米「ワクチン接種でマスク不要」 NY中心地のマスク率は? 街の人の声は?

アメリカでは先月19日以降、16歳以上なら誰でも新型コロナウイルスのワクチン接種を受けられるようになり、接種数は順調に伸びてきた。 最新(14日時点)の接種状況 人口の47.3%(1億5525万人)が最低1回の接種。 36.6%(1億2025万人)が1回もしくは2回の接種を「完了」。 ただし1日ごとの接種数の伸びは4月半ばでピークを迎え、その後の接種の速度は落ちている。 集団免疫獲得のため、政府は独立記念日(7月4日)までに70%以上の人々が最低1回の接種をする目標を立て、特に若い層を対象にあの手この手で「ワクチン推進キャンペーン」を進めている。特典として無料のハンバーガー、ドーナツ、ビール、スポーツの試合や博物館などの入場券、有給時間休などがある。オハイオ州では、抽選で100万ドル(約1億円)を贈呈する事例も。 ニューヨーク市内でも実験的な試みとして12日から16日まで、指定駅に接種仮設会場が設置されている。面倒な予約が不要で、しかも1回の接種(J&J)で完了という手軽さがうけ、開始から2日で1100人以上が接種した。(Updated: 22日まで延長) 地下鉄駅で接種した特典として、メトロカード(地下鉄7日間の乗り放題)などが配布されている。 これらに加え、「これも特典のうちか?」と囁かれているのが「マスク着用不要」の新指針だ。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)は13日、接種を「完了」した人は、屋内外を問わず、マスクを着用しなくても良いと発表した。(例外:公共交通機関、飛行機、病院、刑務所。店内では店の方針に従う) CDCは先月27日、接種完了者に「屋外」でのマスクは不要と発表していた。今回の新たな発表により、マスク不要な場所に「屋内」も追加された。 ニューヨーク州での接種状況は、少なくとも1回の接種をしたのは成人人口の61.4%、1回もしくは2回の接種を「完了」したのは51.5%(15日現在)。 これらの数字からも、CDCの新ガイドラインの発表以来、街の人々の半数はマスクを取り去るのではないかと筆者は思っていたが…。 銃撃事件から1週間、タイムズスクエアのいま 13日の「マスク不要」発表の翌日、市内の中心地タイムズスクエアに、様子を見に行った。 6日前に発砲事件が起き、3人が負傷した場所だが、この日(14日)は金曜日ということもあり、そんな大事件を払拭するほど、ものすごい人通りで活気に満ちていた。筆者は昨年3月、ロックダウンで誰もいない同所を歩いて寂しい気持ちになったものだが、あの記憶がすっかり消え去るほど、以前のような「混雑した賑やかな観光地」に戻っていた。 マスクは現時点で、まだ8割くらいの人が着用していた。マスクをしていない人の数も少しずつ増えてはいるものの、劇的に増えているようには見えない。 マスクを着用していない人の中には、すっかり「無防備状態」のような光景も。 ここで、人々に話を聞いてみた。 南部から旅行でやって来た60代の夫婦は、共に2回のワクチン接種を完了したが、この日もマスクを着用していた。「ダブルマスクとまではいかないけど、念のためこれまで通りマスクを着けています」。 別の女性も接種を完了したそうだが、マスクを着用していた。理由は同じく“念のため”。「接種していない人もまだ多いし、(電車や店の)隣合わせになった人が(接種済みか否か)わからないから」と答えた。 ゴリラ姿のジェイコブ・マーコさんは3月に最初の接種を受けて、すでに2回の接種を完了した。だが、まだマスクは着けている。理由は「新規感染数は依然と高いし、まだ(マスクを)取る(心の)準備ができていない。人々がマスクを取るまでに、もう少し時間がかかるだろう」。 ワクチンを打っていないが、マスクも着用していない人も少数ながらいた。 「インフルエンザワクチンの接種もしたことがない自分には、コロナワクチンも不要。日光に当たって免疫力を上げればワクチン同様の効果をもたらしてくれて病気になんてならないものさ」という意見や、マスク不要の新指針について「ワクチン接種者への特典のようにも受け取れるこの発表はいかがなものか。今後『ワクチンを接種していない=悪者』のような誤った見方や差別が生まれないことを祈る」という意見もあった。 またこの日の街の声としては上がってこなかったが、ほかにも「マスクを取らない理由」として、さまざまな意見が上がっている。 人々はこの辛い激変の1年間を乗り越え、マスクと共にあるニューノーマルに慣れ切ってしまったため、そう簡単に元に戻れないとする分析もある。市内に住む27歳の女性は、パンデミック以来初めてモールを訪れ、人の多さにショックを受け体が硬直したという。「人々は死、悲しみ、孤立、ストレス、不安、失業…を体験し、トラウマになっている」とヴァイス誌。 この女性でなくとも、マスクをする生活が1年以上に及ぶ今、久しぶりの外出先でコロナ前の日常風景を目にし「なんか変」という不思議な感覚に陥ることはよくある。マスクを取ってもいいよと急に言われても、今度は逆にその無防備さに戸惑うのだろう。 ワクチンの浸透と共に、少しずつ日常生活が戻り、人々の疲れた心の中も浄化されつつあるが、大多数の人が清々しい気持ちで「マスクはもういらない」という気持ちになるまで、もう少し時間がかかりそうだ。 Updated: CDCの新指針に基づいたマスク解除は週ごとに行われており、ニューヨーク州のクオモ知事は19日より同州のマスク着用義務解除を認めました。その後もマスクを着用し続けている人は老若男女、依然多い状態です。(2021.05.25) 関連記事 アメリカ人がパンデミックでマスクを着用し始めたのはいつから? ↓ 外出の際、顔はカバーすべきですか?「はい」とNY市長 アメリカでマスク改革、はじまる 「マスク外してみて。顔が見たい」は新たなセクハラになるのか? 米紙 アメリカで「ワクチン接種数」が“頭打ち”…? これは数ヵ月後の日本の姿かもしれない(現代ビジネス)  Text and photo by Kasumi Abe ( Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

