大坂選手の言う「Depression」とはどういう意味なのか。ニューヨーク州ライセンスを持つメンタルヘルス・カウンセラー、心理療法士のダニエル・ファン氏(Daniel Huang, LMHC)に話を聞いた。 まずファン氏は、メンタルイルネス(精神障害、うつ、心の病気)について、「白か黒か(うつかうつじゃないかといったレベル)の話ではない」と言う。 症状の軽いものから自殺をするほどの重いものまで段階があり、診察なしでは言い表せないと言う。ファン氏が心の治療にあたっているハミルトン-マディソンハウスでは、入院治療までを必要としない患者を受け付けており、カウンセリングをした上で各人の症状に応じて治療する。 メンタルイルネスを引き起こす要因もさまざまだ。遺伝的なもの、性格的なもの、育った環境、職場や家庭のストレスなど外的なものなどが、複雑に絡み合う場合もある。自殺未遂を起こすほどの深刻な患者は以前は年間1、2人程度だったが、パンデミック以降、失業や孤立などのストレスが加わり、その数は10人ほどに膨れ上がっている。 大坂選手の症状として、どのような状態が考えられるだろうか。ファン氏は「直接診察していないし、自分はスポーツ専門のカウンセラーではないのではっきりしたことはわからない」と前置きをしながらも、「開会式の様子などを観る限り、自殺を考えるほどの重度の症状ではないように見えます」と言う。 ただし、重くないと言えど、心がどれほど病んでどれほど辛いかは他人には決してわからない。 大坂選手が発したツイートの中の一文:I have suffered long bouts of depression since the US Open in 2018 and I have had a really hard time coping with that.(2018年の全米オープン以来、私は長い間ディプレッションで苦しんでおり、対処するのにとても時間がかかっている)の解釈について、英語ネイティブの立場から、ファン氏はこのように答えた。 「Depressionをどう解釈するかは先ほど述べたように、人によって症状や状態が違うのでわからないが、この一文から私が感じることは、大坂選手の気分が良くない、普通ではない状態が、数日単位ではなく数週間、または数ヵ月という長いスパンで続いているというのは確かでしょう」 ツイート内容の訳語を含む関連記事 「気分の落ち込みは18å¹´USオープンから」 大坂なおみ全仏棄権と衝撃告白、各界の反応は? 最後にファン氏は、スポーツ選手に限らず、一般の人々がメンタルヘルスを健康に保ち重症化させないために、このようにアドバイスした。 「人は落ち込んだ気持ちや悪い状態を隠す傾向にあるのですが、そのような状態は悪化する前に早めに告白してしまうのが良いです。その点では大坂選手は(自殺などを起こすような)重症化する前の段階で、自分がどのような状態にあるのか、どんな気持ちなのかを包み隠さずに話しました。良いお手本だと言えるでしょう」 オリンピック・パラリンピック競技大会概要 …

【東京五輪】開会式当日と翌日、米主要紙の一面を飾った話題は?

波乱の東京オリンピックがいよいよ始まった。 すでに日本をはじめとする各国選手が金メダルを獲得したり、メダルの有力候補と言われていた選手が思わぬ不調だったりと、感動や驚き、失望が起こっている。 筆者はこれまで、アメリカ在住の立場、およびUSチームのオンラインサミットに参加した経験から、日本のメディアにこのように聞かれることが度々あった。東京オリンピックについて「アメリカではどのように受け止められているのか?」「アメリカの人はどう思っているのか?」。 筆者の答えはこのようなものだった。 「春以降、少しずつメディアがオリンピック関連の話題を取り上げるようになった。特に主要紙のスポーツ記者は、金の亡者であるIOCの腐敗について非難し、コロナ禍での開催反対の立場を取っている。一方で一般の人々はと言うと、多くの人がオリンピックに関心を寄せていない。日々アメリカ国内の問題が山積みなので、オリンピックまで気持ちが届かないのだろう。しかし、大会が始まって自国の選手がメダルを取ったら目を向け始めるだろう」 これは街頭インタビューや、友人やパーティーで出会った人との会話から、筆者が感じたリアルな感想だった。日々さまざまな人に話を聞いてみても、オリンピックが直前に迫った時期でさえ「今度のオリンピックは北京だよね?」「今年開催?来年に再延期では?」