中絶を禁じられた女性の立場で「見過ごせない理由」を考えてみた ── 白熱する「中絶論争」

6月に連邦最高裁判所が、半世紀にわたって人工妊娠中絶の権利を合憲だとしてきた「ロー対ウェイド判決」を覆す判断を示した。それ以降、中絶にまつわる議論が全米で日を追うごとにヒートアップしている。 中絶の規制は各州に委ねられ、州は独自の州法で中絶を禁止できるようになった。 過去記事 米最高裁「中絶禁止:ロー対ウェイド判決の覆し」なぜこれほど論争になっているか。米国人視点で考える 中絶が禁止の州はどこ? ロー対ウェイド判決を覆す最高裁の判決を受け、現在は少なくとも14州(妊娠6週以降の4州含む)で中絶が禁じられている。 今後数週間以内に、中絶を禁止する州はさらに増えると予想される。中絶を制限する法の施行を阻止するため、中絶擁護派(プロチョイス)によって多くの州で訴訟が起こっているものの、これまでの歴史を振り返ってみても、中絶反対派(プロライフ)の一部の過激派により、中絶クリニックの医師を襲って手術を阻止しようとした事件が起こった事例もあり、一部地域ではクリニックの閉鎖がすでに始まっている。 ニューヨークタイムズによる最新のインフォグラフィック そんな中、カンザス州では今月2日、大きな動きがあった(地図の真ん中のグレーの州)。州憲法から中絶権の保護を削除する是非を問う住民投票が行われたのだ。同州は歴史的に保守的で共和党支持者が多い。専門家は投票率について36%止まりになると予想し、住民投票で修正案が承認されるだろうと見ていた。 しかし蓋を開けてみれば、投票率は49%と半数近くで、中絶権を削除する法案を拒否したのは全体の59%にあたる54万票を超えた。削除を受け入れるとした41%(37万票超え)を18%も上回った結果に。つまり投票者の過半数が、中絶の権利がないとする州法修正案を拒否して合憲性を維持し、このような保守的な州でも中絶権についてさまざまな考えが存在することが明らかになった。(ニューヨークのような民主党寄りの州も然り) ニューヨークタイムズによると、例えば2020年の大統領選で81%と大多数の人がトランプ氏に投票した同州ハミルトン郡でさえ、今回の住民投票で反中絶の支持者は56%止まりということだ。 カンザスは、ロー対ウェイド判決の覆し以降、中絶の権利を巡る住民投票で擁護派が勝利した初の州となった。同様の住民投票は年内にケンタッキー州、カリフォルニア州、バーモント州でも予定されており、中絶権擁護派はカンザスでの結果が今後の指標になることを求めている。 中絶の権利がなぜこれほどの議論になっているのか、日本からはなかなか理解しづらい。2回目の今回は、中絶禁止州に住む擁護派の女性の立場から、なぜ中絶へのアクセスが禁止されると困ることになるのか考えてみる。 女性として、中絶へのアクセス権が譲れない理由 各研究機関により、以下のファクトが指摘されている。 アーバン・インスティテュートによれば 合法的な中絶へのアクセス:女性の経済的および社会的生活を改善する 中絶を拒否されること:女性と生まれてくる子に経済的困難と経済的不安をもたらす。健康と幸福に多くの悪影響を与える可能性がある コロラド大学の研究によれば 妊娠は安全な中絶よりもリスクが高く、もし全米で中絶が禁止されるようなことが起こるとなると、2年以内に妊娠関連の死亡者数が、少なくとも21%増加する可能性がある そもそも中絶手術を受ける理由として、予定外の妊娠や経済的困難、レイプ、DV、持病の悪化、子の重度の障害など、人それぞれだ。それぞれの事情により中絶が必要となった場合に、住む地域で、中絶へのアクセスが比較的しやすいかしにくいかは非常に重要だ。 住んでいる州で中絶手術へのアクセスが絶たれた場合の対策として、ディズニー、JPモルガン、メタ、アマゾン、スターバックス、テスラなど多くの大企業が、従業員が他州で中絶手術ができるよう、旅費を負担する方針を打ち出している。あなたは「それならば心配はない」と安堵するだろうか? 大企業で働いている人は、高所得者で恵まれた環境にあり、実際には皆が皆、そのような福利厚生がしっかりした大企業に勤めているわけではない。ガットマッハー研究所によると、そもそも中絶を受ける女性の75%が、貧困層か低所得者層であることがわかっている。そのような人々はきちんとした健康保険に加入しているケースは少ない。よって、中絶手術を受けるためだけに仕事を休んで、わざわざ他州に旅行ができるわけがない。 また、望まれた妊娠だとしても、突発的になにが起こるかわからない。中絶への自由なアクセスがない環境において、流産が避けられず母体の生命が危険に晒される事態になったとして、万が一中絶手術を受けられなければ「妊産婦死亡率は上昇するだろう」とメディアは警鐘を鳴らす。医師が起訴されることを恐れて「法的枠組み」を遵守し、中絶処置を拒否した結果、母体が命を落としたケースは、アメリカのみならず、伝統的にカトリック教徒が多い(人口の70%を占めるような)国々で後を絶たない。 繰り返しになるが、そのような不幸に見舞われるのは大企業で働いている女性ではない。主に影響を受けるのは、身近に中絶手術ができる医療機関のない場所に住む人、社会経済的に地位の低い人、そして思春期の若者だ。 【写真キャプ】ロー対ウェイド判決を覆す判決後、プロライフ派がクリニックの外に集まった。「生命は神の賜物。胎児を殺してはならない」がカトリックの「基本原則」とされている。 「私の体は、私が選ぶ」の本当の意味 中絶権擁護派(プロチョイス)と言っても、中絶を100%奨励しているわけではなく、そうならないように防止することが大切だとしている。その上で、中絶が必要となってしまった場合に、「誰もが自分自身のことは自分自身で選択するべき」というのが基本原則だ。 日本の母体保護法の定める「中絶は配偶者(夫やパートナー)の同意があってこそ」の概念は一切ない。まさに“My body, my choice”(自分の体は“自分”が選択)の本来の意味に則っている。 中絶にあたって配偶者の同意を法的に規定している国と地域は、日本、台湾、インドネシア、トルコ、サウジアラビア、シリア、イエメン、クウェート、モロッコ、アラブ首長国連邦、赤道ギニア共和国の11ヵ国と地域。資料 伝統的なカトリック教徒の国、アイルランドをはじめとし、ヨーロッパの国々でも中絶に対する規制が緩められているのが世界の潮流だ。一方アメリカでは(ロー対ウェイド判決が覆される前であっても)、中絶擁護派と反中絶派が政治と法律面で幾度も闘ってきた。まるで時代と逆行しているようにも見える。 ますます白熱する中絶議論は、11月の中間選挙の大きな争点となりそうだ。激しいインフレ、杜撰な移民対策、アフガニスタンからの米軍撤退などでバイデン大統領の支持率は31%とさらに低迷している。銃規制、税制改革、インフレ対策など選挙結果を大きく左右するであろう要素の中に、国民の間でヒートアップする中絶問題も選挙の争点となり、民主党は反転攻勢をしていくだろうか。 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

