中国へのドア閉じ「日本も米に付随」米報道。世界中で強化、対中の新型コロナ水際対策

新型コロナの感染急拡大に歯止めがきかないながらも、ここに来てゼロコロナ政策の劇的な緩和を打ち出すなど、大きな方向転換をした中国。 それに伴い日本政府は8日から、中国からの入国者に対しさらなる水際措置を強化した。 先月30日より(香港・マカオを除く)中国に7日以内に渡航歴のある入国者全員に対して、日本到着時の検査を実施しているが、今月8日からはより精度の高い抗原定量またはPCR検査に切り替えた。また出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書の提出も中国からの入国者に対して求めている。 中国のゼロコロナ政策の大幅緩和 アメリカと世界の受け止めは? このような厳しい対中措置は日本だけではない。 アメリカではニューヨークなど北東部などでオミクロン株の1つ、XBB.1.5への感染がこの1ヵ月で急速に拡大していると報じられている。医療従事者などが変異株の流行に戦々恐々とする中、アメリカは新年早々、中国からの入国者に対して陰性証明書の提示を義務付けるなど、水際措置の強化に乗り出した。 この対中政策の音頭を取っているのはアメリカのようで、日本政府の水際措置の強化について、8日米CBSニュースなどが「日本もアメリカの方針に追随し、中国からの入国者に対する水際対策を強化した」と報じた。 対中の水際対策は、日本やアメリカのみならず世界的に行われているムーブメントだ。 7日付の米ブルームバーグは、「変異株が広がる中、中国での新型コロナの感染急拡大(の脅威)から人々を守るため、世界の国々が中国人渡航者に対して、コロナ検査を実施するなど水際対策を強化している」と報じた。 記事によれば、ポルトガルが中国からの入国者に新型コロナの陰性証明を求める欧州の仲間入りをし、ドイツが国民に対して中国への不要不急の渡航を止めるように伝達した。タイは中国人観光客の大量入国に備え、空の便で到着する外国人の入国要件を再導入している。 2日付の米タイムも、このように報じた。春節を前に「中国人観光客が再び海外旅行への準備を進める中、いくつかの国は扉を閉じている」。 「新型コロナの感染が拡大する中、中国の報告と症例の順序立ての信頼性への懸念が高まっている。よって十数ヵ国が中国からの渡航者に対して入国制限を発表」と報じた。中国からの渡航者に対してコロナ検査を再び実施する米国、英国、フランス、スペイン、スウェーデン、オーストラリアなどの国々、到着時の検査で陽性者を隔離する日本やイタリア、到着時の検査に加え中国人に対する短期ビザの発給を制限する韓国、そして中国からの全渡航者の入国禁止を発表したモロッコなどを事例に挙げた。 これら世界中で手綱が締められている対中措置は、中国で感染状況の透明性が欠如してしまっていること、中国国内で変異株の追跡が適切にできていないことなどに対する懸念の高まりがあってのこと。そんな中でも中国国内では2億5000万人以上の人々(過半数は80代以上の高齢者)が、新型コロナワクチンの3回目の接種を受けていないとタイムは報じている。このような理由から、中国は世界中からフルボッコのような措置を取られてしまったようだ。 アメリカの水際対策 関連記事 2022年 2021年 2020年 Photo(Top) : ニューヨークのJFK国際空港 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人「ニューヨーク直行便」(c) 安部かすみより一部転載)無断転載禁止

増えるテレワークと厳しい「従業員の監視」… 米国では?

