韓国孤児から大富豪に上り詰めた壮絶な半生。53歳米スポーツ界の重鎮が病?

14日全米の主要メディアが、大富豪のキム・ペグラ(Kim Pegula)氏が「予期せぬ病に伏している」と報じた。 キム氏は日本では無名だが、アメリカのスポーツビジネス界では重鎮として知られる人物だ。プロのフットボールリーグ(NFL)のバッファロー・ビルズや、ナショナルホッケーリーグ(NHL)のバッファロー・セイバース(共に本拠地はニューヨーク州)の共同オーナーであり、ESPNによるとNFLとNHLの両リーグで最高経営層を務める初の女性という。 また、スポーツ&エンタメ企業、Pegula Sports&Entertainment(PSE)のCEOも務める。同社は持株会社として、バッファロー・ビルズやバッファロー・セイバースをはじめ、ナショナルラクロスリーグ(NLL)のロチェスター・ナイトホークス、バッファロー・バンディッツなど、さまざまなプロスポーツリーグの運営に携わる。フォーブス誌によると、同社の総資産は57億ドル(現在の為替で7720億円)とも言われている。 キム氏はNFLスーパーボウルの諮問委員会やNFL財団委員会にも所属し、プロのスポーツリーグ界において多様性を推し進めてきた人物としても知られる。 そんな同氏のある「異変」が、14日午前、PSE社や球団コーチの記者会見で明かされた。家族によって記された声明によると、キム氏は「予期せぬ健康上の問題に直面し、先週から治療中」という。 具体的な病状など詳細が明かされていないものの、「予期せぬ」という表現に深刻な健康上の問題が突然彼女に襲いかかったことを窺わせる。USAトゥデイの情報では、フロリダ州の自宅近くの病院で治療が行われているということだ。「優秀な医療体制によるここ数日の治療効果に感謝している。キムのために私たち家族のためにお祈りください。そして我々のプライバシーを尊重するようお願いします」として、声明は結ばれた。 激動の生い立ちに再スポット ここで改めて、キム氏の半生に注目が集まっている。これまで複数のメディアで語り継がれてきた彼女の生い立ちが、なかなか激動なのだ。 キム氏は1969年6月7日、韓国ソウル市生まれの53歳。複数の米メディアによると、5歳の時にソウル市の路上に置き去りにされていたところを保護されており、出生名や血縁上の両親の情報など、生年月日以外の記録が残されていないという。またDNA検査により、両親のどちらかが日本人の可能性が高いという情報も流れている。 孤児となったキム氏は1974年、カナダ人夫婦の養子として渡米し、ニューヨーク州北部の小さな村、フェアポートで育った。ホートン(Houghton)大学に通い、91年にアルバイトの面談で訪れたレストランで、食事中だった大富豪のテリー・ペグロ(Terry Pegula)氏と出会い、2年後に結婚した。3人の子を生み(うち1人は、プロテニス選手のジェシカ・ペグラ)、ペリー氏の前妻との2人の子も含む5人の母親となった。テリー氏とはおしどり夫婦として知られ、共同で2011年にセイバースを、14年にビルズを買収し、経営陣としてスポーツビジネス界で名を馳せていった。 そんな激動の半生を歩み、アメリカンドリームを体現してきたキム氏。今回、病状は明かされておらずさまざまな憶測が飛び交っているが、家族の意向を尊重し見守るしかなさそうだ。早期の回復が願われる。 アメリカンドリーム 関連記事 10年で日本撤退の米フォーエバー21 韓国系移民が一代で築いた栄光と衰退 スターバックス帝国を一代で築いたハワード・シュルツ。貧困からのアメリカンドリーム 日本人はまだ知らない… 世界が注目する「25歳の自力億万長者」の天才すぎる正体(現代ビジネス) Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

