妖艶に腰落とすポーズが全米で話題 お笑い芸人アツコ・オカツカさんって誰?

大谷翔平選手、大坂なおみ選手、BTSなどアメリカでアジア系の人々が話題になる中、エンタメ界ではある女性が大注目されている。 スタンドアップコメディアンのアツコ・オカツカ(Atsuko Okatsuka)さん。アメリカのショウビジネスの表舞台に彗星の如く現れ、頭角を現している。 オカツカさんは昨年、ニューヨークタイムズに「コメディ部門の2022年ベストデビュー」として選ばれた。 最近の話題作は、先月10日にオンエアが開始したHBO MAXオリジナル『Atsuko Okatsuka: The Intruder(ザ・イントゥルーダー)』だ。彼女は、HBOでコメディ番組を持った2人目のアジア系女性となった。 彼女の芸風は、自分のルーツに絡んだネタを笑いにしたものが多い。 ちなみにアメリカのコメディアンは、黒人が黒人を、アジア系がアジア系の特徴を笑いにするなど人種ネタを取り入れることは割と多い。そしてほかの人種がそれを大笑いするのも許される。 オカツカさんもこの国のマイノリティであるアジア系を逆手に取り、「親は自分にアツコ・オカツカと(アメリカでは聞きなれない名前を)つけたのに、自分たちの名前は英語名なんだよね。ご丁寧にありがとう、母さん」と自虐ネタを披露し、会場は大爆笑。「食べろ、食べろ」と年配のアジア系の人がよく言うセリフを使ったネタも、面白おかしく披露している。 彼女はちょうど1年前、ビヨンセの曲『パーティション』と共に艶めかしく腰を下ろすドロップチャレンジ(Drop Challenge)を披露し、ソーシャルメディア上で瞬く間に広がった。俳優のテリー・クルーズやテニスのセリーナ・ウィリアムズ選手などセレブが次々に真似をし、さらに話題となった。 つい最近、CBS局の人気番組『ザ・レイトショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』にもフィーチャーされ、ドロップチャレンジのことを話している。この番組のゲストにブッキングされることがどれほどすごいかは、ここ1、2ヵ月でゲスト出演したヘンリー王子や大坂なおみさんなどの錚々たるネーミングを見ればわかる。過去に近藤麻理恵(こんまり)さんも出演している。 アツコ・オカツカさんは日本にルーツを持つ日系人? 彼女の英語を聞く限り100%アメリカ人だが、名前は100%日本人だ。 彼女のルーツについて、ウィキペディアには「日本人と台湾人のハーフで、台湾で生まれ日本で10歳まで育ち、母親と祖母とアメリカに移住した」とある。自身も過去の動画で「私は日系と台湾系のアメリカ人コメディアンです」と自己紹介している。 また動画の中で、幼少期についてこのようにも告白。「ある日祖母に『2カ月、アメリカ旅行に行くわよ』と言われて渡米。そのうち滞在ビザが切れ、7年間オーバーステイ(不法滞在)となった」。 無名時代のお笑いのステージ(2016年) 5年前の映像で、「スタンドアップを始めて8年になる」と言っていることから、2010年ごろからスタンドアップ・コメディアンとして活動をしているようだ。以前より、日本の文化(アメリカでは聞き慣れない自分の名前や日本の変わったクリスマスなど)もネタにしている。最近は、祖母や夫をフィーチャーしたネタやダンスネタを取り入れたり、たまにセミヌードになり超セクシーな格好でSNS上に現れる。これらも話題作りの1つだろう。 筆者は彼女のインスタグラムやツイッターの中からいくつかのイメージを見て、一時期のブルゾンちえみさんをよりセクシーなアメリカ版にした印象を持ったが、どうだろうか。 志村けんさんが亡くなった時のインスタに、「日本にいた時、自分にとってのアイドルだった」と追悼していた。オカツカさんが日本のお笑いに影響を受けた芸人であることは間違いなさそうだ。 現在は3月中旬まで、コメディショウで全米ツアー中のオカツカさん。今年はさらに、アメリカ中を笑いの渦に巻き込んでいくことだろう。 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

