新型コロナウイルスに関するNY最新現地事情まとめ(1)マスク篇

旅行、もしくは仕事や留学でニューヨークを訪れる方も多いと思います。いくつか関連記事を書いているので、ここでまとめたいと思います。 第1回目は日本でも品切れの「マスク」事情について。   2月3日(月)の週になって、ドラッグストアにマスクを買いに行ってみたところ、見事に売り切れ状態でした。 マスク姿は「ウイルス持ち」「病気」のようなイメージを人々に与えかねないため、滞在中に予防用マスクをする際は十分気をつけましょう。 【新型コロナウイルス:速報】ニューヨークの最新現地事情とアメリカ人のウイルス防止対策 (2.8.2020) これについては、マスク姿のアジア人女性と男性が地下鉄の駅でいざこざになり、女性が男性に暴行されているところがSNS上で拡散され話題になりました。2人の間に何が起こったかは知る由がありませんが、中にはピリピリしている人もいるのは間違いないでしょう。 また私の知り合いの女性も先日地下鉄の駅で、防止用のためにマスクをしていたところ、通りすがりの女性に「病気を移さないで」と言われたそうです…。   街中や電車内でマスクをしている人はほんの一部(筆者の感覚では0.5〜1%ほどの割合)なので、おそらく転売業者などが買い占めているか、華僑が自身で使用したり、中国の家族や親戚に送るなどしているのかもしれない。 価格はやや高いが(2枚で5ドル=約500円)、路上などでは現在このように販売されていたりもする。 NYで初の感染者、全米で死者6人 パニックで水や米の買い占め騒動に? (3.3.2020) マスク不足と言っても、あるところにはあるんですよね。(箱から出されたマスクの衛生面が気になるところですが…) ちなみに私は、2月上旬に薬局でスタッフに尋ねたところ、始めは「売り切れ」と言われたのですが、後で倉庫の隅に残っていた「最後の1個が残っていた」と持って来てもらいゲットでました(上写真)。 アメリカ国内には需要に応じて、4,300万枚のマスクの供給準備があり、今後もさらに製造、入手可能の予定。 (その後、マイク・ペンス副大統領が「医療関係者や感染の疑いがある人以外は、マスク着用の必要性はまったくない」とフォローし釘を刺した) 新型コロナで初の死者も専門家により封じ込めに自信 「パニックになることは何もない」トランプ大統領 (3.1.2020) CDC(アメリカ疾病管理予防センター)では「マスクは健康な人には必要ない」と発表されています。そういう事情で、感染者が出たニューヨークでもいまだにマスク率は低いです。私もまだ、マスクは着けたことはありません。 以上、旅行や滞在の際の参考になれば幸いです。 (Photos and text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

美食家が唸る名実共に世界一 NY最高級のニューアメリカン料理を体験「Eleven Madison Park」

水曜日の午後9時半すぎだというのに、店内は満席です。「ホンモノ」だけを知っている世界中の美食家の社交場的な存在である最高級レストラン、Eleven Madison Park(イレブン・マディソン・パーク)。 料理界のアカデミー賞と言われるJames Beard Foundation Awardで「アウトスタンディング・シェフ」にも選ばれた奇才、ダニエル・ハム氏が腕を振るう店。2017年には世界のトップレストランを決める毎年恒例のWorld’s 50 Best Restaurantsで、世界1位の名誉を獲得。またミシュランガイドのニューヨーク版でも、最高の三つ星を毎年取り続けています。 8-10品のテースティングメニュー ここで提供されるのはコンテンポラリー・アメリカ料理。季節や新鮮な食材の調達具合に応じて内容が変わる、8-10品のテースティングメニュー(1人335ドル。バーは5品コースで1人175ドル。税別、ドリンク別、チップ込み)を楽しめます。 この日(1月末)のメニューの中から私が選んだのは、 新鮮なキャビアと甘くないセイボリー・チーズケーキ(チョウザメ燻製入り、写真上、テーブルサイドで盛り付けてくれます) フォアグラのコールラビと生姜添え、ロブスターとマテ貝(ウニソース添え) その場で作ってくれる新鮮な自家製豆腐(写真上、黒トリュフをふんだんにかけてくれます) 仔牛の柔らか〜い頬肉 など、デザートも含め目にも舌にも楽しい全9品でした。 どれもが芸術品とも言える素晴らしい味と香りと盛り付けで、ペアリングのワインとの相性も完璧です。(ドリンクはオプショナル。ワインペアリングは2種類 – 1人175ドルと315ドル – から選択) 食事後、スタッフがこの日のメニュー表と、朝ごはん用の手作りグラノーラ(同店オリジナルの専用保存ケース入り)、そして同店オリジナルボトルのアップルブランデーのLaird’sを丸々1本を持って来てくれました。 心からのサービスに感激しきり。 通常の店はおもてなしと言えども、顧客が話をしている所に割って入るサーバーがいるところも珍しくない中、このお店は味、食材の品質、ホスピタリティー(おもてなしと心配り)、エンターテイニング、すべてが二重丸でした。 翌朝、手作りグラノーラがまた何て美味しかったことか! それをいただきながら、前夜の「夢」に改めて浸ったのでした。 予約について:(ウェブサイトによる完全予約制で、フード料金は予約時に支払う) [All photos by Kasumi Abe]All images and text are copyrighted. 本稿はTabizineに寄稿したものを一部加筆修正したもの。無断転載禁止

