「うっかり発言」防止のためかバイデン氏は単独会見ゼロで雲隠れ。移民問題に苛立つ国民

バイデン政権が発足して、もうすぐ2ヵ月になろうとしている。経済立て直しのため、3月12日には1兆9000億ドル(約190兆円)の新型コロナ救済パッケージ法案に、バイデン大統領が署名し、新たな支援制度が実現化される予定だ。 この救済パッケージには、3度目となる給付金(成人1人あたり1400ドル=約14万円、収入によって制限あり)も含まれる。 関連記事 【コロナ特別定額給付金】貯金の日本。アメリカ人は「2度の支援金」一体何に使ったか? 48日間、公式会見なしの大統領 一方でこの2ヵ月間のバイデン大統領の実績や存在感、主導性について、疑問を投げかける主要メディアもある。 FOXニュースは3月9日、「Biden has gone 48 days as president without formal news conference」(バイデン大統領は就任から48日間、公式記者会見なし)と報じた。American Presidency Projectのデータを基にしたCNNの分析によると、過去100年にわたって前大統領15人は全員、就任後33日以内に単独記者会見を開いてきた。 ニューヨークポスト紙は「48日間というこれまでの大統領で最長期間、単独会見なし」と指摘。今後の会見の予定もないという。バイデン氏は訪問先で記者団の質問に答えることはあるが、カメラとマイクを切るなどして厳重に報道規制をしている様子が窺える。先日は視察先で、カメラとマイクの遮断を条件に記者団の質問に答えた。しかしここ数週間で再び悪化している移民問題について聞かれても、大統領からの返答はなかったと報道された。 単独会見がこれだけ長く開かれない理由について、ホワイトハウスのジェン・サキ(Jen Psaki)報道官は「バイデン大統領は、COVID-19のパンデミックに関連する歴史的な危機で多忙を極めているから」とした。しかしパンデミック対応は今に始まったことではない。トランプ前大統領は会見を頻繁に(パンデミック後の昨春以降は毎日)開いており、そのたびにメディアに扱き下ろされていた。 バイデン大統領は選挙活動中から、数々の言い間違い、勘違い、物忘れ、さらに口だけで行動や実績が伴っていないことや発言内容が日によって違うことなどが指摘されている。バイデン氏が「演説」をする際、台本が書かれたスピーチプロンプターが欠かせないとされている。もちろん演説や記者発表では政治家がよく使うものだが、バイデン氏は台本があってもたまに読み間違える。「演説」はしても「単独会見」を開かないのは、カメラが回っている生放送の場で、記者の辛辣な質問に対応できないからでは、と囁かれ始めた。 バイデン政権が発足して1ヵ月間の評価をしたのはCNNだ。「バイデン大統領が就任して最初の1ヵ月間の発言はトランプ氏のそれと比べて一貫して事実に基づいているが、それでもアドリブの際にいくつか不正確なコメントをした」と指摘した。 記事では、1月20日から2月19日までのバイデン氏による疑わしきコメント40件を、大統領発言を追跡するウェブサイト、Factbaseのデータに基づき調査をし、具体的に発言と事実の相違を指摘している。(以下は一例) ウォルター・リード陸軍医療センター訪問について バイデン氏「副大統領時代、毎年クリスマスはウォルター・リード陸軍医療センターを訪れた」 CNN「副大統領として8回のクリスマスのうち5回、ウォルター・リードを訪れた公的な証拠があるが、毎年訪れた事実はない」 中国の習近平国家主席と一緒にいた時間について バイデン氏(副大統領時代から習主席をよく知っているという話から、歴訪などで)「1万7000マイルを共に移動した仲だ」と2度主張。 CNN「会議などで多くの時間を共に過ごしたのは事実だが、1万7000マイルを『共に』移動した事実はない」 バイデン氏が就任した最初の1ヵ月間の公での発言量は、トランプ氏のそれより約34%少ないが、少ない発言の中でも、そして単独の記者会見を行なっていない状態でも、バイデン氏は「事実に基づいていない発言」をしている。そして発言がなければ、大統領として指摘される問題も少なくなるのは当然だ。 これらもホワイトハウスがバイデン大統領の単独記者会見を開かない(開かせない)理由の1つだろうか。 国境に「津波がやって来た」とトランプ氏 ここ数週間で共和党のみならず民主党からも懸念の声が上がっているのは、バイデン政権の移民問題のハンドリングのマズさだ。 バイデン政権は前政権の移民政策を根本からひっくり返したため、中央アメリカからの移民が大量にメキシコとの国境にやって来ており、国境近くにある避難収容所に拘留されている移民の子の数が激増中だ。この2週間で3倍に増え、避難収容所と政府機関を圧迫している様子が、ニューヨークタイムズ紙などで伝えられている。 人権の尊厳の観点に加え、市民権(選挙権)のない移民でも違法で投票できるようになっており移民は民主党に投票することが多いため、民主党は不法移民の受け入れに比較的寛容的とされている。それでもバイデン政権発足後の移民流入問題は目に余るものがあり、最新の世論調査では大多数のアメリカ人が、バイデン氏の移民政策に反対していると報じられている。 ホワイトハウスのサキ報道官も、移民の過剰流入については失敗と認め、国境越えを思い留まらせるよう、さらなる努力が現政権に必要であるとした。トランプ氏は移民の過剰流入について「もはや制御不能となり、津波を引き起こした」とバイデン政権を非難した。 バイデン政権はさまざまな問題や不安を抱えているが、まだ始りに過ぎない。 (Updated: 3月11日、バイデン大統領は新型コロナ救済パッケージ法案に署名した。また同日8pmESTより、プライムタイム初となる「演説」を行ったが記者の質問には答えず、「単独記者会見」が行われていない期間は歴代最長を更新中) Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