写真美術館ICPでポートフォリオ展 NYで明日より開催

写真とビジュアル作品に特化したニューヨークの美術館、ICP(International Center of Photography 、国際写真センター)で、明日より2つの新たな展覧会がスタートする。 「Face to Face」展は、現代アメリカのポートレート撮影界では外せない3人の著名フォトグラファー、ブリジット・ラコンブ(Brigitte Lacombe)氏、タシタ・ディーン(Tacita Dean)氏、キャサリン・オピエ(Catherine Opie)氏による作品が並ぶ。 オーガナイズは、作家のヘレン・モールスワース(Helen Molesworth)氏が担当した。 もう1つの「Between Friends」展では、アンディ・ウォーホルが撮影した友人の小説家、トルーマン・カポーティの写真など、20万点に及ぶICPのコレクションの中から厳選された作品が展示されている。 ポートレート撮影と言えば、スマホが浸透した昨今、撮る方も撮られる方も、その難しさを感じている人は多いのではないだろうか。 筆者は新人だった頃、日本でプロ・ミュージシャンインタビューをしていた。撮影もその多くは、私が担当していた。その時代に使っていたのはフィルムカメラ。デジタルと違って、出来上がりは焼き上がるまでわからない。相手は東京からやって来たミュージシャンで再撮できないから、当然失敗は許されない。慣れないもんだからもたもたしたり、念には念を入れ多すぎるほど撮影して時間がかかったりで、誰もが知るミュージシャンをイライラさせてしまったことがある。 また旅先の街角で素敵な人を見かけたとき、写真に収めたい!と思っても、相手が見知らぬ自分にレンズを向けられどう思うか不安で躊躇したり、恐る恐るレンズを向けたことも。せっかく撮影した千載一遇のベストショットを誤ってデリートしてしまったのも忘れられない記憶。そんな数々の失敗を経て今に至るのだが、その葛藤は今も続く。 実は今日の取材も撮影ありだった。被写体は不動産ブローカーのセールスの方でノリが良く見た目も絵になるので救われたが、それでも未だ簡単なこととは思えない。毎回試行錯誤しながら、自分にとってのベストショットを手探りする日々。 フォトグラファーが撮りたいイメージと被写体が撮られたいイメージに乖離があったりするし、私自身もそうだがレンズを向けられると急に表情が強張ってしまうことがある。良い表情をもらうには、何よりフォトグラファーと被写体との信頼関係が大切だ。 相手との距離感を乗り越え、プロのフォトグラファーはどのように被写体に向かっているのか。この展覧会で、自分の目で確かめてみてほしい。 この特別企画展は、5月1日まで。 Info ICP Text and photos by Kasumi Abe (ノアドット「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

【まとめ】 人種差別 – 黒人差別&アジア人差別関連記事

オーサーの安部かすみが記事で発信してきた有色人種差別(黒人差別、アジア人差別など)を中心に、ここにリストでまとめます。 1. 人々の証言 実際に差別を受けた人、周りで見た人に話を聞きまとめました。 日系人強制収容から80年 強制収容所生まれ、被爆後の広島育ち、ベトナム戦でPTSD、3つのアジア系差別を経験 ─ 日系人・古本武司さんが伝えたいこと (前編) (後編)  NYで多発するアジア人差別 暴行受けた日本人ミュージシャン、その後ハーレムで突然暴行を受けたジャズピアニスト、海野雅威さんの証言 日系三世女性の見た、故郷「アメリカ」シカゴ生まれの日系三世のジュリー・アヅマさんの証言 日本人に間違われ「動物以下の扱いで」殺されたヴィンセント・チン事件ミシガン州弁護士、日系三世のジェームズ・シモウラさんの証言 日本人には決して語れない「黒人としてアメリカで育ち、生きること」ニューヨーカーのリアルな声 2001年米同時多発テロ。ニューヨークに住む人々にとって9/11はどんな日だったのか 2. 人種差別関連の事件、出来事 2022年 警官に“60発”撃たれた黒人男性ジェイランド・ウォーカーと過去の類似事件。警察は今後追いかけない? ホワイトハウス記者会見、直後の視聴190万回!BTSがもたらすアジア系差別問題への効果は? 生中継で中国の「ジェノサイド」複数回触れられる …【北京五輪 開会式】米メディアはどう報じたか NY地下鉄線路に突き落とされたアジア女性の悲劇 ホームドア設置が急務も「なかなか進まない」事情とは 2021年 黒人が投票しにくい?新たな投票法が米メジャーリーグやコカコーラも巻き込む騒ぎに 容疑者は性依存症との報道も 8人死亡の米アジア系マッサージ・スパ連続銃撃事件 アジア系へのヘイトクライム急増、女性誌編集長のアジア人侮辱ツイートが大問題に Newsweek Japan 2020年 「日本には差別がある」ナイキ広告が炎上し世界に波及 本国アメリカではどう映った? 大坂なおみ優勝 黒人差別に対するメッセージも含め米メディアはどのように報じたか 「黒人差別は“個人”でなく“構造”の問題」をあらわにしたブレオナ・テイラー射殺事件を今一度解説 NY市警察に殺された日本人留学生事件 この機会に思い出してほしい7年前の悲劇 アジア系米国人記者に「中国に聞け」と激怒し会見打ち切ったトランプ その一部始終 白人警官への怒り全米各地に飛び火 NYでも最大規模の抗議活動「息ができない!」と叫び続ける人々 至近距離から7発!子連れ黒人男性に警官発砲、一命取り留めるも半身不随に ── 終わらないBLM 殺人犯の白人は撃たれず、黒人は簡単に撃たれるという米国の矛盾 ── 自警団とは? 17歳少年ライフル乱射に発展、3人殺傷 ── 警官に7発撃たれたジェイコブ・ブレーク事件その後 至近距離から7発!子連れ黒人男性に警官発砲、一命取り留めるも半身不随に ── 終わらないBLM 破壊、略奪、デモ(市長の娘も逮捕)そしてコロナ禍・・・終わらないNYの悲痛と苦悩 殺意を持って丸腰の黒人を殺した白人警官 実はフロイドさんのことを以前から知っていた? NY外出制限中もバーにビーチに人が殺到 警官の暴力的な取り締まりに市民の不満さらに NY 犬の散歩の口論で人種差別問題に発展 SNSで女性への執拗な死の脅迫が続々と…

