「シークレットサービス」を間近で見た経験から考える 銃社会アメリカの「警備と安全」 安倍元首相銃撃

冒頭の写真は、2020å¹´9月11日に筆者が撮影した、当時のトランプ政権のナンバー2、ペンス副大統領(赤の矢印)だ。 ペンス氏は米同時多発テロから19年にあたるこの日、多くの犠牲者を出した消防隊の激励のため、ニューヨークのグラウンドゼロの慰霊祭を訪れていた。筆者はこの追悼式典を取材中、ペンス氏が乗った車が約5メートル先に偶然止まったため、その一部始終を窺うことができた。 ペンス氏が車から降りた際の写真は、以下の記事に掲載 「またね」が息子・父・夫との最後の言葉に ── 3家族の9月11日【米同時多発テロから19年】 会場には当時大統領候補だったバイデン夫妻など要人も多数訪れており、「最高レベルのセキュリティ(警備態勢)」が敷かれ、物々しい雰囲気に包まれていた。敷地周辺をぐるっと頑丈なバリケードで覆い、部外者は一切入れないようになっている。中に入る事が許されたのはメディアおよび関係者、そして事前登録した遺族のみだ。 ペンス氏を幾重にも囲んでいるのは無数の警察官、そして要人専用の護衛官「シークレットサービス」だ。彼らはペンス氏に背を向け、あらゆる方向を常に警戒していた。関係者のみしかいない、このような場所においても、である。 特殊トレーニングされている彼らは四方八方に常に目を光らせ、誰かがカバンから不審物を出したその瞬間に動き出し、犯人の行動を阻止する、いつでも瞬時に動ける態勢をとっていた。筆者にとって、アメリカのプロ中のプロのSPの動きを目の当たりにした経験だった。 シークレットサービスとは? 国内外の要人警護専門で知られるが、暴力事件、サイバー犯罪、金融インフラの保護を含む犯罪捜査のプロでもある。NCMEC(行方不明・被搾取児童センター)と連携し、フォレンジック(犯罪捜査における分析や調査)の技術提供も行う。 「ホワイトハウスのシークレットサービスは、瞬時の反射神経が高く、最高指導者のために銃弾を受ける訓練を積んでいることで有名」(ヴァニティフェア)。 筆者は約15年前も、大統領職退任後のビル・クリントン氏と偶然ミッドタウンの路上ですれ違った経験がある。その時も物々しい警戒ぶりだったのを今でも覚えている。スーツを着たSP5、6人が彼の周囲を囲みこちらに向かって歩いて来た。その集団を見て遠目にも「要人」というのは自明だった。すれ違う際に顔を見て、クリントン氏とわかった。アメリカでは「元大統領」でこれほどの警護態勢なのだ。 安倍元首相が選挙の応援演説中に背後から男に銃撃され、SPによる「要人警備」の不備が指摘されている。もちろん、現職と第一線を退いた要人とでは、セキュリティ対応が異なるというのはあるだろう。そして日常的にどんぱちやってる国と、銃犯罪が極めて稀な国の事情が異なるのも理解できる。 しかし日本も、一般市民が銃を手作りし「まさか」という事件を起こした以上、このままではまずいということがわかっただろう(実際、流れ弾のようなものが現場から見つかっている)。また、あの場にいた聴衆も、爆発音の後もなお、現場に近寄る人、突っ立ったままの人が多かったようだ。銃社会アメリカであれば、音がしたら地面に伏せ、物陰に隠れる(逃げる)。警察はテープを張り巡らせ、救急の邪魔になる野次馬をすぐに排除する。そういう光景も筆者が見た映像からは確認できなかった。 アメリカでは、選挙の演説は屋外では囲いを設け、空港のようなセキュリティ態勢が敷かれる。 オーサーコメント アメリカの警備も実は完璧ではない 連邦議会議事堂襲撃事件 アメリカでは、特に2001年の米同時多発テロ以降、「念には念を入れた厳重警備」が敷かれるようになった。それであれば警備が100点満点かというと、実はそうでもない。 警備上の大失態と言えば、2021å¹´1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件が思い出される。あの日、大きな衝突が勃発する懸念があったにも拘らず、議事堂警察(USCP)は連邦機関に警備の応援を事前要請していなかった。警備態勢の不備や対応の遅れが指摘され、議事堂警察署長はその後辞任した。占拠事件を防げなかった原因は、1年半経った今も調査が続いている。 