【移民遺産月間】先祖を辿れば誰もが「移民」米国の取り組み 英語教育を無償提供

ウクライナ避難民の増加に伴い、移民や難民の受け入れについて、以前にも増して活発に議論されるようになった。日本でも生活や就労、就学のサポートに加え、日本語教育の無償提供などが支援の一環として提供されているようだ。 移民国家、アメリカの現状はどうだろうか? 現在のアメリカは移民が作った国であるから、手厚い支援の土壌がすでにあり、熟している。そして毎年6月を、2014年以来「移民遺産月間(Immigrant Heritage Month=IHM)」と制定。ちょうど今の時期は随所で啓蒙イベントが行われている。 先祖を辿れば他国からの移住者(強制移住者含む)である大多数のアメリカ人にとってこの1ヵ月は、移民支援はもちろんのこと、改めて自分のルーツについて考えたり、多様性(ダイバーシティ)を見直すきっかけ作りとなっている。 (エリス島写真:自由の女神のすぐ側に浮かぶエリス島には、1892年〜1954年に移民局が置かれていた。) 国立公園局によると、アメリカの人口の約40%の人々がニューヨークのエリス島を通じて祖先をたどることができるという。 エリス島に代表されるように、人種の坩堝ニューヨークは、世界でも移民へのトレランス(免疫、寛容さ)が最もある都市の1つだ。 州の人口1950万人(2020年、センサス国勢調査発表)に占める移民数は、22%に当たる約435万人(2019年、移民のロビー活動団体FWD.us発表)。つまり4.5人に1人が移民という計算になる。 ニューヨーク市内はさらに割合が上がり、人口838万人のうち移民数は310〜580万人前後とされている。 移民支援のハブ=まちの図書館 教育と有益な情報を市民に無償で提供し、移民支援の中核を成す代表格と言えば、まちの図書館だ。 マンハッタンを含む市内3区に点在するニューヨーク公共図書館(以下NYPL)は、日本語を含む60ヵ国以上の書籍を貸し出し、移民に対してはアメリカ生活で必須となる英語教育にも力を入れる。 98ヵ国の移民受け入れ。英語教育を無償提供 NYPLが無償で提供している成人対象の英語授業では、リスニング、スピーキング、リーディング、ライティングを教えている。1セメスターは10週間(夏は4週間)のサイクルで行われ、生徒は週2回(1クラスは2時間もしくは3時間)の頻度で受講する。無償ということで、当地でありがちな、安かろう悪かろう…ではない。それどころか、講義レベルはかなり高い。出席率のポリシーや授業態度の管理も厳しい。筆者も以前受講したことがあるが、教わる内容は文法、イディオム、生活習慣と多角的で、無償と信じがたいほど本格的な授業だ。 アソシエイト・ディレクターのスティーブ・マホニさんによると、生徒はセメスターが始まる前に、米教育省およびナショナル・レポーテイング・システム(NRS)に準じたテストを受け、初級~上級の6段階にレベル分けされる。セメスターの終盤で再びテストを受け、英語の上達具合を精査される。 コロナ禍でしばらく休講となっていたが、市の経済活動再開後は市内3区41箇所(コロナ前は88箇所)のうち11箇所で、対面授業が再び行われている。 この日は多国籍の生徒22人がアパレル業界やサステイナブルについて学んでいた。みんな熱心に教師の話を聞き、積極的に発言している。マホニさんによると、今セメスターはなんと53言語を話す98ヵ国出身の生徒が参加しているという。 またコロナ禍で初めて試みたオンライン授業も、子どものいる親が自宅から参加できるとあって好評だ。現在28クラスが行われている。 「対面でもオンラインでも、生徒にはヒアリングし、英語を学ぶ理由やゴールを明確にしてもらっています」とマホニさん。それらを明確化することで、大学進学や就職など希望に応じた次のステップを紹介するなどし、生徒にとっては異国の地、ニューヨークでの新生活を後押ししているという。 受講して5ヵ月になるスペイン出身のヴァネッサ・ヴィラスさんは「素晴らしいプログラム」と、授業内容をすっかり気に入っている様子。コートジボワール出身のダニエル・ラトードさんは通い始めてまだ数週間だが、効果を実感中。「先生が経験を交えて英語を教えてくれるので面白く学べる。習った表現や知識を即生活に役立てられるのがいい」。 このクラスには2人の日本人生徒もいた。文化庁の新進芸術家海外研修制度で当地に滞在中の遠藤麻衣さんは、今年2月からここに通っている。「以前は人と話す気恥ずかしさがあったが、ここで実践的なコミュニケーションの仕方を教えてもらっている。さまざまな国からやって来た同じ境遇の人がこれだけいるのかと勇気付けられている」と語った。滞在歴が10年以上という日本人女性は、普段の生活で会話に不自由はないが、ニュースを観て情報弱者になっていると気づき、通い始めた。「これまで市内の公的サービス、例えば無料の食料配布があると聞いても細かい条件がわからなかったが、授業で生活に必要な知識を教えてもらえ助かっている」。 「来年1月をめどに、再び拡大予定です」とマホニさん。1セメスターごとに15クラスずつ増やすなど、今後もさらに英語教育の場を充実させ、移民の新生活をサポートしていく予定だ。 NYPLはこの授業のほかに、カジュアルな雰囲気で英会話を学べる「We Speak NYC」や、市民権のテスト対策講座も開講している。また館内には、移民への法的な支援を無償提供する「ActionNYC」も。教育のみならず、法律の分野でも移民を手厚く支援している。 以上が、ニューヨークの移民支援の一例だ。当地ではほかにも医療、健康保険、メンタルヘルス、食料、住居、雇用、教育、差別や嫌がらせからの保護など多岐にわたって、移民も恩恵を受けられる無料(もしくは低料金)支援がある。 参考資料 NY市の移民への取り組み(日本語資料) また、移民の多いニューヨークはサンクチュアリ・シティ(聖域都市)でもあり、例えば警察や救急隊に助けを求める人が、合法滞在か否かといった在留資格を質問されることはない。本稿で紹介した英語の授業でも、そのような質問はない。このまちでは、アメリカ市民と同様に誰もが1人の人間として、必要な支援や公的サービスを得られる仕組みになっているのだ。日本から聞くと信じがたいことかもしれないが、犯罪を抑止し治安や秩序を安定化するための効果があるため、移民の比重が多い大都市ではそのような政策が取られている。 国家の成り立ちがまったく異なる日本とアメリカでは、移民への対応も異なってくるのは当然だ。しかし日本でも、移民問題や対応の議論の場が、今後さらに増えていくことは確かだろう。移民都市ニューヨークの取り組みで、日本でも何か参考にできそうなことはあるだろうか。 サンクチュアリ・シティ(聖域都市) 関連記事 NYで不法移民に運転免許証発行へ 試験場は長・長・長蛇の列 #CelebrateImmigrants Text and some photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