052 近隣クリエイターが夜な夜な集まる、クラフトカクテル・バー 「Yours Sincerely」(NYブルックリン)

知り合いのクリエーターが「ブッシュウィックに、近隣のアーティストなどがよく集まるおしゃれなカクテルバーがある」と教えてくれました。聞けばただのバーではなさそうです。真っ暗な店内に引き込まれるように入りました。 タップは全部で31種類 店の看板には昔の趣のあるコカコーラ・マークがあり、一見「これ何の店?」と思いました。「昔キャンディーストアだったのを、前のオーナーがAirbnbとして使い、2015年大みそかに今の形態のバーになりました」と話すのは、店の代表マークさん。 バーカウンターにズラリと並ぶタップから、「Yours Sincerely」がただのカクテルバーでないことが分かります。聞けばここのカクテルはすべて「ドラフト」だそう。全部で31種類で、中にはクラフトビール、ウイスキー、赤&白ワイン、手作りソーダも。タップワインは飲んだことがあるけど、タップカクテルは経験なし。早速いただきました。 まずはホワイトラム、ライム、シンプルシロップなどで作られたダイキリの「Lab Rat」から(10ドル、毎日5〜8pmはハッピーアワーで5ドル)。フレッシュで飲みやすく、喉をリフレッシュしてくれます。軽量のために使われているガラス製ビーカーもおしゃれ! 冬季は温かいカクテルも飲みたくなります。「Re-Animator」(11ドル)はイタリアの食前酒カルダマロに、ビターリキュールのブランカメンタ、コーヒー豆が入っていて、おなかの中から体を温めてくれます。 隠れメニューも どれを注文していいか分からない場合も心配ご無用。メニューには「デシション・メーカー」(判断決定表)の図解があります。 例えば、軽くリフレッシングしたいか、思いっきり飲みたい気分か、好みの味は甘めかドライか、ハーブが効いたものか、トロピカルか…。きっと自分好みの味にたどり着けます。ぜひお試しを。 またあまり知られていませんが、メニューにブラックライトを当てると、隠れメニューも浮き出してきます。遊びゴコロいっぱいのバーです。 フードはないけど、隣のレストランからBYOB(持ち込み)してよいとのこと。良心的なのもうれしいです。 [by Kasumi Abe]All images and text are copyrighted. 本稿はWeekly NY Japionのコラム 、安部かすみ(Brooklyn本著者)が案内する「古くて新しい、とっておきのブルックリンへ」からの転載。無断転載禁止

アルゼンチンの茶の湯、マテ茶専用カフェ「Porteñas Yerba Mate」in ニューヨーク

ブルックリンの街歩きでちょっと休憩したいとき、一風変わったカフェでお茶したいときはこちらがおすすめ。お店は、ウィリアムズバーグ地区にあるPorteñas Yerba Mate(ポルテニアス・イェルバ・マテ)。 ここでは、アルゼンチン人にとっての茶の湯、イエルバ・マテ茶をいただけます。専用カップ、Gourd(ゴード、グァンパ、写真上)で飲むのですが、下に行くほど苦味とコクがあって美味しいのです。 上品な甘みのイエルバ・マテ茶クリームブリュレとの相性もgood! 2020年2月に発売されたばかりの新商品、イェルバ・マテ茶入り(砂糖不使用)の栄養系フルーツジュース(5〜8ドル)。朝のエネルギー補給や肉料理ばかりが続いたときなどに飲んでみてください。 過去記事はこちら [All photos by Kasumi Abe and Porteñas Yerba Mate]All images and text are copyrighted. 本稿はTabizineに寄稿したものを一部加筆修正したもの。無断転載禁止