コロナ禍でさまざまなニューノーマルが生まれた。その1つは新たな働き方、例えば職場におけるリモートワーク(在宅勤務、テレワーク、WFH)の浸透だろう。 筆者が住むアメリカ・ニューヨークでも、昼時のオフィス街に以前のような活気が戻ってきたように見える。しかし、リモートワークがそれほど根付いていなかったコロナ前に「完全に戻った」とは言い切れないかもしれない。 実際に周りの人々に状況を聞いてみると、コロナ禍以降の働き方は実に「多様化」してきた印象を受ける。完全出勤体制(オフィス勤務)に戻った人もいれば、在宅&オフィスのハイブリッド、つまり週の半分をオフィス出勤し、ほかの日はリモートワークの人(出勤は週1の人も中にはいる)、そして完全リモートワークの人もいる。 また、「自宅では集中できない」「経理なので仕事を外に持ち出せない」「取材は市内であるので、オフィスには毎日通っている」と答えた一部の人を除き、筆者の周りの多くは「リモートワークの方が良い」(もしくはハイブリッドでも良いが、リモートワークに比重を置きたい)と考え、それが叶えられている現状に満足している人が多かった。 関連記事 NYのオフィス街に人が戻りはじめたのは2021年春ごろ。 新型コロナに「打ち勝った」“先行事例”となるか?NYが復興へ前進、大規模再開へ ある統計資料によると、労働人口が1億6460万人(2020年2月)を超えるアメリカでは、470万人以上の人が勤務時間の半分をリモートでできる職場環境にあるという。リモートワークのみの従業員を雇用している企業はわずか16%、リモートワークをまったく許可していない企業は44%と半数近くだ。 世界規模で見てみると、完全リモート化の企業は全体の16%と、まだ一部のようだ。またハイブリッドの勤務形態をとっているのは労働者の約62%。 マイクロソフトが今年初めに世界中の3万人以上の従業員を対象に行った調査では、52%の人が完全リモートワークまたはハイブリッドの勤務体制に移行したいと考えていると答えた。今後技術がさらに進歩し、特に若い世代の働き手がリモートワークを求める傾向にあることから、今後もリモートワーク化を進める(許可する)企業は増えていくかもしれない。 関連記事 「ある調査では、9割が在宅勤務を含む働き方を希望し、半数は在宅勤務メインの働き方を希望すると答えた」(2021年8月の時点) いまアメリカで「自宅勤務を認めるvs認めない」企業で大論争が起きていた!(現代ビジネス) 増えている、テレワークの遠隔監視 リモートワーク化が進めば、雇用側として気になるのは「スタッフが自宅(もしくはカフェなど遠隔地)で真面目に仕事をしているか?」ということかもしれない。 24日付のニューヨークタイムズによると、経営者や上司が従業員に対して、テレワーク中に遠隔で監視する企業が増えているという。 記事では、テキサス州のIT企業でバイスプレジデント職に就いたある女性の事例が紹介された。その女性従業員は時給200ドル(約2万7000円)で雇用契約を結び、在宅勤務を開始した。その女性従業員はMBAを取得し、金融業界で長い経歴を持つベテランだ。200ドルの時給はアメリカでも比較的高めだが、この従業員の学歴やキャリアから考えるとアメリカでは特別に破格な時給でもない。 さて、いざ給料日になると、この女性従業員に実際に支払われた金額はその時給より低かったという。なぜか。 テレワーク中、会社はあるソフトウェアを使い、従業員をモニタリング(監視)していたようだ。具体的には、従業員のコンピュータの使用状況やキーボードの操作にどれだけ時間が費やされたかを遠隔でトラッキングし、従業員の勤務状況を把握するため10分ごとに従業員の顔写真とブラウザのスクリーンショットを撮影していた。実際には勤務中、コーヒーを淹れたり宅急便に対応したりするために離席する空白の時間があった。トイレ休憩も含めてそれらのオフラインの時間は「労働」とはカウントされていなかった。従業員が活動していると確認できたオンライン時間だけが時給換算され、給料として支払われたというわけだ。 しかし、この類のソフトウェアは万能ではないと専門家は指摘する。実際には、資料を見ながらコーヒーを淹れることもある。キーボードから手を休めて、外の景色を見ながらプロジェクトについて考えごとをすることもあれば、プリントアウトされた紙の資料を読むこともある。同僚と会話したり部下に口頭で指導したりもする。 ソフトウェアを使った機械的な監視方法ですべての勤務時間を適正に測定することは不可能だと考えられている。何よりも、その女性従業員は具体的な監視方法を知り「ぞっとする」気持ちになったと言う。 またこのような苛立ちや不満は、弁護士や会計士など高学歴の人々の間で高まっていることが特徴だ。「これまで低賃金の労働者が不満に思ってきた類の問題に、今彼らも直面している」と記事は述べている。 監視の効果を認める意見も 反対意見ばかりではない。筆者が話を聞いた中には、この監視制度を100%サポートするわけではないとしながらも、このようなシステムがあるからこそ「仕事に集中できる」「効率的な業務に繋がる」「時間配分をより工夫できる」「生産性が大幅に向上する」という意見もあった。別にサボろうと思っていなくても、時間を確認するためにスマホをチェックしたら、ノーティフィケーションに気づいてSNSを開き、ついつい長時間スマホを触っていた…なんていうことはよくあることだ。監視ソフトについて「集中力を高め、効率的なツールである」「本当に一生懸命働いた日、そのようなツールによる測定は満足感を与えるだろう」と見る専門家はいる。 「監視」は大企業でより浸透 テレワークにおける監視システムの導入でもっとも有名な企業は、アマゾンだ。ニューヨークタイムズによると、同社は依然、在宅勤務の内容をカウント(測量)しているが、15分を超えるアイドルタイム(動作がない時間)を精査し、上司との会話は本当に必要か、トイレにそれだけの時間を費やす必要が本当にあるのかといったようなことをより精査していきたい考えのようだ。 またJPモルガンも、コンプライアンス上の理由から、電話やメールの内容を通し、従業員が日々どのように働いているかを追跡、記録している。同社は「これらが仕事の効率化も担っている」と考えているそうだ。 監視システム(遠隔監視、電子監視)は大企業ほど行われる傾向があり、ニューヨークタイムズは「500人以上の従業員を抱える企業であれば『監視』が行われていると想定できる」と述べている。 またニューヨークポストによれば、これらの監視には主に4つの方法があるという。 タトルウェア(Tattleware)という監視ソフトウェア 電話の盗聴とトラッキング ハイパーロケーション監視 感情分析ソフトウェア (1)従業員のキー入力やマウスの動きを記録したり、コンピュータのライブストリームを介したりして監視する。 (ただし、キーボードに取り付けるマウスジグラーを使えば、実際に作業をしていないときでも作業をしているように取り繕うことができる弱点がある) (2)金融系企業には、1日中電話に耳を傾けるコンプライアンス担当者がおり、担当上司はインサイダー取引から汚い言葉使いまであらゆることをチェックしていると専門家の弁。 (3)Bluetooth(ブルートゥース)を使い、携帯電話や社員証に取り付けることで、雇用主は従業員の居場所、その従業員の周りに誰がいるか、誰が誰と繋がっているかなどを把握することができる。 (4)表情から人の感情を読み取ることができる新技術。例えば会社がZoomを介して従業員に週5日のオフィス勤務が再開する旨を伝えた場合、バイオメトリクス技術により不満げな人の表情をソフトウェアが解析。 テレワークをする従業員の労働を可視化できる、さまざまなソフトウェアが存在する。 ニューヨークポストによれば、「職場監視ソフトウェアの売り上げは新型コロナのパンデミックが発生した2020年3月以降、数週間で3倍以上になり、売り上げは今も伸びている。スパイのような監視行為はあなたが思っているよりはるかに日常的なものとして浸透している」。 リモートワークを好む従業員が増えていることを受け、監視を「交換条件」として使う企業もある。例えば「リモートワークが希望ですか?良いですよ。その代わり当社が使っている監視システムの使用に同意してください」という具合だ。 とは言え、中には監視システムをまったく使っていない企業もある。筆者が話を聞いたIT企業やメディア企業の代表者は、口をそろえて「スタッフがタスクをきちんとやっているかがもっとも大切なことであり、勤務時間内にパソコンの前にいるかどうかはそれほど関係ない」と答えた。 あなたは、監視される側(従業員)の立場として、または監視する側(経営者、上司)の立場として、今後ますます増えていくかもしれない遠隔からの監視体制について、どう受け止めただろうか? 過去記事 テレワークやオンライン授業に移行する人々の声 NY感染拡大で「社会的距離の確保」5事例(2020年) Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

NY屋内マスク義務が今日から解除。人々はマスクを外した?街の様子は?