ボヘミアン・ラプソディのフレディだけじゃない。西洋で愛されるKimono ── NYメットで着物展

2018年の大ヒット映画『ボヘミアン・ラプソディ』で、主役のフレディが着物をバスローブのように羽織っているシーンがある。日本人にとっては今でも印象に残っている1コマなのではないだろうか。 筆者にとってもあのシーンは印象的だった。イギリスが舞台の映画で主役がまさか着物姿で登場するなんて予想だにしなかったことで、突然映し出された着物(筆者には古典的な柄の長襦袢のようにも見えた)に度肝を抜かれたのだった。 欧米では、着物や浴衣(のようなもの)が日常生活のちょっとしたシーンで取り入れられることがある。筆者が住むアメリカ・ニューヨークでも、T字型の薄手の上着は「キモノ・カーディガン」として人気があり、5、6年ほど前から若い女性が羽織ってヒラヒラさせながら颯爽と歩いている光景をたまに見かけることがある。丈の長さはまちまちで、短いものもあれば、膝丈ほどの長さのものも。 おうち時間でもキモノ・ガウンやキモノ・ローブは、朝や夜のリラックスタイムに愛用されている。キモノはもはやファッションの一部なのだ。 ただそれは今に始まったことではない。着物はこれまでも長い歴史の中で西洋のガーメント(衣類、衣装、服飾)に影響を与え、着物自体も西洋のガーメントから影響を受け進化してきた。 筆者が先日話を聞いたドイツ在住の衣装の歴史研究家、スプリー金魚氏によると、着物がヨーロッパに初めて到着したのは17世紀ということだ。贈り物として100枚ほどが持ち込まれ、現地の人は初めて見る神秘的な東洋の被服に魅了されたという。 関連記事 和洋混淆のフリースタイル:ドイツ人着付師が提言する着物の新たな可能性 これまでいかに和と洋の双方の服飾文化が、刺激を与えながらインスパイアし合って進化し続けてきたか、その歴史が一目でわかる展示イベント、Kimono Style(キモノスタイル)が今月7日、ニューヨークのメトロポリタン美術館(通称The MET、メット)で始まった。 キュレーションを担当したのは、日本美術のアソシエイト・キュレーター、モニカ・ビンチク(Monika Bincsik)さん。モニカさんは、日本芸術のコレクターであるThe John C. Weber Collectionから、江戸時代の1615~1868年から20世紀初頭にかけての歴史的な着物、着物に影響を受けた西洋のガーメント(被服)、Kawaii文化やコミックアートを取り入れた最新のものまで60点を選りすぐり、紹介している。 モニカさんが「東洋と西洋の初期の交流の証」と説明するのは、18世紀のイギリス版バニヤン(室内着)。着物やトルコのローブなどに影響を受けたこのT字型の衣服は「自由な発想と世界観を象徴するもの」として、当時ヨーロッパの知識人の間で注目され、リラックスするためのカジュアル着として愛用されたそうだ。 鎖国が終わり、江戸時代後期の19世紀末から20世紀初頭にかけて、日本とヨーロッパ双方の貿易は活発化していった。それに伴い、着物は西洋のファッションデザイナーによって広く研究されたという。 日本にも海外のファッションは大きな影響を与えたようだ。当時呉服店だった高島屋や、絹製品専門の椎野正兵衛商店など最先端のアパレルやテキスタイル業界は、ヨーロッパのアパレルやシルク業界と活発に交流しはじめた。ヨーロッパ市場を見据えて作られたイブニングコートやドレッシングガウンには、ラインや柄などの細部に、和と洋(一部中国)のエッセンスが入り混じっている。1873年のウィーン万国博覧会にも出品され、ヨーロッパの人々を魅了したという。 1920年代から30年代にかけてのアメリカでは、リラックス着としてビーチパジャマが大流行した。ヨーロッパのファッション誌にも掲載され、日本でも紹介された。抽象的な幾何学的モチーフは(左の夏物の着物のように)着物のデザイナーにも影響を与えたようだ。今見てもおしゃれ。 「西洋のデコルテ見せ」は、衣紋を抜いてうなじを見せる文化の日本人には、当時「最先端の魅せ方」として紹介された。さぞや大きな衝撃を与えただろう。 20世紀初頭の大正ロマンの時代、日本の知識層のみならず、庶民の間にも西洋のファッションセンスや美的感覚が大きく影響した。 会場には、和と洋がコラボした最新のファッションも展示されている。コム・デ・ギャルソン(川久保玲)が2018年に発表した、Kawaii文化やコミックアートを取り入れた着物のようなローブ/アンサンブルはインパクト大だった。 奥深い着物の歴史には知られざる西洋文化との融合があり、和と洋の双方が刺激し合ってここまで来た。アメリカでも着物は敬意を持たれていて、日本人が誇るべき民族衣装だ。そんな着物の世界は現地の人に興味深かったようで、筆者が開催日の前日に参加したプレスプレビューでは、多くの記者が熱心にモニカさんの説明に耳を傾け、質問をしていた。 イベントの帰り、マンハッタン在住のフリーランス記者の女性と会場を後にした。その女性は「素晴らしい展示会だった」と、感想を述べるために笑顔で近寄ってきて、このように言った。「父が第二次世界大戦の終戦後、日本から着物を2枚持ち帰ったのよ。子どもながらにその着物を見て、美しさに魅了されたものよ。倉庫のどこかに眠っているから、久しぶりにあの着物をまた見てみたい」。 筆者もこの春日本から持ち帰った母の昔の着物を着て、どこかにお出かけしてみたくなった。 【Information】 KIMONO STYLE(着物スタイル) 会場:メトロポリタン美術館(The Metropolitan Museum of Art) 開催期間:2022年6月7日~2023年2月20日 #MetKimonos NYで注目される着物文化 関連記事 和洋混淆のフリースタイル:ドイツ人着付師が提言する着物の新たな可能性(nippon.com) 欧米で注目される着物 NYで開催の「アフリカ風ハイブリッド着物」展、のぞいてみた キモノ好きニューヨーカーが堪能【世界から】(47NEWS) ニューヨークのメトロポリタン美術館 関連記事 眞子さまNY移住で噂される3つの「就職先候補」ってどんなところ? 現地在住目線でその「魅力」を紹介 Text and some photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