【NY治安悪化】タイムズスクエア、ピーター・ルーガー … 人気観光地で連続の発砲事件

ニューヨークの観光地としても知られる中心地、タイムズスクエアで5月8日、男が銃を発砲し、近くにいた幼児と女性2人を含む3人を負傷させた。 事件が起こったのは、マンハッタン区の44丁目と7番街。同日午後5時前、家族とされる2〜4人が路上で言い争いとなり、男が兄弟に向け発砲した。その流れ弾により、家族とともに訪れていたブルックリン在住の4歳の女児、ニュージャージー在住の43歳の女性、ロードアイランド州から家族と観光中だった23歳の女性の計3人が、脚などを負傷した。 ニューヨーク市警察(NYPD)のダーモット・シェイ署長によると、巻き添えになった3人は容疑者とは無関係だった。いずれも命に別状はなく、すでに退院し療養しているという。 NBCニュースによると、銃弾が最初に当たったのは4歳の女児だった。太ももを撃たれた23歳の女性は、発生当時についてこう語った。 「突然誰かが怒鳴りだし諍いが始まったので、2歳になる子どもを抱っこしていた夫とその場から離れようと話していたら、同時に発砲音がした。その1発が自分の太ももに当たったとわかり『私は死にたくない!』と助けを求めた」 この女性の傷口は複雑なため、太ももから弾丸を取り除く手術は行われない可能性が高く、後遺症が残るだろうと見られている。 ニューヨークの観光地はいずれも、新型コロナウイルスのパンデミックにより大打撃を受けていたが、ワクチンの普及に伴い活気が戻りつつあった。事件発生時は、母の日前日の土曜日の夕方という時間帯だったため、特に地元の人々や観光客で賑わっていた。 タイムズスクエア近くで働く女性は、「2年前に銃撃騒動があったけど、あれは実際には発砲音ではなかった。ニューヨークに長いこと住んでいるけど、こんなど真ん中で発砲事件なんて滅多になかった。物騒になったと感じる」と語った。また別の男性は「無関係の子どもまで巻き込まれるなんて許せない。違法な銃の流入を止めるよう、今すぐ銃規制の改革が必要」と怒りを露わにした。 NYPDが公開している容疑者と見られる男の監視カメラ映像。 ブルックリン在住の31歳の男で数々の犯罪歴がある、ファラカン・ムハマド(Farrakhan Muhammad)が容疑者として指名手配されている。警察は行方を追っているが、現地時間10日の時点で、まだ逮捕には至っていない。 NYではつい1週間前も信じられない事件が ニューヨークではつい1週間前も、近年稀に見るような信じられない場所で、発砲事件が起こっていた。 ブルックリン区の人気ステーキハウス「ピーター・ルーガー」で先月29日、事件は起こった。この店は有名店で、ニューヨークを訪れたことがある人なら一度は食事をしたことがあるだろう。 午後9時45分ごろ、同店内で誕生日祝いをしていた11人のうち2人が、女性関係で言い争いとなった。24歳のアーキーズ・ソマーヴィル(Arkies Sommerville)が銃を取り出し、いとこに向け発砲した。 この事件でも流れ弾により、店外で食事をするなどしていた無関係の2人の男性(30歳、57歳)が巻き添えとなった。銃弾はそれぞれの上腕部と腹部に当たり、2人は重傷を負ったが、命に別状はないとされている。 発生場所が地元の人々はもとより、観光客もよく訪れる老舗のステーキ店ということで、人々を震撼させた。 犯人の男はその後捕まっている。前科者で「注意人物」として警察にマークされていた。 ニューヨーク市は、全米の中でも銃規制が厳しい街だ。銃購入の際の身元チェックや銃器登録が必須であることはもちろん、一般市民の銃の持ち歩きは禁止されている。自由の女神など主要観光地では、空港並みのセキュリティチェックが敷かれ、銃器の携帯に目を光らせている(テロ対策でもある)。 NYPDが発表した最新の統計によると、今年の市内で起こった銃撃事件は昨年の同時期と比べて約83.3%アップ、2019年と比べると93.5%アップしている(4月の最終週は特に多く、42件の銃撃事件が起こり、昨年同時期の14件に比べ200%増)。それでも銃撃事件数がピークだった1980年代〜90年代に比べると件数は低いという。 通常、銃撃事件は治安が悪い地区で発生するものだが、上記の人気観光地やレストラン、マンハッタン中心部の地下鉄駅構内など、これまで銃撃事件が起こらなかったような場所でも発生しているのが、パンデミック以降の銃撃事件の特徴と言えよう。 市は経済再開に向け観光業の立て直しも図っている。地下鉄をパンデミック前の24時間稼働に戻し、今週末より市外からの観光客に向けワクチン接種を提供するなど、あの手この手で観光業を再建させようとしている。一方でメモリアルウィークエンドの今月末から国内で再び銃撃などの事件数が増加するだろうと予想する犯罪専門家もいる。以前のような安心して歩ける都市に戻らない限り、観光客は戻って来てはくれぬだろう。 関連記事 パンデミック以降、銃購入者が増加。「銃社会は危険」と考えないアメリカ独特の価値観のワケ NY治安悪化でまさかの警察予算削減、その思惑とは(士気低下の最たる例とはこのこと) 刑務所も新型コロナの温床に NYで6ix9ineら受刑者650人を釈放、懸念される治安悪化 Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

Business person and artists for nippon.com

Interviewed by Kasumi Abe w. Masayo Ishigure, Koto player who is know in the movie of ”Memoirs of a Geisha” NY在住琴奏者 石榑雅代 w. Kanji Yamanouchi, Ambassador and Consul General of Japan in NY 在NY総領事館 山野内勘二大使 English French

「男女別標識が時代遅れになりつつあるNYオールジェンダー「最新トイレ事情」その後

LGBTQやジェンダー関連の潮流として、2019年暮れに以下のような記事を書いたところ、多くの人に関心を持ってもらい、いまだにアクセスは多い。 関連記事 NYで進む男女兼用「オールジェンダー・トイレ」 密室に見知らぬ異性がいるのは危険? (* オールジェンダー・トイレは、ジェンダーニュートラル・トイレとも呼ばれ、近年設置数が増えている) その後もニューヨークでは行政が主導で、「オールジェンダー・トイレ」へ転換する改革が進められている。 昨年12月23日には、クオモ州知事によって、トイレにまつわる人権法に新たに一歩進んだ内容が追加された。それは、以下の施設にあるすべての「個室トイレ」を、オールジェンダー(すべての性別)トイレ、もしくはジェンダーニュートラル(性別中立)トイレに転換するというものだ。 対象施設: 学校、幼稚園、チャータースクール、コミュニティカレッジ ニューヨーク州立大学、ニューヨーク市立大学 レストラン バー 商業施設 工場 州が所有もしくは運営に関わる建物 この法令は、2016年に可決された市の関連法に反映しており、州全体のトランスジェンダーおよびジェンダーノンコンフォーミングの人々が公共施設に平等にアクセスできるようにしたものだ。 「男女別」標識は時代遅れになりつつある 法令は、新たにオールジェンダー・トイレの建設を強いるものではない。これまでつけられていた「男性用」「女性用」という性差の標識を「オールジェンダー」か「ジェンダーニュートラル」用の標識に変えよ、というものだ。 加えて慣習的に使われてきたピクトグラム(ズボン/スカート姿)や色分け(青/赤)なども考慮しなければならない。 法令の発効日は先月23日だった。これは厳密な締め切り日ではなく、1つの基準(だいたいこの日をメドに転換せよという州からの通達)だ。それから1ヵ月が経ち、街がどのように変わったか見に行ってみた。すると、さまざまな施設内で、新時代の「トイレ改革」がさらに進み、可視化されていた。 法令では事細かに、内容が定められている。州は将来的に「オールジェンダー」で統一したい意向のようで、「ジェンダーニュートラル」という文字も許容しているが「オールジェンダー」という文字がより良いとしている。 また、読字障害や視覚障害を持つ人にも配慮し、文字だけではなく、ピクトグラム(絵文字)と点字をつける、ことも推奨している。 また一口にピクトグラムと言っても「利用者の性にフォーカスするのではなく、利用する目的にフォーカスすることが望ましい」とある。慣習的に使われてきた「ズボン/スカート姿」や「青/赤」というような固定イメージも、これから少しずつ排除されていくだろう。 ポイント 標識文字:「オールジェンダー」がより良い ピクトグラム:利用する目的にフォーカスし、性を色分けしない 点字:入れる 標識を取り付ける位置についても細かく決まりがあり、迷った場合は「設計の専門家に相談のこと」とある。 このように州内では、新時代と共に、さまざまな改革が日進月歩でなされている。 ただし、すべてのトイレで変換が行われているかというとそうでもない。個室以外の公衆トイレや、公営の公園やビーチにある公衆トイレは今回の法令の対象外となっているため、未だ「男女別」となっているものも多い。特に後者(密室空間)は犯罪の温床となりやすい。そもそも夜間は公園自体が閉鎖されてはいるが、犯罪は日中でも起こりうる。 オールジェンダー・トイレへ転換することで発生する可能性のある問題もあるため、これらの場所の改革は慎重に協議されているのだろう。 すべての人が平等に気持ちよく利用できる社会の実現と、そこから発生するさまざまな問題の解決。州がこれらの課題を前に、今後どのように改革を進めていくか、注目していきたい。 Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