乱入防止の鉄線の外側で起こっていたこと ── 米大統領就任式【現地ルポ】

アメリカでは20日、新大統領のジョー・バイデン氏、新副大統領のカマラ・ハリス氏の就任式が無事に執り行われた。 今年は新型コロナウィルス感染拡大に伴い、規模が縮小され、式典はバーチャル形式で配信された。筆者も直前まで自宅で見届けようかと思っていたが、この歴史的な日の現地の様子を自分の目で見たいと急に思い立ち、1週間前にアムトラックのチケットを購入した。すでに売り切れ間近で、唯一購入できたのは午前3時25分ニューヨーク発の便だ。 列車は感染防止で空いていた。それでもカメラマンやユーチューバーらしき若者が何人か乗っていた。ばったり車内で会い「ノープランだよ。現地に行って決めようかと思って」と話している。そのうち、チケットを見に車掌がやって来て「オーマイガ〜ッ。店も開いてないのに、みんなD.C.に行くなんて。グッドラック!」と声をかけた。 早朝7時に首都ワシントンD.C.に到着。外はまだ薄暗い。いるのは警察犬を連れた警官と州兵、そしてジョギング姿の人が何人か。 6日に起こった過激派による議事堂乱入事件後、就任式のために州兵2万5000人が派遣された。出発前、友人は「ニュースでは危ないから近寄るなと言っているぞ。それでも行くのかい?十分気をつけて」と心配した。 確かに現地は戦場かと思うほど、ライフルを担いだ州兵がごまんと配備され、警官、爆薬探知犬、私服警官もたくさんいたが、逆に「安心感」に繋がった。有刺鉄線付きフェンスが張り巡らされ「議事堂には絶対に侵入できない」「何事も起こりえない」システムになっていたからだ。重装備の兵士の多くは鉄線の「内側」に1メートル間隔で立っている。彼らに緊迫した様子はなく、散歩中の人と笑い合ったりする姿も見かけた。すれ違いざまに目が合うと「おはよう」と向こうから筆者に声をかけてくれた兵士もいた。そこに立たされているだけの有り余る兵士を見て、「もう2度と暴動なんて起こすなよ」という強いメッセージ性を帯びた見せしめのように感じた。 正午:新大統領誕生 そうこうしていたら、就任式イベントの時間が迫り、柵の外側にも人がかなり増えてきた。 正午という時間をもって、正式に新大統領が誕生する。バイデン支持者も多く集まっていたから誕生と共にカウントダウンや拍手でも起こるのかと思いきや、所々で歓声は上がっていたものの、正午の時点で特に何もなかった。バイデン派、トランプ派、そのほか宗教団体が、それぞれお互いの主張を時に激しく遣り合っていた。 この日は6日のような過激派の姿はなく、キリスト教の保守的勢力(宗教右派)と呼ばれる人々の抗議活動が目立った。 このような一幕もあった。「トランプは間違った方向にリードしてきたと思う」と、バイデン支持者の女性がメディアのインタビューに応えていたら、通行人の年配の女性から突然ヤジが飛んできた。「ほらね、こういうことなのよ。このような振る舞いをしていいなんて、憲法でも(議事堂を指差しながら)あそこでも指導されていない。今の人が間違った方向の良い例ね」。 ジェシカファミリーは、DACA(ダーカ:不法移民の子に対して、強制退去処分を猶予する移民政策)を強く支持しており、「新政権にはICE(移民税関捜査局)を廃止してほしい」と期待を膨らませる。 「アメリカの危険な歴史の始まり」と危惧するのは、メガホンを抱えたニック・キメラ・ジュニアさん。ニューヨーク州ロングアイランドからやって来た。ただし彼はトランプ派でもバイデン派でもないと言い、「クライスト(キリスト教教派)だ」と胸元のバッジを指しながら自らをそう表現した。「数えきれないほどの胎児が中絶により犠牲になってきたが、新政権は中絶を支援する方向だ。また警察による残虐行為など、国が荒れていることも心配している」。 「同意できないからといって、お互い憎しみ合うのはやめよう」 この日の就任式では、ハリス副大統領、ミシェル・オバマ元米大統領夫人、ヒラリー・クリントン元国務長官の3人が、紫の衣装で臨んだことが注目を集めた。共和党のシンボルカラー(赤)と、民主党のカラー(青)を混ぜると紫になることから「融和」や「結束」の象徴なのだ。 しかしこの日、筆者が柵の外で目にしたものは、相手の意見を暴言などで遮る、互いの主張を一歩も譲らない人々だった。 また現場には、報道陣やユーチューバーらしき人々も非常に多かったのだが、ちょっとしたいざこざが起こったり過激な主張や行動をする人たちばかりが注目を集めていた。 そんな中、筆者はほとんど誰からの視線も浴びることなくひっそりと隅に置かれていたこのメッセージに注目した。 Stop Hating Each Other Because You Disagree (同意できないからといってお互い憎しみ合うのはやめよう) by TruthConductor. tv 心機一転、新たな4年が始まろうとしている。今まさに、このような姿勢こそがこの国に一番必要なのではないだろうか。 【この後ビデオも載せる予定】 (Text and photo by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止