アート発信地をチェルシーからハーレムにする男 WhiteBox, ニューヨーク

NYのハーレムで行われた茶会 日本の茶会が、ハーレムのアートスペースで開催されると聞いて驚いた。 ハーレムと言っても最近キラキラした大型商業施設が立ち並ぶ都会の方ではなく、東側の「スパニッシュハーレム」だ。スパニッシュハーレムと言えば、ニューヨークにいる(いた)人はわかるが、治安が良くない地区としてのイメージが今でもある。そこで本格的な茶会が今晩行われるという。 何だか刑務所?のような大きくて重い鉄格子をゆっくりと開ける。 だだっ広いアートスペースが目の前いっぱいに広がった。 冷たい無機質な床に、温かみのある手触りのよい畳が敷かれている。茶の講師が座り、彼女を取り囲むように3人が畳に、別の3人が椅子に座り、お点前をちょうだいしていた。(そのほかにも多くの人が立って見物) 静寂の中、きちんと正座した女の子もいて可愛い! ここにいる誰もが茶の世界に敬意を表し、中には熱心に質問をする人も。ハーレムがこんなことになっているとは誰が想像したか。 場所はWhiteBox Harlem(ホワイトボックス・ハーレム)。2月1日から29日まで「Painter was called outlaw」というテーマで行われている展示会の中での1コマだ。 ここで日本の芸術を中心にキュレーションを行なっている佐藤恭子さんによると、期間中、日本人芸術家(長谷川利行、松本竣介、麻生三郎、宮崎進)の戦時中に日の目を見ることがなかった作品を展示し、その一環として茶会イベントを催したそう。これらの芸術家は、昔の日本では「アウトロー」(無法者)扱いされてきた。皆他界されているが、自分たちの作品が時を経て外国でお披露目とは、きっと誇らしげに思われていることだろう。 最近私は茶会のご縁が多い。この日も改めて茶やアートを含む日本文化の奥深さは、アメリカ人の興味を引くものだと実感した。 NYマンハッタンの中心地にあるお茶室と、そこで定期開催される本格茶会【ニューヨーク】 あるアートの専門家との興味深い会話 さて茶会が終わり、せっかくなので展示されているアート作品を見て帰ることに。 そこに来ていた、ニューヨークのブロンクス区でアート関連の仕事を長年しているという年配のルイスさんと、ある作品の前で立ち話になった。 ルイスさんと作品の前でお互いが感想を言い合ったのだが、会話の中で政治という意味のpoliticsという言葉が彼の口から幾度となく出てきた。私はこのアートの場でまったく予期しなかった言葉が出てきたので一瞬思考が止まり、彼が何の話をしているのか混乱するほどだった。 しかし彼はアートの長年の専門家だ。彼の言っていることは、おそらく「正しい」のだろう。だが私は昔から思ってもみないことを言ったり同意するのが苦手である。正直に理解できていないことを恐る恐る伝えてみた。 そうしたらルイスさん、「この前〜〜で出会った女性が」とさらに混乱する話をし始めるではないか。私の脳内はさらに「???」。ついに「話の腰を折るようで申し訳ありませんが、ちょっと話に着いていけていないかもです…」と伝えたところ、ルイスさんは「私はあなたから今、違う見方を学んでいます。これがアートの面白いところです」と言った。 同じ1つのオブジェクトを見ても、それまで生きてきた経験や知識をもとに、ある人は「政治的」だと感じ、またある人はまったく別のことを感じる。彼が以前出会った女性との会話は、それを彼に気づかせてくれた最初の出来事として、いつもこのようなシチュエーションで思い出すそうだ。 ルイスさんとの会話は私にも学びをもたらしてくれる興味深いものだった。わからないことはわからないと正直に伝える大切さ、そして正解というものがないアートの奥深さや面白さを改めて気づかせてくれた。 ハーレムを次のチェルシーにする男 ここにはもう1人興味深い人物がいた。 このスペースのオーナーで、スペイン出身のファン・プンテス(Juan Puntes)さんだ。彼はその昔、現代アートの発信地、チェルシーにWhiteboxを構えていた。そこが飽和状態になりローワーイーストサイドにスペースを移し、1年前にこのスパニッシュハーレムに引っ越してきた。 聞けば、このだだっ広いスペースは以前は消防署で、大昔は馬車の倉庫だったそう。道理でだだっ広く、ドアも重く、室内奥にも大きな倉庫っぽいドア跡が残っているわけだ。 実はこのWhiteBox Harlemの隣も、別のアートスペースなんだとか。 チェルシーに未だ集まる多くのギャラリーの賃貸契約の更新の時期が今から約10年前で、それ以降はローワーマンハッタンやブルックリンが次のチェルシーになるだろうと言われて久しい。「なぜこのギャラリーはブルックリンを選ばなかったのか?」と聞くと、彼はこのように答えた。 「ブルックリンは若すぎる。もっと成熟した市場が欲しかった。まさかハーレムのしかもスパニッシュハーレムとは、誰もが驚くけど、次(のムーブメント)はここさ」 「ついでに言っておくと」と彼は続ける。 「ここはギャラリーではなく、オルタナティブ(代替的)なアートボックスと僕らは呼んでいる」とあえて、ギャラリーという言葉を否定した。 NPO形態で運営し、ニューヨークの通常のギャラリーのように作品を販売しているわけではなく、grant(企業などからの補助金)で賄っていると言う。 地下フロアでは2月8日から3月1日まで、中国・武漢在住のアーティスト、ケ・ミン(Ke Ming)さんによる作品展もちょうど行われている。 すごいタイミングだが、これはまったくの「偶然」だそうだ。新型コロナウイルス騒動から随分と前に企画されたもので、そして残念なことに、ケさんは今回の騒動で来米できず、展示会に来れなくなってしまった。(ファンさんは武漢の人々を助けるべく、期間中は会場で募金活動も行なっている) ここではほかにも、中国北部出身のアーティストで来月この地下で自身の展覧会をするタンさんや、2ヵ月前にニューヨークに活動拠点を移したばかりの芸術家、野村在さん、そして千住博さんのところで10年ほど働いていたという原田隆志さんらにもお会いした。 アートはまったく専門外で普段はあまりご縁がないが、たまにはそういう所にも足を運んでみるものだ。こんな面白い人々との出会いが待っているのだから。 ちなみにルイスさんとの会話のその後だが、私もルイスさんも作品を見ながらしばらく別の人々と会話を楽しんでいた。そのうち彼は「またどこかで会いましょう」と軽く挨拶し去っていった。 連絡先も交換せず、ご縁があればまたどこかで。何とも後腐れのないニューヨークらしい出会いだ。 [All photos by Kasumi Abe]All images and text are copyrighted.