米国で警官に呼び止められ「絶対にしてはいけない」こと── 警察が13歳少年射殺

少年は「降参」の態度を見せるも、警察に「1秒」以内に無慈悲に撃たれた アメリカのイリノイ州シカゴ市の路上で先月29日、13歳のヒスパニック系少年、アダム・トレード(Adam Toledo)さんが警官に射殺される事件があった。警察説明責任のシカゴ市民局(COPA)は今月15日、家族の同意の下、警官が取り付けていたボディカメラや監視カメラの映像を一般公開した。 複数のアングルから撮影された映像はVimeoを通して、またメディアが発信したYouTubeなどでも公開されている。これらを観ると、すべてが「一瞬の出来事」だったことが確認できる。 29日午前2時36分過ぎ、映像は無音の状態で、34歳の警官がパトカーを運転しているところから始まる。 午前2時38分過ぎ、警官は路上でトレード少年と仲間の21歳の男を見つけ、降車して追跡が始まる。(21歳男はすぐに別の警官により拘束) 午前2時38分34秒ごろから映像の音声が始まり、警官が「止まれ、止まれ」と怒鳴りながら、トレードさんを追いかける。 午前2時38分38-39秒、 トレードさんは逃走を止め、警官の方を振り返る。そして警官は興奮した様子で「両手を見せろ」と威嚇。 午前2時38分40秒、トレードさんが両手を上げると共に銃声が鳴り響き、トレードさんは路上に崩れ落ちる。 この最後の出来事は「わずか0.8秒の出来事だった」とCNNなどは報じている。 警察に言われるがままに従ったトレードさんだったが、至近距離で胸元上部を撃たれた。映像は引き続き、撃った警官自身がトレードさんに「大丈夫か」「目を閉じるな」「どこを撃たれた?」と声がけしながら、心臓マッサージを施す様子を伝えている。そしてほかの警官から医療キットが届き、心臓マッサージを交代後、警官は周囲を少し徘徊。疲労困憊した様子が息遣いから伝わってくる。 トレードさんは午前2時46分、現場で死亡が確認された。 検察によると、この夜トレードさんは21歳のルーベン・ローマン(Ruben Roman)と行動を共にしていた。2人には1台の通行車両に向け発砲した容疑がかけられ、警官が行方を追っていた。 トレードさんは当時銃を携帯しており、逃走をやめた際、瞬時に右手で銃を塀の向こう側に投げ捨てていたようだ。トレードさん側の弁護士はトレードさんの行動について「警察の命令に従って立ち止まり、体の向きを変えて両手を見せた。両手に武器を持っていないにも拘わらず撃たれた」と主張した。一方、シカゴの警察共済組合(Fraternal Order of Police)は、容疑者が「銃を手にして振り向いた」ことから、この発砲は100%正当であると結論づけている。 トレードさんが拳銃を捨てている様子は動画では確認しづらく、おそらく当時の緊張した状況下では目視でも確認しづらかっただろうが、静止画では拳銃を捨てているのがかろうじてわかる。そしてルガー9MM半自動拳銃が、トレードさんが射殺された塀の向こう側で発見された。 この事件については、さまざまな議論が沸き起こっている。人々から聞こえてくる声は「警察はなぜ、13歳の子どもを標的に撃つのか?」「少年は警官の命令に従ったのに」というものから、「なぜ子どもが、拳銃を携帯しながら真夜中に路上を歩いていたのか」「親は何をしていたのか」など、さまざまだ。 シカゴ・サンタイム紙は、「何かと警察を非難したがる人は、武装している容疑者を追いかけることがどれほど危険を伴う可能性があるか、考えてみてほしい。そして警官は適切に採用されなければならず、徹底的に訓練され、その都度責任を負わなければならない」としている。 別映像では、仲間のローマン容疑者が拘束されている様子も確認できる。同容疑者は、拳銃所持と使用、子どもを危険にさらした容疑などで逮捕、起訴された。 米国で警官に呼び止められて「絶対にしてはいけない」こと アメリカ自由人権協会(ACLU)のウェブサイトでは、公道や運転中、自宅敷地内など、それぞれのシーンごとに、警察に呼び止められた際の注意点、してはいけない行動、さらに我々の権利が解説されている。 公道で警官に呼び止められたら 「(自分の行動により)状況がすぐに悪化する可能性がある」ことを十分理解した上で、いかなるリスクも減らすために、「警官に敵意を示さず、落ち着くこと」がまず大切だとしている。 その上で「してはいけないこと」は以下の通り。 走らない、逃走しない 抵抗しない、妨害しない 嘘をつかない 虚偽の文書を提出しない 両手を隠さない、隠れるようなところに持っていかない 公道で呼び止められた場合の我々の権利 黙秘権がある(その場合は大きな声ではっきりと伝える) どこに行くか、どこからやって来たのか、何をしているか、どこに住んでいるかなどの質問に答える必要はない(ただし一部の州では、身元を明かすために名前の入力を求められる場合があり、拒否をすると逮捕される可能性がある) バッグやポケットなど所持品の捜索に同意する必要はないが、武器を所持している疑いがある場合、警察は衣類の上から軽く叩いて確認をするかもしれない 警察に逮捕された場合、弁護士を雇う金銭的な余裕がない場合も、州政府が任命した弁護士を雇う権利がある 出生地、アメリカ市民であるか否か、どのように入国したかについての質問に答える必要はない。(国境や空港などは除く) そのほか、逮捕された場合、自分の権利が侵害されたと感じた時にとるべき行動、さらには公道などで警察が虐待や残虐行為をしているのを目撃した際にできることなども紹介している。アメリカに住んでいたり訪れる機会の多い人は、このような情報に一度目を通しておいて損はなさそうだ。 関連記事 何人の市民が警官に殺されているか? 数字から見えてくるアメリカの現実と日米比較 Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