夜中の地下鉄に2年ぶりに乗車。コロナ禍で治安悪化、NY生活20年で初めて感じたこと

ここ最近ニューヨークの地下鉄では、突然見知らぬ者が銃をランダムに発砲するといった無差別の銃撃事件が起きている。銃以外の武器による傷害事件も後を絶たない。 今月22日、チャイナタウン手前のQトレインで、男が突然至近距離から48歳の男性に向け発砲し、男性は病院で死亡が確認された。日曜日の正午前という家族づれがもっとも多い時間帯の犯行だった。 犯人は25歳のアンドリュー・アブドゥーラ(Andrew Abdullah)というギャング組織の一員で暴行、強盗、殺人未遂などさまざまな前科者だった。被害者の男性とは面識もいざこざもなかった。 先月12日もブルックリンの地下鉄車両で無差別の銃乱射事件が発生し、10人が撃たれ19人が負傷した。犯人はフランク・ジェームズ(Frank James)という62歳の男だ。この事件は朝のラッシュアワー時に発生した。 白昼でもこうだから、夜間の犯罪件数はさらに多い。しかも武器は銃だけではない。ナイフを使った傷害事件や線路への突き落としなど、傷害事件は枚挙に遑がない。 SNSを開けば、思わず目を覆いたくなるようなショッキングな映像がニュースフィードに次々と流れ、恐怖心を駆り立てられる。 参照:暴力的なシーンが含まれています。 アジア系らしき男性が集団にボコボコにされている様子 女性が突然男から髪の毛を掴まれている様子 ただ幸いなことに、筆者自身が電車内や路上で暴力事件に巻き込まれたことも、他人が巻き込まれているのも目撃したことは一度もない。暴力事件にしろいざこざレベルのトラブルにしろ交通事故に遭うようなものだと認識し、普段の生活では何事も恐れすぎないように心がけ、電車を日常的に利用している。都市部での生活に、電車移動は必要不可欠なものだからだ。 そんな筆者も、コロナ禍になって1つだけやめたことがある。それは夜中、特に深夜から明け方にかけての地下鉄乗車だ。 実はコロナ前は(身内には止められていたことだが)夜中1時でも2時でもそれ以降でも、必要とあらば1人でも地下鉄に乗っていた。トラブルに巻き込まれた経験がないこともあり、20年までの18年間、夜間の地下鉄利用は常態化していた。その頃を今思い出してみても100%安全なんて保証もなかったわけで、それを承知で完全に気を抜いていたわけではなかったが、それでも電車内を見渡すと、深夜利用の乗客は大抵夜遅くまで飲み歩いて酒が回って遊び疲れた若者が大半で、彼らは帰路の地下鉄で眠りに落ちていて大人しく、他人に迷惑行為をしたり危害を加えたりする空気は微塵もなかった。 夜中の地下鉄。1人で犯罪多発のブロンクスからブルックリンへ アメリカは、戦没者を弔うメモリアルデー・ウィークエンドを迎えた。市内では関連イベントやパレードが行われ、人々は家族や友人らとバーベキュー、海、キャンプ、小旅行を楽しむ。筆者は今年、郊外に住む友人宅でのバーベキューパーティーに参加した。会場は、海沿いの眺望が贅沢な一軒家の広々としたバックヤード。眼下の海では人々は水上バイクを楽しみ、リラックスした雰囲気だ。そんな開放感あるロケーションの素晴らしさもあってか、友人家族との久しぶりの再会に会話が弾み、あっと言う間に時間は過ぎ、気づけば陽がすっかり落ちていた。 郊外のこのお宅から最寄りの駅まで30分以上はかかり、そこから自宅のブルックリンまで、さらに電車で2時間強(夜中は本数が少ないためもっと)かかる。そろそろ帰らねば。 いつもならマンハッタンに住む家族とカーサービスを利用して市内に戻るが、この日は、彼らとは帰宅するタイミングが合わなかった。さぁ1人でどうやってブルックリンまで帰ろうかと考えていたら、ブロンクスから来ていた親子がバスで途中まで一緒に帰ろうと誘ってくれたので便乗することにした。母親のタニアは60代くらいだろうか。1歳の時に家族とプエルトリコから移住してきたそうだ。市内でも犯罪率の高いブロンクスの地で1970-80年代、もっとも犯罪が多発した暗黒時代を生き抜いてきたニューヨーカー(ニューヨリカン)だ。そんな彼女が私に「1人は危ないから、私たちの家の近くの駅まで見届ける」と言う。 さらにタニアはこう釘を刺した。「私はここ1、2年、地下鉄に乗るときは気を抜かず常に気を配っている。最近の地下鉄はクレージーな人が増えたから。私たちと別れた後は特に気をつけて」と。私はタニアに聞いた。「実際に自分の目で事件を目撃したことはある?」。タニアは首を振った。悪い事件のソースはすべてニュースから。