物価高、インフレ進む米国 思わぬ食品、卵が「高級品」の仲間入りのワケ

先日、ニューヨークの友人とこのような会話になった。 「何でも値上がりで嫌になるわよね」 「卵が9ドルよ、9ドル!牛肉が7ドル。牛肉より卵が高いって、一体どうなってるのよ!?」 厳密に言うと、牛肉も卵も重量や質によって価格はマチマチだが、それでもここ1年の卵価格の上昇率は尋常ではないと感じていたので、友人の指摘はごもっともだと思った。 日本でも日々価格高騰が伝えられるが、アメリカ、特にニューヨークやロサンゼルスなどの大都市での価格高騰は日本の比でないほど顕著だ。今やラーメンはチップも含めると20ドル(約2600円)以上は当たり前。並みのレストランやフードホールで軽くサンドイッチを食べても、だいたいそのくらい。観光客が行ったファミレスでちょっとしたパンケーキセットの朝ごはんが2人で8000円だったとも伝えられている。 観光客が行く店は、地元の人が普段使いするそれより一般的に価格が高い傾向があるが、それでも地元民が普段使いする飲食店やスーパーでも価格が上昇したことは日々実感中だ。 ここで特に気になるのは、冒頭に書いた尋常でない卵の価格高騰である。 スーパーでは肉や魚、パン、バター、シリアル、スナック菓子など食料品全体の価格が跳ね上がっているが、上昇率が尋常でないのが「卵」なのだ。 インフレ前は一般的なスーパーで、1ダース(12個入り)2~3ドル台(約300円前後)の商品が主流だったと記憶している。しかしここにきて、主流商品は5~7ドル(約642~899円)に、中には9ドル~12ドル(約1155~1540円)近くする高級品のようなものまである。今やアメリカでは、卵そして卵を使った料理は歴とした「高級品」である。 昭和時代の戦後間もない時、アメリカでも昔は高級品だっただろう。しかし時代は21世紀。卵は卵である。筆者は今の所最安値から1つ上のランクの5、6ドル台の商品を選ぶことが多く、それで満足している。1600円近くする卵には到底手が届かない。一体どんな飼育方法で生まれ、どんな味だろうかと思いを馳せる。 「なぜ卵の価格がこんなに高いのか」米誌が解説 なぜ卵の価格がここまで上がってしまったのだろうか? カリフォルニア州で12個入りの卵が7.37ドル(約946円)に値上がりしたとして、食関連のマガジン『フード&ワイン』は13日、「なぜ卵の価格がこんなにも高いのか」という記事を発表した。 アメリカ労働省の今月の消費者物価指数によると、家庭の食料品価格の上昇を示す波は横ばいに落ち着いているが、卵1ダースの価格だけが上がり続けており、前年比で59.9%上昇したという。昨年11月から12月にかけての上昇率は著しく、11.1%も跳ね上がった。平均価格は2021年12月の時点で1.79ドルだったのが、昨年11月の時点で3.59ドル、12月で4.25ドルになった。 卵の価格を押し上げる要因はいくつかあるが、最大の要因は進行中の鳥インフルエンザの流行だという。アメリカ農務省の発表では、46州で約5800万羽のニワトリや七面鳥が鳥インフルエンザに感染し殺処分されたことで、産卵鶏の数は5%減少した。これが供給に影響しているようだ。 また卵の価格高騰の理由はほかにも、燃料費、鶏の飼料費、卵のパッケージの包装費などの上昇が関係している。 ニューヨーク市内のスーパーの卵売り場では、このような張り紙も見るようになった。 「現在、全米で卵不足による価格高騰が続いています。これらの供給の課題に対処するためできる限りのことを行っています。ご理解に感謝します」 また卵の価格高騰の影響を受けているのは一般の消費者だけではない。飲食業界の経営者にも頭が痛い問題だ。 同誌は、「卵のコストが週750ドルから2500ドルに跳ね上がった」と頭を抱える飲食店の経営者や、メニューの値上げを踏みとどまっている別の経営者のコメントなどを紹介している。値上げの踏みとどまりの理由は、「消費者が、この価格高騰の裏でいったい何が起こっているのかをどこまで理解しているかわからないため、闇雲にメニュー表の値上げに踏み切ることをためらう。新規客に気軽に店に来てもらいたいから」。 飲食業界の悲鳴は、日本もアメリカも同じようだ。 インフレ 関連記事 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