ニューヨーク州では10日より、屋内飲食店や小売店などで、マスクの着用義務がなくなった。 着用義務化は、感染が急拡大していた昨年12月半ばより再び導入されていたが、10日に期限を迎えるにあたり、新規感染者数や重症による入院患者数の減少を踏まえ、ホークル州知事が専門家らと意見交換をし、着用義務の方針に関して更新しない判断をしたという。 「パンデミックの新たなフェーズだ」。知事は9日の記者会見でこのように述べながら、協力店に感謝の意を表明した。 ただし、今後も経営者の裁量や店の方針によって、客に着用義務を求めることはできる。また地下鉄やバスなど公共交通機関、空港、医療機関や介護施設、学校、ホームレスシェルターなどでは引き続きマスク着用義務化が継続される。 実際に10日の街の様子を見に行った。 屋外を歩いている人では、マスクを着用している人としていない人は半々で、昨日までの光景と何ら変わりない。 近所の公園のバスケットボールコートでは、ティーンと思しき若者が5対5のバスケをしていた。10人のうち2人はまったくマスクをしていなかったが、8人はマスクを顎に引っ掛けたままプレーをしていた。 小売店に行ってみると、多くの店頭に依然としてマスク着用を求める張り紙がされたままだった。また客もほとんどがマスクを着用していた。 この2年間ですっかりマスク着用に慣れてしまった感があるニューヨーカーだが、街の人に話を聞くと、今後も念のためしばらくは屋内でもマスク着用を続けていくだろうと答える声も聞こえてきた。 またホークル知事自身も、同日の記者会見で「パンデミックが終わった訳ではない。脆弱な人々を今後も感染から守らなければならないし、誰もが安全・安心を感じて欲しい。マスクを着用することで安心を感じるならば、引き続き着用を勧める」と述べた。つまりは、今後はマスク着用の判断を、経営者や個人の裁量に任せていくということだ。 過去記事 マスクを取ってもいいよと急に言われても、今度は逆にその無防備さに戸惑うのだろう。大多数の人が清々しい気持ちで「マスクはもういらない」という気持ちになるまで、もう少し時間がかかりそうだ。 米「ワクチン接種でマスク不要」 NY中心地のマスク率は? 街の人の声は? 広がるマスク着用義務撤廃の動き マスク着用義務の規制撤廃の動きは、アメリカではこれまで共和党寄りの州で見られてきたが、ここにきてニューヨークやニュージャージー、カリフォルニアなど民主党寄りの州でも広がっている。またイギリスやフランス、北欧などヨーロッパ各国でも同様に、マスク着用義務の規制撤廃の動きが報じられている。 ただし米ホワイトハウスやCDCは、引き続きマスク着用を推奨している。 マスクやワクチン義務化に関する過去記事 – 2021年 NYワクチン接種義務に抗議。義務化初日に休職の市職員9千人が都市に及ぼす影響 NY屋内活動に「ワクチン接種証明」義務づけ 全米初の試みが始まったが・・・街の様子 1年3ヵ月ぶり「非常事態」が解除 NYはいま【昨年との比較写真】 新型コロナに「打ち勝った」“先行事例”となるか?NYが復興へ前進、大規模再開へ 米「ワクチン接種でマスク不要」 NY中心地のマスク率は? 街の人の声は? – 2020年 「マスク外してみて。顔が見たい」は新たなセクハラになるのか? 米紙 結局アメリカでマスクはすんなり受け入れられたのか 外出の際、顔はカバーすべきですか?「はい」とNY市長 アメリカでマスク改革、はじまる TText and photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

NYオミクロン株急拡大の中、賛否分かれた「大晦日カウントダウン」決行(現地ルポ)

気温は摂氏11度。冬の寒さが厳しいニューヨークの“大晦日”としては、集まった人から「暖かいね」という声さえ聞こえてきたほど。 オミクロン株感染が急拡大する中、電光掲示板が眩いタイムズスクエアでは31日、毎年恒例の大晦日カウントダウンイベントが行われ、世界中から集まった大勢の人々が大量の紙吹雪が舞う中、新年の到来を祝った。 このイベントは、1904年(ボールドロップが始まったのは1907年)から続いている伝統的なものだ。第二次世界大戦下の1942年、43年に休止した以外は110年以上にわたって毎年行われてきたが、昨年は新型コロナウイルスの影響で、史上初の無観客(関係者のみ)&バーチャル形式で行われた。 今年は2年ぶりの「有観客」開催だった。当地ではワクチン接種が進んでいることもあり、有観客での開催は早くから発表されていた。そんな矢先、12月に入って変異ウイルスのオミクロン株が急拡大し、再び無観客開催になるのではないかとささやかれていたが、主催者は観客数を通常の4分の1の1万5000人まで減らし、ワクチン接種証明書の提示とマスク着用を条件に予定通り決行した。 通常、大晦日の早朝から来場者による陣取り合戦が始まり、年越しまでの長時間、トイレもない中じっと待機、という過酷な経験談をよく聞く。よってこのカウントダウンは「一生に一度のイベント」とも呼ばれている。しかし今年はワクチン接種証明書のチェックなどがあったため、午後以降に入れたという人も多かった。 参加している人々からは「このイベントについに参加できて嬉しい」といった声が多く聞こえてきた。高校3年になる息子に誘われ、テキサスからこのイベントに初参加したタリーさんは、午後1時からここで年越しの瞬間を待っているそうだが、「楽しみでしょうがない」と疲れがまったく見えない。ニュージャージーからやって来たシュワマリッツ一家は「このイベントで景気づけをし、来年は新たなる冒険と更なる繁栄の年にしたい」と抱負を語った。イベント中にプロポーズするメキシコからのカップルもいて、テレビ中継された。 観客同士で社会的距離が保たれているところもあったが、興奮している人々が「密」になりがちだった。またコロナ禍にしては、警官の数が「異常なほど」多かった。ニューヨークタイムズによると、私服警官やFBI、爆発物探知犬なども含めた警官配備は、テロを厳重警戒したものだという。ただ残念なことに、中にはマスクをしていなかったり警官同士が密になっている光景も見られた。 メインステージでは、過去にビートルズ、マドンナから近年ではポスト・マローン、BTSなどさまざまな大スターがパフォーマンスを行ってきた。今年はジャーニー、KTタンストール、ジャ・ルール&アシャンティ、中国の舞踊団などだった。 30日、ニューヨーク州の新規感染者数は7万6555人となり、過去最多を更新中だ。重症患者数も昨春ほどではないが、それでも前日より546人増えて7919人に急増している。 この影響で、ブロードウェイのミュージカルも次々に公演が中止に追い込まれている。ラジオシティ・ミュージックホールの毎年恒例のラインダンス・ショー「クリスマス・スペクタキュラー」も17日から1月まで公演の中止が決まったばかりだ。 小説家のドン・ウィンズロウ氏など、コロナ禍でのイベント反対を求める声も多く上がった。 関連記事 (2021) NYタイムズスクエアの年越しカウントダウン 史上初の「無観客」で (2020) NYタイムズスクエアの年越し2019-2020 Text and photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