ロシア拘留のブリトニー・グライナー裁判のゆくえ 

【速報】米東部時間4日朝、ブリトニー・グライナー選手はロシアでドラッグ所持と密輸の罪で有罪判決となり、禁錮9年の判決が下されました。 違法薬物所持容疑でロシアで勾留されている、米WNBA(女子プロバスケットボールリーグ)のブリトニー・グライナー(Brittney Griner)選手。その裁判が、モスクワ郊外の裁判所で先月より始まっている。 出廷したグライナーさんは、被告人席として設けられた狭い檻の中に入れられるなど、初公判後もショッキングな映像が映し出されている。グライナー選手と言えば、オリンピックで2個の金メダルを獲得したアメリカの大スター選手だが、2月の拘束以来、手錠をかけられた姿がメディアに映し出され、(欧米諸国にとっては)まるで重罪人のような扱いを受けている。 グライナーさんは裁判で先月、カンナビス(大麻)の抽出オイル(Hashish oil、Hash oil、ハシシオイル)を含むベープカートリッジを、自身のカバンの中に所持していたことは認めた。しかしそれらは鎮痛剤として使用していたもので、娯楽目的でもなければ法を犯す意図もなかったと、通訳を通じて述べた。 弁護団は、グライナーさんが所持していたカンナビスについて、痛みを和らげるために医師から処方された医療用大麻だと主張した。2メートル以上の長身を武器にしている同選手は、練習や試合中に体全体でぶつかり合うことが多く、脊椎、足首、膝を怪我し、何ヵ月もの間、車椅子を使用するほど症状が悪かったという。2013年より所属しているフェニックス・マーキュリーは、本拠地アリゾナ州において同選手が医療用としてカンナビスを使用するのを許可していた。 グライナーさん自身はそれを薬としてロシアに持ち込んだわけではなく、急いで荷造りしたため無意識のままカバンに入れたという。ただしカンナビスは、ロシアでは違法薬物にあたる。 グライナーさんは法廷で、モスクワの空港で逮捕に至った経緯についても触れ、税関の関係者に呼び止められた際の通訳が「不完全」で、自分の権利が守られなかったと主張した。正しい説明なしに書類に署名をするように強制され、いったいどのような書類なのか理解できないまま署名してしまったという。 関連記事 ロシアが東京五輪金の米スター選手、ブリトニー・グライナーを拘留 裁判が想像以上に深刻な理由 「なぜスポーツ選手は薬物を痛み止めに使うのか」有力紙の見解 娯楽用のみならず医療目的のための使用について、アメリカではたびたび議論の対象となるマリファナ。グライナー選手の拘留により、再びその是非が問われている。 ニューヨークタイムズは「Why Pros Like Brittney Griner Choose Cannabis for Their Pain」(なぜブリトニー・グライナーのようなプロ選手が鎮痛のためにカンナビスを使うのか)という記事の中で、以下のように述べている。 米国務省は、グライナーさんについて「ロシアによる不当拘束」という見解を示しているが、マリファナは米連邦レベルでは違法薬物のままで、何千人もの人々がマリファナの使用または販売のために刑務所に入れられている。 その一方で、数十の州が医療用または娯楽用としてマリファナを合法化しているのもまた事実。とりわけ日頃から肉体を酷使し年中怪我をしがちなスポーツ選手にとって、体の傷や痛みを癒す「効用」も認められており、それらを医療用として合法化するようスポーツリーグや政治家への働きかけが行われている。 実際にカンナビスを治療のために使用しているプロのスポーツ選手はグライナーさんだけではなく「多くのアスリートは、医師が処方してきた中毒性のあるオピオイドや類似の薬よりマリファナの方がよっぽど健康的だと信じている。またそのようなプロスポーツ選手からは、グライナーさんの拘留について哀れみの声と、ロシアに対しての批判が多く上がっている。 メジャーリーグは? 米スポーツ界のマリファナ使用ルール 以上のような効用を鑑み、一部のプロスポーツリーグでは、その使用に関する罰則方針について、近年再検討されつつある。 NBA(プロバスケットボールリーグ) 使用に関する違反が繰り返された場合のみ、出場停止処分となる。「グライナー選手がリーグに復帰しても、WNBAから処分を受けることはない」と関係者の声。 MLB(プロ野球リーグ) 2019年、選手の禁止薬物リストからマリファナを削除した。ただし、飲酒運転などと同様に法律を犯して使用した場合や、選手として試合や練習中に使用した場合、懲戒処分を受ける可能性がある。 NFL(プロフットボールリーグ) 2020年、使用に関する方針を緩和し、制限された量の使用を許可した。一方で、制限を超える量の使用に関しては選手に罰金を科したり、出場停止処分にすることもある。 NHL(プロホッケーリーグ) 選手に対してマリファナ検査を行うが、陽性結果になったからといってペナルティを科すことはない。 (参照:ニューヨークタイムズ) 捕虜交換となるか?今後の裁判の行方 現在、グライナーさんは捕虜のような扱いでロシアに拘束されている。アメリカ政府はグライナーさんのほかにも、2018年にスパイ容疑で16年の刑期が言い渡されロシアで服役中のアメリカ国籍保持者、ポール・ウィラン(Paul Whelan)氏の釈放も正式に打診した。 ブリンケン国務長官の声明 ロシア側からの具体的な回答は得られていないものの、アメリカ側が釈放を望んでいる2人のアメリカ市民と引き換えにロシア側が求めるのは、アルカイダとタリバンに武器を売ったとされる武器販売および殺人の罪でイリノイ州の刑務所に懲役25年の刑で服役しているロシア人、ヴィクトル・ブート(Viktor Bout)受刑者の釈放と見られている。またそれが叶えられない限り、受刑者交換の交渉は決裂するだろうとも伝えられている。 トランプ氏の辛辣な意見 トランプ前大統領は先月末、出演したラジオ番組で、重罪を犯したロシア人受刑者との交換に難色を示した。 グライナー選手について「ドラッグが好きではなく、ドラッグに対して非常に警戒している敵対的な領土にドラッグを積んで行き、捕まった。その結果、武器商人との交換が交渉されようとしている」「潜在的に甘やかされた人だ」と、脇が甘いとも取れるグライナーさんの行いについて辛辣に非難した。 交渉上手で隙がなく、またアルコールやドラッグに関して人一倍自制をしていることで知られるトランプ氏らしい発言だ。 グライナーさんは有罪判決が下された場合、懲役10年の刑になる可能性もある。ウクライナ情勢に纏わり緊張がますます高まるアメリカとロシア間で、グライナーさんとウィランさんの釈放に関して、今後どのような「人質外交」が行われていくだろうか。 参照 Why Pros Like Brittney…