ハリー王子はなぜここまで暴露するのか?米テレビ番組で本人が語った「告白の真意」

アメリカで本の売れ行き絶好調 10日に発売したハリー王子の回顧録『SPARE(スペア)』。 本の中でハリー王子は、兄のウィリアム皇太子や父チャールズ国王との確執から、コカインなどの麻薬使用、年上女性との初体験の具体的な描写、アフガニスタンでの敵兵25人の殺害など、数々のショッキングな内容を事細かに暴露し、世間を驚かせている。 英王室のあるイギリス国内の世論は辛辣だ。ハリー王子の支持率急落も伝えられる。英国民にとって、自分たちの愛する英王室一家が、ハリー王子夫妻により虐げられているのだ。これ以上の屈辱はないだろう。 王室がなく、王室に嫁いだ妻(メーガン夫人)の出身国で、夫妻の受け入れ(移住)先となっているアメリカでの、この本の受け止めは非常に良い。 売り上げは、発売初日の10日だけで、アメリカ国内で40万部が売れたと発表され、11日付のニューヨークタイムズによると、予約注文も含め米国、カナダ、英国の初日の売り上げは143万部にも上るという。この数字は、大手出版社ペンギン・ランダム・ハウスがこれまでに出版したノンフィクション本の中で、初日売上高の最高記録だそうだ。 アメリカの世論からは同情を買っているハリー王子夫妻であるから、本の内容に対する評価もかなり良い。米アマゾンのレビューは今のところ、総合4.5で圧倒的に5星が多い。 筆者もニューヨーク市内の本屋を覗いてみた。ちょうど新年のセール中のため、大多数の割引対象商品がフロア全体を占領している中、『スペア』はレジ周りに陳列されていた。店員によると、この店でも売れ行きは良いという。 市の公共図書館はどうなっているか探ると、ブルックリンの図書館だけで179部が入荷しているが、発売日当日ですでに1219人が待ちの状態だった。 本の発売を前に、ハリー王子はアメリカでいくつかのテレビ番組に出演した。 CBS局の長者番組、『60ミニッツ』と『ザ・レイトショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア』などだ。前者はベテランキャスターのアンダーソン・クーパー氏によるインタビューで、後者はベテラン司会者スティーヴン・コルベア氏によるトークショー。どちらも人気番組だ。 前者の番組は、クーパー氏による真剣なインタビューとなった。ちなみに番組側が放送前、英王室報道官にコメントを求めたところ、英王室から放送前に番組内容の開示を求められたという。番組は公平で対等なジャーナリズムの見地から開示要求に応じなかったことが伝えられた。 後者の番組の司会者、コルベア氏はコメディアンだ。“スペア”(予備)の椅子も用意され、この日は特別にテキーラを飲みながらリラックスした状態で終始笑いに包まれトークが進んだ。王子はお酒を呑んでいるせいかテンションが高めで、トーク内容は(おそらくイギリスでは許されないだろう)下ネタとピー音も交えた。(男性器や下着の呼び方のイギリス英語とアメリカ英語の違いと双方のリアクションも興味深く、笑いを誘った) それらのテレビ番組に本人が出演し直接コメントしたことで、いくつかの疑問が本人により解き明かされた。 疑問1 王子はなぜここまで英王室や自身の人生を暴露するのか? 王子によると、米カリフォルニア州に移住した2020年はロックダウン中で、静かに暮らすことができた。「自分を取り巻く社会やコントロールからの解放を味わうことができた。できれば今後も静かに暮らしていきたかった」と本音を漏らすも、妻(メーガン夫人)についてのリークや偽情報を好き勝手にメディアに書かれ続けたことから「匿名のソース(情報源)からの情報はタブロイドの餌食となり読者を過熱させ、妻と子を傷つけることになりかねない」と危機感を覚えた。そのため「腰を据えて、真実を自分の口から直接話す必要があると感じた」と言う。 「この本に書いてある情報は、匿名のソースによる情報ではない。すべて自分の口から出たものだ。ソースは自分(だから偽情報はない)」と述べた。 クーパー氏は「(英王室はあなたによって)『会話がリークされ、どうやって信じられる?』と言っているが」と食い下がると、王子は「事の始まりは妻に対する日々のでっち上げからで、その結果我々は国を追われるに至った」と、自分たちはあくまでも被害者という姿勢を崩さなかった。 疑問2 なぜアフガニスタンでの敵兵殺害を詳細まで書いたのか? 嘘偽りのない情報を自らの口で言うにしても、アフガニスタンで殺害した25人のタリバン兵の話など、告白が過ぎるのではという意見が上がっている。アフガニスタンでは抗議運動も起こっていると伝えられる。 王子自身はまず「この会場に元兵士はいますか?」と視聴者に問いかけた。会場からは拍手と歓声が上がった。 (注:アメリカでは国を守る兵士、元兵士=退役軍人は崇められ、ヒーロー扱いされる) 王子はこのように述懐した。「殺害人数も含めこれらの告白は、聞く側にとって居心地が悪いものであることは承知です。自分にとっても執筆内容でもっとも危険でチャンンジングなことの1つだった。自分を危険に晒すことになるのは疑いの余地はない」。 コルベア氏が「自分と自分の周りの愛する人たちが標的になる可能性が高まるということですね」と問うと「そうです」と答え、「それでもあえて書くことを自ら選択した」と言った。 ではそのような危険を覚悟の上で、なぜ書いたか? 「この事実を恥と思わずに、詳細に至るまで正直に本でシェアすることで、(PTSDに苦しむ世界中の元兵士の)自殺者を減らすためだ。これが本で伝えたかった自分の目標だ」 会場は大きな拍手と歓声に包まれた。 番組の中では、このように述べたハリー王子も印象的だ。 「この美しいアメリカは素晴らしい所です」 新天地アメリカが心から気に入っている様子のハリー王子。アメリカ人にとってはこの上ない褒め言葉である。ハリー王子とコルベア氏は2杯目の杯を交わす。 王室のある英国と比べ、米国では夫妻を擁護する声が多く上がっている。行く先々で温かく迎え入れられているだろう。 一方で王子は、父とも兄ともしばらくやりとりをしていないと言う。「間違ったことをしたのであれば謝りたいと言っているけれど、相手は何も言ってこない」「しかしながら、心の中では家族であることは今後も変わらないし、もう一度家族としての要素が戻るといいなと思っている」。このように、仲違いしている家族に対する思いを寄せることも忘れなかった。英王室メンバーにはもう戻るつもりはないことも明かした。 Photo (Top): 英国の書店(イメージ)。Photo by Tuur Tisseghem on Pexels.com ハリー王子夫妻 関連記事 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