ベテラン警官がテイザーと拳銃を間違えた「スリップ&キャプチャー現象」とは【黒人男性射殺事件】

ジョージ・フロイドさん殺害現場近くで再び アメリカのミネソタ州ブルックリンセンター市で11日、警察が黒人男性を「誤って」射殺する事件が起こり、再びBLM(ブラック・ライブズ・マター)の大規模なデモが続いている。 警察は同日午後、期限切れのプレートをつけて車を走行していた黒人男性、ダンテ・ライト(Daunte Wright)さん(20歳)を停車させ職務質問をしていた。ライトさんには別件で逮捕令状が出ていたことから、警察がその場で手錠をかけようとしたところ、ライトさんが警察を振り切り運転席に乗り込むなどして抵抗したため、女性警官のキムバリー・ポッター(kimberly Potter=Kim Potter)がライトさんに向け、至近距離から発砲した。ライトさんは胸元に実弾1発を受けながらも、車を数ブロック走らせて衝突し、その場で死亡が確認された。 翌日に公開された警察のボディカメラ映像では、発砲直前に、ポッター容疑者と見られる女性の声で「テイザー銃、テイザー銃を!」と繰り返し叫ばれているのが確認できる。警察は、ポッター容疑者がテイザー銃を使うつもりだったが、間違って本物の拳銃を使ってしまったのではないかと見ている。 この事件を受け大規模デモが再び同地で起こり、一部が過激化している。州兵が派遣され夜間は外出禁止令が出ているが、騒動は収まりそうにない。 今回の事件の発生現場から車で20、30分ほど南方に位置する同州ミネアポリス市では、昨年5月、黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を圧迫されて死亡する事件が起きたばかり。フロイドさんを死なせたとされる元警官のデレク・ショーヴィン(Derek Chauvin)被告の裁判は先月より始まっており、現地では緊張感が高まっているところだった。 ジョージ・フロイドさん関連記事 白人警官への怒り全米各地に飛び火 NYでも最大規模の抗議活動「息ができない!」と叫び続ける人々 破壊、略奪、デモ(市長の娘も逮捕)そしてコロナ禍・・・終わらないNYの悲痛と苦悩 殺意を持って丸腰の黒人を殺した白人警官 実はフロイドさんのことを以前から知っていた? テイザー銃と拳銃は似ているのか? 現地報道によると、ポッター容疑者は26年のキャリアを持つベテラン警官だった。そうすると「テイザー銃と本物の拳銃はそんなに似ているのか?」という疑問が出てくる。NBCニュースは、専門家による分析の紹介と共に、警察に使用されているテイザー銃と拳銃の違いを図解で説明している。 その図解を見る限り、大きさ、重さ、色などがテイザー銃と一般的な拳銃とでは明らかに異なっている。 「拳銃は実は軽く、テイザー銃は皆さんが想像するより重い」と説明するのは、イリノイ州の元警官で全米警察協会のスポークスパーソン、ベッツィー・ブラントナー・スミス氏。 同氏によると、警察が使う代表的な拳銃はグロック17と呼ばれるもので、プラスチック製テイザー銃と比べて1ポンド(約0.45キログラム)重い。また拳銃の方は引き金を引く時に、安全性のために押し込まなければいけない構造(トリガーセーフティー)になっている。 触った感触もテイザー銃と拳銃とでは「違う」(フロリダ州の元警察官であるデニス・ケニー氏)。 警官がテイザー銃と拳銃を混同しないよう、一般的に利き手側に銃を、その反対側にテイザー銃を携帯することが義務付けられており、警察により公開された今回の事件映像を見ても、ポッター容疑者はそのようにしていたようだ。 これらの見方を統合して、スミス氏は「ポッター容疑者は『スリップ&キャプチャー』(slip and capture)(間違って捕らえるヒューマンエラー)と呼ばれる現象に陥ったのではないか」と見ている。ポッター容疑者は銃を見てテイザー銃と思ったわけではなく、緊張が最高潮に達したストレスフルな状況下で「恐ろしいモーターの不具合」(脳の勘違い)が起こった可能性が高いという。 この脳の勘違いは、普段の生活でも起こりうるという。例えば、レンタカーを借りて乗車しエンジンをかけようとすると、脳がいつも乗っている車と勘違いしそれまで慣れ親しんだ場所につい手がかかってしまうようなことがある。また、「引っ越したのに、封筒に前の住所を書いてしまう」や「夜せっかく砂糖断ちをしたのに、翌朝コーンフレークに思わず砂糖をかけてしまう」といったエラーのようなもの(キャプチャー・エラー=捕え間違いの研究者、ジェームス・リーズン氏)。このようなことと同じ現象が今回の事件でも起こった可能性を、スミス氏は指摘した。 また「警官が危険な状況に置かれたとき、本能的に本物の銃に手を伸ばすことはある」と指摘する専門家もいる。 実際に死に至る事件は稀だが、それでもテイザー社が最初の拳銃型モデルを発表した1999年以降、同様の勘違い事件が少なくとも15件発生した。そのうち起訴された警官は5人で、3件(うち死者が出たのは2件)のみが有罪判決となっている。2009年の元旦、カリフォルニア州オークランド市でオスカー・グラント(Oscar Grant)さんが同様にテイザー銃と拳銃の取り違いで警官によって射殺された。射殺した元警官は有罪判決が下され、2年の懲役刑が宣告された。この事件は後に映画『フルートベール駅で』のモチーフにもなった。 「日常的な交通違反の取り締まり(の延長)で命を落とした警官は多い。つまり交通違反の取り締まり時に警官が感じるストレスレベルは、人々が想像しているものを超越し相当なもの。そして判断ミスはストレスを感じたときに起こる」(刑事裁判専門のジョン・ジェイ大学、マリア・ハーバーフェルド教授)。 スミス氏やハーバーフェルド教授は、アメリカの警官の訓練はひどいレベルだと言う。「テイザー銃の訓練は数時間だけ。その理由は費用が大きく関係している。テイザー銃のカートリッジは高価であり、すべての部署に訓練用のテイザー銃のシミュレーターがあるわけではない」(スミス氏)。「警官はそれらの武器に加え、ペッパースプレー、警棒、手錠などさまざまなものを携帯しているが、訓練は主に拳銃の使い方に重点が置かれる」(ノースウェスタン大学の政治学、警察学専門のウェスリー・スコガン名誉教授)。 米ヤフー!ニュースなど現地報道によると、ポッター容疑者は13日に辞職し14日に逮捕されたが、その夜保釈金10万ドル(約1000万円)で釈放された。第2級過失致死罪の容疑で起訴され、15日午後に初出廷した。 同州の法律によると、ポッター被告が有罪判決を受けた場合、最高で懲役10年と2万ドル(約200万円)の罰金を科せられる。ちなみにポッター被告の弁護士はアール・グレイ氏。グレイ氏が現在弁護を担当している1人は、ジョージ・フロイドさんの事件で拘束を手伝ったとされる元ミネアポリス警官、トーマス・レーン被告ということだ。 ミネソタ州の司法が、ジョージ・フロイドさんやダンテ・ライトさんの事件も含め、白人警官と黒人被害者の死亡事件を、今後どう裁いていくだろうか。 関連記事 何人の市民が警官に殺されているか? 数字から見えてくるアメリカの現実と日米比較 Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