NY1億円超高級コンド内見。「眞子さんをよく見かける」ヘルズキッチン住民の目撃情報も

筆者がこのたび訪れたのはニューヨークにある高級ホテル…ではなく、完成したばかりの新築コンドミニアムだ。マンハッタン区ミッドタウンの西端、ハドソン川にほど近いヘルズキッチン地区の一風変わった高級住居用ビル、The West(ザ・ウェスト)。 12階建てのこのビルは、低層階が昔ながらのインダストリアルなこの界隈の空気を受け継ぐウェアハウス風。高層階は一転、近未来的な凹凸が無造作に配置されたファサードが特徴だ。これら相反する2つのエレメントが見事に合体し、唯一無二の造形物として仕上がった。 市内にあるCitizenM HotelsやUrbyなどで実績があるオランダの建築家集団、Concrete(コンクリート)による最新作だ。低層階の外壁に使われているのは普通のレンガではなく、StoneCycling(ストーンサイクリング)による「アップサイクル・レンガ」を使うなど、サステイナビリティ(持続可能性)への配慮が細部に見え隠れする。 緑が眩いスペーシャスなエントランスに足を踏み入れると、フレンドリーなコンシェルジェが笑顔で出迎えてくれた。外観から予想しなかったヒューマンタッチなおもてなしが、訪問者にひとときの安堵感を与えてくれる。奥のスペースは、リモートワークをしたりゲストを出迎えたりなどさまざまな目的に活用できそうな温室風の明るいライブラリーが広がっている。仕事がサクサクと捗りゲストとの会話も弾みそうだ。そんな生活の1シーンを想像しながら、エレベーターでスタジオタイプ(日本のワンルーム)と1ベッドルームの部屋へ。 ドアを開けると、奥の窓から部屋いっぱいに柔らかい光が射し込んでいる。モデルルームのようにすでに家具や小物が配置されていて、自分がもし住んだら「ここで仕事をして」「休憩はここで外を見ながらコーヒーを飲んで…」などイメージがつきやすい。 The West インテリアごとお買い上げ? 「ここにあるものを“丸ごと”購入も可能ですよ」と説明するのは、米不動産会社コーコラン・サンシャインのシニア・セールスディレクター、アンジェリ・ディチキス(Angeli DeCecchis)さん。コンドの購入となると、日本と同様に家具が何もないまっさらな状態が主流だが、The Westでは家具はもちろん壁に掛かった絵画、テーブルに置かれた写真集や照明器具、キッチンツールやカトラリー、ベッドリネンに至るまで、室内にあるものすべて「込み」でユニットをお買い上げすることもできる。 このようなスタイルは、鍵を回せばすぐに住むことができるという意の「ターンキー」物件と呼ばれるもの。 インテリアコーディネートは、プロ集団のASH Staging(ASH NYC)によるもの。 通常、新居に引っ越す場合「壁やカーペットは何色にしようか」「どんな絵を飾ろうか」と迷いながら自分たちの城をクリエートしていく。それも一興だが、ターンキー物件の場合、プロのインテリアコーディネーターが世界中からハイセンスの家具や小物を厳選し配置しているので、あれこれ考え、買い物に出かけてどれにするか迷い、支払って運送を待ち…といった一連の手間暇がいっさいかからない。 「購入の手続きさえ済めば、明日からでもここで生活が始められるんです」(アンジェリさん)。この便利さから、ターンキー物件は州外や国外に住む人がニューヨークを訪問する際の一時滞在としての場所、セカンドハウスとしても人気だという。 建物内にはライブラリーのほかに、スポーツジム、キッズルーム、コミュニティダイニングルーム(パーティーやイベント用)、犬のグルーミングルーム、倉庫なども完備。また屋上プール、カバナ、バーベキュー設備、ドッグパーク、外ヨガスペースまであり、あらゆるものが敷地内で完結する。 周りに景色を遮る高層ビルがないので、開放感ある見晴らしだ。当地ではパンデミック以降、バックヤードやテラスなど屋外スペースを人々が渇望するようになったが、そのような需要を満たしたアパートメント・コンプレックスだ。 ◎ビル内アメニティを見る いくらあれば住める? Studio #718(484ft²、約45平米) 95万ドル(約1億2900万円) 1BR #723(672ft²、約62平米) 135万5000ドル(約1億8500万円) * ターンキーパッケージ価格 * 当地では購入価格に加え、毎月の共益費と税金が別に必要。例えばStudioの場合22万円ほど毎月かかる(共益費670ドル(約9万2000円)、税金919ドル(約12万5000円)) 新築でこれだけアメニティ設備が完備しているThe Westの価格が高いかお得か? 当地のアパートの不動産価格は、立地はどのストリートか、ユニットは何階で方角はどちらか、ベランダの有無など細かい条件によって異なってくるため一概に比較はできないものの、参考程度にマンハッタンの1ベッドルームの販売価格と賃貸の「中央値」も添えておく。 不動産会社のトリプルミントによると、昨年9月の時点で以下の通り。「マンハッタン内」でもっとも高いエリアと低めのエリアも調べた。ヘルズキッチンは、あくまでも「地区」としてはちょうど中間あたりに位置する。 販売価格の中央値 ヘルズキッチン 104万5000ドル(約1億4000万円) ノーホー 219万7500ドル(約3億円) フォートジョージ 34万4000ドル(約4600万円) 賃貸(家賃)の中央値 ヘルズキッチン 3903ドル(約53万円) ハドソンスクエア 7250ドル(約98万円) フォートジョージ 1750ドル(約23万円) NYの「中央値」と「平均」の家賃について 関連記事 小室夫妻も想定外のインフレに悲鳴? 日本人は知らない「ニューヨーク家賃事情」のリアル 年間30万円以上アップもあり得る(マネー現代) * 記事内はすべて1ドル136円計算 眞子さんを「よく見かけます」とヘルズキッチンの近隣住民 最後にヘルズキッチン地区と言えば、小室眞子さんと圭さん夫妻が昨年新居を構えたことで、日本での知名度が一気に上がった。 この地区は、中心地タイムズスクエアから徒歩圏内にあり便利な立地。文化施設や観光地がない替わりに、低層の住居ビルと多国籍レストランが連なり、地元の人が普段使いするアーミッシュマーケットやこぢんまりとしたカフェも。昔ながらの車のリペアショップが今でも残っていたりとインダストリアルな雰囲気も漂うリラックスした下町の雰囲気だ。 「ヘルズキッチンの不動産は今、活況を見せています」とアンジェリさんも太鼓判を押すように、ハドソン川近くの西端エリアがディベロッパーにより再開発され、新築アパートメントが次々に建てられている。この地区に目をつけているのは、投資家というよりどちらかというとミレニアル世代を中心とした若いローカルバイヤーやファミリー層が住居用として購入するケースが多いようだ。 土地柄もあり、内見中は関係者らと自然に小室眞子さんの話にも及んだ。筆者が「ヘルズキッチン地区は日本でも結構知られるようになったんです」と言うと、「(英語の)記事を読みました」と、筆者が説明するまでもなく眞子さんはこの地区の人々にすでに認知されていた。筆者の周りではほとんどの人が知らないため「私にとって、あなたは彼女を知る最初の人です」と伝えると、眞子さんを目撃したのは1、2度ではないと言い「この界隈を歩いているのをよく見るわ。(元プリンセンスとわからないほど)服装は控えめで目立たない感じです」と、その慎ましさに好感を持っている様子だ。「いつもマスクを着けて、1人で歩いているわね。サリヴァンベーカリーでフレンドリーに店員に挨拶しているのを見かけたことも。新天地での生活を楽しんでほしいです」。アメリカ移住から8ヵ月になる眞子さん。筆者の経験からも移住から半年は新生活に慣れるのに必死だが、それ以降は徐々に環境や生活習慣に馴染んでくるもの。眞子さんが近隣住民に迎え入れられこの地に解け込んでいるのが、地元の人の話から伝わってきた。…

バカラグラスと茶の湯。真夏のNY、和の隠れ家の特別茶会で涼む

気温30度近く、湿度70度越え。5分も歩くと額に汗がにじみ出る。夏真っ盛りのニューヨーク、今日は日曜日の午後。 17日、マンハッタンのフラットアイアン地区にある、知る人ぞ知る隠れ家的なリトル日本、グローバス和室で特別な茶会が開かれた。 当地で表千家流茶道講師として活動する北澤恵子さんによる「バカラ茶会」。毎月趣向を変え開催しており、今回は北澤さんのコレクションであるバカラ社の涼しげなガラス製品を茶会の「見立て」にしたもの。温かい茶に加え、冷たい茶やスパークリング酒、ちらし寿司や出汁香るソーメン、和菓子などが出た。 見立てという言葉を聞いた時、筆者はなんとなく意味のイメージができたものの、改めて北澤さんに教えてもらったところ、千利休が本来茶の湯の道具でなかった品々を茶道具として取り込んできたもの、それが「見立て」。見立てを取り入れることで、茶の湯の世界に新鮮さや趣が加わるという。バカラはフランス発なので、この茶会は日本とフランスのコラボとなる。 茶はNY発のティーブランド、Sorate(ソラテ)から提供された宇治茶。 ソラテ(イタリア語で落ち着く、クールダウンする、日本語の「空」の意も)とは、イタリア出身のSilvia Mella(シルヴィア・メラ)さんが日本でその美味しさと出合い健康にも良い抹茶をアメリカの人々にもっと広めたいと、2020年に当地で創業したスタートアップ。現在は米国内の飲食店などに、抹茶を卸している。 北澤さんによると、普段はもっと参加者は多いが、夏の時期はバカンスでゲストが少なめだと言う。それでもこの日は12人がゲストとして参加。日本人はもちろん、アメリカ、イタリア、香港、中国出身者が、茶の世界を楽しんだ。 着物を着て参加した日本人女性は、昨年駐在でニューヨークに来たばかり。海外で日本人としてのアイデンティティが芽生えたようで、「まさか自分が、ニューヨークで着物やお茶の世界に目覚めるとは思わなかった」と語る。 筆者も当地に住んで20年。最近その傾向が強いので、この気持ちは非常にわかる。 「日本文化が大好きな娘が参加しようと誘ってくれた。こんな経験、生まれて初めて。お茶も食事も美味しく、日本を旅したような気持ちになり、素晴らしい体験だった」 ニュージャージーから初参加したヴィクトリア親子は、帰り際このように感想を語った。イベントに母を誘った娘は特に緑茶と和菓子が好きだといい、着物も2枚持っているそう。「和室と聞いて1室をリノベしたのかと思ったら、ストリートからこのビルに入って、最上階のアパート全体がまさかこんな和の空間になっていたとは!細部まで抜かりがないのもすごい」と会場への驚きも隠せない。東日本大震災と新型コロナでいまだタイミングが合わない日本旅行を早く実現させたいと、まだ見ぬはるか彼方の国へ思いを馳せた。 普段は2歳児の子育て中だと言う別の日本人女性は、この日着物を着てこのような会に参加できたことに感謝の意を述べた。 外の世界や普段の生活が「動」だとしたら、この茶会はまさに「静」。この非日常空間での茶会体験は、筆者にとっても多忙な日々のスパイスとして映った。日々忙しないニューヨークをサバイヴする私たちには、時々こんな「贅沢な時間」が必要なのだ。 Text and photos by Kasumi Abe (ブログより一部転載)無断転載禁止

警官に“60発”撃たれた黒人男性ジェイランド・ウォーカーと過去の類似事件。警察は今後追いかけない?