米国で囁かれているメーガン夫人とオノ・ヨーコの「意外な共通点」

昨年12月のネットフリックスの『ハリー&メーガン』公開に続き、ハリー王子の回顧録『SPARE(スペア)』が今月10日に発売されるにあたり、アメリカでは連日、ハリー王子とメーガン・マークル氏(サセックス公爵夫人)の報道が過熱している。 回顧録ではウィリアム皇太子の暴行疑惑やハリー王子が軍隊在籍時に25人の敵兵を殺害したことなどショッキングな暴露の連続で、報道は過熱する一方だ。普段ならゴシップを取り扱わないCNNやCBSのニュース番組までもがハリー王子夫妻と英王室のスキャンダルを取り上げる始末。 筆者の周りでも、女性の友人との会話で、英王室スキャンダルの渦中にいる同夫妻の話題が少しずつ上るようになってきた。 筆者の実感としては、イギリス人はこの話題に熱い。一方で一般のアメリカ人は割とクールに捉えているようだ。例えば先日、あるホームパーティーで、このゴシップネタが話題に上がった時のこと。イギリス出身で長年アメリカに住む知人は夫妻が次々に投下する爆弾発言に不快感を示し、このように言った。 「(メーガン夫人は)何でも人種差別問題にリンクさせるから、いけ好かない。被害妄想が大き過ぎる!」 一方アメリカでは、#ShutupMeghan #ShutUpHarry(黙れ、言葉を慎め)がツイッターのトレンドワードになる一方で、実際に人々に話を聞くと「あまり気にならない」「メーガンは嫌いではない」という意見が目立つ。王室制の国とそうでない国、また人種差別問題が身近にあって敏感であるかどうかなど、国民性が大いに反映されるトピックだと感じる。 そんな中、ABC局のトーク番組『The View(ザ・ビュー)』でも、同夫妻と英王室のスキャンダルの話題で持ち切りとなった。コメディアンのジョイ・べハー氏はメーガン夫人を擁護する立場で、このように口火を切った。 「王室の誰もがメーガンをヨーコ・オノのように扱っているように見えます」 さらにこのようにコメントを続ける。 「ビートルズを解散させたと言われたヨーコ・オノは一瞬にしてのけ者になった。今起こっている(ハリー&メーガン夫妻の)騒動と似ています。言われていることがすべて本当ならの話だけど、ウィリアム(皇太子)はなぜメーガンにそんなに腹を立て、ハリーをも追い立てているのか、奇妙ですね」 オノ・ヨーコ(小野洋子)氏と言えば、日本出身の前衛芸術家で今もニューヨークのダコタハウスに住む。一世を風靡したビートルズのジョン・レノンの妻だ。ヨーコ氏はビートルズを全盛期に解散に持ち込んだ人物として、全世界のファンを敵に回したことでも知られる。当時はファンの間で「いけ好かない女」の代表格とされていた。 御年80歳になるべハー氏は、ビートルズが解散した1970年、28歳だった。言うなればちょうど「ビートルズ世代」ということになる。 関連記事 ビートルズ解散から10年後の1980年12月8日、当時40歳だったジョンは、ニューヨークの住居、ダコタハウス前でファンに射殺された。 ヨーコ氏が60年代、70年代、世界に及ぼした影響がどのくらい大きなものだったか想像できるだろうか? きっと若い世代の人にとってその想像は容易ではないだろう。現代版であえて例えるならば、「BTSの中心メンバーの1人がどこか遠い国の女性アーティストと恋に落ち、その女性がBTSの音楽活動に次第に首をつっこむようになり、グループの今後の活動に影響を与えてしまうほどの存在に成り上がり、最終的にその女性の存在や活動がきっかけでBTSが解散してしまう」くらいの衝撃だったと説明すれば、わかり易いだろうか。当時のヨーコ氏はそれくらいの激震を世界にもたらした人物だった。 今でも、アメリカの年配者に「ヨーコ・オノ=日本人の魔女的なイメージ」は残っており、「日本人」というワードからジョン&ヨーコを連想する、なんていうのも決して珍しいことではないのだ。 つまり、英王室を英国出身のビートルズとなぞらえ、そのグループを引っ掻き回す存在を、外野からやって来た外国人女性、メーガン氏をヨーコ氏となぞらえたべハー氏なりの比喩であった。 ところでヨーコ氏と言えば、筆者はこれまで2度見かけたことがある。1度目は講演会、2度目は個展だった。2015年9月、MoMA(近代美術館)での個展の最終日、突如来場者の前に姿を見せたヨーコ氏。小柄で可愛らしい印象だった。筆者は近くまで寄ることができたので日本語で話しかけたところ、英語で返答された。アメリカに移住しすでに長い年月が過ぎており、日本語をいっさい使わない生活なのかもしれない。 そして、ヨーコ氏が本当にビートルズを解散させた人物であるのか否かについては議論が分かれるところだが、筆者が聴講した2007年の講演会で、ヨーコ氏はこのように自身の言葉で語っていたのが印象的だった。 「ジョンのことをムリやり手繰り寄せてもいないし、何を言ってもメディアはでっち上げるから悲しい」 真意のほどはわからないが、騒動についてはメーガン夫人も同じような心境にあるのかもしれない。 関連記事 筆者は以前、ニューヨークでオノ・ヨーコ氏の講演に行ったことがある。また美術館で偶然彼女に会い、握手をしてもらったことも。 トーク番組『ザ・ビュー』の話に戻るが、べハー氏は共演者に「マークルが英王室騒動の責任を負う人物と思うか?」と尋ねると、コメンテーターのアナ・ナヴァロ氏は「あらゆることがゴシップとして取り上げられている。現実はより暗く悲しいものだろう」と語った。また「悲惨な家族単位の崩壊が目の前に見えている。ネタ、エンタメとして取り上げられるゴシップで、王室のことだけどそれは家族の話題でもある。これだけ世の中に騒がれてしまい、傷(家族関係の亀裂)が癒えるのは難しいのではないか」との見解も示した。 べハー氏は「彼女に対する暴言は鼻持ちならない。信じがたいほどの虫酸が走る」と、番組内では終始、メーガン夫人を擁護する姿勢を崩さなかった。筆者が感じる一般的なアメリカ人のリアクションと通じるものがある。 ハリー王子の回顧録の発売まであと数日。発売後、夫妻と英王室を取り巻くゴシップの炎がさらに過熱することは必至だ。 関連記事 関連動画 ジョン・レノンが殺されたダコタハウス周辺の「今」 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