Zero Waste Danielのランウェーのないショーfrom NY ファッションウィーク2020

2月3日から12日まで開催中の「ニューヨーク・ファッションウィーク」。市内ではさまざまなファッションショーが催され、ファッション関係者やモデルなど世界中のおしゃれピープルが一堂に集まっている。 (続きを読む)「使い捨て文化でしたか?」21世紀最先端のファッション哲学がNYファッションウィークで開花 [All photos by Kasumi Abe]All images and text are copyrighted. 本稿はYahoo! Japan News個人からの転載。無断転載禁止

051ファッショニスタに支持されるブルックリンの古着屋「Antoinette Brooklyn」

上質の「一点モノ」が見つかる! 「元気〜?」と近所の人々が次々に訪れ、オーナーのレキシィにあいさつします。2011年のオープンから9年。「(常連の)彼女は子供の頃から知っていて、親のような気持ちよ」とレキシィ。 世界中のファッショニスタに支持される「Antoinette Brooklyn」では、何十年も前に生産されたアルマーニ、ヴァレンティノ、ミッソーニ、バーバリー、アン・クラインなど、質と価値の高い1点モノの衣類や小物が並びます。 バイヤーでもある彼女の審美眼でセレクトされるのは、1940年代モノから98年モノまで。彼女いわく「ヴィンテージの定義には最低20年必要」で、2000年モノも入りそうですが、98年までと決めているのは訳があります。「ファストファッションは買わないの」。 おおよそ90年代後期から世界中に拡大していったファストファッションですが、環境に与える汚染問題や生産地の劣悪な労働環境は深刻です。「中国で大量生産された衣類は繊維の質が悪いから、すぐ毛玉ができて耐久性がないの。それ以前のアメリカ産の衣類は毛玉などできなかった」。確かにそうですね! 目からうろこでした。 接客中によく聞こえてくるのは「これは日本のデザイナーによるものよ」という会話。日本ブランドも彼女に認められています。 セレブの来店も多い 彼女は以前GAPジャパンで働いていたこともあり、日本が好きで、スタッフも日本人です。HBOのドラマ『ザ・デウス』の衣装スタッフが番組用に、また有名ブランドのデザイナーが昔のデザインを参考にするために、購入したりするそうです。 「日本人の顧客も多いわよ。ローラさん、米倉涼子さん、大島美幸さん、舟山久美子さん、松岡モナさん、植野有砂さんたちも来てくれたわ」 招き猫の影響は絶大のようですね! [by Kasumi Abe]All images and text are copyrighted. 本稿はWeekly NY Japionのコラム 、安部かすみ(Brooklyn本著者)が案内する「古くて新しい、とっておきのブルックリンへ」からの転載。無断転載禁止

Listening to music, feel like living in NYC!

「今を生きるためにここにいる。瞬間を生きているなら、止まることなく動き続けよう。天井なんてどこにもない」(撮影地:Brooklyn: Williamsburg, DUMBOなど) 「ブルックリンからシティー(マンハッタン)にやってきた。このコンクリートジャングル、ニューヨークでは、叶えられないことは何一つない」 「ニューヨークで酔っ払っちまって朝までしゃべった。けどキミと一緒にいる僕が好き 」(撮影地:Brooklyn: DUMBOなど) 「僕はニューヨークで生きる、孤独な英国男だ。何て言われようと自分らしく…」