オハイオ州で、交通違反で逃走した丸腰の黒人男性が警官に60発以上撃たれ死亡する事件が起きてもうすぐ3週間。今月13日に執り行われた葬儀には、300人もの人々が出席しその死を悼んだ。 また葬儀の2日後、検視局により男性の体内から見つかった銃弾は26発にも上ることが発表され、APなどが報じた。 男性の体内の損傷は心臓や肺、動脈などに見られ、被弾によって受けた傷は合計46箇所だった。検視官によると、1発の弾丸がいくつかの異なる傷の要因になることがあるという。どの傷が致命傷になったかは不明だ。 何が起こったか? 同州サミット郡アクロン市の車道で先月27日午前0時30分ごろ、警察が走行中の自動車に対して、交通違反と車両整備違反の容疑で停車を求めた。しかし車を運転していたジェイランド・ウォーカー(Jayland Walker、25歳)さんは従わず、カーチェイスとなった。 ウォーカーさんは追跡から40秒後、運転席側から少なくとも1発を発砲したとされる。そして7分以上の逃走劇の末(顔面を覆う)黒のスキーマスクを着用し、車を乗り捨てて逃走した。 警察はテーザー銃を使ったが制止できず、最終的に最大8人が拳銃を60発以上発砲し、ウォーカーさんを死亡させた。 左から2番目の警官がウォーカーさんに対し発砲中止の指示を出してから数秒後でさえ、依然発砲を示す閃光(警官のボディカメラ映像からの静止画)。(写真を見る) その後、ウォーカーさんの車の前部座席から、拳銃1丁と弾倉が押収されたものの、ウォーカーさんは逃走の際、武器を持っていなかった。 ウォーカーさんの車から見つかった拳銃1丁と弾倉、金の指輪。(写真を見る) (注:映像には暴力的なシーンが含まれます) 事件の一部始終は、3日に公開された警官のボディカメラの映像に残されていた。「動くな」という警官の制止を無視し逃走するウォーカーさんに対して、複数の警官がいっせいに発砲。武器を持っていない1人の人間に、果たしてこれほどの銃撃が本当に必要だったのだろうか? この事件の捜査と検証は引き続き行われ、8人の警官は休職処分となっている。 報道から見えてきたウォーカーさんの人物像が、凶悪犯とはほど遠い。これまで交通違反が1度あっただけで前科なし。レスリングファンだったという彼は高校卒業後、アマゾンを経てドアダッシュの配達員として働いていた。両親は早くに離婚し、父親を4年前、婚約者を自動車事故で2年前に失った。13日の葬儀に参加した友人からは「優しく思いやりがあり笑顔が印象的」「謙虚で静かな性格」「礼儀正しい人柄」という声が聞こえてきた。「逃走した兄(弟)は自分の知っている兄(弟)ではない」とするきょうだいの証言もある。 弁護士によると、ウォーカーさんが拳銃を手に入れたのは最近のことで「使い方に精通していなかった」「運転席側からの発砲は意図的か事故かは不明」。「彼は犯罪者ではない。死ぬに値しなかった」とし、警察を非難した。 人々は「なぜ60発以上も発砲されたか、なぜ若い黒人男性が白人の2倍増の割合で警察に殺され続けているのか、理解に苦しむ」と、警察の陰惨な行為に対して反発し、市周辺では連日数百人規模の抗議デモが起こっている。 2年前のジョージ・フロイドさんの死に起因した全米規模のデモや暴力事件に発展する可能性があり、警察は危機感を強めている。警官の顔写真や名前がソーシャルメディアに流出し拡散される可能性があり、警官やその家族の安全を最大限に保護するため、名札を制服から外すよう指示を出したことも、地元メディアで報じられた。 関連記事 白人警官への怒り全米各地に飛び火 NYでも最大規模の抗議活動「息ができない!」と叫び続ける人々 誰もが思い出す、これまでの悲劇 結婚前夜に50発、丸腰の「ショーン・ベル射殺事件」 丸腰の若い黒人男性に対する警察による無作為の銃暴力と言えば、2006年にニューヨーク市クイーンズ区で起きたショーン・ベル(Sean Bell 当時23歳)さんの銃撃死亡事件を思い出す人も多い。 自身の結婚式の前夜、友人とナイトクラブでバチェラーパーティーをしていたベルさんは、明け方、外で起こった客同士の闘争の末、危険人物と見なされ、警官に50発の銃弾を受け死亡。2人の友人も負傷した。 銃撃に関与した5人の警官のうち3人はそれぞれ31発、11発、4発を発射し、過失致死罪などで裁判にかけられたが、2年後ニューヨーク地検は3人に対して、無罪判決を下した。3人はその後退職(辞職か解雇かは不明)。退職時、うち2人には多額の年金や一時金の手当が支払われたが、最初に発砲した1人には「(その者が行なった)11発の連射で、計50発の連鎖反応を招いた」と見なされ、年金や手当が支払われなかったとされる。また、この事件で3発を発砲したほかの警官2人は在職が認められた。 自宅で乱射された無実の「ブレオナ・テイラー射殺事件」 2020å¹´3月には、ケンタッキー州ルイヴィル市で、無実のブレオナ・テイラーさんが自宅で警官に射殺される事件も起こった。 睡眠中、ボーイフレンドが警官を不法侵入者と勘違いして発砲し、それに応戦する形で警官は30発以上(16発、10発、6発)をやみくもに発砲。うち6発がテイラーさんに当たって死亡した。 関連記事 「黒人差別は“個人”でなく“構造”の問題」をあらわにしたブレオナ・テイラー射殺事件を今一度解説 武器を捨て撃たれた13歳の少年「アダム・トレード射殺事件」 昨年3月にはイリノイ州シカゴ市の路上で、拳銃を持った13歳の少年、アダム・トレードさんが警官から走って逃げ、最終的に銃を投げ捨て降参したにも拘らず、射殺される事件もあった。 関連記事 米国で警官に呼び止められ「絶対にしてはいけない」こと── 警察が13歳少年射殺 警官のボディカメラの映像より。(写真を見る) この事件で射殺した警官は今年の3月、不起訴処分となっている。 またシカゴ市警察は先月21日、新方針を発表した。今後は、逃走または駐車違反や免許失効中の運転、路上飲酒などの軽犯罪に限り、警察は足を使った追跡をしないというもの。同​​市警の署長によると、他都市に倣って制定したこの政策は、警官および一般市民の安全につながる効果があることが研究によってわかっており、今後導入する同市で同じ効果を期待しているという。NPRは「警察との接触を避けようとしている人物を、逃げているというそれだけの理由で長追いする時代は終わったことを意味する」と報じた。 ​​地元メディアの調査で、2010年から15年にかけて同市で発生した警官による発砲件数の3分の1は、(足を使った)深追い中に負傷者や死者を出していることがわかっている。米司法省は17年「不必要な追尾や、撃つ必要のなかった人を撃ってしまう件数があまりにも多い」として報告書をまとめ、裁判官がその2年後、新たな追跡方針の採用を認めるとしていた。 関連記事 殺人犯の白人は撃たれず、黒人は簡単に撃たれるという米国の矛盾 ── 自警団とは? 至近距離から7発!子連れ黒人男性に警官発砲、一命取り留めるも半身不随に ── 終わらないBLM 何人の市民が警官に殺されているか? 数字から見えてくるアメリカの現実と日米比較 「まず撃て」米テキサス警察 自宅にいた無実の女性を窓越しに射殺(動画あり) Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース…