2023年元日

明けましておめでとうございます!平和で愛にあふれた健やかな1年になりますように。 この写真は年末のパピーミル犬の写真ですが、ずっと暗くて狭い所にうずくまっていたのに、飼い主から愛情をたっぷり受けたら、明るいところに出てきてこんなに体を広げてリラックスできるようになりました。 愛の力ってすごい!って改めて思ったところです。 今日はニューヨークは元日。お天気が良く、お散歩が気持ちいい1日でした。野良猫が擦り寄ってきたので可愛かったです。野良猫と思っていたら…飼い主さんがいたみたいで(隣のグロッサリーの店員さんが)出てきたのでお話しました。ルナちゃんていう名前だそう。犬も猫も言語はないですが、人間が言っていることをよく理解しているなと感じます。 なんでも最初が肝心、ということで、今年1年を超絶最強のパフォーマンスにできるよう、今年取り組もうと思っていることを元日から始めました(サンサンと降り注ぐ朝日を浴びながらの朝のお散歩、TO DO LISTの見直し、体重測定&エクササイズ(→ただ痩せたいのではなくカーヴィーを保ち引き締めるべきところだけ引き締める)、こまめな掃除やものを増やさないなど快適な住居環境など)。また私の人生に不要だと思うもの(お酒やタバコ、SNSの使い過ぎ、下らないことに執着したり時間を割くこと、など)は引き続き今年も避けます。やるべきことをコツコツ積み上げ、やらなくていいものをやらないのは、とても気分が良いものです。またお日様からもらうパワーもなかなか侮れないです〜。 新しいことをするのも気分が良いです。今年も新たなことに取り組みます。チャレンジすることを忘れない。ダメだと自分で勝手に決めつけない、諦めない。 今年も必要と思う人やところに惜しみなく「与える」人でありたいなと思います。与えるのは別にお金や物のみならず、親切や思いやり、愛情などそういうことも含めてです。 ということで、今年も1年よろしくお願いいたします! 安部かすみ(2023年元日)

永遠の歌姫、映画『ホイットニー・ヒューストン』公開に米紙が酷評 ボヘミアン・ラプソディの再来なるか?

永遠の歌姫、ホイットニー・ヒューストンが、映画で蘇った。 没後10年となる今年、ホイットニーの生涯を描いた伝記映画、I Wanna Dance with Somebody(邦題『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』)が本国アメリカ、そして日本全国の映画館で、23日から一斉公開される。 が行われた。会場には、歴史に語り継がれるほどの感動を与えた1991年のスーパーボウルでの国歌斉唱シーン(ABCニュースでの映像)を再現したパネルが設置され、参加者は記念撮影などを楽しんだ。 また13日にはワールドプレミアムも開かれ、ホイットニーを演じた主演のナオミ・アッキーやホイットニーをスターダムにのし上げた音楽プロデューサー、クライヴ・デイヴィス役のスタンリー・トゥッチなどが姿を見せた。 48歳で突然散ったホイットニーの栄光と複雑な生涯 6回のグラミー賞受賞経歴を持ち、映画『ボディガード』(1992年)に主演、数々のヒット曲を放った人気歌手、ホイットニー。そんな栄光の影で、彼女は2012年2月、グラミー賞の授賞式の前日に48歳の若さで生涯を閉じ、世界は唯一無二の才能を突然失った。 その死後も、元夫ボビー・ブラウンとの一人娘、ボビー・クリスティーナ・ブラウンさんが2015年に22歳の若さで、また12歳で孤児院から引き取り育て上げたニック・ゴードンさんも2020年、30歳で亡くなるなど、家族に不幸が続いた。 映画の脚本家は、過去にイギリスの伝説のバンド、クイーンとフレディ・マーキュリー(vo.)の生涯を描いた大ヒット作『ボヘミアン・ラプソディ』の脚本を手がけたアンソニー・マッカーテンだ。『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』への期待は否応なしに高まる。 しかし米主要紙のレビューは手厳しい。 ワシントンポストは、「当たり障りのない伝記映画。ベスト盤を聴いているようで、物語にはほとんど一貫性がない」とした。 ニューヨークポストは「マッカーテン氏の脚本には芸術性がない」「いつの日かヒューストンの超越した才能と複雑な人生を蘇らせる映画が作られるだろうが、残念ながら本作ではない」という評価だ。『Whitney』というドキュメンタリーが2018年に発表済みだが、この記事は別の作品を期待しているようだ。 低評価がある中でも観たい、ホイットニーの世界観に没入し刺激を受けたいと思うのがファン心理だろう。ボヘミアン・ラプソディ公開時のような、音楽界のレジェンドブームが再びやって来るだろうか。 関連動画1 『ホイットニー・ヒューストン I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』 関連動画2 関連動画3 ホイットニーがどれほどの歌唱力を持っていたか。彼女の歌声を聴いて、鳥肌が出たという経験は一度や二度はあるだろう。アメリカでも話題になり拡散された、ホイットニーの歌声に感動する赤ちゃんの動画。 Text and some photos by Kasumi Abe 安部かすみ(Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