NY「ワクチン接種義務化」が強化。飲食店〜公務員〜民間企業や子どもまで。市民の反応は?

新型コロナの変異ウイルス、オミクロン株の拡大により、ニューヨーク州では1日の新規感染者数がかつてないほど急増しており、27日は4万人を超えた。入院が必要なほどの重症患者数も昨春ほどではないが、それでも前日より647人増えて6173人(27日)と急増中だ。 そんな中ニューヨーク市では27日、すべての民間企業およそ18万4000社を対象に、ワクチン接種の義務化がスタートした。 市ではこれまでも公務員に対して、また屋内飲食や屋外アクティビティの利用者(今月14日以降は子どもも対象に。5〜11歳は1回以上接種し、27日以降は、12歳以上は接種「完了」していなければならない)に対しても、ワクチン接種義務化を推し進めてきたが、ここに来て民間企業の従業員に対しても義務化を設定した形だ。いわゆる(国民皆保険ならぬ)「市民皆ワクチン」のムーブメントの一環である。 この政策の通り、市内ではレストランの屋内やジム、映画館、博物館などの屋内アクティビティ、イベントの利用時において、入り口などでワクチン接種証明書の提示を「必ず」求められる。「当店は大丈夫です」なんていう店は存在しない。ここ最近は一般企業の訪問時や筆者の場合は取材時にも、企業の裁量において接種証明書の提示を求められるようにもなってきた。つまり今この街で、ワクチン接種証明書がなければ、ほとんどの屋内活動や業務が制限されるような状態だ。 市の資料によると27日以降、市内の一般企業で働く全従業員は、少なくとも1回(45日以内に2回目)のワクチン接種をしていなければ、そこで働くことは認められない。民間企業の代表者は必要な書類に署名し、職場の「誰もが見える場所」に掲示する必要がある。このような接種義務化の措置は、いずれも全米の自治体で初ということだ。 市内で会社を経営したり代表を務める人に話を聞いたが、この政策に対して「会社として、社員に対してそこまでの強制や締め付けは難しい」「ワクチンを打ってほしいのは理解できるが、このように民間企業を巻き込まないでほしい」というような驚きや戸惑いの声が聞こえてきた。また中には「在宅勤務を続けているので、詳しい情報が入ってきていない」という声もある。 これまで市内の飲食店で行われてきたようなことが、今後は一般企業でも起こる。検査官がオフィスや店舗に抜き打ちで訪問し、違反が見られる場合、初回の罰金1000ドル(11万円相当)が企業側に科されるという。 一方、デブラシオ市長は27日の会見で「企業側に違反が見られる場合、まず指導や通達から行う」と発表した。「きっぱり拒否でもされない限り、罰金をいきなり徴収することはほとんどない」と、線引きについてやや「曖昧な」説明に終始した。 また肝心のデブラシオ市長だがその任期は今年いっぱいであり、あと数日間しかないタイミングで発令された。来年1月1日に新たに就任するエリック・アダムス次期市長は、デブラシオ市長のこの政策を継続するか否かについては言及していない。これについても、民間企業の代表者や従業員からは「今後がいまいち見えてこない」「市は政策の方向性について、迷走しているのではないか」という声も聞こえてきた。 過去記事 オミクロン株、米上陸も時間の問題…心配をよそにNY次期市長が「アフリカ家族旅行」で物議 米国2例目のオミクロン株確認のアニメイベントを取材。「濃厚接触者」候補になってしまった時の話 NYワクチン接種義務に抗議。義務化初日に休職の市職員9千人が都市に及ぼす影響 米入国にワクチン接種義務化。健康上の理由で接種できない人は今後どうなる?… 専門家に聞いた 入国は「ワクチン接種者のみ」……どうなる?海外旅行。(フィガロ) NY屋内活動に「ワクチン接種証明」義務づけ 全米初の試みが始まったが・・・街の様子は 全米の4人に1人が「ワクチン打たない」反ワクチン運動や職場訴訟も(動画あり) 米「ワクチン接種でマスク不要」 NY中心地のマスク率は? 街の人の声は? Text and photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