米国代表はコロナ禍の今大会をどう受け止めているか? 東京オリンピックまで【100日】

4月14日、東京2020オリンピック(五輪)まであと100日となった。日本では聖火リレーが始まり、少しずつオリンピック・パラリンピックムードが高まっている。アメリカでも同競技大会に向け、メディアを対象としたサミットが開かれた。 米オリンピック・パラリンピック委員会(The United States Olympic & Paralympic Committee)が主催した「Tokyo 2020 Team USA」(4月7日〜9日)は、コロナ禍により初のオンライン形式で行われた。全米各地や国外で最後の仕上げをしている代表選手約100人が参加し、委員会メンバーらと共に東京オリンピック・パラリンピック(以下オリンピック)への抱負を語った。 ここではサミット3日間のハイライトを紹介する。 安全面が第一優先 記者からもっとも質問が集中したのは、大きく2点だった。 1. 練習および競技をする上での安全対策 2. 昨年延期になったことによる精神面への影響、気持ちの立て直し、ロックダウンをどう乗り切ったか 安全面については、新型コロナウイルスのワクチン接種をしたか否かの質問が多く出た。アメリカの代表選手は一般国民と同様に、新型コロナワクチンの接種を奨励はされているが、あくまでも任意であり「義務」ではない。また、優先接種の対象でもない。 しかし選手に聞いてみると「すでに打った」もしくは「予約済みでもうすぐ1回目を打つ」などと答えた選手が多かった。万が一の副作用を考え、今の時期に済ませているようだ。「居住地で接種可能な年齢に達していない*」などの理由で打ってないと答えた選手もいたが、多くはワクチン接種に好意的な姿勢を見せた。「万が一自分が感染でもしたらチームや周りに迷惑をかけてしまうから、絶対にそれは避けたい」というのが理由のようだ。 * アメリカでのワクチン接種は各州主導で行われている。 また感染拡大防止策として、今大会は日本国外からの一般観客の受け入れはできないことになっている。つまり選手の家族は、日本で応援ができない。 初出場のリオで4つの金メダルと1つの銅メダルを獲得し、東京でもメダリスト有力候補の、体操のシモーン・バイルズ(Simone Biles)選手は、「再延期や中止の可能性を聞いたときはナーバスになったが、そこに住む人々の安全のために、国外の観客を受け入れない試合になるとアナウンスされてからは安心し、気持ちが随分と落ち着いた」と心の揺れを振り返った。 また、「オリンピックとは、普段はバラバラの各国の代表アスリートが一堂に集まりベストを尽くす場で、世界平和そのものだと思う。いい試合になるでしょう」と100日後を見据えた。 ほかの選手も概ね、海外からの観客受け入れ中止について「問題なし」という考えのようだ。 過去2度オリンピックに出場し、5つの金メダル、1つの銀メダルを持つ水泳のケイティ・レデッキー(Katie Ledecky)選手は、安全のために、またトレーニングに集中するために、この1年間家族の誰とも会っていない。 もちろん1日も早く家族に会いたいと本音を覗かせたが、もうしばらくお預けだ。それもこれも、すべてはオリンピックで「勝つ」ため。 「この数年間、毎朝コーチより『特別モーニングトレーニング』を受けてきた」とレデッキー選手。それは「前夜より翌朝、より早く泳ぐことができるようになる秘策の特訓」という。オリンピックというゴールが彼女の現在のすべてだ。コメントからは、大会への本気度、「勝つ以外に選択肢はない」ほどの揺るぎない自信が伝わってきた。 共にオリンピックに2度出場歴があり金メダル保持者の女子サッカー、ベッキー・サウアブラン(Becky Sauerbrunn)選手も「家族が試合を観に来ることができないのは残念だけど、故郷で応援してくれているから大丈夫。何より安全に試合を開催できることがもっとも大事なこと」と答えた。ミーガン・ラピーノ(Megan Rapinoe)選手も「祝いのパーティーは帰国してから、家族と共に!」と相槌を打った。 ロックダウンが与えた影響 次に、1年延期になったことがメンタルにどう影響したか、またロックダウン中のユニークな訓練方法などにも質問が及んだ。 選手は皆、口を揃えて「辛い1年だった」と、心の中の葛藤を明かした。昨年の大会がなくなり選手は「目標」を見失った。「再延期なのか中止なのか」や「延期の場合の時期」がしばらく宙に浮いた状態だったため、まるで暗いトンネルの中にいるような、不安で落ちつかない日々が続いたという。 「新型コロナで多くの命が失われ失業者も増えるなど、ロス(喪失)の1年だった」と振り返るのは、陸上のアリソン・フェリックス(Allyson Felix)選手。6つの金メダル、3つの銀メダル保持者で、5度目のオリンピックを迎える。先行き不安の状態で「気持ちが前に進めなかった」と言う。「でもそれを考えてもしょうがないので、気持ちをそこにフォーカスすることを止め、自分に今できることをしようと決めた」と言う。 まず、感謝日記をつけ始めた。感謝することを毎日見つけて書き留めることで、感情的にならずポジティブな気持ちでいられたと、心を安定させる秘策を披露した。また身体的には、ロックダウンで陸上トラックが使えない時期、あるときはストリートでまたあるときはビーチで「走ることができる場所ならどこでも」練習を続けた。「これまで近所をジョギングしたことはあったけどスプリント(短距離の全力疾走)はなかったので、ご近所さんも驚いたでしょう!」。 プライベートでは、2年前に女児を出産、一児の母となって初のオリンピックとなる。今年35歳の彼女は、「引退の時期はいつにするかは決めていないけど、今年は(自分にとって)最後のオリンピックを予定している。だからとても楽しみにしているし、自分のベストを尽くして頑張ります」と笑顔を見せた。 東京オリンピックで実施される33競技の中には、新たに「空手、ソフトボール、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィン」の5競技が追加されている。 「日系アメリカ人としてこの国を代表し、日本で闘えることがとても楽しみ」と話すのは、空手のサクラ・コクマイ(Sakura Kokumai)選手。コクマイ選手は日本とハワイの両方で育った。「空手が大好きで、数年間このためにトレーニングしてきた」。追加種目になって喜んだのも束の間、延期が決まった時は「今後中止もあり得るかもしれず怖かった」。不確定の中でもロックダウン中は自宅ガレージにウエイトトレーニング、空手マット、鏡を備え付け練習を続けた。「日本の家族や知り合いが私を待ってくれているから、落ち込む時間はなかった。この1年でメンタル的に強くなった」。 ロックダウン中の練習については、ほかにも面白いエピソードが飛び出した。2度目のオリンピック出場となる柔道のアンジェリカ・デルガド(Angelica Delgado)選手は苦笑いしつつ「フィアンセを投げ飛ばしました」と、困難時に支えてくれたパートナーに感謝した。 ジムがクローズしたため、家族にベンチプレスの重りとして協力してもらった選手や、メンタルの維持について「充電の期間だと思い、一時期いっさいの練習をやめた。良いリセットになり、再びゴール=東京を目指すために頑張ることができている」と語った選手もいた。 日本の夏の高温多湿対策については、「出身地フロリダの湿気や暑さに慣れているから平気」(ラグビー、ペリー・ベイカー Perry Baker)選手や「いろんな場所で試合をしてきたので大丈夫。やるだけです!」(ミーガン・ラピーノ選手)など「問題なし」とした。 日本ファンも多い オリンピックは今回2度目で、3つの金メダル保持者の水泳、ライアン・マーフィー(Ryan Murphy)選手は、「日本食や五輪選手村の設備が楽しみ」と笑顔で語った。 「I love Japan!…