豪邸を丸ごと「和」にしたニューヨーカー NY中心地に茶室、その理由は【お宅訪問】

豪邸を丸ごと「和」にしたニューヨーカー NY中心地に茶室、その理由は【お宅訪問】 「NYの自宅を丸ごと和の空間に全改築しました」。(c) Kasumi Abe 人はここを「ニューヨークのオアシス」と呼ぶ。私が初めてその存在を知ったのは、かれこれ10年ほど前のこと。今回ご縁があって、そこを訪れた。 場所は、映画などによく登場する、マンハッタンのフラットアイアンビル近く。レンガ造りの瀟洒な建物に到着し、入り口ベルを鳴らす。ドアが開き、オールドスクールなエレベーターでペントハウス(最上階)へ。 廊下奥のドアを開けた瞬間、驚いた。外界 ── クラクションが無造作に鳴り響く都会の喧噪、がいっさい遮断されたその空間に、落ち着きある「和の佇まい」が広がっている。 3フロアの豪邸を丸ごと大改築した家主、スティーブン・グローバス(Stephen Globus)さんとは何者ぞ? 彼の自宅で話を聞いた。 (以下スティーブンさんのインタビュー内容) 3フロアの自宅が丸ごと和の空間に Globus Washitsu まずこの階(ペントハウス)は、2間の茶室に縁側、日本庭園、和風の台所や風呂場があり、階段を上がった最上階にもギャラリースペースを兼ねた和室2間、屋外ルーフトップがあります。丸ごと和の空間に改築したのは2012年のこと。2フロア全体をGlobus Washitsu(グローバス和室)と名付け、茶室の庵号をマンハッタンのオアシスという意のKeisuian(憩翠庵)としました。 もちろん自分が住む家として改築したのですが、今では日本から来たアーティストが展示やパフォーマンスを行う場、そしてニューヨーカーにとって本物の日本文化に触れ合える機会の場としても使ってもらっています。例えば、ティーマスター(茶道家)による茶会や、画家によるペインティング・パフォーマンスなど、才能あるアーティストが自分たちの芸術を発表する場になっています。 Globus Ryokan 実は、下の7階も私の自宅で、そこも和室2間に床の間、水屋などを設けて丸ごと和の空間に改築しました。完成したのは2004年なので、この7階の方が先です。 こちらはGlobus Ryokan(グローバス旅館)という名のゲストハウスにし、ニューヨークを訪れたアーティストにパフォーマンスを披露してもらう代わりに、滞在スペースとして無料で提供しています。ここに寝泊まりした人は、かれこれ100人以上になります。 私は自分の活動を、カルチュラル・グッドウィル(文化に絡んだ親善活動)と呼んでいます。日本を訪れるときも、アーティストや茶道の家元、着物メーカーの人々に積極的に会い、文化啓蒙活動のニューヨークへの招聘をしています。 なぜ日本なのか? 我が家を訪れた人は、だいたいこのように聞いてきます。「なぜこのようにしたの?」「どうして日本?」ってね。 私の仕事の話から説明しますね。仕事は主に2つあって、兄弟で撮影スタジオを共同経営しているのと、ほかにはベンチャー・キャピタリストという顔も持っています。 ベンチャー・キャピタリストとして私はPlasmaCoという会社を興し、松下電器産業(現パナソニック)と、フラットパネル・スクリーンの開発に携わりました。今から24年前、1996年のことです。それで、縁も所縁もなかった日本を初めて訪れることになりました。 私はここで生まれ育った生粋のニューヨーカーです。それまでヨーロッパに行くことはよくあっても、日本はおろかアジアについての知識はありませんでした。 大阪の空港に降り立つと、私の目の前にはそれまでの人生で見たことがない世界が広がっていました。想像できますか? 西洋文化しか知らないニューヨーカーが、初めて見た「別世界」を。 特に、仕事の関係者に連れて行ってもらった、京都・龍安寺の冬景色は、今でも脳裏に焼き付いています。それは15世紀の日本そのもので、美しい庭園には雪が舞っていて、私は思わず息を呑みました。しかもその後、仕事の件で、携帯でニューヨークまで国際電話をかけなければならず、歴史とテクノロジーのコントラディクションも興味深い思い出です! とにかくそんなわけで、3ヵ月ごとに東京&大阪とニューヨークを行き来する生活が始まったんです。