筆者と同じだ。 筆者はこの日、カーサービスを利用する選択もあったが、久しぶりにブロンクスからブルックリンへ繋がる夜間の地下鉄がどんな雰囲気か見てみたくなった。そんな私にタニアはこう言った。「先頭車両と最後尾の車両は避けて、真ん中の車両に乗った方がいいわよ」「不審者とは決して目を合わせないように。とにかく無視を貫いて」「そして、無事に帰宅したらテキスト(メール)してね」と。筆者は初めそれほど身構えてはいなかったのだが、ニューヨーク育ちの彼女がそこまで警戒する様子を見て、逆に怖くなってしまった。 人々が銃撃事件に敏感になっているのは確かだ。前日も、テニスの大坂なおみ選手が、ブルックリンのバークレーセンターで銃声のような音を聞いてアリーナ内がパニックになった様子を伝えた。その後のニューヨーク市警の発表により、パニック騒動で16人が負傷したが、発砲事件ではなかったことがわかっている。 さて、タニア親子に送り届けてもらった先は、ヤンキースタジアムがある駅より大分北方に位置するブロンクスのFordham Rd駅。日本人はおろかアジア系の人は見かけない場所だ。夜の駅はガラガラだった。電車を待つホームに到着すると、2人の警官がパトロールで待機していたので安心した。しかしそんな安堵も束の間、警官はたった2駅で下車してしまった。 マンハッタンに近づくにつれ、乗客数も少し増え、安心感へとつながる。しかし同時に、マンハッタンまでの長い帰路の途中で、奇声を上げ始めた男が出てきた。電車が線路内に混雑するためか、当地の地下鉄は徐行しのろのろと進むことがある。車両という密閉空間に挙動不審者がいる場合において、そのようなケースでは気持ちがやきもきし、時が永遠にも感じられる。私は内容がまったく入ってこない携帯電話のブラウザをジッと見つめ、次の駅に到着するのをただただ待った。マンハッタンのハーレムの125 St駅に到着すると一気に乗客が増え、少し安心した。しかししばし賑やかなマンハッタンを通過しブルックリンに入れば、再び乗客は減る。 今度は物乞いをする(弱々しくない)男性が乗客1人1人の前に止まったり、目の前を行ったり来たりし始めた。筆者の前をおとなしく通過してくれるようにただただ祈るばかり。どんなに辛抱強く懇願されても、私は携帯電話をただ見つめ無視を貫く。その男性は次の車両に移動し、再びほっと胸を撫で下ろす。 2時間強の帰路で、ヒヤッとする瞬間が何度となく起こったものの、何事もなく無事にブルックリンの自宅まで辿り着いた。ヒヤッとするたびに(自分が必要以上に恐れているからというのもあるが)、ニュースやSNSで見聞きしてきたシーンが脳裏をよぎり最悪のケースを想像してしまう自分がいた。この街に住んで20年になるが、夜間に地下鉄に乗るだけでこんなにストレスフルだとは…。 不審者の中には重犯罪を犯す者やドラッグ&アルコール中毒のような者も確かにいるが、奇声を上げたり全速力で無駄に走ったりしている挙動不審者を観察する限り、こんなご時世でただ大声を上げたり騒いだりして、(ニュースを聞いて怯えている)市民に同様の恐怖を与えてストレスを発散させているだけのような者もいた。 50年代以降のアメリカでは、白人層が都市部から郊外へ大量に移住した。都市部ではびこる犯罪を回避するためで「ホワイトフライト(White Flight)」と呼ばれるものだ。 市内から車で2時間ほどの郊外にある広い庭付きの一軒家に住む別の友人家族から、当時の話を聞いたことがある。もとはブルックリン出身の彼らが、市外へ移住したのは80年代のことだった。その理由を聞くと「銃撃事件が絶えず、こんなところで子育てなんて到底できないと思ったからよ」と言った。この話を聞いたのは2002年のことだが、当時の筆者は「市内で銃撃戦?」とあまりピンときていなかった。しかし時代が逆戻りした今、当時の状況をよりリアルに想像することができ、新天地として郊外を選んだ彼らの気持ちが十分に理解できる。 市内の至る所で犯罪が起こっているわけではなく場所と時間を間違えなければそれほど恐れすぎる必要もないが、筆者は少なくとも当分の間、夜中に地下鉄に乗ることはないだろう。 過去記事 海外で近づいてはいけないエリアの判断基準 NY銃乱射地区を歩いた体験から思うこと 参照記事 Man Shot Dead in Unprovoked Q Train Attack Over Manhattan Bridge: NYPD Man Wanted in Random Subway Killing Arrested; Lawyers…