2021å¹´1月6日、暴徒化した群衆と揉み合いになった議事堂警察。(写真を見る) 関連記事 警官が2人も自殺していた ── 議事堂乱入事件、その後 トランプ支持者は、厳重なハズの議事堂を「なぜこれほど簡単に」襲撃できたのか? ── 現地で深まる謎 今年最初の「悪夢」… 怒りのトランプ支持者が議事堂を占拠しカオス状態に ケネディ米大統領暗殺事件 過去には、ケネディ大統領が暗殺される事件もあった。ケネディ氏は1963å¹´11月22日、テキサス州ダラス市のパレードにてオープンカーでの遊説中、24歳の男に銃撃され死亡した。 1発目がケネディ氏の頸部を貫通したが致命傷に至らず、5秒後に発射された2発目が頭部に被弾し、それが致命傷になったという。 「COULD THE SECRET SERVICE HAVE SAVED J.F.K.?(シークレットサービスは果たしてJ.F.K.を救うことができただろうか?)」という記事を発信したヴァニティフェアによると、(現在の日本の政治家のように)ケネディ氏も「有権者の近くで寄り添いたいと考えている政治家だった」。 暗殺される直前のケネディ大統領(当時)と夫人ら。バリケードも設置されていなかった。(写真を見る) この日、ケネディ氏の車の前後にはシークレットサービスが警備にあたっていたが「彼らはケネディ氏ら要人から数メートルの距離にいたにも拘らず、回避行動を取らなかった」「あの致命的な数秒間は、いまだに我々の理解を超えるもの」(ヴァニティフェア)。 後続車にいた護衛官の1人、クリント・ヒル氏がケネディ氏の車に飛び乗ってジャッキー夫人をかばったのは有名な話だが、それも狙撃を受けた後のことだった。ヒル氏は事件後「(1発目に)爆竹に似た大きな音がしたが、初めは何なのかわからず、爆音がした方角を向いた」「もっと早く動くべきだったと後悔に苛まれ、しばらくPTSDに苦しんだ」と話したことが、サンなどで報じられている。 ケネディ氏の在任中は、長時間勤務や飲み会が日常茶飯事で、スタッフが二日酔いで出勤することにも寛容な雰囲気だったという。事件前夜も、シークレットサービスのうち数名は、朝3時ごろまで飲みに出かけ、事件日は睡眠不足だった(ヴァニティフェア)。 また、近年になってもシークレットサービスが不審者によるホワイトハウス敷地内への侵入を許すという大失態を犯したことについて、「個人のミスではなく、組織としての仕事に対する考え方や文化や習慣が原因」とする関係者談を紹介した。筆者はこれらの記事を読みながら、今回の安倍氏の銃撃事件との類似をいくつか見たのだった(ちなみに、アメリカで安倍氏の事件は暗殺と呼ばれており、ケネディ氏を殺害した容疑者も事件の2日後に射殺され事件の動機は不明だが、同様に暗殺と呼ばれている)。 このような警備上の大失態を踏まえ、シークレットサービスや警察らは、要人の安全を守るために、トレーニングや研鑽を積んでいると思われる。 銃社会のアメリカで一般市民の安全がどのように守られているか? 銃社会においては、要人警護のみならず、一般市民を守るため、大都市では街の警備も911以降、厳重になった。 中心地にはライフルを抱えた特殊警備隊が配置され、観光地には空港のような金属探知機が置かれて、身体検査や持ち物検査がある。美術館や博物館の入り口でも、荷物検査をされることがある。 筆者はこれらのセキュリティを見ていつも思う。これらは要は「抑止力」なのだ。彼らはそのような厳重な警備をあえて見せることで、一般市民にはテロから「守られている」安心感を与え、攻撃者に対しては「何もしてくれるなよ」と暗黙で暴力、攻撃を最大限に抑止していると考えることができる。 この写真は、筆者が議事堂襲撃事件の2週間後、バイデン大統領就任式の様子を見るために議事堂を訪れた時のもの。柵の「内側」でさえ、これでもかというほどの無数の米軍が配置されている。これほどのものを見せつけられると、犯人やテロリストの心理として、易々と武器を持ってターゲットに近づこうとは考えなくなるものだ。 銃社会のアメリカではこのようにテロを未然に防ぐことで、要人のみならず一般市民の「安心、安全」が保たれている。 これらの「防御策」は「国防」とも通じるものがあると筆者は考える。それを物々しいと忌み嫌うか、それとも「抑止力」として安心材料とするか。 実際のところ、安倍氏を銃撃した山上徹也容疑者にしても事件前日、安倍氏が応援演説をしていた岡山を訪れたが「手荷物検査などで近づけなかった」と供述していることが報じられた。「検査」があったことが攻撃の抑止に繋がったのがわかる。…