など、日本からすると到底信じられないようなコメントが返ってくるのが1人、2人のレベルではなかった。それほどアメリカの一般の人々は、(開催まで)オリンピックへの興味や関心がもともと薄い。 もちろんすべての人ではない。少数派ながら「誰がメダルを取るかなど、オリンピックは気になる」と言う人や、「関心はあったけど、昨年延期が決まった時点で関心の糸が切れた。今年開催なら好きな競技はチェックする」と言う人もいる。 開会式の2週間前から、アメリカでの放映権を持つNBCがオリピック関連のCMを大々的に放送するようになり、機運が高まってきた。地方紙や深夜帯のテレビ番組までもが東京オリンピックのさまざまな問題やゴシップ(緊急事態宣言や選手の陽性判定、担当者解任・辞任、トイレ臭、選手村の簡易ベッドなど)を取り上げるようになり、(ネガティブな話題も含んだ)オリンピックムードが出てきたところだった。 実際に開会式が終わり、日本では評価が二分している。大絶賛する声が多いが、中には否定的な意見もあるようだ。果たしてアメリカは他国開催の開会イベントに興味を持ったのだろうか? 筆者は、東京オリンピック開催日の米主要紙の朝刊がどのような話題なのか気になり、いくつかかき集めてみた。 開会式当日の各紙朝刊一面 ニューヨークタイムズ (新型コロナ)ニューヨークが新型コロナでロックダウンをした時期に支えてくれたエッセンシャルワーカーの特集 (国際)アメリカ軍のアフガニスタン撤退関連 (新型コロナ)ワクチン未接種者が感染拡大につながっている、など ウォール・ストリートジャーナル (国際)香港で子どもを扇動する絵本の発行団体が逮捕 (ビジネス、製造)世界的な半導体不足が2023年まで続く可能性 (経済)経済回復においての有価証券取引について、など ニューヨークポスト (セレブ、ゴシップ)ラッパー、ドクター・ドレーの離婚した元妻の慰謝料 (新型コロナ、スポーツ)ナショナル・フットボール・リーグが選手に新型コロナワクチン接種を促す (同紙の裏表紙=日本の新聞の一面にあたる右サイドは、スポーツ記事の一面だ。この日の話題はMLBのヤンキース対レッドソックス戦で、ヤンキースのブルックス・クリスキー投手の負け試合について) これらの新聞は、ニューヨークエリアで流通している主要メディアの一部だが、一面にオリンピック関連の見出しは見当たらなかった。 スポーツ記事も、どちらかというとNFLやMLBの方に関心が寄せられているようだ。 ならば中面はどうか? スポーツ面でやっとオリンピックの話題を見つけた。 これらの紙面を見る限り、主にUSチームの選手にフォーカスした記事だ。日本で大騒ぎになったオリンピック・スキャンダルに関する否定的な記事は見なかった。 開会式翌日の各紙朝刊一面 開会式の様子はNBCにて、日本のリアルタイムの半日遅れの午後7時30分から深夜まで放送された。 その翌朝の新聞は・・・。 ニューヨークタイムズ (オリンピック)東京オリンピックが厳粛な空気に包まれ、無観客でいよいよ開幕 (国際)ハイチのモイーズ大統領埋葬など、暗殺事件続報 (新型コロナ)ワクチンのブースター(追加免疫。接種完了から数ヵ月経った後に再び接種するワクチン)の必要性 (新型コロナ)ニューヨーク市長が市の職員にワクチン接種を義務付け、など ウォール・ストリートジャーナル (オリンピック)1年遅れの東京オリンピック、空の会場で開始 (経済)暴落から一転し、NYダウが3万5000ドル超え (ビジネス、製造)電気自動車への移行 (新型コロナ)科学者による長引く新型コロナの謎解き デイリーニュース (オリンピック)史上もっとも奇妙な五輪が開幕 (事件、ローカル)ブロンクスの住宅敷地内から、幼児の歩行に必要な特別なスニーカーが盗まれる オリンピック関連は開会式の翌日、一面および中面で大きく取り上げられていた。記事の内容は「無観客の中で行われた、オリンピック史上稀に見る奇妙な大会」という趣旨だった。開催国からするとオリンピックが世界の一大行事よろしく思うかもしれないが、アメリカではほかにも新型コロナや経済ニュースなど、新聞が伝えたい話題や事件が山ほどあるため、俯瞰して見てみると開会式はほんの1つのイベント扱いだ。 ドローンやピクトグラムの演出を賞賛する声がソーシャルメディアで話題になっていたり、無観客で寂しい、奇妙、長いなどのハイライト記事、『イマジン』の歌詞についての否定的な記事などを見たが、日本の一部のメディアや知識人のようなネガティブな評価をしている記事は筆者が確認する限り見なかった。