黒人が投票しにくい?新たな投票法が米メジャーリーグやコカコーラも巻き込む騒ぎに

アメリカの新たな投票法が、スポーツ界や企業の反感を買い、製品のボイコット問題にまで発展している。 メジャーリーグ・ベースボール(MLB)は、南部ジョージア州が新たに定めた投票法(SB 202)への抗議として、7月に開催予定の今季オールスターゲームとドラフト会議の開催地を、同州アトランタからコロラド州デンバーに変更すると発表した。 また異議を唱えているのはMLBだけではない。アトランタが拠点のコカコーラ社も、CEOが同様に新法を非難する声明を発表。これを受け同州の知事や共和党議員らは「同社が制御不能なキャンセルカルチャーに貢献している」と主張し、自分たちのオフィスからコカコーラ商品を撤去すると発表した。 州法はどのように変更? ニューヨークタイムズ紙は、98ページにわたる新たな投票法を分析している。その上で、「選挙で共和党が民主党に負けたことをきっかけに、不在者投票により厳しく制限を設けることで複雑化し、有権者を混乱させようとしている」とした。 同紙が分析した、変更後の主な内容。 不在者投票をリクエストできる期間の短縮。 不在者投票や期日前投票には、厳格なID(身分)提示が求められる。 選挙管理人が不在者投票の申請書をすべての有権者に郵送することは違法。 街角の投票箱は引き続き置かれるが、設置数は削減される。 モバイル投票センターは基本的に禁止。 期日前投票は多くの郡で拡大されているが、人口の多い郡を除く。 列に並んで待つ間、有権者に対して食べ物や水の提供は軽罪となり得る。 事前登録した所と違う投票所へ行くと、投票が(さらに)困難になる。 選挙の問題が発生しても、投票時間の延長は困難になる。 投票率の高い選挙は、結果が出るのに長い時間を要する。 など 改正法の何が問題なのか この新たな改正法はジョージア州議会で共和党が提案し、ブライアン・ケンプ州知事が署名、先月25日に成立した。 改正内容について共和党は、「昨年の大統領選を受け、今後の不正選挙を防ぐ」名目で提案したという。しかし民主党からは、黒人やマイノリティの有権者に負担をかけるものだとの批判が上がっている。 黒人やマイノリティ(そしてなぜか投票ができることもある違法滞在者)の中には、運転免許証など政府発行の正式なID(身分証明書)を持たない人もいる。また、低所得者の多い地区では投票所の数が少なく、投票日に長い列ができる。そのためフードや水などが配られることがあるが、それも今後は禁止となる。 抗議の声を上げる企業はほかにも 抗議の声を上げた企業は、コカコーラのほかにアトランタを拠点とするデルタ航空やホームデポも、改正法が有権者の権利を抑圧するものとして非難している。 大企業の代表らも有権者の権利の擁護について触れ始めた。 【改正法の反対派】 (ジョージア州の法律とは明記していないものの)「我が国の選挙制度に不正が蔓延しているという疑惑について数々の調査が行われ証拠ゼロにも拘らず、選挙システムの完全性を疑問視している者がいる。同胞の投票権を侵害するような法律は間違い」(ユナイテッド航空) (CNNで有権者の権利の擁護を表明し)「我々は定期的に従業員に対し、彼らの投票権を行使するよう奨励しており、その基本的権利を妨げる可能性のあるものに反対を表明する」(JPモルガン・チェースCEO、ジェイミー・ダイモン氏) 改正法を非難し「投票はもっと簡単になるはずだ。テクノロジーよ、ありがとう」(アップルCEO、ティム・クック氏) バイデン大統領も「投票する権利の否定だ」「現代のジム・クロウ法」だと改正法を強く批判した一方で、州法が投票時間に与える影響について誤った情報を広めたとして、本来ならバイデン擁護派のワシントンポスト紙から「4つのピノキオ(嘘つき)」と批判された。 改正法の賛成派も応戦している。 【改正法の賛成派】 「投票を容易にし不正行為を困難にしたことに対して謝罪なんてない」(ケンプ州知事) (MLBやコカコーラ社に対して)「州民を故意に誤解させ、偉大な我が州の分裂を深めようとしている」「娯楽が党派的な政治の影響を受けているだけでなく、誤った政治的シナリオを広めているのは恥だ」(州議会議員) 「(MLBは)選挙の際に絶対に必要なIDカードを持とうとしない民主党の極端な左派を恐れている。自由で公正な選挙を妨げようとする野球をボイコットしよう」(トランプ氏) このように、両者は真っ向から対立している。 ちなみにMLBの決定について、ニューヨークポスト紙が報じた新たな世論調査では、全米の成人の39%、MLBのファンの48%、中でも熱狂的なファンの62%がアトランタからの会場変更を決めたMLBを支持すると回答した。また、民主党員の65%が支持を表明したのに対し、共和党員は14%にとどまった。 一方、ジョージア州の改正法そのものへの評価は、国民の42%が賛成、36%が反対とし、賛成派がわずかに多い結果だった。 Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