「シークレットサービス」を間近で見た経験から考える 銃社会アメリカの「警備と安全」 安倍元首相銃撃

冒頭の写真は、2020å¹´9月11日に筆者が撮影した、当時のトランプ政権のナンバー2、ペンス副大統領(赤の矢印)だ。 ペンス氏は米同時多発テロから19年にあたるこの日、多くの犠牲者を出した消防隊の激励のため、ニューヨークのグラウンドゼロの慰霊祭を訪れていた。筆者はこの追悼式典を取材中、ペンス氏が乗った車が約5メートル先に偶然止まったため、その一部始終を窺うことができた。 ペンス氏が車から降りた際の写真は、以下の記事に掲載 「またね」が息子・父・夫との最後の言葉に ── 3家族の9月11日【米同時多発テロから19年】 会場には当時大統領候補だったバイデン夫妻など要人も多数訪れており、「最高レベルのセキュリティ(警備態勢)」が敷かれ、物々しい雰囲気に包まれていた。敷地周辺をぐるっと頑丈なバリケードで覆い、部外者は一切入れないようになっている。中に入る事が許されたのはメディアおよび関係者、そして事前登録した遺族のみだ。 ペンス氏を幾重にも囲んでいるのは無数の警察官、そして要人専用の護衛官「シークレットサービス」だ。彼らはペンス氏に背を向け、あらゆる方向を常に警戒していた。関係者のみしかいない、このような場所においても、である。 特殊トレーニングされている彼らは四方八方に常に目を光らせ、誰かがカバンから不審物を出したその瞬間に動き出し、犯人の行動を阻止する、いつでも瞬時に動ける態勢をとっていた。筆者にとって、アメリカのプロ中のプロのSPの動きを目の当たりにした経験だった。 シークレットサービスとは? 国内外の要人警護専門で知られるが、暴力事件、サイバー犯罪、金融インフラの保護を含む犯罪捜査のプロでもある。NCMEC(行方不明・被搾取児童センター)と連携し、フォレンジック(犯罪捜査における分析や調査)の技術提供も行う。 「ホワイトハウスのシークレットサービスは、瞬時の反射神経が高く、最高指導者のために銃弾を受ける訓練を積んでいることで有名」(ヴァニティフェア)。 筆者は約15年前も、大統領職退任後のビル・クリントン氏と偶然ミッドタウンの路上ですれ違った経験がある。その時も物々しい警戒ぶりだったのを今でも覚えている。スーツを着たSP5、6人が彼の周囲を囲みこちらに向かって歩いて来た。その集団を見て遠目にも「要人」というのは自明だった。すれ違う際に顔を見て、クリントン氏とわかった。アメリカでは「元大統領」でこれほどの警護態勢なのだ。 安倍元首相が選挙の応援演説中に背後から男に銃撃され、SPによる「要人警備」の不備が指摘されている。もちろん、現職と第一線を退いた要人とでは、セキュリティ対応が異なるというのはあるだろう。そして日常的にどんぱちやってる国と、銃犯罪が極めて稀な国の事情が異なるのも理解できる。 しかし日本も、一般市民が銃を手作りし「まさか」という事件を起こした以上、このままではまずいということがわかっただろう(実際、流れ弾のようなものが現場から見つかっている)。また、あの場にいた聴衆も、爆発音の後もなお、現場に近寄る人、突っ立ったままの人が多かったようだ。銃社会アメリカであれば、音がしたら地面に伏せ、物陰に隠れる(逃げる)。警察はテープを張り巡らせ、救急の邪魔になる野次馬をすぐに排除する。そういう光景も筆者が見た映像からは確認できなかった。 アメリカでは、選挙の演説は屋外では囲いを設け、空港のようなセキュリティ態勢が敷かれる。 オーサーコメント アメリカの警備も実は完璧ではない 連邦議会議事堂襲撃事件 アメリカでは、特に2001年の米同時多発テロ以降、「念には念を入れた厳重警備」が敷かれるようになった。それであれば警備が100点満点かというと、実はそうでもない。 警備上の大失態と言えば、2021å¹´1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件が思い出される。あの日、大きな衝突が勃発する懸念があったにも拘らず、議事堂警察(USCP)は連邦機関に警備の応援を事前要請していなかった。警備態勢の不備や対応の遅れが指摘され、議事堂警察署長はその後辞任した。占拠事件を防げなかった原因は、1年半経った今も調査が続いている。 2021å¹´1月6日、暴徒化した群衆と揉み合いになった議事堂警察。(写真を見る) 関連記事 警官が2人も自殺していた ── 議事堂乱入事件、その後 トランプ支持者は、厳重なハズの議事堂を「なぜこれほど簡単に」襲撃できたのか? ── 現地で深まる謎 今年最初の「悪夢」… 怒りのトランプ支持者が議事堂を占拠しカオス状態に ケネディ米大統領暗殺事件 過去には、ケネディ大統領が暗殺される事件もあった。ケネディ氏は1963å¹´11月22日、テキサス州ダラス市のパレードにてオープンカーでの遊説中、24歳の男に銃撃され死亡した。 1発目がケネディ氏の頸部を貫通したが致命傷に至らず、5秒後に発射された2発目が頭部に被弾し、それが致命傷になったという。 「COULD THE SECRET SERVICE HAVE SAVED J.F.K.?(シークレットサービスは果たしてJ.F.K.を救うことができただろうか?)」という記事を発信したヴァニティフェアによると、(現在の日本の政治家のように)ケネディ氏も「有権者の近くで寄り添いたいと考えている政治家だった」。 暗殺される直前のケネディ大統領(当時)と夫人ら。バリケードも設置されていなかった。(写真を見る) この日、ケネディ氏の車の前後にはシークレットサービスが警備にあたっていたが「彼らはケネディ氏ら要人から数メートルの距離にいたにも拘らず、回避行動を取らなかった」「あの致命的な数秒間は、いまだに我々の理解を超えるもの」(ヴァニティフェア)。 後続車にいた護衛官の1人、クリント・ヒル氏がケネディ氏の車に飛び乗ってジャッキー夫人をかばったのは有名な話だが、それも狙撃を受けた後のことだった。ヒル氏は事件後「(1発目に)爆竹に似た大きな音がしたが、初めは何なのかわからず、爆音がした方角を向いた」「もっと早く動くべきだったと後悔に苛まれ、しばらくPTSDに苦しんだ」と話したことが、サンなどで報じられている。 ケネディ氏の在任中は、長時間勤務や飲み会が日常茶飯事で、スタッフが二日酔いで出勤することにも寛容な雰囲気だったという。事件前夜も、シークレットサービスのうち数名は、朝3時ごろまで飲みに出かけ、事件日は睡眠不足だった(ヴァニティフェア)。 また、近年になってもシークレットサービスが不審者によるホワイトハウス敷地内への侵入を許すという大失態を犯したことについて、「個人のミスではなく、組織としての仕事に対する考え方や文化や習慣が原因」とする関係者談を紹介した。筆者はこれらの記事を読みながら、今回の安倍氏の銃撃事件との類似をいくつか見たのだった(ちなみに、アメリカで安倍氏の事件は暗殺と呼ばれており、ケネディ氏を殺害した容疑者も事件の2日後に射殺され事件の動機は不明だが、同様に暗殺と呼ばれている)。 このような警備上の大失態を踏まえ、シークレットサービスや警察らは、要人の安全を守るために、トレーニングや研鑽を積んでいると思われる。 銃社会のアメリカで一般市民の安全がどのように守られているか? 銃社会においては、要人警護のみならず、一般市民を守るため、大都市では街の警備も911以降、厳重になった。 中心地にはライフルを抱えた特殊警備隊が配置され、観光地には空港のような金属探知機が置かれて、身体検査や持ち物検査がある。美術館や博物館の入り口でも、荷物検査をされることがある。 筆者はこれらのセキュリティを見ていつも思う。これらは要は「抑止力」なのだ。彼らはそのような厳重な警備をあえて見せることで、一般市民にはテロから「守られている」安心感を与え、攻撃者に対しては「何もしてくれるなよ」と暗黙で暴力、攻撃を最大限に抑止していると考えることができる。 この写真は、筆者が議事堂襲撃事件の2週間後、バイデン大統領就任式の様子を見るために議事堂を訪れた時のもの。柵の「内側」でさえ、これでもかというほどの無数の米軍が配置されている。これほどのものを見せつけられると、犯人やテロリストの心理として、易々と武器を持ってターゲットに近づこうとは考えなくなるものだ。 銃社会のアメリカではこのようにテロを未然に防ぐことで、要人のみならず一般市民の「安心、安全」が保たれている。 これらの「防御策」は「国防」とも通じるものがあると筆者は考える。それを物々しいと忌み嫌うか、それとも「抑止力」として安心材料とするか。 実際のところ、安倍氏を銃撃した山上徹也容疑者にしても事件前日、安倍氏が応援演説をしていた岡山を訪れたが「手荷物検査などで近づけなかった」と供述していることが報じられた。「検査」があったことが攻撃の抑止に繋がったのがわかる。…