tibiのおしゃれなオフィスを覗いてみた。NYファッションウィーク

ニューヨークの2月はファッションウィーク。今回は、ウォール街にあるtibiのショウルームに新作を見に行ってきました。 tibiと言えば私が好きなブランドで、10年くらい前に買ったドレスは今でもお気に入り。素材もいいのでずっと着られます。 オフィスに入るとまず大プロジェクター室がありました。美術館やギャラリーみたいで、おしゃれ。 ショウルームも(撮影できなかったけど)オフィスも、これぞ「ザ・ニューヨーク」的でおしゃれ。ニューヨークは2月にマスク着用義務が解除されたため、誰もマスクを着けていませんでした(私も取りました)。 案内してくれたスタッフによると、tibiの来秋シーズンのテーマは「ウェスタン」。カウボーイっぽい幅広のデニムジーンズとかディテールが特徴的。 *すべて、掲載許可をいただいて撮影しています。 Text and photos by Kasumi Abe 無断転載禁止

日本産ハマチ(ブリ)をNY&LA人気店がどう手がけるか?期間限定のメニュー公開

ニューヨークとロサンゼルスの人気レストラン10店で、日本産ハマチ(ブリ)のオリジナルメニューを期間限定で提供している。 アメリカの都市圏では一般的に、ハマチ料理を多くの店で食べることができる。日本食を海外でプロモーションしているJFOODO(ジェイフード)によると、日本産ハマチ(ブリ)は米国内でHamachiやYellowtailとして親しまれており、Maguro/Toro, Shake/Salmonに続く消費量だという。(ちなみにUniは4位、Unagiは5位) ブリ類(ヒラマサ、カンパチ)はアメリカやメキシコ(ヒラマサ、ヒレナガカンパチ)をはじめ世界中で獲れているが、アメリカでの消費だけに絞るとアメリカ(ハワイ)、オーストラリア、オランダ産が多く、日本産と同様に寿司やカルパッチなど生食で食べられているそうだ。 そこで今回は、改めて「日本産」のものを使ったオリジナルメニューを米現地シェフに手がけてもらうという企画だ。参加店はニューヨークの7店とロサンゼルス3店で、いずれも人気店。 ソーホーの新店「Veranda」(コンテンポラリーアメリカン)では、ハマチのリッチなフレーバーを最大限に生かし、旨味を存分に味わえる「Hamachi Confit」(27ドル)を提供中。(写真上) ほかの店は「AQUAVIT」「The Musket Room」など。 同2店はいずれもミシュランの常連店で、筆者はこれまで料理長を取材したことがある。いずれも接待や特別な日にも「絶対に外さないお店」として定評がある。 過去記事 Emma Bengtsson (Aquavit)インタビュー Matt Lambert (The Musket Room)インタビュー なお、今回のオリジナルメニューの提供は1/27から2/28までの1ヵ月間のみ。 参加店の情報はこちら https://www.instagram.com/hamachiofjapan/ Text by Kasumi Abe 無断転載禁止

小室眞子さん夫妻のNY高級アパート前で白昼に銃撃事件。動画を米紙が公開

ニューヨークのヘルズキッチン地区で10日、銃撃事件が起こったとして、テレビニュースや新聞など地元メディアがいっせいに報じた。 同日午前11時過ぎ、マンハッタン西52丁目の路上で、身内のいざこざが銃撃事件にまで発展し、衛生局の非番の清掃作業員が左太ももを撃たれた。 清掃作業員の娘の元交際相手の兄弟にあたる男が、路上で清掃作業員と口論になり、発砲したと見られている。現場の路上から、容疑者が撃ったとされる弾が見つかった。容疑者はその後、黒のメルセデス・ベンツで現場から逃走したが、車だけが27丁目で見つかった。 【閲覧注意:暴力的なシーンが含まれます】 発砲事件の一部始終を近所の人が撮影し、地元メディアが公開 アパートの室内から録画した人は「あぁなんてこと、これはよろしくない」と連呼。その後、発砲音が3発聞こえた。 NYではこの1、2年、銃撃事件が多発 関連記事 市内では先月だけで100件もの銃撃事件が発生。警官2人も殺された。 1月だけで銃犯罪100件! ── バイデン大統領が誓った「テコ入れ銃規制」と見えてきた「失望」 清掃作業員は病院に搬送された。詳しい症状は分かっていないが、命に別状はないという報道もある。警察の捜査により、現場付近は一時立ち入り禁止となった。 筆者が気になったのは、発砲事件そのものに加えて、事件現場となった「場所」である。 報道されている事件発生現場や建物の外観は、昨年11月に英デイリーメールが報じた小室眞子さんと圭さん夫妻が住む高級アパートの外観などと一致している。 事件が起こった厳密な場所は、小室夫妻の居住ビルに隣接したビストロ&カフェの前にある道路だ。眞子さん夫妻は移住後、市内での散歩姿がよく報じられており、ビル入口出てすぐのこの歩道を、夫妻は毎日通っているだろう。 ヘルズキッチン地区の事件の発生率について 関連記事 市内で飛び抜けて高いエリアでもないが、犯罪発生率が低いほかの地区に比べると繁華街に近い分、やや高めの傾向。 ヘルズキッチンを東京で例えるならば?治安は実際どうなの?犯罪発生率を徹底的に調べてみた 小室夫妻で大注目「ヘルズキッチン」てどんな街?住みやすい? また地元メディアの報道では、口論の発端となった清掃作業員の娘は「このアパートに居住」しており(小室夫妻と同じ建物かビストロ&カフェの建物かは不明)、当日容疑者らが娘を訪れ「父親に連絡するよう」促したということだ。今後もこの娘を軸に、いざこざが起こる可能性は否定できない。 小室さん夫妻はニューヨークで新婚生活を始めて3ヵ月もしないうちに、このような凶悪事件がしかも自宅前で発生し、驚いていることだろう。またこのようなニュースがご両親である秋篠宮ご夫妻の耳にでも入った日には、ご心中いかばかりか。 しかし悲しきかな、これが2人が新天地として選んだニューヨークの「今」なのである。 関連記事 殉職の22歳NY警察 NY人気観光地で連続の発砲事件 パンデミックで銃購入増。銃社会は危険と考えない価値観とは(保釈金を支払わずとも被告が公判まで自由の身になれる新保釈制度について) アンティファが再襲撃 ── 叫ばれる「割れ窓理論」 全米ライフル協会に解散要求 銃の悲劇なんて気にしない金の亡者 NY治安悪化でまさかの警察予算削減 刑務所がコロナの温床 650人を釈放、懸念される治安悪化 警察憎悪犯罪 警官に向けた連続発砲事件 毎日100人、年間4万人が銃の犠牲 3億丁ある銃器との共存やいかに? 【加速する銃乱射】数字で見るアメリカの現実と憂い 海外で近づいてはいけないエリアの判断基準 NY銃乱射地区を歩いた体験 誤射で死亡 ーー 11秒間で7人の警官が42発の発砲 Text by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

NY屋内マスク義務が今日から解除。人々はマスクを外した?街の様子は?