カタールW杯が我々に残したものは「不安な未来の兆候」。感動に水を差す米有力紙の辛辣な総括

カタールで開催されたワールドカップ(W杯)に、世界中のスポーツファンが釘付けになった。 男子サッカーがそれほど強くないアメリカ。今大会の早い段階で代表チーム敗退後も、大会自体への注目度は高く、連日のように試合結果がニュースとして取り上げられた。決勝戦の日は盛り上がりが最高潮に達し、近年高まるサッカー熱を感じずにはいられなかった。 これだけ盛り上がったのだから、大会後に心にぽっかり穴が空いたような気持ちになる人も多い。 19日付けのNPRは「あなたが典型的なアメリカ人であれば、W杯終了後の今、何をしていいかわからないだろう」と題し、フロリダ州インター・マイアミやフランスのパリ・サンジェルマンなど世界中のプロサッカークラブや国際選手権を紹介している。 またアメリカは女子の代表チームが強豪でFIFA(国際サッカー連盟)女子ワールドカップの優勝の常連だ。来年7月よりオーストラリアとニュージーランドで開催されるW杯も期待されている。 「熱狂が開催国の“汚染”払拭」 米主要メディアNYTの手厳しい総括 さて今回のカタール大会だが、大会当初から驚きの連続で、まるで映画か小説のようなドラマチックな試合展開となったアルゼンチンとフランスの決勝戦で盛り上がりは頂点に達した。 米報道も、優勝国アルゼンチンの表彰式でメッシが着せられた中東の伝統衣装ビシュトから、ゴールキーパーのマルティネスによる卑猥なジェスチャーの話題まで、さまざまなヘッドラインがメディアを飾った。 数ある報道の中で19日早朝に発信されたニューヨークタイムズのポッドキャストが興味深かったのでここで紹介する。 How This World Cup Changed Soccer(このW杯がサッカーをどのように変えたか) この回は司会進行のサブリナ・タヴァニス記者が、ゲストにチーフ・サッカー特派員で現地取材をしたロリー・スミス記者を迎え、解説したもの。 タヴァニス記者は冒頭、「W杯に世界中が釘付けとなり、スター選手のメッシ、アルゼンチンがフランスに勝利。連日の熱狂で当初問題になっていた『汚染』がどのように覆され、未来にどう繋がるのか。このW杯がプロサッカーの不安な未来の兆候かもしれない理由を話しましょう」と、インタビューを開始。 そもそもの話だが、今大会は開催前から物議を醸していた。中東地域では21世紀の今も明らかな男尊女卑、男女格差が色濃く存在し、同性愛は犯罪だ。開催国カタールも例外ではなく、女性やLGBTQの人権が軽視されている。またスタジアムの建設作業に奴隷同然に駆り出され死亡した移民労働者の冷遇についても問題視されている。そのような国で国際大会を行うことに不安があるとして、人権擁護団体を中心に批判が高まっていた。それが「汚染」という言葉に表れたようだ。 メッシの活躍とフランスの攻防戦の物語がすべての不安を払拭 メッシのファンであろうスミス記者は、そのプレーを生で観ることができ「本当に光栄だった。彼は優勝に値すると心から感じた」と、悲願のトロフィーを手にした栄光の物語に感服した様子だ。「記者である以上公平な立場を心がけた上で、納得のエンディングだった」と、アルゼンチンが36年ぶりに3度目の世界チャンピオンになった試合運びを振り返った。 「ところで世界はこのW杯が始まった時のことを覚えているでしょうか?」と、タヴァニス記者は問う。 「移民労働者が亡くなったが(優勝決定戦の翌日の)今、人々の記憶に鮮明に残ったのはアルゼンチンとメッシの勝利だ」。お祭りムードに水を差し、冷静に総括する必要がある姿勢を見せる。 「当初渦巻いていた問題がありますね」とスミス記者も同意する。問題にはスタジアムでのビール販売の可否から、LGBTQの差別撲滅を訴える選手の腕章着用の禁止なども含まれる。 「FIFAとカタールは平等や人権といった厄介な問題を超えるため、自らの権威を見せつけ反発を封じ込めようと決意した。しかしそれによりさらに問題が注目を集めていったのだが」(スミス記者) しかし実際試合が始まると、混乱からFIFAとカタールを救ったのは、観客の試合への熱狂そのものだった。その熱狂とは…。 衝撃はサウジアラビア、日本、そしてモロッコ 「まず、サウジアラビアがアルゼンチンを破った試合。その後日本がドイツとスペインを破った衝撃が続いた。さらにモロッコによる究極の躍進だ」とスミス記者。「今大会でのモロッコについて、これほどの強さを予想した人はいなかった。ベルギーを倒しスペイン、ポルトガルに勝ったことで(アフリカ勢初の準決勝進出という)新たな歴史を作った」。 スミス記者はさらに続ける。 「モロッコの人は自分たちをアフリカ人というよりアラブ人と認識している。そんな彼らを応援したのは北アフリカの人々。チュニジア人、エジプト人、レバノン人などイスラム教徒が多数を占める国だ。