21歳銃撃犯の心の闇、危険人物の予兆、銃の申請手助けした父がコメント…米パレード乱射7人死亡

アメリカの銃乱射事件が一向に止まらない。 イリノイ州シカゴ近郊のハイランドパーク市で、4日の独立記念日のパレード中に起きた銃乱射事件。ロバート・クリモ(Robert E. “Bobby” Crimo III)容疑者は、沿道のビル屋上からパレードの群衆に向けて乱射し、7人が死亡、38人以上が負傷した。 容疑者は30発分の弾丸を2ラウンド発砲し、新たに3ラウンド目の弾丸を補填して発砲を続けたと見られる。現場には83発分の使用済みの薬莢(やっきょう)とライフル弾倉が残されていた。 容疑者の身柄は拘束され、7件の第1級殺人罪で訴追された。逃走車からは別のライフル銃と約60発の弾薬、さらに自宅からは少なくとも3丁のピストルも見つかっている。逃走中に別の乱射事件も計画していたと見られており、有罪判決が確定後、仮釈放なしで終身刑になる可能性がある。 犯人像 クリモ容疑者のプロフィールと見られるIMDbのデータや地元メディアの報道などから見えてきた犯人像がある。それらによれば、容疑者は2000å¹´9月20日シカゴ生まれの21歳、身長183センチ。 イタリア系の血を引き、3人きょうだいの真ん中で、あだ名はボビー。叔父の証言では「いつも1人でいて、静かで、すべて自分で抱えこもうとする性格」という。 コロナ禍前はパネラブレッド(チェーン展開のカフェ)で働いていたが、現在は定職に就いておらず、アウェイク・ザ・ラッパー(Awake the Rapper)というペンネームで、地元のアマチュアラッパーとして活動していた。11歳で音楽のネット配信を開始し、何曲かリリースした中で『On My Mind』という曲がヒットしたようだ。 また父親のロバート・クリモ・ジュニア(Robert Crimo Jr.)氏は商店をいくつか経営するビジネスマンで、2019年に市長選挙で立候補し銃規制を支持する民主党員に敗れたと報道されている。 殺傷能力高いライフルを使用 容疑者が犯行で使用したのは、アメリカの一般的な警官が携帯するピストルの類ではない。半自動式のライフル銃(Smith & Wesson社のM&P15セミオートマチックライフル)、つまり戦場などで用いるような、殺傷能力の高い大型の武器だった。容疑者はその武器を「合法的」に入手していた。 容疑者には「予兆」があり、十分「危険人物」だった… 1.警察沙汰 CNNによれば、容疑者は2020å¹´6月から21å¹´9月の間に、銃器を購入する際に必要な4つの身元調査をパスしている。当時の容疑者の唯一の刑事犯罪は、16å¹´1月のタバコ所持の条例違反のみで、医療施設から州警察にメンタルヘルス禁止報告書は提出されていなかったという。 しかし容疑者には危険人物としての十分な「予兆」があった。 19å¹´4月、容疑者がその1週間前に自殺しようとしたとして家族から通報があり、警察が自宅に駆けつけた。その際、容疑者と家族からメンタルヘルスの専門家に世話になっている旨の報告があった。同年9月には、容疑者が(親戚に対して)「全員を殺す」と脅迫したとして再び家族が通報。警察が駆けつけたものの立件はされなかった。その際、自宅から16本の刃物と短剣と刀1本ずつ、計18本が押収されたが、それらは父親がコレクションとして所有、保管していたもので、その後返却された。 2.暴力的なイメージの配信 容疑者は前述のラッパー名で、暴力的なイメージをオンライン上に配信していた。 YouTubeやSpotifyなど大手ストリーミングプラットフォームに、不吉な歌詞の楽曲や銃事件が描かれた暴力的なイラストを用いた自作のミュージックビデオをいくつも投稿していたが、現在それらのコンテンツは削除されている。 どのように銃を購入したのか? 容疑者の親戚への脅迫後、警察沙汰になり暴力的な傾向があるとみなされたにも拘らず、その後の身元調査に合格し、銃所持許可を取得。2丁のライフル銃も含む5丁の銃を合法的に州内で購入していた。 