米国2例目のオミクロン株確認のアニメイベントを取材。「濃厚接触者」候補になってしまった時の話

ニューヨークは11月の感謝祭が終わり、街がいっせいにクリスマスの装いに変わった。毎年恒例のロックフェラーセンターのクリスマスツリーも点灯され、クリスマスムード一色だ。 11月より、ワクチン接種を条件に外国人の入国が認められるようになったため、観光都市ニューヨークに世界中の観光客が戻ってきた。 屋内の飲食店や観光地はどこも、ワクチン接種証明書の提示が求められる。27日より民間企業の従業員も接種義務の対象となるが、本日(14日)より5〜11歳の子どもも、それらのスポットを利用する際、接種証明書の提示も必要になった。このように「国民皆ワクチン」の波は、子どもの領域にもジワジワと押し寄せている。 アメリカではワクチンが一般に浸透し始めた今春以降、以前のようなイベントや集会が少しずつ復活し、コロナと共存する生活が始まった。おそらく人々がコロナを意識するのは、マスク着用が義務付けられている地下鉄や公共の場など屋内活動時くらいではなかろうか。 筆者も今年の感謝祭では2年ぶりに友人に招待してもらい、友人家族とまたその友人ら十数人と共に美味しい食事を囲みながら、「コロナ前の当たり前だった時間」を楽しく過ごした。この集まりにいた誰一人として新型コロナの話題を持ち出す人はいなかった。 そのたった数日後のことである。ニュースで、世界中で猛威を振るい始めたオミクロン株という新たな新型コロナウイルスの変異種の存在を耳にしたのは。 それから2週間が経った。「イギリスでオミクロン株で初の死者」「中国本土で初確認」など、連日のようにセンセーショナルにオミクロン変異株関連のニュースが報じられている。筆者の地元・福岡では、オミクロン株の”濃厚接触者”が初確認でニュースになるくらいの騒がれようだ。 このオミクロン株騒動はアメリカでも同様である。連日、この新たな変異株の話題でメディアは持ちきりだ。ニュースキャスターも、突如現れた新語なだけに、アクセントがOに置かれたりMに置かれたりと統一されておらず、ばらつきが見られるほど。(ちなみに米語ではOmicron=’オモクロン’と聞こえる) アメリカでの初確認は12月1日 世界に数日遅れてアメリカでもオミクロン株が初確認と報じられたのは、12月1日のことだった。その翌日には国内2例目も報告された。この2例目の感染者はミネソタ州在住の男性で、発症前にニューヨークを訪れていた。滞在中の訪問先の1つに、先月19~21日に当地で開催されたアニメの一大イベントがあった。 筆者はこのアニメイベントを取材していた。イベントからもうすぐ2週間が経過しようとしていた時に入ってきたこのニュースに、とにかく驚いた。運営元の発表では、今年の3日間の来場者数は同イベント最多の5万3000人で、会場は日本のアニメやポップカルチャー好きで溢れ返っていた。日本企業も多く出展し多数の日本人も見かけた。筆者自身、2日間通って十数人のコスプレイヤーにインタビューをしていた。 そして改めて思った。大展示場を埋め尽くすほどの来場者数だっただけに、あの場で新たな変異株が拡大したとしても、まったく不思議ではない、と。 ただ正直に言うと、最初はまるで遠くの世界で起こった話を聞くように、ひと事のように受け止めていたかもしれない。と言うのも、このイベントに参加するには新型コロナのワクチン接種を完了していることが条件で、入り口で全員が接種証明書をチェックされたし、会場内でもマスク着用が義務付けられていた。よって、それらは、こちら側の安心感にもつながっていた。また何より、筆者自体に病気のような症状が一切なかったため「来場者の1人がオミクロン株に感染とは大変だ」と他人事だった。 関連記事(動画もあり) 日本ブームは続く!コロナ禍「アニメNYC」にファン大集結。「鬼滅の刃」英語声優登壇、三浦建太郎追悼も 他人事が「自分事」に変わったのは、2例目報道の日の夕方過ぎだ。筆者にアニメイベント主催団体から一斉メールが届いたのだ。件名には「重要」とある。メールの内容を要約すると「イベント参加者の1人に22日(イベント最終日の翌日)に新型コロナの軽い症状が表れ、その後検査を受けオミクロン株の感染が確認。皆さんにはコロナ検査を受けることを強く勧める」というものだった。その後、市内でオミクロン株の拡大が想定されているため、アニメイベントの参加者全員に対して「直ちに検査を受けるよう求める」とするデブラシオ市長の声明が、その日の朝に発表されたことを報道で知った。 つまり、あの場にいた5万3000人全員が「濃厚接触者候補」であることを意味した。筆者もその1人だ。 濃厚接触者候補になった時の気持ち アニメイベントはすでに2週間前のことだったので、筆者にとって寝耳に水とも言える知らせだった。 まずは、イベントから5日後の感謝祭の食事会が気になった。もしも筆者がオミクロン株を含む新型コロナウイルスに感染でもしていたら、食事会のホストである友人家族にまず知らせなければならない。そして、あの場にいた招待客十数名にも伝えてもらわなければならないと思った。 また検査を受けるように通達された日(2日)の午後(通達メールの前)、筆者は70代前半になる方(夫婦)の自宅も訪れていた。この夫妻にももちろん伝えなければならない。 さらに、その週末はイベントが目白押しだった。1つは友人の誕生日パーティー、もう1つは着物の展示イベントで、主催者は半年も前から用意周到に計画を進め、この日を楽しみにしている。残念ながらすべてキャンセルだ。翌週には、あるブティックホテルチェーンのCEOとの対面インタビューの仕事も控えていた。この人物の取材はZoomにしてもらわなければ…。前々からスケジューリングされていたイベントや仕事の変更を一体どのように伝えるべきか? そんなことをグルグル頭の中で考えていたら、気のせいか少し悪寒のようなものがしてきた(気がした)。とにかくその時の筆者の心境は「イベントで変異株に感染し、周囲に迷惑をかけてしまう自分(になるかもしれない)」と後ろめたい気持ちで、不安だった。 翌日新型コロナの検査へ 考えても始まらないので、その日はすぐに床に就き、翌朝新型コロナの検査場へ行くことにした。 コロナ禍になり、ニューヨークでは通常の医療機関に加え、街中の至る所に仮設の検査場が設けられるようになった。検査費用は健康保険がカバーしてくれ、自腹を切ることなく気軽に検査を受けられる。筆者の近所でも春ごろから見かけるようになり、最初は1箇所だけだったのが数ヵ月後さらにもう1箇所でき、今では検査テントが立ち並んでいる。 とにかく検査をすぐに受けたかったため、近所の仮設検査場に赴いた。すでに数人並んでいたが、待っている間に、自分の携帯電話からオンラインで名前や連絡先、健康保険などの情報を入力するように言われ、そんな作業をしていたらすぐに自分の番になった。 ここで受けたのは、鼻の奥に綿棒を入れて粘膜を擦る鼻咽頭ぬぐい検査と唾液検査だ。これまでPCR検査で痛い経験をしたことがあるのでドキドキしたが、まったく痛くなかった。 検査結果は30分以内にメールで届いた。ドキドキしながらメールを開いた・・・。 「Negative(陰性)」というワードがすぐに目に飛び込んできた。喜びと安堵感で、それまでの憂鬱な気分が一気に吹き飛んだ! アニメイベントで取材していた人にもコンタクトをとったが、「大変驚いた」と同じような気持ちだったようだ。その人もすぐに検査を受け、陰性を確認したとのこと。 当地では症状のようなものが表れたら、外出せずステイホームすることが奨励されているが、この経験を通して気軽に検査を受けられ、すぐに検査結果を知ることができること、またそれらをすることで自分と周囲への安心感に繋がることがわかったのは収穫だった。今後も積極的に検査を受けない手はない。 最後にオミクロン株についての、アメリカでの現状や受け止め方について。CDCの発表によると、現在30州以上で43人が確認されている。ほとんどの感染者は軽症で、死者は確認されていない。また、ほとんどの感染者がワクチン接種済みで、うち14人はアニメイベントの2例目の男性のようにブースター接種まで終えていた。 各メディアでは感染症のさまざまな専門家が見解を述べているが、オミクロン株が国内で確認されて何せまだ2週間しか経っていないので、どの専門家も依然ワクチンのブースター接種と屋内でのマスク着用を推奨しながら、しばらくは様子見のようだ。 参照 Most Omicron cases in US have been mild but most were vaccinated, CDC reports Please Stop With the Omicron Panic 過去記事…