安倍氏の死と日本の安全問われたバイデン大統領が出した「メディアが報じない」コメント SNSで話題

安倍元首相の死去に際し、8日アメリカのバイデン大統領は「Statement by President Biden on the Killing of Former Japanese Prime Minister Abe Shinzo(安倍晋三元首相の殺害に関するバイデン大統領の声明)」と題する声明を発表した。 安倍氏と親しく仕事をする機会に恵まれたのは光栄だったとし、「彼の日本国民を思う気持ちは強く、人生を国民への奉仕に捧げてきた。襲撃を受けたその瞬間でさえも、民主主義という仕事に身を投じていた」「暴力は決して許されない。銃による暴力は地域社会に深い傷跡を残す」などという内容だ。 日本語翻訳はこちら バイデン大統領は急遽行った岸田首相との電話会談でも弔意を伝えたことが伝えられた。またツイッターでも哀悼の意を表している。 大統領はワシントンD.C.の日本大使公邸を弔問に訪れ献花し、「日本国民だけでなく世界にとっての損失だ」と記帳した。 その後ホワイトハウスに戻り、人工妊娠中絶の権利を支援するための大統領令に署名した。これは、先月最高裁が中絶を憲法上の権利と認めた1973年の判決を覆す判断を下したことへの対抗措置だ。ただし、中絶へのアクセスを制限する法律を制定する権限は州政府が持つため、大統領令の影響は限定的とも見られている。 写真を見る 日本は「1件」とバイデン大統領。 人工妊娠中絶の権利を支援するための大統領令に署名したバイデン大統領。 関連記事 米最高裁「中絶禁止:ロー対ウェイド判決の覆し」なぜこれほど論争になっているか。米国人視点で考える さて、大統領令の署名が終わり、この会場を退場する直前に、記者から「安倍氏の暗殺と、日本の安全性についての考え」を問われたバイデン大統領。その場で2分ほどのコメントを出したが、内容が不可解だとSNSで話題になった。 概要(岸田首相と朝電話で話し、日本大使公邸を弔問に訪れたという話から…) 「日本では何十年もの間起こっていなかった。30年代後半や半ばまで遡ると聞いている。自家製の武器だ。写真を見ただけだが、詳細は司法省(司法制度)により解明されていくだろう。しかしながら私が注目したのは、これは日本において、武器を使用し誰かを殺害した初めての事件だ。(アメリカでは)我々は3000、数の正確さはわからないが3688件とか3000~4000件の間。彼ら(日本)は1.1.1.(たった1件と強調)。動機についてはそのうち解明されるだろう。首相の文雄はとても堅実な人物だ。日本は非常に安定した同盟国。私はそのようなことを信じていないし、これはまだわからないこと。日本の安全保障や連帯が不安定になる深刻な影響をもたらす可能性については」 これに対して、SNS上では「言ってることが理解不能」というものから、「『武器の最初の使用』と言うが、2007年に(長崎)市長が銃で暗殺されている。銃による死亡数や所有数では日本は我々より確かに安全だが、それでも完全なる安全ではない」「1930年代まで遡る?第二次大戦中、日本では殺人事件はなかった?」「地下鉄のサリン攻撃は武器使用とは見なされない?」などと、混乱している人が多かった。 また、「馬鹿げた比較」「日本での悲劇を語るのに、我が国の銃規制の議論をするべきではない」など、安倍氏の死とアメリカの銃規制の問題を結びつけて語ったことが癪に障るという批判もあった。 大統領のコメントでは主語や述語が明確でなく、詳細の説明もなかったため、筆者が聞いても確かにわかりづらいと感じた。 何度か聞いて、おそらくこういうことを言っているのだろうと思ったこと: 「誰か」というのはおそらく「要人」という意味だろう。 30年代半ばに起こったというのは、5・15事件や2・26事件のことを指していると察する。(一般的なアメリカ人はこの事件を知らないので、説明なくして何を言っているかわからない) 「1人」というのは、5・15事件で殺害された当時の内閣総理大臣、犬養毅氏のことだろうか。それであれば安倍氏の銃撃事件の「前に」1人は当を得ている。(もしくは「近年では1人」という意味かもしれない) 台本がない質問だったので大統領がどのように答えるか筆者も注目したが、大統領がメディアに対して公式な場で発表したコメントとしては、わかりづらい内容だったのは否めない。せめて記者が追加質問できればもっと理解しやすかっただろうが、その時間も与えられなかったのが混乱を助長させたようだ。 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

安倍元首相「暗殺」と一面で報じた米メディア 同盟国アメリカの受け止めは?