暴力的な傾向がある個人が銃を購入することを防ぐ、イリノイ州の「レッドフラッグ法」もすり抜けていた。 関連記事 「問題は“銃”ではない」トランプ大統領の声明(概要)と銃社会を救う?レッドフラッグ法とは 州警察当局の発表では、銃器所有者のIDであるFOID(Firearm Owners Identification)カードを申請したのは、警察への通報があった3ヵ月後の19å¹´12月だ。当時19歳だった容疑者は21歳以下ということで容疑者の父親がスポンサーとなって、申請を手助けした。その際、明確な危険性やFOIDが拒否する十分な根拠がないと判断され、翌年審査が通り、その後容疑者は銃を購入できたというわけだ。 「息子はあまり見せなかったけど、メンタルイルネス(心の病)を患っていた」「自分は何も悪いことをしていない」とする父親のコメントも写真付きで報道されている。息子が犯した大事件にショックを隠し切れず、懲役刑で罪を償ってほしい意思を示しているが、「射撃に行くために購入したと思った。息子自らの運転で行き、身元調査を受け、自分のお金で購入した銃だ」と、大量虐殺事件への関与は一切ないと強調した。銃購入のためのFOID申請をサポートしたことについての謝罪はなく、罪の意識も見られない。 過去記事 「10代」が銃を手にできるアメリカ。「学校で起こった銃犯罪データ」から見えてくるもの ライフルは容疑者の18歳の誕生日直後(事件2日前)に購入。テキサス州小学校銃乱射事件 毎日100人、年間4万人が銃で命を落とす国 3億丁ある銃器との共存やいかに? 【加速する銃乱射】今年に入って255件、死者62人 数字で見るアメリカの現実と憂い Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

パンデミック以降、銃購入者が増加。「銃社会は危険と考えないアメリカ独特の価値観のワケ

2容疑者(共に21歳)、乱射事件直前に銃を購入 アメリカでは今月、大きな銃乱射事件が立て続けに発生した。16日、ジョージア州アトランタ市近郊のマッサージ・スパ施設3ヵ所で計8人が死亡(アジア系6人含む)、1人が負傷。それから6日後の22日には、コロラド州ボルダー市のスーパーマーケットで10人(警官1人含む)が死亡した。 偶然だがこの事件の容疑者は共に21歳の男だ。いずれも身柄は拘束され、動機など取り調べが進められている。 アトランタの事件のロバート・アーロン・ロング(Robert Aaron Long)容疑者は、殺害当日にディーラーから半自動拳銃を購入したと伝えられている。ボルダーの事件のアフマド・アル・アリウィ・アリッサ(Ahmad Al Aliwi Alissa)容疑者は、事件の6日前にルガーAR-556を購入したとされる。 こんな若者が、事件直前に銃を購入でき、乱射事件を起こしたというわけだ。 アメリカでは近年だけでも、大量の死者を出す銃乱射事件が頻繁に起きている。サンディフック小学校(2012年)、フロリダのゲイナイトクラブ(2016年)、ラスベガス(2017年)、マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校(2018年)・・・。 ニューヨークポスト紙は、「次はあなたの街で起こるかもしれない。通りで起きている戦争について、国は何か対策を講じてくれるのか?」と報じた。ニューヨークは全米でも銃規制が厳しい街の1つで、銃の持ち歩きなどは一切禁止されている。よって30年間にわたって銃による殺人事件は減少傾向にあったが、パンデミック以降の治安悪化により、再び銃がらみの事件が多発している。 バイデン大統領はボルダーの乱射事件後、連邦議会に対し銃規制の厳格化を求める働きかけを行った。ホワイトハウスのジェン・サキ報道官によると、実現の可能性がある銃規制の大統領令には、シリアル番号なしで自宅で製造できるゴーストガンの身元調査の要求や、ディーラーから銃を購入するためのFBIの身元調査で通らなかった場合に地元の警察に通知されるシステムが含まれるという。また今月、民主党の上院議員35人が、AR-15スタイルのライフルなど人気の半自動銃を含む「攻撃用武器」を禁止する法案を提出したばかり。しかしこれらは小手先だけの規制に見え、抜本的な改革にはほど遠い。今後どれほどの事件を防ぐことができるかは疑問だ。 