オミクロン株、米上陸も時間の問題…心配をよそにNY次期市長が「アフリカ家族旅行」で物議

ニューヨークで再び非常事態宣言 次から次に出現する新型コロナウイルスの変異株に、人々は「またか」と意気消沈気味だ。 南アフリカで最初に見つかった変異株「オミクロン」に関して、アメリカでも一気に話題を席巻し始めた。つい数日前の感謝祭(25日)の集まりでは誰一人とて話題に持ち出すことはなかった変異株が、ここ2、3日で一気に人々の新たな関心事として浮上している。 オミクロン株は現時点(29日朝)でアメリカ国内では未確認だが、NBCニュースによると、すでに5大陸にわたる少なくとも15ヵ国で確認されている。隣国カナダも含まれており、アメリカ国内で検出されるのも「時間の問題」と見られ、警戒が強まっている。 今月8日アメリカはワクチン接種完了を条件に、これまで渡航が禁止されていた国からの外国人の入国を再許可したばかりだったが、バイデン政権は水際対策として、アフリカ南部8ヵ国からの入国を禁止するなど先手の対応に着手した。対象国は南アフリカ、ボツワナ、ジンバブエ、ナミビア、レソト、エスワティニ、モザンビーク、マラウイで、これらの国に過去14日以内に滞在した外国人は、アメリカに入国できない。 ニューヨーク州でも感染再拡大を受け、ホークル知事が26日、再び非常事態を宣言した。非常事態は12月3日から来年1月15日まで有効で、期間中は病床と医療従事者を確保するため、緊急でない手術を制限したり、パンデミックに備えて物資を調達したりすることが可能になる。 同州は今年6月、1年3ヵ月に及ぶ非常事態を解除したばかりだった。しかし州内の陽性率は再び4%を超えており、デブラシオ市長も29日、ワクチン接種済みの人々を含むすべての市民に対して、屋内での活動時におけるマスク着用を再勧告した。 この時期「スピリチュアルな旅」でアフリカへ? そんな中、ある人物の言行が物議を醸している。 次期ニューヨーク市長、エリック・アダムス氏(61)である。同氏は29日、以前より予定されていたアフリカ、ガーナへの家族旅行について、取りやめないことを記者団に語った。滞在は12月8日までの予定だ。 オミクロン株の感染拡大を懸念し旅行を取りやめる人も出ている中、同氏は地元紙デイリーニュースからの「渡航における心配はないのか」という問いに対して、「私は何も恐れていない」と答えた。 渡航の目的は、奴隷がアフリカからアメリカに連れて来られて400年以上が経過した今、市長に選出されたらアフリカを訪れると決めていたという。その理由として「祖先が奴隷船で連れて来られてから400年後、私は最重要都市の一つの市長になろうとしている。その祈りのため、そしてスピリチュアルな浄化のため」とした。 当初、ガーナに先駆けヨーロッパ旅行も計画していたようだが、オミクロン株の拡大によりそちらは中止とした。一方でガーナへの「スピリチュアル旅行」は変更しないということのようだ。 同氏はブルックリン区の特に犯罪率の高いブラウンズヴィル地区出身で、以前は警察官として勤務し、2014年よりブルックリン区長を務めるなど、叩き上げの人物として知られる。来年1月1日からは、ニューヨーク市で史上2人目の黒人市長として就任することが決まっている。 ガーナはアフリカ大陸の西部に位置し、渡航禁止となった8ヵ国には含まれていないものの、APによると少なくとも1回のワクチン接種済みは人口の18%に止まるなど、接種率の低さが指摘されている。 オミクロン株の世界的な拡大が懸念されているこの時期に「なぜ国外、しかもアフリカへの渡航を押し通すのか」「これが次期市長にふさわしい行いか」など、素養を疑問視する声が出ている。 関連記事 1年3ヵ月ぶり「非常事態」が解除 NYはいま【昨年との比較写真】 米入国にワクチン接種義務化。健康上の理由で接種できない人は今後どうなる?… 専門家に聞いた 入国は「ワクチン接種者のみ」……どうなる?海外旅行。(フィガロ) Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