日本に行くたびに、新たな発見がありました。この「新世界」にはまったく違う物の見方、考え方が存在していました。人も言葉も食べ物も、何から何まですべてが違う。自分にとっては完全に「新ルネサンス」ともいえる体験で、すっかりのめり込みました。 特にハマったのが、文化と芸術面です。日本の文化はとても深く、知れば知るほど自分の知識が微々たるものであることを思い知らされます。そして一度ハマると、もっと知りたい欲求に駆られます。そんな深みとパワーが日本文化には秘められていますね。 畳の間が恋しくて… そのうち親友ができ、彼の自宅によく泊めてもらうようになりました。東京・新宿にある伝統的な日本家屋で、とてもピースフルでメディテーションにも最高の空間でした。さすがに新婚さんの邪魔はできないので、宿泊は彼が結婚するまでですが。そしてニューヨークに戻って来ると、次第にこんな気持ちを持つようになりました。「あぁ、畳の間が恋しい!」 ニューヨークでも畳の間を作れないか探してみたところ、宮障子(ミヤショウジ)という日本人経営の和専門インテリア&施工会社がマンハッタンにあり、すぐに依頼しました。と言っても、最初から3フロアを丸ごとリノベーションしたわけではなく、少しずつ。まず着手したのが7階です。 コンセプトにしても初めから旅館にしようと思っていたわけではなく、ただ自分のために和室を作りたかったのです。そうしたら噂が瞬く間に広がっていき、「茶会をできないか?」「陶器の展示会をしたい」と相談がくるように。特に茶会は、すぐさま人気を博すイベントになりました。でも7階の和室は茶会用に作ったわけではなかったから、茶道口(亭主用の出入り口)や炉(ろ)がない状態です。それで本格的な茶会を開くために、8階のペントハウスを今度は大改築することになったのです。 そうして、このような本格的な茶室の完成となりました。これも、宮障子なしでは成し得なかったでしょう。運命とも言える出会いで知り合った、ティーマスターの長野佳嗣さん(上田宗箇流)と北澤恵子さん(表千家流)に、一般向けに茶会を開いてもらっています。ここはニューヨークだから、うちはどの流派もウェルカムなのです。 普段はほかにも、アートパフォーマンス、着物の着付けクラス、古楽器の演奏会など、さまざまな文化交流イベントを開いています。 改築費用について知りたいって?ええっと…そうですね(記憶を辿る)、だいたい25万ドル(約2,500万円)以上はかかりましたかね。 異文化の啓蒙には苦労がつきもの 今後も私はスポンサーとして、日本文化の体験の場、継承の場を提供し続けていきたいです。 2016年には、日本人カップルの結婚式を本格的な神前スタイルで行ないました。世界のさまざまな宗教がこの街にはあるけど神社だけはないんです。そこで、福岡の宮地嶽(みやじだけ)神社の神主を招聘しました。ニューヨークの人々にとっても神道にとっても、よいイントロダクションになったんじゃないかな。 また、茶会イベントを始めてかれこれ15年が経ちますが、やっとここ数年で時代が追いついてきた感があります。今抹茶ブームで、どんなカフェでも抹茶ドリンクがあります。でもティースプーンや砂糖がセットで付いてきたりして、まるでカプチーノみたいに出されている。要はカフェで働いている人たちが、本物の抹茶の味も作り方も知らないからなんですが。 それで私はスポンサーとして京都の丸久小山園と提携し、茶道の講師を招聘し、正しい抹茶の点て方のトレーニングをカフェでしてもらったこともあります。 何でも初めのころは大変なんです。でも致し方ないことですね。寿司にしたって、今ではアメリカ人でも何人でも器用に握る時代になりましたが、初めのころは魚の切り身とライスをただ適当に掴んで出す、みたいなことがなされていました(!) 異文化が浸透していくプロセスは、たいてい苦労や努力がつきものです。 でも私たちの活動が少しでも抹茶ブームの火付け役となっているのだったら嬉しいです。また、素晴らしい日本の文化や芸術をもっと多くの人に体験してもらえるのであれば、それ以上の喜びはありません。 本稿は「Yahoo!ニュース個人」の記事 からの転載。無断転載禁止