NRA(全米ライフル協会)は政治と強い癒着があると言われており、共和党員と同じように一部の民主党員も銃規制に反対しているため、銃制度の廃止など抜本的な改革を期待できる状態ではない。 パンデミック以降、銃の売り上げUP さらに気になるニュースもある。米主要メディアは、アメリカでパンデミック以降、銃の売り上げがさらに伸びていると報じた。 USAトゥデイ紙によると、2020年の合法的な銃の売り上げは、前年比40%増の約3969万5315丁に上った。さらに今年1月だけでも、前年同月と比べ60%増え、413万7480丁だった。 この1月の数字は「記録が開始した1998年以来、1ヵ月間の銃の売り上げとして最多」という。 1月の売上がもっとも多かったのは、中西部イリノイ州だ。同州の人口は全米の4%足らずだが、銃の販売数は全米の4分の1にあたる100万2118丁。2番目は中東部ケンタッキー州。人口は全米の1.3%だが、販売数は42万1790丁にもなる。ちなみにニューヨーク州での販売数は全米の中で少ない方だが、それでも4万9184丁が売れた。 もちろんこれらは、闇雲に販売されているわけではない。連邦捜査局は、National Instant Criminal Background Check System(全米即時犯罪歴身元調査システム)のリストを使い、銃の販売を追跡、管理、公開している。犯罪歴があったり精神疾患があったりする人は購入できないシステムになっているが、 98年以降行われたバックグラウンドチェック(身元調査)約3億1000万件のうち、購入を拒否された数はたった150万件に過ぎない。身元調査が緩いという指摘があり、調査基準の強化も求められている。 なぜパンデミック中に銃の販売が伸びたのか? 銃の販売数が増加したのは1999年以降だ。1999年は年間で約913万丁、2006年に1000万丁、2011年に1500万丁、2013年に2000万丁、2016年は2500万丁と増えていった。 昨年は4000万丁近く、現在のペースで今年の売り上げを予測すると、5000万丁に達するのではないかとUSAトゥデイ紙は見ている。 銃の販売が昨年以降に急に伸びた背景として、さまざまな要因が考えられるが、その1つとして、新型コロナウイルスのパンデミックによって人々の不安感が高まったからではないかと、多くの社会科学者が指摘している。 CBSニュースやCNNが伝える情報によると、昨年初めて銃を購入した人は500万人以上で、中でもアフリカ系アメリカ人と女性の売り上げが急増した。特に、昨年9月までの女性への売り上げは、前年比の40%増という。 多くのアメリカ人は、日本人のように「銃があるから危険」とは考えない。合衆国憲法修正第2条により「銃を所有する個人の権利」が保護されていることは、自由を求めて闘ってきたアメリカ人にとって非常に重要だ。そして「銃を多く所持するほど、より安全が守られている」と考える。だから社会不安が人々の中で広がれば、自分や家族を守るために銃を購入する動機に繋がり、銃の売れ行きがよくなるというわけだ。 ちなみにこの憲法の考えについて、前述のニューヨークポスト紙にはこのようにある。 「合衆国憲法は、身を守るための武器として人々に銃の所持を許したのであって、戦争兵器として使用するために許したのではない。銃の所持を我々の祖先はどう考えるか。人々が銃を使って大量殺戮することなんて望んでいなかっただろうに」 関連記事 【加速する銃乱射】今年に入って255件、死者62人 数字で見るアメリカの現実と憂い 「問題は“銃”ではない」トランプ大統領の声明(概要)と銃社会を救う?レッドフラッグ法とは 毎日100人、年間4万人が銃で命を落とす国 3億丁ある銃器との共存やいかに? 容疑者は性依存症との報道も 8人死亡の米アジア系マッサージ・スパ連続銃撃事件 Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

容疑者は性依存症との報道も 8人死亡の米アジア系マッサージ・スパ連続銃撃事件