安倍晋三元首相が亡くなった。 筆者は米東部時間7日の午後10時半すぎ、ふと見たツイッターで「Shinzo Abe」という文字がトレンド2位にあることに気づいた。タイトルを見ると「Japan’s former prime minister Shinzo Abe shot during campaign…」と書かれてあった。‘shot’という文字が目に飛び込んできたが「shot(銃撃)?」と、やや頭が混乱した。アメリカ全土では銃撃や乱射の事件が多発しているが、日本でshotとは? まさか…と思いながらクリックしたが、その「まさか」が起こっていた。 そこには、安倍元首相が何者かに撃たれたという速報やツイートが続々と流れていた。ほどなくして、日本好きの友人からもメッセージが届いた。彼はNHK Worldを観ていたら速報に切り替わり、事件を知ったという。日本であまり起こらない大事件にショックを受けているようだった。 翌朝目覚めた筆者は、祈る気持ちでツイッターを開いたら‘Rest In Peace’がトレンド入りして、安倍氏の死を知った。ニュースフィードの一面は、その一報で溢れていた。ツイッターではほかにも「RIP Abe」「PM Abe」がトレンドワードになり、「Japan」がアメリカのトレンド1位となった。 アメリカの同盟国である日本のリーダーとして長きにわたり友好関係を構築、尽力してきた人物の、しかも選挙活動中の殺害事件は、止まぬ銃犯罪に頭を悩ませ、同じく民主主義を重んじるアメリカ社会をも大きく震撼させた。 日系アメリカ人の友人からは聞かずとも、筆者の下にこのようなメッセージが来た。「PM Shinzo Abeの暗殺というショッキングなニュースを今しがた、CBSやCNNで知ったわ」「とてもひどい、悲しいこと!」「銃の写真はハンドメイドに見えるわね。日本で銃の購入は非常に困難だから、自分で作ったんでしょうね」「日本は犯罪率が低く、特に銃を使った暴力事件数は少ないって聞いているから、本当にショッキング」。また、普段連絡がこない知人からも、日本に対してのお悔やみメールが届いている。人々の日本に対するリアクション(衝撃)は、東日本大震災の時と似ている。 米メディアは軒並み「暗殺」と報じる 友人が言った‘Assassination’。暗殺というこの言葉でNBC、FOX、CNN、NPR、ニューヨークタイムズ、ワシントンポストなど各主要メディアが殺害事件を報じている。意味を広辞苑で調べると「ひそかにねらって人を殺すこと。多く、政治的に対立している要人を殺すこと」とある。英語の意味をケンブリッジ辞書で引くと、同様に「有名な人や重要な人を殺害すること。特に政治的な理由もしくは金銭と引き換えに」とある。 まだ容疑者の動機については捜査の段階で不明だが、「政治信条に対する恨みではない」とする日本の報道もある一方、何らかの理由で「殺そうと思って狙った」と殺害の意思があったことも示されている。動機の解明が待たれる。 また多くの記事では、安倍氏を紹介する枕詞として「日本でもっとも長く務めた首相」という言葉が使われている。日本の首相は頻繁に変わるという印象がアメリカにはあり、ヨーロッパやカナダなどの近隣国のリーダーに比べて知名度が上がらないことが多いが、安倍氏は8å¹´8ヵ月もの間、日米の友好関係に貢献してきた人物として、一般市民の間でも割と知名度が高い方だと思う(辞任後も今だに筆者は『同じ苗字だね』と指摘されることが多く、知名度の高さを肌感覚で感じてきた)。 安倍氏の逝去を報じたニューヨークタイムズは、「アベノミクスによって経済の立て直しに貢献したが、戦後の平和主義を貫いてきた日本の軍備を正常化するという彼にとってもっとも重要だった目標には達しなかった」と報じた。また「戦争犯罪で訴えられた祖父を含む、厳格なナショナリストの政治家一族に生まれ、連続でもっとも長く首相を務め上げ日本をリードし、歴史を作った」とも評された。 USAトゥデイは、「日本経済の再建に貢献したが、タカ派の軍事思想でリベラル派の逆鱗に触れたリーダーとして、二極化した遺産を残した人物」と報じた。 日本でめったに起きない銃撃事件が発生し、日本社会に与える影響についてフォーカスした記事も散見される。 「銃規制が厳しいことで知られる日本は、世界でもっとも殺人率が低い国の1つ。AP通信によると、人口が1億2500万人以上にも拘らず、日本は昨年、銃による犯罪件数がわずか10件だった」(USAトゥデイ) 「この暗殺は、銃のほぼない日本に衝撃を与えた」「日本ではどんな形態の暴力も(アメリカに比べて)珍しく、銃による暴力はほとんどない(に等しい)。銃の関連事件の死者は昨年は1人だけで、17年以降も14人。1億2500万人が住む国としては非常に少ない数字」。よって「政治イベントでの警察の警備は手薄く、選挙期間中、有権者は国のトップと交流する機会がたくさんある」(ニューヨークタイムズ) ニューヨークポストは安倍氏が凶弾に倒れる瞬間を左斜め前から捉えた動画を掲載し、「警備が誰も安倍氏の後ろを見ていない。悲劇的。彼はいい人だった」「とてもショック。悲しいことに、私たちは愛すべき世界のリーダーを失った」とする一般の人々のツイートを紹介した。 アメリカの要人の警備は厳しい。屋外での選挙活動では、囲いを設け、来場者の身体検査と持ち物検査を徹底している。オーサーコメント 米要人も次々に哀悼の意 バイデン大統領は8日、日本の元リーダーの死に哀悼の意を表した。 「友人の安倍晋三元首相が射殺されたというニュースを聞き、私は愕然とし、憤慨し、深く悲しんでいる。 彼は私たちの人々(2国間の国民)の友情のチャンピオンだった(友情の証という意)。米国はこの悲しみの時に、日本と共にある」 安倍氏と言えば長い在任中、国際舞台で元大統領のオバマ氏やトランプ氏とも深い関係性を築いたことで知られる。 世界的リーダー同士で、トランプ前大統領とは一貫して緊密な関係を築き維持してきた数少ない1人と言われることが多い安倍氏。訃報に際し、トランプ氏は自身のソーシャルメディア、TRUTH Socialで、このように表明した。 心肺停止が伝えられたアメリカ時間昨夜の時点: 「本当に素晴らしい人物でありリーダーである安倍晋三前首相が銃撃され、非常に深刻な状態だというとんでもないニュース。彼は私の真の友人であり、さらに重要なことはアメリカにとってもかけがえのない友人だった。これは、彼を賞賛する日本の素晴らしい人々にとって大きな打撃だ。晋三と彼の美しい家族のために私たちは皆祈っている!」 アメリカ時間翌朝、死去の報に際して: 「世界にとって本当に悪いニュース!安倍晋三元首相が亡くなった。彼は暗殺された。捕まった殺害者は迅速かつ厳しく処罰されますように。安倍晋三が本当に素晴らしい人物であり素晴らしいリーダーだったことを真に知っている者はそんなにいないが、歴史がそれを教えてくれるだろう。彼はほかに類を見ないユニファイア(人々を統一するリーダー)で、何よりも彼の壮大な国、日本を愛し、大切にした男だった。安倍晋三(の死)は大いに惜しまれるだろう。彼のような人物はもう二度と現れないだろう!ドナルド・J・トランプ大統領」 こちらには現在、6万を超える「いいね」が寄せられている。 大統領時代には安倍氏と広島や真珠湾の追悼イベントを共に表敬訪問したオバマ氏も、安倍氏の死を悼んだ。 「友人であり長年のパートナーである安倍晋三が暗殺されたことにショックを受け悲しんでいる。安倍元首相は、彼が仕えた国、日本と日米両国の同盟のため、並大抵ではない献身をした」「同盟を強化するために我々が行ったこと、広島と真珠湾を共に訪れた感動的な体験、そして彼と妻の安倍昭恵氏が私と妻のミシェルに示した優しさを、私はいつまでも忘れない」「ミシェルと私から、痛ましい出来事に非常に心を痛めている日本の人々に向け、心から哀悼の意を表明する」 過去記事 2016å¹´11月、当時首相だった安倍氏は、次期大統領に選ばれたトランプ氏にどこの国のリーダーよりも早く挨拶するため、トランプタワー(トランプ氏のニューヨークの自宅)を訪れた。 次期駐日大使にトランプの長女、イヴァンカ・トランプが浮上。その噂について現地の声を聞いた (内閣総理大臣辞任発表の2020å¹´8月) ボルトンも賞賛!安倍首相に米各紙は「トップが頻繁に交代する国で功績」「達成できず」と評価入り乱れ 「心がザワザワ」米大統領、各国首脳陣など11名から安倍首相へ寄せられた贈る言葉(NYの声も) 日米を行き来する機会がある筆者にとっても、日米の友好関係は重要だ。同盟国のリーダーとして長きにわたって尽力された安倍晋三元首相の功績を讃えると共に、ご冥福を心からお祈りいたします。…