(専門家や批評家でもない限り、人々はそこまで他国開催の「開会式」に注視していない) 最低の視聴率か? CNNは23日、FOXスポーツの元幹部で、メディアコンサルタントのパトリック・クレイクス氏のコメントとして「今大会はこれまでの夏季オリンピックで、おそらく史上最低のテレビ視聴率になるだろう」との分析を紹介した。 ただし、あくまでもテレビ視聴率の低迷の危惧であり、ストリーミングやソーシャルメディアなどでの視聴や、ハイライト、選手のインタビューなどのコンテンツの視聴などが悪いとは限らない。 CNNによると、もし視聴率が大きく低迷すればメイク-グッズ、つまり広告主に無料広告で補償しなければならなくなる可能性があるという。ただし低迷といえども、今夏にテレビ放送されるほかのどの番組よりもオリンピックの視聴率は高くなるだろうと予想している。 今後メダル獲得数が増えるにつれ、オリンピックが気になってしょうがないという人も必ずや増えていくだろう。 オリンピック・パラリンピック競技大会概要  第32回オリンピック競技大会(2020/東京) 7月23日~8月8日 33競技…

小山田圭吾いじめ問題で考える。90年代とは「そういう時代」だったのか?

小山田圭吾問題で、ネット上では「90年代はそういう(虐待も笑って雑誌が掲載するのが許された)時代だった」という擁護派からの意見も散見される。 筆者はまさに90年代、日本の雑誌社で編集者として働いており、記者としてのキャリアはメジャーミュージシャンへのインタビューからスタートした。1日2、3組を取材することもざらで、そんな生活が4年続いた。その経験をもとに、90年代の音楽、雑誌事情を少し振り返ってみたいと思う。 筆者は2002年以降アメリカで過ごしているので、最近の日本の音楽や雑誌事情には疎いというのを前提として読んでほしいのだが、結論から言うと、90年代が令和とは違うやや異質な時代だったというのは当たっているかもしれない。 YouTubeもSpotifyも、クラウドもない時代。CD発売前に編集者の元に届けられる音源(資料)はカセットテープ(後にCD)だった。我々はそれを事前に聴いてインタビューに臨む。レコード会社の担当者が売り込みも兼ねて基本的には来社し、手渡しで(時々郵送で)音源を届けてくれた。 Zoomもない時代。ミュージシャンへのインタビューは当然、対面形式だった。時々ホテルのカフェや会議室などを使うことはあったが、多くは所属事務所のマネージャーおよびレコード会社のスタッフと共にミュージシャン自身が我が社まで足を運び、ビル内のカフェで小一時間ほど取材を受けてくれていた。記事を起こすためのインタビューの録音には、手の平大のテープレコーダーを使用していた(よって文字化することをテープ起こしと呼んでいた)。 インタビュー時にミュージシャンが笑い話として、過去の不良行為を武勇伝のように話すことは1人、2人あったかもしれない。ただし、虐待とも言えるほどの内容を笑いながら話された記憶はない(それだけの仲になれなかったとも言えるが)。 ブログやウェブマガジン、SNSもない時代。雑誌というメディアは出版の中でも花形で、公に文章を発表するのは限られた人に与えられた特権だった。特に今回報じられた音楽雑誌は花形中の花形。業界誌の中でも尖った存在でアーティストはもちろん、レコード会社、芸能事務所、音楽プロデューサーなどから一目置かれていた。この雑誌は、テレビではあまり観られない渋谷系と呼ばれるミュージシャンをよくフィーチャーした。長文インタビューなので、ミュージシャンにとってはコメントをカットされることもないし、読者にとっても創作の現場や普段の生活など、ミュージシャンの素顔を垣間見られる希少なメディアだった。筆者もインタビュー前の予習として「ジャパン」を熟読したものだ。 当時、コーネリアスや渋谷系の音楽を知らない人はダサいとされる風潮があった。しかし今や、小山田氏のことを知らない、初めて聞いたという人も多いことをネットで知り、時代の移り変わりを感じた。 テレビもそうだ。バラエティ番組で人を殴ったり熱湯風呂に落とし入れたり、肌の色や見た目、(今で言う)LGBTQを茶化したりなど、今では眉をひそめるような暴力や差別が公然と電波に乗りお茶の間に届けられていたし、それを笑う文化もあった。 90年代が今とは違う異質な時代だったからと言っても、これだけは断言できる。