NYで多発するアジア人差別(3)日系三世女性の見た、故郷「アメリカ」

(前回「NYで多発するアジア人差別(2)暴行受けた日本人ミュージシャン、その後」の続き) 昼間にミッドタウンを歩いていて、突然殴る蹴るの暴行を受けた女性。地下鉄車両でいざこざとなり、首を締められて意識不明となった男性・・・。ニューヨークでは、アジア系の人々をターゲットにしたヘイトクライム(憎悪犯罪)や嫌がらせのニュースが後を絶たない。 アジア系の移民がアメリカに到着して約150年が経つとされるが、依然差別も多い。過去には、中国系移民排斥法や日系人強制収容、昨年以降は新型コロナのパンデミックによるアジアへのヘイト感情が高まっている。 筆者が報道で知る限り、被害に遭っているのは男性は年齢問わず、女性は年配の方が特に多いようだ。アジア系の若者に話を聞くと、「高齢の母親が心配」「以前のように両親に外を歩いてほしくない」といった声が聞こえてくる。またある女性は「私はここで生まれ育ったが、人生で初めてハンマーを持参して歩いている」と語った。 本稿では、この国で生まれ育った日系アメリカ人三世に話を聞いた。ニューヨーク在住のジュリー・アヅマ(Julie Azuma)さんは70年代後半から80年代にかけて、アジア系の公民権運動に参加していた。彼女の目を通した、故郷「アメリカ」とは? リドレス運動で日系人同士の強い絆ができた 「あの事件をきっかけに、アジア系の命は大切ではないのか、価値がないのかと、民族の垣根を超え全米中のアジア系が初めて一体となって立ち上がりました」 アヅマさんはそう言いながら、80年代に起こったアジア系の公民権運動「ヴィンセント・チン事件」の記憶をたぐった。 当時、発生現場のミシガン州デトロイト周辺で最初の抗議運動が起き、全米中に波及。ニューヨークでも若者を中心に人々が立ち上がった。デトロイトでの動きを注視しながら各地で抗議集会が開かれ、皆が一致団結して正義のために闘った。 「その時、すでにニューヨークエリアには強い絆がありました」 アヅマさんはチンさんの抗議運動に先駆け、別の社会運動に参加していた。70年代後半から活発化したリドレス運動だ。 リドレス運動: å…¨ç±³ã®æ—¥ç³»ã‚¢ãƒ¡ãƒªã‚«äººãŒç±³æ”¿åºœã«å¯¾ã—て、第二次世界大戦下で強制収容所(Concentration camp、Internment camps)に入れられた約12万人の日系人への補償や謝罪を求めた運動。その結果、市民自由法(Civil Liberties Act of 1988)がレーガン政権下の88年に成立し、政府が日系人に対して公式謝罪した。 彼女をリドレス運動へ突き動かしたものは、自分が生まれる前に家族が入れられていた強制収容所のことを知りたいという欲求だ。その背景には日系人がこの国で歩いてきた過去の複雑な心情が渦巻いていた。 もしあなたの家族が何も悪いことをしていないのに、ある日突然、大きな権力に連れ去られ、収容所に入れられたら、どう思いますか? 日本人だからというそれだけの理由で、すべての財産と自由を奪われ、塀の中での生活を強要されたら、あなたどう思いますか? 戦後、強制収容所の話題を家庭に持ち出すのは禁句だった。「収容所に入れられた祖父母(一世)、両親や親戚(二世)は誰も当時のことを語ろうとしませんでした。辛い日々はひと時も思い出したくない、もう過去のことを話したくないということでした」とアヅマさん。「子どもにとっても、聞いちゃいけない触れてはいけないものでした」。 よってアヅマさんのような戦後生まれの人は、日系人であっても強制収容所の「実態」や悲惨さを知らずに育った。「(知らなすぎて)夏のキャンプや楽しげなパーティーくらいの認識でした。誰も話すことを拒否している以上、知る手段がありませんでした。ティーンになったある日、図書館で真実を知るまでは」。 70年代にリドレス運動が活発化したとき、二世より上の世代は「この件には関わりたくない」と運動への介入を拒否した。一方、アヅマさんのような三世以降の若い世代は、家族に何が起こったのかを知りたいと、積極的に運動に関わった。 ニューヨークでも日系人同士が集結し、頻繁にミーティングを開いては語り合ったり必要な人を紹介し合った。ミーティングを開く利点の1つは、経験者から直接体験談を聞く貴重な機会があったこと。そうして、人同士が繋がり知識が増えていった。 「他都市に比べてニューヨークは、リベラルで独立精神が高い個人主義者、アーティストやパフォーマータイプの人が多く、熱いムーブメント、日系人同士の強い絆が生まれました。年齢問わず在米歴の浅い人や白人層も参加するようになり、素晴らしいコミュニティに成長しました。そして我々はついに、政府からの謝罪を勝ち取ることができたのです」 日系アメリカ人としての経験談 アヅマさんはイリノイ州シカゴで生まれ、ミズーリ州セントルイスの大学に通った。そこは多くの住民が白人で、アジア人や黒人はほとんどいない街だった。アメリカで育った者として、これまで受けた差別はあるかと聞いたところ、このような答えが返ってきた。 「直接的な人種差別(レイシズム)を受けたことはありません。ただ私が思うのは、ペイトロナイジング(Patronizing)というものはあるということです」 ペイトロナイジングとは、軽蔑的で見下す態度、相手が重要でない人物として扱うことを指し、目に見えない差別のことだ。 「狭い歩道を歩いている時、向かいから来る人は私がよけることを期待してよけてくれません。私は礼儀正しくと両親に教えられて育ったので、道で誰かにぶつかることはありませんが、そんな私はいつも、人をよけながらくねくねと歩くことを余儀なくされています」 「また私はよくこんな質問をされます。『あなたはどこから来ましたか?』と。その言葉の裏には『両親はどちら出身ですか?』という意味が隠れているのかもしれませんが、私も私の母もアメリカで生まれました。また90歳になる女性の知人がいます。彼女の先祖は1894年に移民してきました。そんな彼女でも『国から出て行け』と言われたことがあります。私の家族も知人の家族も、世紀をまたいでこの国に住んでいます。それでも日系人は、アメリカに近年やって来た人からよそ者のような扱いを受けることがあります」 アヅマさんは、アジア人女性の扱われ方についても疑問を呈する。自身の経験を通して、女性は恒常的に平等に扱われていないと感じてきた。 「ティーンのころ、タクシーの運転手など知らない男性が私に突然、ベトナム戦争中に付き合った女性の話をしだしたり、アジア諸国の女性と関係を持ったとか昔の彼女のことを話しだす人がいました。これらは婉曲的にアジア人女性を1人の人間としてではなく、性的オブジェクト(性的満足のためにみなされる対象物)や人間以下として見ていることを表しています。アジア人女性の価値はその程度だから、取り扱いがぞんざいになるのです」 アヅマさんはレイシズム(人種差別)のほか、ホワイト・プリビレッジ(白人男性の優遇)についても、よく考えることがある。「日本で育てばおそらく自分とは違う考え方を持っているでしょうが、多くの日系人はこの国のメインストリームより下にいると感じています。またある日、私は気づきました。アメリカに住む日本人(移民一世)は、私たち日系人が置かれている立場と無縁のようだと。彼らは人種差別や偏見に気づくことがそれほどないようです」。 アジア系市長はこの街を救えるか? ところでニューヨークでは今年の6月、次期市長選が迫っており、大統領選にも出馬したアンドリュー・ヤン(Andrew Yang)氏が市長選に出馬している。 アジア系のヤン氏が市長に選ばれたら、ニューヨークはより良い街に生まれ変わることができるだろうか? 「市長といえば、数年前に台湾系アメリカ人の有能で厚い信頼を寄せられていた市会計監査役、ジョン・リウ(John Liu)氏が有力候補だったのですが、何かが起こりデ・ブラシオ氏が選ばれました」とアヅマさん。 一方ヤン氏だが、彼女は2年前にアジア系アメリカ人弁護士協会の会合で、彼に一度会ったことがあると言う。その上でこのように語った。 「私はヤン氏が市長として必ずしも適任者とは思いませんし、アジア系の住民は人種に限らず有能な人を選びたいと思っているはず。その一方で私はヤン氏の政治への情熱は買っています。大統領選へヤン氏が出馬して以来、アメリカ全体でのアジア系の存在感が増しているのを実感するので、サポートしたい気持ちもあります。もしニューヨーク市でアジア系の市長が誕生するなら、グローバルな政治との良い関係性に繋がっていくでしょう」 ### アジア系差別の関連記事 関連記事日本人に間違われ「動物以下の扱いで」殺されたヴィンセント・チン事件(’82) NYで多発するアジア人差別(1)在住者の私の経験談 / (2) 暴行受けた日本人ミュージシャン、その後 ユナイテッド航空の乗客引きずり降ろし。アメリカで生きているアジア人として思うこと アジア系へのヘイトクライム急増、女性誌編集長のアジア人侮辱ツイートが大問題に(ニューズウィーク) (Interview Text by Kasumi…