21歳銃撃犯の心の闇、危険人物の予兆、銃の申請手助けした父がコメント…米パレード乱射7人死亡

アメリカの銃乱射事件が一向に止まらない。 イリノイ州シカゴ近郊のハイランドパーク市で、4日の独立記念日のパレード中に起きた銃乱射事件。ロバート・クリモ(Robert E. “Bobby” Crimo III)容疑者は、沿道のビル屋上からパレードの群衆に向けて乱射し、7人が死亡、38人以上が負傷した。 容疑者は30発分の弾丸を2ラウンド発砲し、新たに3ラウンド目の弾丸を補填して発砲を続けたと見られる。現場には83発分の使用済みの薬莢(やっきょう)とライフル弾倉が残されていた。 容疑者の身柄は拘束され、7件の第1級殺人罪で訴追された。逃走車からは別のライフル銃と約60発の弾薬、さらに自宅からは少なくとも3丁のピストルも見つかっている。逃走中に別の乱射事件も計画していたと見られており、有罪判決が確定後、仮釈放なしで終身刑になる可能性がある。 犯人像 クリモ容疑者のプロフィールと見られるIMDbのデータや地元メディアの報道などから見えてきた犯人像がある。それらによれば、容疑者は2000å¹´9月20日シカゴ生まれの21歳、身長183センチ。 イタリア系の血を引き、3人きょうだいの真ん中で、あだ名はボビー。叔父の証言では「いつも1人でいて、静かで、すべて自分で抱えこもうとする性格」という。 コロナ禍前はパネラブレッド(チェーン展開のカフェ)で働いていたが、現在は定職に就いておらず、アウェイク・ザ・ラッパー(Awake the Rapper)というペンネームで、地元のアマチュアラッパーとして活動していた。11歳で音楽のネット配信を開始し、何曲かリリースした中で『On My Mind』という曲がヒットしたようだ。 また父親のロバート・クリモ・ジュニア(Robert Crimo Jr.)氏は商店をいくつか経営するビジネスマンで、2019年に市長選挙で立候補し銃規制を支持する民主党員に敗れたと報道されている。 殺傷能力高いライフルを使用 容疑者が犯行で使用したのは、アメリカの一般的な警官が携帯するピストルの類ではない。半自動式のライフル銃(Smith & Wesson社のM&P15セミオートマチックライフル)、つまり戦場などで用いるような、殺傷能力の高い大型の武器だった。容疑者はその武器を「合法的」に入手していた。 容疑者には「予兆」があり、十分「危険人物」だった… 1.警察沙汰 CNNによれば、容疑者は2020å¹´6月から21å¹´9月の間に、銃器を購入する際に必要な4つの身元調査をパスしている。当時の容疑者の唯一の刑事犯罪は、16å¹´1月のタバコ所持の条例違反のみで、医療施設から州警察にメンタルヘルス禁止報告書は提出されていなかったという。 しかし容疑者には危険人物としての十分な「予兆」があった。 19å¹´4月、容疑者がその1週間前に自殺しようとしたとして家族から通報があり、警察が自宅に駆けつけた。その際、容疑者と家族からメンタルヘルスの専門家に世話になっている旨の報告があった。同年9月には、容疑者が(親戚に対して)「全員を殺す」と脅迫したとして再び家族が通報。警察が駆けつけたものの立件はされなかった。その際、自宅から16本の刃物と短剣と刀1本ずつ、計18本が押収されたが、それらは父親がコレクションとして所有、保管していたもので、その後返却された。 2.暴力的なイメージの配信 容疑者は前述のラッパー名で、暴力的なイメージをオンライン上に配信していた。 YouTubeやSpotifyなど大手ストリーミングプラットフォームに、不吉な歌詞の楽曲や銃事件が描かれた暴力的なイラストを用いた自作のミュージックビデオをいくつも投稿していたが、現在それらのコンテンツは削除されている。 どのように銃を購入したのか? 容疑者の親戚への脅迫後、警察沙汰になり暴力的な傾向があるとみなされたにも拘らず、その後の身元調査に合格し、銃所持許可を取得。2丁のライフル銃も含む5丁の銃を合法的に州内で購入していた。 暴力的な傾向がある個人が銃を購入することを防ぐ、イリノイ州の「レッドフラッグ法」もすり抜けていた。 関連記事 「問題は“銃”ではない」トランプ大統領の声明(概要)と銃社会を救う?レッドフラッグ法とは 州警察当局の発表では、銃器所有者のIDであるFOID(Firearm Owners Identification)カードを申請したのは、警察への通報があった3ヵ月後の19å¹´12月だ。当時19歳だった容疑者は21歳以下ということで容疑者の父親がスポンサーとなって、申請を手助けした。その際、明確な危険性やFOIDが拒否する十分な根拠がないと判断され、翌年審査が通り、その後容疑者は銃を購入できたというわけだ。 「息子はあまり見せなかったけど、メンタルイルネス(心の病)を患っていた」「自分は何も悪いことをしていない」とする父親のコメントも写真付きで報道されている。息子が犯した大事件にショックを隠し切れず、懲役刑で罪を償ってほしい意思を示しているが、「射撃に行くために購入したと思った。息子自らの運転で行き、身元調査を受け、自分のお金で購入した銃だ」と、大量虐殺事件への関与は一切ないと強調した。銃購入のためのFOID申請をサポートしたことについての謝罪はなく、罪の意識も見られない。 過去記事 「10代」が銃を手にできるアメリカ。「学校で起こった銃犯罪データ」から見えてくるもの ライフルは容疑者の18歳の誕生日直後(事件2日前)に購入。テキサス州小学校銃乱射事件 毎日100人、年間4万人が銃で命を落とす国 3億丁ある銃器との共存やいかに? 【加速する銃乱射】今年に入って255件、死者62人 数字で見るアメリカの現実と憂い Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

年間85万人の外国人がアメリカ人に。帰化宣誓式に潜入し、米国籍を選んだ理由を聞いた

アメリカは今月4日、246回目の独立記念日を迎える。この日は親族や友人らが集まり、バーベキューや花火大会をして盛大に国の誕生日を祝う。 独立記念日を記念しこの時期は、全米各地で帰化式典が執り行われている。ニューヨーク市でも1日、米国市民権移民局(U.S. Citizenship and Immigration Services=USCIS)が主催し、22ヵ国出身の40人(15人の米軍兵士を含む)の移民を招待して帰化式典を行った。 会場となったニューヨーク公共図書館の会議室には、一番多いドミニカ共和国を始め、日本、韓国、中国、コロンビア、フランス、ジョージア、ガーナ、ハイチ、アイルランド、ジャマイカ、ケニア、メキシコ、ナイジェリア、フィリピン、スリランカ、スウェーデン、ウクライナ、イギリス、マリ、カメルーン、ブルキナファソというさまざまな国の出身者が参列。星条旗に敬意を払って合衆国への忠誠を誓い、帰化証明書をもらってめでたくこの日、米国市民となった。 政治や思想などで「分断」が叫ばれるアメリカも、いざという時になると「忠誠の誓い」の下で並々ならぬ団結力を発揮する。それはつまり愛国心でもある。式典の様子を傍らで覗いながら、改めてこの国の底力のようなものを目の当たりに感じた。 式典には日本人(匿名)が1人参列しており、話を聞くことができた。 この女性は抽選プログラムでグリーンカード(永住権)が当選したため、25年前の7月1日(ちょうどこの日)に、幼い息子を連れて渡米した。 今は当地でパラリーガルとして働いている。 米国籍を取得しようと思った理由について、「こちらで子どもも育ったことだしもともと骨を埋めるつもりだったけど、日本の親も他界した今、申請料も高くなるということで、値上がり前にアプライしてみようかと思った」という。2年前の8月に市民権を申請したがその後コロナ禍となり、プロセスが中断。 そして今年になって再びプロセスが動き出した。市民権の対面面接でのテストでは、アメリカの歴史や政治についての基本的な知識(初代大統領の名前など)を問われた。10問中6問正解したら、合格となるらしい。また、戦争になったらどの国につくか、なども聞かれた。 晴れて米国市民となった今の心境を聞くと「気持ち的にはそんなに変わらない」と言う。「日本人って他の国の人と違って生活に切羽詰まってアメリカに来ている訳ではないので。ただ今後は、選挙で投票できるのがいいですね」。 面接の時に「名前を変えるか?」と聞かれたそうだが、親からもらった日本名で今後もいくそうだ。 迷彩柄の軍服に身を包んだ、西アフリカはブルキナファソ出身のカボア・ローマン(Kabore Romain)さんは、誇りに満ちた面持ちで、式典に出席していた。帰化証明書を握りしめ「とても幸せです」と笑顔を見せる。 7年前に英語の勉強をするために来米した。昨年には米軍に入隊し、年末に市民権を申請した。その理由について「米国市民になると仕事の幅が広がるし、さらに米軍に入ると健康保険や将来の選択肢など、自国にいるより機会やチャンス、ベネフィットがたくさんある。自分は軍隊所属は初めてだが、男として生まれたからには、ただボ〜とするだけの堕落した人生は嫌だと思った。この国のために戦いたい」と今後の抱負を語った。 USCISの担当者によると、ある一定期間、紛争地に派遣された米軍部隊のメンバーは、特典として、グリーンカード保持者でなくとも市民権を授与されることがある。また(年齢や滞在期間など)市民権を得るために必要なさまざまな要件が免除されることがある。 昨年、新たにアメリカ国籍を取得した外国出身者は85万5000人にも上るという。今年は先月15日時点で既に66万1500人が帰化しアメリカ市民となっている。この数字は日本の例と比べるとかなり多い。法務省の資料によると、日本での昨年の帰化許可者数は8167人で、韓国・朝鮮人、中国人が多いようだ。(内訳は韓国・朝鮮3564人、中国2526人、そのほか2077人) また、アメリカに帰化すると聞くと南米や東欧出身者のイメージがあるが、合衆国国土安全保障省の資料によると、2020年にアメリカに帰化した日本人の数は全米で1584人(カリフォルニア州515人、ニューヨーク135人など)ということだ。隣国メキシコ出身者の8万4081人、カナダ出身者8423人に比べると少ないが、それでもそれほど少なくない人数の日本国籍保持者がアメリカ国籍を取得している。帰化をするきっかけの1つとして、結婚して配偶者に滞在ステータス(グリーンカード)を与えるためという例もたまに聞く。また日本のパスポートを保持する外国出身者が日本人としてアメリカに帰化する例もあるようだ。 関連記事 【移民遺産月間】先祖を辿れば誰もが「移民」米国の取り組み 英語教育を無償提供 大坂なおみ選手と重国籍問題 アメリカ国籍を選んだ「元日本人」に聞いた Text and photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止