ニューヨーク州では10日より、屋内飲食店や小売店などで、マスクの着用義務がなくなった。 着用義務化は、感染が急拡大していた昨年12月半ばより再び導入されていたが、10日に期限を迎えるにあたり、新規感染者数や重症による入院患者数の減少を踏まえ、ホークル州知事が専門家らと意見交換をし、着用義務の方針に関して更新しない判断をしたという。 「パンデミックの新たなフェーズだ」。知事は9日の記者会見でこのように述べながら、協力店に感謝の意を表明した。 ただし、今後も経営者の裁量や店の方針によって、客に着用義務を求めることはできる。また地下鉄やバスなど公共交通機関、空港、医療機関や介護施設、学校、ホームレスシェルターなどでは引き続きマスク着用義務化が継続される。 実際に10日の街の様子を見に行った。 屋外を歩いている人では、マスクを着用している人としていない人は半々で、昨日までの光景と何ら変わりない。 近所の公園のバスケットボールコートでは、ティーンと思しき若者が5対5のバスケをしていた。10人のうち2人はまったくマスクをしていなかったが、8人はマスクを顎に引っ掛けたままプレーをしていた。 小売店に行ってみると、多くの店頭に依然としてマスク着用を求める張り紙がされたままだった。また客もほとんどがマスクを着用していた。 この2年間ですっかりマスク着用に慣れてしまった感があるニューヨーカーだが、街の人に話を聞くと、今後も念のためしばらくは屋内でもマスク着用を続けていくだろうと答える声も聞こえてきた。 またホークル知事自身も、同日の記者会見で「パンデミックが終わった訳ではない。脆弱な人々を今後も感染から守らなければならないし、誰もが安全・安心を感じて欲しい。マスクを着用することで安心を感じるならば、引き続き着用を勧める」と述べた。つまりは、今後はマスク着用の判断を、経営者や個人の裁量に任せていくということだ。 過去記事 マスクを取ってもいいよと急に言われても、今度は逆にその無防備さに戸惑うのだろう。大多数の人が清々しい気持ちで「マスクはもういらない」という気持ちになるまで、もう少し時間がかかりそうだ。 米「ワクチン接種でマスク不要」 NY中心地のマスク率は? 街の人の声は? 広がるマスク着用義務撤廃の動き マスク着用義務の規制撤廃の動きは、アメリカではこれまで共和党寄りの州で見られてきたが、ここにきてニューヨークやニュージャージー、カリフォルニアなど民主党寄りの州でも広がっている。またイギリスやフランス、北欧などヨーロッパ各国でも同様に、マスク着用義務の規制撤廃の動きが報じられている。 ただし米ホワイトハウスやCDCは、引き続きマスク着用を推奨している。 マスクやワクチン義務化に関する過去記事 – 2021å¹´ NYワクチン接種義務に抗議。義務化初日に休職の市職員9千人が都市に及ぼす影響 NY屋内活動に「ワクチン接種証明」義務づけ 全米初の試みが始まったが・・・街の様子 1å¹´3ヵ月ぶり「非常事態」が解除 NYはいま【昨年との比較写真】 新型コロナに「打ち勝った」“先行事例”となるか?NYが復興へ前進、大規模再開へ 米「ワクチン接種でマスク不要」 NY中心地のマスク率は? 街の人の声は? – 2020å¹´ 「マスク外してみて。顔が見たい」は新たなセクハラになるのか? 米紙 結局アメリカでマスクはすんなり受け入れられたのか 外出の際、顔はカバーすべきですか?「はい」とNY市長 アメリカでマスク改革、はじまる TText and photos by Kasumi Abe (Yahoo!ニュース 個人より一部転載)無断転載禁止

Starbuck Cofee スターバックスコーヒー関連【まとめ】

世界のスターバックス、1万6700店制覇の「アメリカ人」と3800店舗制覇の「日本人」がついに出会った! 日本とアメリカのスタバ、使い捨てを減らす新たな試み。 スタバやナイキ:相次ぐ米大企業の世界展開。東京やNYより「上海へ」の時代に 高級スタバが日本上陸! 素敵すぎる「ロースタリー」NYでも話題沸騰 スターバックス帝国を一代で築いたハワード・シュルツ。貧困からのアメリカンドリーム NYスタバ Starbucks Eveningsの新メニュー、地ビール&エスプレッソ (過去記事より一部抜粋)