027 フランス人も絶賛のベーカリー「L’imprimerie」

ブルックリンのガイドブック『NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ』の著者、安部かすみが、本で書ききれなかったことや、まだあるお気に入りスポットを紹介します。「大切な友人に紹介するとしたら?」という目線で選んだとっておき。今週はブッシュウィックにある「L’imprimerie」です。 以前パリを旅して以来パンのおいしさに目覚め、ニューヨークでもフレンチベーカリー探しをするようになりました。フランス人に出会ったら、おすすめのパン屋を聞くのがお決まり。今回紹介する店は、フランスの友人がすすめてくれた本格ベーカリーです。 元印刷店でパン作りオーナーは異色の経歴 ドアを開けると、店のロゴそっくりの男性が迎えてくれました。フランス出身のオーナー、ガスです。ウェブサイトの写真ではこわもてですが、直接会うと、とても優しい人でホッとしました。 「ようこそ」とペコリとするガス、その経歴を聞いてびっくり。今でこそ堂に入ったパン職人ですが、以前は金融業界で働いていました。リーマンブラザーズ、ノムラを経て、「変化が必要だった」ということで、退職後に市内のフレンチ・カリナリー・インスティチュートでパン作りを学び、インターンシップを経て、このベーカリーを2015年にオープンしました。 新たな人生のテーマにパンを選んだのは「フランス人にとって、コミュニティーを幸せにするマジカルな食べ物だから」。フランスではパンを分け与えることが文化的に根付いていて、パーティーに持参すると必ず喜んでもらえるとのこと。  店名はフランス語で印刷店。ここが以前、印刷店だったという歴史へのオマージュから名付けたそうです。 本物へのこだわり手作りを少量生産 品質管理は特に厳しく、質を一定に保つために少量生産にこだわっています。地下のキッチンは毎朝4時から稼働し、1階奥のオーブンで8時に焼き立てのパンが出来上がります。 どっしりとした本格的なサワードウは、かむほどに味わいが増します。皮がサクサク、中がふわふわな「Croissant」と、チョコチップとアーモンドクリーム入りの「Chocolat Amandes」も人気。コーヒーと一緒に、どうぞ至福な時間を! ブッシュウィックのカフェやグロサリーにも卸しています。「あそこのサンドおいしいよね」って店、もしかしてガスが作ったパンかもしれませんよ。 All photos ©️ Kasumi Abe(安部かすみ) [All photos by Kasumi Abe]All images and Text are copyrighted. 本稿はWeekly NY Japionのコラム 、安部かすみ(Brooklyn本著者)が案内する「古くて新しい、とっておきのブルックリンへ」からの転載。無断転載禁止