NY屋内活動に「ワクチン接種証明」義務づけ 全米初の試みが始まったが・・・街の様子は

ニューヨーク市は17日、屋内飲食と屋内アクティビティの利用時に、新型コロナウイルスのワクチン接種証明の提示を義務づける新施策を開始した。 施策は「Key To NYC Pass」と呼ばれるものだ。屋内レストランやバーほか、映画館、コンサート会場、劇場、博物館、ジム、スポーツ試合など屋内アクティビティ施設において、従業員と12歳以上の利用客は、少なくとも1回のワクチン接種を終えていなければならない。入り口では「ワクチン接種証明書」もしくはデジタル管理された「ワクチンパスポート」の提示が求められる。 感染力の強いデルタ株が広がる中、頭打ちとなったワクチン接種率を後押しするための施策で、3日デブラシオ市長により発表された。市長は記者会見で、「いよいよワクチン接種が必要な時が来た。接種を受けた人はこの街であらゆることを満喫できる。しかしまだ受けていない人は、残念ながら多くのことができなくなる」と述べた。 似たような試みはフランスやイタリアでも導入されているが、全米の都市としてはニューヨーク市が初となった。 1ヵ月の移行期間の後、9月13日より罰則化される。ルールに従わない店や施設には1回目の違反時に1000ドル(約10万円)、2回目の違反時に2000ドル(約20万円)の罰金が課せられる。 ワクチン接種についてほかにもニューヨーク州では、9月6日のレイバーデーまでに州の職員に義務付け(もしくは毎週の検査でも可)、医療従事者や介護施設に勤務するヘルスケアワーカーにも義務付けるなど、じわじわと接種の義務化が進んでいる。 街はどのように変化しているのか、店や施設は早速新ルールを適用したのか、17日から20日にかけて街の様子を見に行ってきた。 ワクチンが義務化された街の様子 ちなみに筆者は5月に接種を受けたが、これまでの3ヵ月間で接種証明書などの提示を求められたことはなく、唯一6月にスイスに入国する際に必要になっただけだ。友人・知人の多くも同様に提示を求められたことがないと言い、1人だけ「クリスピークリーム(ドーナツ屋)で無料ドーナツを配る時に証明書を見せた」という人がいるだけだ。 17日から20日にかけてはどうだったかと言うと・・・。 図書館 求められず、何も聞かれず(要マスク着用) レストラン&バー(小規模経営店) 求められず、何も聞かれず(屋外スペースがあったので利用) レストラン&バー(一大有名チェーン店) 求められず、何も聞かれず(入り口に、ワクチン接種が完了していなければマスク着用を求めるサインあり) しかし、最後までワクチン接種済みか否かは聞かれなかった。 日本食レストラン(日本人経営店) 提示を求められた やはり真面目な日本人の国民性か、ルール開始と共にたまたま入った某日本食レストランでは、ワクチン接種証明書の提示を求められた。しかし証明書が実際に自分のものであるか否かの判断材料となるIDまでは求められなかった。 映画館 求められず、何も聞かれず(入り口の係員に話を聞いたら、今は入館を認めているが、9月13日からワクチン接種者しか入館できないと教えてくれた) 罰則化がスタートしなければ、大半の店はギリギリまで導入を見送っているようだ。確かに店側の立場で考えると、不況が長引く中、ワクチン接種証明書がないという理由だけで利用したいと言っている客を断るのは断腸の思いだろう。 ・・・と思っていたら、最後にあった!厳密にチェックしているところが。 マダムタッソー 提示を求められた マダムタッソーというハリウッドスターの等身大フィギュアを展示した観光施設の入り口では、「厳密」に証明書とIDの提示を求められた。 中には、未接種や証明書を携帯していない人が足止めされ、係員に懇願していたが「法律で決定したから」と入館を断られていた。 筆者は係員に、証明書の代わりにコロナ検査の陰性証明書は有効か否かを尋ねると、証明書もしくはワクチンパスポート「のみ」有効だと言われた。 現時点で「厳密に」チェックしている店や施設は少なかったが、9月13日以降は本格化していくだろう。 さまざまな場所をチェックしたが、ワクチン接種証明書の提示が必要なスポットは「観光客を相手にビジネスをしている場所」が多いと感じた。であれば、博物館は必要で図書館は不要の辻褄が合う。 ワクチンの義務化は果たしてうまくいくのか? 筆者は日本に住む人からさまざまな質問を受けることがある。 例えば「この義務化はうまくいくのでしょうか?」というものだ。筆者の考えはこうだ。「昨年以降、誰もが体験したことがないことに立ち向かっていて、そのたびに新しい試みをしているので、これについてもうまくいくかどうかは誰もわからない。トライ&エラーで試し、うまくいかなければ調整していくのだろう」。 州や市は昨年以降、経済を再開させるためにあらゆる対策を講じてきた。例えば、屋内飲食の再開も初めから100%オープンさせるのではなく25%からはじめ、感染状況を見ながら少しずつ調整し、100%再開を目指し進めてきた。この施策もトライ&エラーの1つだろう。 ワクチン反対派の反発や抵抗は非常に大きく、よくデモが起こっているが、反対派にはどう対応していくのか、そちらの方が気になる。屋外飲食スペースは増えたため、屋内飲食不可というのは未接種者にとって打撃は少ないかもしれないが、屋内アクティビティが利用不可というのは、冬季が長くて厳しいこの街では痛手だろう。 関連記事 全米の4人に1人が「ワクチン打たない」反ワクチン運動や職場訴訟も(動画あり) 未接種で解雇、接種証明書の転売 …「ワクチン接種か否か」で揺れる米国 またマダムタッソーを見ていて思ったのは、この施策の実行には、入り口でチェックするスタッフが追加で1人必要になり店側の負担も増える。そしてその担当者が、接種証明をどの程度チェックするのだろうか?客の多い時間帯はおそらく、IDと照らし合わせたり偽物か否かの判断が容易にできなくなるだろう(注:アメリカでは偽札や偽の卒業証明書などが多く、すでに偽の接種証明書も出回っている)。果たして、入り口でのチェックがどのくらい徹底されるのかは疑問だ。なにせ全米初の試みなので、他都市もニューヨークの今後の動向をうかがっているところだ。筆者も引き続き見守っていきたい。 NYのコロナ対策関連記事 – 2021年6月 1年3ヵ月ぶり「非常事態」が解除 NYはいま【昨年との比較写真】 – 2021年5月 新型コロナに「打ち勝った」“先行事例”となるか?NYが復興へ前進、大規模再開へ 米「ワクチン接種でマスク不要」 NY中心地のマスク率は? 街の人の声は? – 2020年10月…