アラブの国で開催された初のW杯で、アラブ諸国の応援によりモロッコチームに力を与えたのでしょう」 タヴァニス記者も「モロッコはアラブ諸国を団結させる真の象徴になった」と同意した。 開催国カタールにとって、今大会はどんな意味があったか モロッコが勝ち進んでいくにつれ、話題の中心も変化していった。 「モロッコのようなアンダードッグ(下克上とも取れる)の快進撃は、カタールが望んでいたもの」とスミス記者。人々の関心はスタジアム建設のために死んでいった移民の話から、脚光を浴び始めたモロッコとメッシの活躍に移行した。この時点で、もはやどこがW杯の主催かなんてことは誰も気にしなくなった。 スミス記者によると、スタジアムなどインフラ建設でカタールはこの10年で劇的に変化したという。 ドーハではやることがそれほど多くないから、中には退屈な街だと思った人もいる一方、「W杯でテコ入れされた中心地ムシャラフには、流行に敏感なカフェや理髪店などトレンディな店が集まった」。それらのおしゃれスポットは大会期間中、試合観戦に訪れた外国人のための場所だったが、大会終了後は、地元の人に使われていくことになる。 さらに、世界中からVIPが集まり開会式や試合に足を運んだ。フランスのマクロン大統領、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子、アントニー・ブリンケン米国務長官、ジャレッド・クシュナー(トランプ前大統領の娘の夫)、イーロン・マスクなどだ。 「外交、政治、ビジネスの場として国際的な地位を確立しようとしているカタールにとって大会誘致は信じられないほどの価値をもたらした。その点でも今大会は大成功だったと言える」(スミス記者) このようにドーハが国際都市への第一歩を踏み出したことで、ビジネスをしたいと思っている人や国際社会へ安心感を与えたメリットがあるという。 「たとえ記憶の奥底に、このW杯がいかに物議を醸したか、開催までどんな代償を払ってきたかが残っていったとしても、カタールからすれば、W杯の恩恵によってそれらの代償は大幅に相殺されたと考えるだろう」(スミス記者) 「誰にとってもかつては『遠い外国』だった国が、W杯で『世界的な承認スタンプ』を押されたようなもの」とタヴァニス記者もうなずいた。 FIFAとサルマン皇太子の関係 FIFAは年々ビジネス寄りの傾向が強くなっているとファンの間で言われているが、これについてはどう考えているか。 「カタールと同国の政治家だけが大会誘致で莫大な資金と評判を得ているわけではなく、FIFAもそうですよね」とタヴァニス記者。 スミス記者は「FIFAにとってこれ以上にないほどうまくいっている」と答えた。報道によれば16日、FIFAは過去12回の大会で75億ドル(約9900億円)の収益があったとされる。また、前大会と今大会の間に生まれた利益は10億ドル(約1300億円)という。 さらにFIFAが潤沢な資金で、W杯を通して実行しようとしているのはディズニーランドのような「FIFAランド」だという。 「FIFAは開催国に到着し領土を主張し、(屋台やオフィスを大会中閉鎖し、多くのフェンスを設けて通行規制し、至る所で西洋の音楽をかけるなど)独自のルールを設定し、スポンサーだらけにし(主に西洋のブランド。中東のブランドでも西洋の有名人やサッカー選手を起用)、街ごとFIFA一色にする。これこそFIFAがやりたいものだ」(スミス記者) 資金と言えば、前述のサルマン皇太子が、今年のワールドカップで目に見える存在感を示してきた。 「サルマン皇太子はFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長と親交があり、FIFAに資金提供している。またサウジアラビアは近年イギリスのニューカッスル・ユナイテッドを始め、ゴルフやフォーミュラ1などスポーツに多額の投資を行っている」。イエメンでの内戦、そしてサウジアラビア人記者のジャマル・カショギ氏の殺害をめぐり国際的な批判がある中、「スポーツ界への介入は同国の戦略の一部」という。 「FIFAはカタールでの成功で、今後大会をサウジアラビアに持ち込まない理由はなくなったと感じているかもしれない」(スミス記者) 大会は私たちに何を残したか? 大会中の数々の衝撃と感動、ヒーローとなったメッシの美談…。それらがこれまでの酷評のすべてを払拭し、人々は人的犠牲や人権問題の論争を忘れ去った。 「問題に直面しながら記者としてカタールをこのまま去るのは本当に残念だ。一方で、そんな問題を覆し成功を成し遂げられるのがスポーツの持つ力であり、これこそがカタールがW杯を開催したかった理由だ」とスミス記者。問題がありながら結果的にカタールとFIFAにとって大成功を収めたと言わざるを得ないという趣旨の内容で、エピソードを終えた。 2022年ワールドカップ関連記事 (冒頭写真)ワールドカップイメージ写真…