それはどのような時代でも、善悪の判断はつく(普通の感覚を持っている人間であれば)ということだ。90年代であろうと、あのような虐待の記憶は普通であれば話せなかったし、聞いても書けない内容だった。 またいじめや嫌がらせというのは、どの国でもどの時代でも存在する。決して許されるものではない。被害者が一生トラウマになるほどのものは虐待(Abuse、Torture)と言い、いじめや嫌がらせ(Bully、Harassment)とは似て非なるもので、それは日本のみならずアメリカでも共通しているということも、在米歴が長くなった立場から申し上げたい。 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

東京五輪の放映権持つNBCも。小山田圭吾のいじめ、虐待告白を米主要メディアが次々に報じる

米主要メディアも報道 小山田圭吾氏が過去に行ったいじめ、虐待告白について、アメリカの主要メディアも次々に報じた。 APスポーツ、ワシントンポスト、ABCニュースは17日「Japanese composer for Tokyo Olympics apologizes for abuse」(東京オリンピックの日本人作曲家が虐待を謝罪)と報じた。 これらの記事を書いたAPのYuri Kageyama記者は、小山田氏について「東京オリンピックの開会式で使われる楽曲の日本人作曲家」「コーネリアスの名でもよく知られるロックミュージシャン」と紹介した。そして、小山田氏が過去に行った障害を持つ同級生へのいじめ、1990年代の雑誌インタビューでの詳細ないじめ自慢、それに対する今回の謝罪、ソーシャルメディアで起こっている辞任要求などを淡々と説明している。 過去に行った問題行動であろうと、多様性と調和の実現を目指し人権に配慮した大会を目指すオリンピック・パラリンピックの基本理念に反すると唱える識者の1人として、東洋大学教授でメディア学者、藤本貴之氏のコメントの概要も取り上げた。 事実が明らかになり、問題化している以上、五輪開会式音楽という東京大会を象徴するような場面の担当者としては不適当であることは明白だ。そもそも、五輪憲章にも反するという人事ということも理解しなければならない。そこは組織委員会も真摯に受け止めなければ、東京大会は「凄惨ないじめ加害者が開会式音楽を担当した」という負のレガシーが語り継がれることになるだろう。これはもはや国辱だ。 (<いじめ五輪は国辱>りんたろー氏の小山田圭吾擁護に疑問より) 通常ワシントンポストの記事には多くの反響が寄せられるが、虐待の具体的な内容が説明されていないことで大きな問題と捉えられていないのか、はたまたこの問題自体に関心が寄せられていないのか理由は不明だが、18日現在でコメントはゼロだ。 このスキャンダルを看過できないのは、オリンピックの米国放映権を持つNBCユニバーサルの子会社、NBCニュースもそうだ。 NBCニュース(Corky Siemaszko記者)は18日「Tokyo 2020 Olympics composer apologizes for bullying disabled classmates」(東京オリンピックの作曲家が障害者の同級生いじめを謝罪)と、一連の小山田氏問題と東京オリンピックのこれまでのスキャンダルをより詳細に報じている。 ミュージシャンとしての小山田氏について、「Beck(ベック)やビーチボーイズのブライアン・ウィルソンといったアメリカの先駆的なミュージシャンと比較されることが多いが、日本ではキッチュな渋谷系の第一人者の1人としてよく知られる。それはバート・バカラックやフィル・スペクターといった60年代のアメリカン・ポップミュージック(の特徴)を多用したものだ」と紹介した。 いじめの内容について詳細まで触れていないメディアがある中、NBCニュースは「現在52歳の小山田は、スター性が高かった90年代に音楽雑誌のインタビューで、知的障害のある少年に排泄物を食べさせたり、ほかの学生の前で自慰行為をさせたりしたことなどを振り返っていた」と報じた。 また「これらの反省点について、後悔するどころか子ども時代のおかしな出来事として捉えていた」「それを自慢げに語っていた」と、人気ブログ「あらま! JAPAN」からのコメントを引用した。 ほかに英メディアのザ・ガーディアンやテレグラフも、このスキャンダルを報じている。 (つづく) Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止