1年3ヵ月ぶり「非常事態」が解除 NYはいま【昨年との比較写真】

「緊急事態は終わった。新しい章の始まりだ」 ニューヨーク州のクオモ知事は23日の定例記者会見でこのように述べた。 州では昨年3月7日にコロナ禍における非常事態が宣言されたが、今月24日をもって終了の期限を迎え、非常事態が解除された。 そもそもこの非常事態宣言とは当時、世界最悪の状況に陥った同州の新型コロナ感染拡大を受け、必要な予算、物資、州兵などの確保を目的に出されたものだったが、ワクチンの浸透と共に感染状況は落ち着いている。 1年3ヵ月前といま(比較写真) 過去記事 (2020年3月) 米海軍の病院船コンフォート到着 死者千人超えでも希望を捨てない人々(ニューヨーク、今日の風景) NY州最新の感染&ワクチン接種状況 ニューヨーク州の感染者数は、先月よりさらに減少している。 25日に実施された新型コロナ検査は9万7020回。うち、385件が陽性(全体の0.40%) 新型コロナウイルスによる入院患者(重症患者)数はこの日の時点で、371人 死者5人 州のワクチン投与実績…少なくとも1回接種は71.6% これまでに州内で投与されたワクチン接種数:2094万5467回 24時間以内に投与されたワクチン回数:11万7760回 少なくとも1回のワクチン接種を受けたのは、18歳以上の71.6%(すべての年齢層の59.4%) 必要回数分(1回もしくは2回)のワクチン接種を完了したのは、18歳以上の64.1%(すべての年齢層の52.8%) 非常事態解除後のNYのいま マスクの着用率は?(タイムズスクエア) 筆者は宣言解除の翌25日から週末にかけて、ニューヨークの中心地タイムズスクエアやセントラルパークなどに様子を見に行った。 まず、国内からの観光客だと思われる人出は先月よりさらに増えており、パンデミック前の活気が戻っていた。 州では先月半ば以降、ビジネスの入店・入場制限の規制のほとんどが解除され、地下鉄も本来の24時間営業に戻るなど、大規模に経済活動が再開している。ワクチン接種完了者は、公共交通機関や一部の商業施設を除いて、マスクの着用義務がない。 多くの人々はワクチンを打ったからこその「自由」を満喫しているようだった。大切な家族や友人とハグをし、さまざまな場所にマスクなしで躊躇なく行ける自由。パンデミックによりそれまでの当たり前が当たり前ではないと誰もが気づいたからこそ、なんてことのない日常がありがたく感じる。気候も良く、緊急事態が解除された軽やかな気持ちは皆、同じだろう。 同じだろう。 マスクの着用率は先月、ワクチン接種を完了した人でもまだ高いとレポートしたが、6月も後半になると、全員とはいかないまでも、マスクを外している人は大分増えていた。 マスクの着用率は先月、ワクチン接種を完了した人でもまだ高いとレポートしたが、6月も後半になると、全員とはいかないまでも、マスクを外している人は大分増えていた。 ニューヨークは毎年この時期、大規模なプライドパレードが開催されるが、昨年は中止、51回目の今年は「Pride March」と題してパレードが縮小し、ブロックパーティーやイベントが各所で行われている。 セントラルパーク 広大なセントラルパークでのマスク率はさらに少なかった(全体の1%ほど)。大多数の人はマスクなしで、ピクニックや読書、ジョギングなど思い思いの週末を楽しんでいた。 飲食店やバー 「QRコード・メニュー」がニューノーマル パンデミック以降、レストランやバーは歩道や車道だったスペースにテーブルを置き、感染防止対策をしているが、外は蒸し暑いからと屋内飲食する客も最近は増えている。 飲食店の中にはワクチン接種完了者のみを受け付ける店もあるようだが、筆者はこれまで一度もワクチン接種完了証明書の提示を求められたことはない。この店にはついうっかりしてマスクをせずに入店したが、通常通りに対応された。 飲食店の大きなニューノーマルの1つが、メニューブック/表の廃止だ。QRコードでメニューを見て注文するのが、飲食店での新たな常識となった(昨年の夏以降増えた気がする)。ミッドタウンにあるハンバーガーの美味しいこの店の女性サーバーに理由を聞くと、「衛生上の問題です。メニューは不特定多数の人がベタベタ触って不衛生だし、店側も客ごとに各ページを除菌するのは手間がかかるから」。そこで登場したのがQRコード・メニューというわけだ。 「もはや店内には紙のメニューはいっさい置いてないんですよ」との徹底ぶり。今後メニューブック自体が過去の産物として、新世代に「何それ?」と言われるようになるかもしれない。 またニューノーマルの1つだった、カクテルなど「アルコール類の持ち帰り」は25日以降はできなくなった。 州では、昨年3月の非常事態宣言と共に、バーやレストランの通常営業を禁止し、アルコール類も含むデリバリーもしくは持ち帰りに限り許可していた。 アメリカはもともとアルコールに関して日本より規制が厳しい。州によって多少異なるが基本的に路上飲みは一切禁止だし、ハードリカー類は酒屋でしか販売されておらず、当然夜間は閉まる。すべての酒類を購入するには写真付きIDを見せる必要も。そのような厳しい規制の中「お持ち帰りカクテル」は、市民にとって画期的なサービスだった。本来は禁止されているが、店の前の路上でこっそり飲む人も見かけた。 しかし今回、パンデミック前のガイドラインに戻るとして、本来のルール(持ち帰り禁止)となった。 関連記事 昨年10月の飲食店の様子 半数以上が廃業? この半年「生き残った」飲食店が行った新たな試みとは【NYで屋内飲食再開】 そのほか    地下鉄 スーパーマーケット オフィス 植物園、博物館 筆者はこの週末、ブロンクス植物園の草間彌生展「KUSAMA: Cosmic Nature」を訪れたが、世界の草間彌生人気を反映して、ここもものすごい人出だった。 温室や館内、土産店の入り口には「ワクチン接種済みであればマスク不要」とする注意書きがあり、接種完了済みの筆者はマスクを着けずに入ったが、接種証明書の提示は求められなかった。…