日本人に間違われ「動物以下の扱いで」殺されたヴィンセント・チン事件(’82)── 全米アジア人差別

80年代版「ストップ・アジアン・ヘイト」「アジアン・ライブズ・マター」 この機会に思い出してほしい、中国系青年の悲劇 「日本人だから関係ない」ではない アメリカでは、アジア系の人々をターゲットにした嫌がらせ、偏見、中傷、暴行、差別が毎日のように起きている。日系、中国系、韓国系、フィリピン系など民族に拘らず、アジア系というだけでストレスのはけ口となったり事件に巻き込まれるケースが多い。 報道を見て「中国人のことか」と思うかもしれないが、日本人とて他人事ではない。そもそも地球規模で見れば、日本人も中国人も大差はない(私たちがプエルトリコ人とドミニカ共和国人を見分けられないのと同じ)。多くの国々では、差別のニュアンスを含まずにアジア系を十把一絡げで「チャイニーズ」と呼ぶ傾向がある。日本の古い世代の人が「白人=アメリカ人、黒人=アフリカ人」と見なすのと同じ感覚だ。 アジア系の人々へのヘイトが急増する今、多くの人が知らない悲劇をここで改めて振り返る。 「ヴィンセント・チン殺人事件」 39年前ミシガン州で、日本人に間違えられた中国系アメリカ人の青年が、冷酷に殺害された。事件当時を知る、日系アメリカ人三世にも話を聞いた。 アジア系差別の関連記事 NYで多発するアジア人差別(1)在住者の私の経験談 アジア系へのヘイトクライム急増、女性誌編集長のアジア人侮辱ツイートが大問題に 事件のあらすじ 中国生まれのヴィンセント・チン(Vincent Chin)さん(享年27歳)は、幼いころ養子としてアメリカに渡り、養父母の下ミシガン州で育った。自身の結婚式が数日後に迫った1982å¹´6月19日、デトロイトにほど近いハイランドパークのストリップクラブで、独身最後となるバチェラーパーティーを友人らと楽しんでいた。 編注:アメリカでは結婚式前、ストリップクラブで独身最後の夜を男同士で楽しむ慣習がある。 そこには、クライスラーの工場で働いていたロナルド・エベンスと、自動車工場の仕事をレイオフされた義理の息子、マイケル・ニッツという、2人の白人男性も遊びに来ていた。その夜、チンさんと見知らぬこの2人はひょんなことから言い争いとなり、喧嘩はエスカレートしていった。 その場ではいったん収拾がついたものの、2人はチンさんの行方を追って街中を執拗に探し回った。そしてファストフード店の駐車場でチンさんを見つけ、ニッツがチンさんを羽交い締めにし、エベンスが野球バットを取り出し、チンさんの頭部を繰り返し殴打した。 脳死状態となったチンさんは搬送先の病院で幼馴染の看護師に治療を受けたが、頭部は「これほどの負傷を見たことがないほど酷い」状態だったという。その4日後の23日、チンさんは亡くなった。 80年代、反日感情が高まっていた 80年代、アメリカは不況の真っ只中だった。日米自動車摩擦が激化し、日本の安価で性能の良い車がアメリカ市場へ流入したことでビッグスリーの衰退を加速させた。オイルショックもあり失業者が増加。自動車産業で繁栄したデトロイトではジャパンバッシング(反日感情)が起こり、日本のみならずアジア系全体に対して苛立ちや恨みなど反アジア感情が高まっていた。 自動車産業の仕事に従事していた2人にとっても、アジア系は目障りだったのだろう。チンさんを日本人だと思い込んだ2人は「お前のような小さな●●(罵り言葉)のせいで、多くのアメリカ人が仕事を失ったんだ」という言葉を吐き捨て、それにより喧嘩がエスカレートしたと伝えられている。 バチェラーパーティーにいたチンさんの友人、ゲイリー・コイブさんの証言。「ヴィンセントは日本人ではなく中国人だが、犯人にとってその違いはどうでも良かったようだ。アジア系には変わりないので」と当時を振り返った。 いつの時代も、同じことが起こっている 「いつの時代も、同じことが起こっている。なぜか?それはこの国で生まれ育っても見た目が違うからです」と言うのは、ミシガン州の弁護士で日系アメリカ人3世のジェームズ・シモウラ(James Shimoura)さん。シモウラさんは地元で起こったチンさんの事件にいてもたってもおられず、事件当時アジア系コミュニティをアシストした1人だ。 シモウラ家は祖父が仕事の関係で、1914年に徳島からミシガンへ渡米。母方はサンフランシスコ・ベイエリアで農業に従事していた。その後第二次世界大戦が始まり、家族や親族は日系人強制収容所に入れられるなど、辛い時代を生き抜いて来た。 「日本人というだけで突然ある日、農地、自宅、財産をすべて奪われ強制的に収容所に入れられたのです」とシモウラさん。 「この日系人強制収容のほかに、過去には中国系移民排斥法もありました。日米貿易摩擦下でのチンさんの事件、パンデミックによる反アジア感情、さらについ最近アトランタのマッサージ店で発生した乱射事件など、背景にあるものはすべて繋がっています。ウィットマー知事(民主党)誘拐未遂事件もあったように、今でもネオナチや白人至上主義は存在し、全米どこでも起こりうることです」 チンさん事件が起こった80年代は、アジア系にとってとりわけ難しい時代だったという。その凄惨な殺害方法はもとより、司法組織によりアジア系の命が軽んじられた。 犯人は逮捕、拘留されたが・・・ 証言者もいたため、犯人2人は現場で逮捕され拘留された。郡裁判所での第一審の判決で、エベンス被告は第二級殺人罪で起訴(ニッツは無罪)となった。しかし後に、有罪判決は過失致死罪となった。懲役刑ではなく3年間の保護観察処分、そしてわずか3780ドル(当時の価値で約70万円程度)の支払いが命じられただけだった。チャールズ・カウフマン巡回裁判官が放った言葉は、こうだった。「2人は前科もないし、刑務所に入るような類の人たちではない…」。 人を残虐に殺しておいて、下された刑罰はこの程度だった。この理不尽な処遇に対して、全米のアジア系の人々は憤慨し、立ち上がった。 アジア人の命はそんなに軽いのか? 「チンさん事件の判決は、司法組織による動物以下の扱われ方です」とシモウラさん。 命を軽んじられたことで、ミシガンのみならず全米のアジア系の人々による大きな抗議運動に発展した。 「モダンヒストリーにおいて初めて、全米のアジア系が一体となる公民権運動となりました」(シモウラさん) 当時アジア系の弁護士や政治家は少なかったが、コミュニティの中では皆、互いを知っていた。共に団結し、事件の背景に「被害者の人種、肌の色、出身国に絡んだ動機」があったこと、いわゆるヘイトクライムであると訴えた。この動きにより、デトロイトでは非営利公民権団体、アメリカ正義市民団体(American Citizens for Justice)が結成され、正義のために闘った。 84年には連邦公民権訴訟に発展させることができ、エベンス被告は第二級殺人罪の有罪判決となり25年の懲役刑が下され、ニッツ被告も有罪になった。しかし3年後、有罪判決は覆された。 「2回目の裁判は残念ながら、より保守的なオハイオ州シンシナティに移された。同地ではこの事件に対する温度差があり、事情をよくわかっていない陪審員によって公正な審理が行われるはずもない。すべての容疑は取り下げられ、無罪となったのです」 民事訴訟は法廷外で和解し、エベンスは150万ドル、ニッツは5万ドルの支払いを命じられたが、弁護士を利用して財産を隠すなどし、今もその支払いは済んでいない。NBCニュースも「2人は刑務所に入っていない。エベンスはチン・エステートに対して800万ドル以上の債務を負っている」と報じている。 これらの事件をきっかけに、ヘイトクライムが社会問題化された。今でこそ犯罪の等級を上げたり刑期を延長できるなどの厳罰を科すことができるヘイトクライム法(Hate Crime Laws)は存在する。しかしチンさんの事件が起こったのはその法律ができる前だったため、公民権侵害で起訴するしかなく、判決がここまで不条理なものとなったのだ。 事件から39年。アジア系アメリカ人の若い世代には、ヴィンセント・チン事件を知らない人も多い。 日系アメリカ人としての経験談 シモウラさんが生まれたのは、終戦から8年後の1953年。反日の雰囲気は根強く残っており、60年代後半まで渦巻いていたという。 「幼いころは(日本人として)からかわれたり喧嘩やトラブルに巻き込まれたりすることも多かったです。高校でやっと学友に恵まれました」。学校はユダヤ系の人々が80%近くを占めていた。彼らの中には何人も親戚をホロコーストで亡くしており(同じような辛い体験を)共感し合うことができた。 大学を卒業したのは78年。有色人種には就職の面で大きな障壁があり、自由に仕事を選べる状態ではなかったという。ことさら弁護士ともなると狭き門だった。「今でこそ、アジア諸国はアメリカと貿易面で強固に結ばれているので、大手弁護士事務所はバイリンガルのアジア系弁護士をたくさん抱えています。しかし当時の大手はアジア系を雇わなかったし、州全体でもアジア系弁護士はたった20人程度でした」。 もしもチンさんが白人だったら・・・? もしもチンさんが白人であれば、という質問に対して「違う結果になったと思います」とシモウラさんは断言する。「そして、もしチンさんが白人を殺した逆の立場であれば、必ずや刑務所に送られたことでしょう。またもし容疑者や被害者が黒人の場合も、司法制度で(白人とは)異なる扱いを受けます」。 前述の通り、有色人種が直面している問題はすべて繋がっている。アトランタで起きた乱射事件もBLMムーブメントのきっかけとなった数々の事件や背景も、大きな相違はない。 アメリカでは29日、ジョージ・フロイドさんを殺害した白人の元警官、デレク・ショーヴィン被告(保釈金約1億600万円程度で保釈中)の裁判が始まった。21世紀のアメリカの司法が、この事件に対してどのような判決を下すことになるだろうか。…