1月だけで銃犯罪100件!  ── バイデン大統領が誓った「テコ入れ銃規制」と見えてきた「失望」

バイデン大統領は3日、銃犯罪が多発し治安悪化の一途をたどるニューヨーク市を訪問し、銃規制を見直す方針を表明した。 大統領はエリック・アダムス市長やキャシー・ホークル州知事らと会談し、このように述べた。「警察の予算の打ち切りは答えにならない。必要な資金を援助していく」。 民主党寄りのニューヨークではBLM運動が盛んだった2020年以降、「ディファンド・ザ・ポリス(Defund the police 警察予算の打ち切り)」がスローガンだった。しかし銃犯罪が相次ぐ中、大統領によって警察組織の再検討と予算の見直しの必要性が明言された。 先週市長は、私服警官の再配備や、武器所持者を見極める顔認証による取り締まり強化案の発表と共に、州および連邦政府に対してNYPD(ニューヨーク市警察)への援助要請をしており、それに答えた形だ。 大統領は6時間の市内滞在中、クイーンズ区の公立小学校も訪れ、地域のヴァイオレンス・インターラプター(Violence Interrupters 暴力を阻止する活動グループ)とも面会した。彼らは犯罪へ対峙する施策として、「発生自体」を阻止することが何よりも重要だと考え、街中でのいざこざが暴力事件に発展する前に、問題解決をすべく活動をしている。バイデン氏は彼らにも、活動資金の援助を増やしていくと約束した。 深刻化するNYの治安悪化 大統領がわざわざ市内を訪問するほど、最近のニューヨークの治安悪化は甚だしい。まるで「被災地訪問」である。この街は銃撃事件だけでも、1月は特に酷い有様だった。 先月市内で起きた主な銃撃事件 9日深夜、イーストハーレムのハンバーガー店「バーガーキング」に強盗が押し入り、19歳の女性従業員が腹部を撃たれて死亡。犯人はレジから100ドル(約1万円)とマネージャーの携帯電話を盗んで逃走し、その後逮捕された。 21日ハーレムで、家庭内暴力の通報で駆けつけた警官2人が銃撃され死亡。犯人は別の警官に撃たれ3日後に死亡。(今年だけで6人の警官が、銃犯罪に巻き込まれている) 19日ブロンクスのデリ前で、男が別の男に向け発砲した2発のうち1発が、車内に母親といた11ヵ月の女児の顔面に当たる。女児は一命を取り留めるも、犯人は逃走中。 NYPDが発表した先月の市内の犯罪数を見ても、その多さは顕著だ。前年同月に比べ急増している。 全犯罪件数:前年同月より38.5%上昇(昨年6905件、今年9566件) 銃犯罪:前年同月より31.6%上昇(昨年76件、今年100件)* 2019年は52件、20年は67件 レイプ:前年同月より26.7%上昇(昨年101件、今年128件) 車両窃盗:前年同月より 92.5%上昇 殺人:前年同月より15.2%減少(昨年33件、今年28件) 殺人を除き、すべての犯罪カテゴリーに於いて、前年同月より犯罪率は上昇した。車の盗難が急増しているのも今年の特徴。 全米でも治安悪化 コロナ禍になりここ1、2年、犯罪数が急増しているというのは、ニューヨークのみならず全米の潮流でもある。 同日のニューヨークでの会議中、バイデン大統領は「この国では毎日316人が撃たれ、106人が銃で殺されている」とも述べた。 2年前の関連記事 状況は今も変わっていない。 毎日100人、年間4万人が銃で命を落とす国 3億丁ある銃器との共存やいかに? バイデン氏が掲げた、テコ入れの銃規制とは? 大統領が今回表明した、具体的な銃規制の強化は以下のようなものだ。 銃犯罪に関する司法省計画 銃撃事件対策が優先的事項 銃の売買ルートの取り締まり ゴーストガン(闇取引で売買されている身元審査すら必要ない銃。シリアル番号などがないため、入手ルートが追跡できない)の撲滅 違法銃の販売元の追跡、割り出し 5億ドル(約570億円)の予算の捻出 大統領は、特に問題とされている他州からニューヨークに大量流入する「違法銃」への連邦政府の取り組みが急務だとし、追加資金を提供することを公約に掲げた。「より安全に生活するために、できることをやっていく。しかしそれには議会の協力も必要だ」と話し、「銃販売の身元調査の徹底、ライフルなど殺傷力の高い銃器(アサルト・ウエポン Assault Weapons)の撤廃、銃製造業者の責任逃れの廃止を盛り込んだこれらの法案の可決が必要だ」と、議会に求めた。 「NYの問題とは関係ない」疑問の声も… 問題解決に向け1歩踏み出したかと思えば、実はそうでもないようだ。 3日付のニューヨークポストの社説は、「我々が必要としている問題解決について、大統領から具体的な言葉はなかった。身元調査やアサルト・ウエポンの撤廃、レッドフラッグ法はニューヨークが今抱えている問題とは何の関係もない」と、大統領の方針を厳しく切り捨てた。 当地では、犯罪者に甘いとされるマンハッタンの新地方検事、アルヴィン・ブラッグ氏の政策が問題視されている。「当地では強盗で銃を使用したとしても、実際に銃を撃たない限り、刑務所に入れられることはない」。(前述のニューヨークポスト) 「犯罪に甘い政治家がこの国をダメにしている」と、下院共和党トップのケビン・マッカーシー院内総務も、大統領を強く非難した。「(非常に深刻な事件でない限り)犯罪者を起訴しないように検察官に指示を出し、強盗などの罪を軽く見て、わずかな保釈金で犯罪者を解放しているニューヨークの極左検事(アルヴィン・ブラッグ氏)対して、大統領には非難する勇気がないようだ」 関連記事 殉職の22æ­³NY警察。新妻スピーチに全米が涙 NY人気観光地で連続の発砲事件 パンデミックで銃購入増。銃社会は危険と考えない価値観とは(保釈金を支払わずとも被告が公判まで自由の身になれる新保釈制度について) アンティファが再襲撃 ── 叫ばれる「割れ窓理論」 全米ライフル協会に解散要求 銃の悲劇なんて気にしない金の亡者 NY治安悪化でまさかの警察予算削減…