16日、米ジョージア州アトランタ市および近郊のマッサージ・スパ施設3ヵ所で相次いで銃撃事件が起こり、計8人が死亡、1人が負傷した。 いずれの店もアジア系が経営しているとされ、亡くなった8人のうち6人はアジア系、2人は白人だった(うち7人が女性、1人は白人男性)。その後、ロバート・アーロン・ロング(Robert Aaron Long)容疑者が逮捕された。3ヵ所での発砲は、ロング容疑者1人による犯行と見られている。 アメリカでは新型コロナウイルスのパンデミックとなった昨年以降、アジア系の人々をターゲットにした差別、嫌がらせ、ヘイトクライム(人種、民族、宗教、性的指向に係る憎悪犯罪)が急増しており、連日のようにアジア系の人々が被害にあった事件が報道されている。 関連記事 NYで多発するアジア人差別(1)在住者の私の経験談 NYで多発するアジア人差別(2)暴行受けた日本人ミュージシャン、その後 そんな中、アトランタの銃撃事件も被害者にアジア系が多いことから、アジア系へのヘイトクライムではないかと見られ、発生当初は現地メディアの報道もそのような可能性をほのめかす見出しが並んだ。 バイデン大統領も「動機が何であれ、心配は高まっている」とアジア系の人々への気遣いを寄せ、いかなる差別やヘイトクライムも許さないとするコメントを発表した。 容疑者は警察の取り調べで、襲撃した店を以前利用したことはあると供述しているが、容疑者本人からアジア系へのヘイト(憎悪)が事件の動機につながったとのコメントは今のところ出ていない。 通常の犯罪ではなく「ヘイトクライム」と認定するには、確固たる証拠が必要とされており、この事件がヘイトクライムになるか否かは、今後の捜査で明らかになるだろう。 犯人像:物静かな高校時代。現在はセックスアディクション 現地メディアの情報からの最新情報や見えてきた犯人像を抜粋する。 ロング容疑者は、ジョージア州ウッドストック市出身の21歳。2017年に高校を卒業した。両親と妹がいるが家出をし、19å¹´1月以降、家族と連絡を取り合っていなかったようだ。 容疑者のインスタグラムのアカウントには、好きなものや自分の人生を表現するものとして「ピザ、銃、ドラム、音楽、家族、そして神」と書かれていた。 元同級生らは、容疑者を「物静かで、落ち着いて、いつも冷静だった」「友人は多くなかった。社交的でなく、いつも1人の世界に没頭していた」と証言している。容疑者として公開された写真も、高校時代とはまったく違う雰囲気だといい、こんな事件を起こすような人物ではなかったと、ショックを隠せないようだ。 容疑者はアトランタでの殺傷事件後、同様の事件を起こすためにフロリダに向かおうとしていた。容疑者の両親が、事件後に公開された防犯カメラの映像を観て息子が罪を犯したことを知り、警察に通報。その後、容疑者の携帯電話で居場所が追跡できたことが、迅速な逮捕につながった。 事件現場は「マッサージパーラー」だった 現在の容疑者について、17日朝になり、現地警察は報道機関を通して「セックスアディクション」(性依存症)と発表し始めた。 「Young’s Asian Massage」など報道された3店はいずれも、事件発生直後はアジア系の人が働いているマッサージ店やスパ店と報じられており、通常のマッサージやスパの店での事件だと思っていた人も多い。だからこそヘイトクライムではないかとささやかれていたのだが、「マッサージパーラー」(スパとも呼ばれている)ということが明らかになった(そのようなマッサージパーラーはアジア系が人気のようだ)。 マッサージパーラーは「売春ビジネスの最前線であることが多く、男性に性的に奉仕することがしばしば期待されている」と報道されている通り、すべてとは言えないまでも、性的欲求を満たすサービス、または表向きには通常のマッサージサービスを提供しているが店奥に入ると隠れたサービスがあるなど、さまざまな形態がある。いずれにせよ、事件現場が通常のマッサージ店ではなくマッサージパーラーということなので、容疑者がこのような事件を起こした動機は、当初言われていたヘイトクライム以外にほかにもあるかもしれない。 チェロキー郡フランク・レイノルズ保安官は「容疑者は、銃撃した3店をいずれも頻繁に訪れ利用していた可能性が高い。ヘイトクライムと断言するには時期尚早」と、現地メディアを通して発表している。 事件の動機の解明が待たれる。 Text by Kasumi Abe  Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止